外資に関する奨励

最終更新日:2023年05月30日

奨励業種

改正投資奨励法第9条では、9つのセクターを奨励優遇対象に定めている。ただし経済特区(SEZ)への投資においては、SEZごとに優遇が定められている。

政府は、国家の治安や永続性、環境、住民の健康や国の文化に悪影響が懸念される場合を除き、すべての業種、活動、全地域への投資を奨励するとしている(改正投資奨励法第4条)。特に重視するセクターとして、次の9つのセクターが定められている(同法第9条、法人税および国土のリース・コンセッション費に係る投資優遇についての計画投資省大臣ガイドライン第0760号付属書1(2021年5月14日付))。なお、経済特区(SEZ)への投資にはSEZごとに個別の優遇が定められている。

奨励対象業種

表1 奨励優遇制度が得られる分野
奨励分野 具体例(*1)
高度先端技術、科学研究、研究・開発、テクノロジーの使用、環境に優しい天然資源エネルギーに関する事業 鋳造、電子部品製造、通信機器の製造、電池および蓄電池の製造、照明器具の製造、家電の製造、農業機械の製造、自動車・二輪車の製造、太陽光発電機器の生産、代替エネルギー開発、バイオガスの生産、ゴミや廃棄物からのエネルギー生産、バイオ燃料の生産など
クリーンな農業、無農薬、育種、畜産品種改良、工芸作物栽培、森林開発、環境および多様性の保全、地方開発、貧困削減に資する事業 穀類・豆類・油糧種子の栽培、野菜・スイカ・根茎・サトウキビ・繊維作物・ブドウ・熱帯・亜熱帯果実・柑橘類・飲料作物・香辛料などの栽培、カーボン取引のための植林、家畜飼育、養殖、動物用医薬品の製造、動物病院の設立、調整動物飼料の製造、調査研究など
環境に優しい農業生産物の加工、国の伝統・独自の加工品、手工芸品の生産 肉・魚・果物・野菜・油脂・乳製品加工、でんぷん・砂糖の製造、紡績・製織、縫製を除く衣類製造、肥料・窒素化合物の製造など
環境に優しく持続可能な自然、文化、歴史観光産業 5星以上のホテル投資、国家的な自然・文化・歴史観光開発
教育、スポーツ、人材開発(人的資源開発)、職業技術、職業訓練所、教材・スポーツ用品の生産 楽器・スポーツ用品の製造、初等・中等・高等・技術教育、スポーツ・レクレーション教育、文化教育など
高度な医療施設、医薬品・医療機器製造工場、伝統医薬品の製造と治療に関する事業 一般病院・専門病院・伝統医療病院の運営、製薬、医薬原料・ワクチン製造など
都市の交通渋滞緩和、居住地域整備のための公共サービス・インフラ開発への投資、農業・工業用インフラ建設、商品輸送サービス、越境サービス 都市乗客輸送、国内旅客輸送、国内商品輸送、駐車場サービス、河川乗客輸送、河川商品輸送、船舶・フェリー・観光船などの製造
商業銀行融資へのアクセスがない国民やコミュニティの貧困解決のための政策銀行、マイクロファイナンス事業 融資組合、節約貯金
国内生産や世界的なブランドの販売促進のための近代的ショッピングセンターの開発運営、国産の工業品・手工芸品・農産品を展示する展示場の開発運営 近代的ショッピングセンター、地方マーケットの設立

*1:優遇セクターの内容の詳細については、詳細はジェトロの記事「9つの投資優遇セクターと投資地区分類を規定(2021年6月10日)」を参照。

ただし、改正投資奨励法で定められる優遇措置を受けるには、次の条件を満たす必要がある(同ガイドライン2.1項)。

  1. 奨励対象事業に投資する企業で、付属書1に規定された詳細な条件を満たす場合
  2. 12億キープ以上の投資、もしくはラオス⼈技術者30名以上を雇⽤する、もしくはラオス人労働者50名以上と1年以上の雇用契約がある
  3. 登録資本⾦をすべて投資し、ラオス中央銀⾏の証明がある。
  4. 事業を実施し、納税を満たしている
  5. 環境上の義務を満たしている

これらの条件を満たした企業は、企業設立後に計画投資省投資奨励局投資ワンストップサービス室もしくは県・都計画投資局投資ワンストップサービス室へと投資優遇を申請し優遇を受ける必要がある(同ガイドライン2.2項)。

各種優遇措置

投資に対する優遇措置としては、法人税に関する優遇、関税・付加価値税に関する優遇、土地利用に関する優遇、経済特区での事業における優遇がある。

法人税に関する優遇

ラオス改正投資奨励法(日本語仮訳)PDFファイル(424KB)では、ラオス全土を3つの地区に分け、地区別奨励策を実施している。

  • 第1地区:貧困地域、遠隔地、投資における社会経済インフラの利便性が低い地域
  • 第2地区:投資における社会経済インフラの利便性が高い地域
  • 第3地区:経済特区

改正投資奨励法第9条で定められる奨励業種および投資地区によって、次の優遇措置が与えられる。

  • 第1地区:10年間の免除。第9条2・3・5・6のセクターは5年間の免税期間が追加される。
  • 第2地区:4年間の免除。第9条2・3・5・6のセクターは3年間の免税期間が追加される。
  • 第3地区:経済特区の関連法に従う。

なお、法人税の免除期間は、企業が売上を記録した時点から開始される。コンセッション事業については、関係法もしくは各契約に従う。

法人税および国土のリース・コンセッション費に係る投資優遇についての計画投資省大臣ガイドライン第0760号付属書2(2021年5月14日付)では、第1地区に分類される郡は以下の23郡。

表2 第1地区に分類される郡
都・県名 第1地区に分類される郡
ポンサリー県 マイ郡、サムパン郡、ニョートウー郡
ウドムサイ県 ンガー郡
ルアンパバン県 ポンサイ郡、パークセン郡、ビエンカム郡、ポントン郡
ホアパン県 ホアムアン郡、ヒアム郡、サムタイ郡
サイニャブリ県 サイサターン郡
シェンクワン県 ノンヘッド郡、モーク郡
ボリカムサイ県 サイチャムポーン郡
サワンナケート県 ノン郡、セポン郡
サラワン県 タオオイ郡、サムアイ郡
セコン県 ガルム郡、ダクチュン郡
アタプー県 サーンサイ郡
サイソムブン県 タートーム郡

なお、第1地区以外の市・郡は第2地区に分類される。ただし、経済特区は第3地区に分類される。

関税・付加価値税に関する優遇

法人税免税措置に加え、次の関税および税に関する優遇措置が提供される(投資奨励法第52条、投資奨励法施行令第119号第35条~第42条)。2019年に条文改正が実施された投資奨励法改正第12条では、生産活動に関連する物品に対する関税・付加価値税について、次の優遇策を定めている。

  1. 国内で調達・生産できない、固定資産として登録される機械や、生産に直接使用される重機車両については、関税および付加価値税を免除とする。化石燃料、ガス、重油、自動車、その他の機材などについては関係法に従う(一時的輸入における減免税については改正関税法第86条~90条に規定)。
  2. 輸出用生産に使用する原料、鉱物、機器、部品の輸入は、輸入時の関税および付加価値税を免除する。生産品を輸出しなかった場合は、関税と各種の税金を徴収する。
  3. 輸出のための完成品や半完成品の製造のための国内原料の使用については、付加価値税を免除する。鉱物由来品については、関連法に従う。

また、企業が純利益を事業拡大のために投資する場合、全純利益に占める投資額の比率に応じて、次年度の法人税が1年間免除される。事業が損失を計上した場合、翌3年間は繰越して利益と相殺することができる。4年目以降は次年度への相殺はできない(同法第14条)。

生産手段に係る関税・付加価値税の免税措置は、政府に承認された年間輸入計画書(マスターリスト)に基づいて実施される。

企業の輸入計画における関税・付加価値税上の投資奨励優遇に関する中央投資奨励管理委員会ガイドライン01号(2019年1月2日付)(仮訳はラオス日本人商工会議所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますウェブサイト「ドキュメント」を参照)では、マスターリストの運用に関して次のように定めている。

  • マスターリストは署名後から1年間の有効期限。期限が切れた後は、マスターリストに記載されている未輸入の品物の免税輸入権は破棄される。追加輸入や緊急輸入については価格や量は実際の必要に応じて申請が可能。
  • 企業の固定資産となる工場や建屋の建設のための建設資材や道具の輸入は建設期間中に1回のみ申請が可能である。国内にない、もしくは国内で購入することができない、あっても不足しているものに限る。
  • 生産に直接使用する原料、素材、部品、機械、車両機械のうち、ラオス国内で供給もしくは生産できないものはマスターリストの対象となる。一方で、生産に直接使用されない道具や機械交換部品の輸入は関税法や付加価値税法に従うとされる。中央省庁で登記されている企業は計画投資省投資奨励局投資ワンストップサービス室へ申請し承認を受ける。都・県レベルで登記された企業は、都・県計画投資局投資ワンストップサービス室へ申請する。ただし輸出のための生産工場で原産地証明書の発給を必要とする企業は、商工省もしくは都・県商工局が年次必要計画を承認した後に、財務省関税局へ申請する。電力・鉱山事業で政府とコンセッション契約を有する場合には、エネルギー鉱山省へ申請する。
  • 無償援助、ソフトローン事業におけるマスターリストは財務省に対して申請する。
  • 経済特区のデベロッパーや入居企業については経済特区奨励管理室へ申請する。

土地利用に関する優遇

改正投資奨励法第9条に規定されるセクターに投資を行う投資家は、前述の地区分類に従い政府用地のリースもしくはコンセッション費が次のとおり免除される(同第15条)。
条件や取得方法などの詳細は税・リース・コンセッション費における投資奨励優遇に関する計画投資省ガイドライン第0760号(2021年5月14日付)に規定される。

  • 第1地区:10年間の免除。第9条2・3・5・6に該当する事業は5年間の免税期間が追加される。
  • 第2地区:5年間の免除。第9条2・3・5・6に該当する事業は3年間の免税期間が追加される。
  • 第3地区:経済特区の関連法に従う。

また、コンセッション事業への投資家は次の優遇を受ける(同第16条)。

  1. 政府用地のリースおよびコンセッションの権利を有する土地使用権を、投資事業遂行のために、コンセッション契約の残期限内で譲渡することができる。ただし、政府の承認を受けた開発計画等の45%以上の事業が完了し、契約で定める税務上の義務を果たし、関係当局からの承認を受けていることが必要である。
  2. コンセッション地区以外でも、政府用地のリースもしくはコンセッションにより土地利用権を得る権利を有する。ただし、都庁・県庁の合意に基づき、投資期間内における事務所や住居の建設という用途に限定される。

経済特区での事業における優遇

各経済特区では、国家経済特区委員会と当該経済特区の開発業者の間で独自に設定した優遇措置が供与されてきた。現在日系企業が入居している主要な経済特区(首都ビエンチャンのビタ・パーク経済特区、サワナケート県のサワン・セノ経済特区、チャンパサック県のパクセー・ジャパン中小企業専用経済特区)では、次のとおり、ほぼ同様の優遇措置が提供されている。

  1. 法人税免除:利益が発生する年度から2~10年間(業種、投資額、総生産量における輸出割合に準ずる)
  2. 法人税免除期間終了後の法人税率:8%または10%
  3. 所得税:ビタ・パーク7%、サワン・セノ5%、パクセー・ジャパン5%
  4. 法人税免除後の配当税率:5%
  5. 付加価値税:0~5%
  6. 輸入原材料、事業用設備・機械等の輸入関税率・輸入税率:0%
  • サワン・セノ経済特区の管理規則および奨励政策に関する首相令第177号
  • パクセー・ジャパン経済特区の開発業者サワンTVSコンサルタント社へのヒアリング

なお、2018年6月7日付経済特区に関する政府令(No.188/GV)が発布され、次のように優遇制度が変更されている。

  • 改正投資奨励法が規定する奨励業種については、経済特区内への投資では2年間の法人税の免除期間の追加を行うこと。また第9条3・4・5・6に該当する場合には、法人税の免除期間終了後、5年間は税法が規定する法人税率の35%に減税する。
  • 100%輸出のための生産工場の建設は付加価値税(VAT)の免除を受ける。また、生産のための電力、水道の使用はVAT法が定めるVAT税率の50%とする。
  • 100%輸出のための生産工場ではない事業でのインフラの建設は、VAT法が定めるVAT税率の50%とする。

一方で、本政府令の発布前に許可を受けている場合や経済特区に関する法律や政府との契約による利益・便益は、契約終了まで変更されないとされている。計画投資省経済特区管理庁によると同規定に基づき、ビタ・パーク経済特区、サワナケート県のサワン・セノ経済特区、パクセー・ジャパン中小企業専用経済特区等のデベロッパーおよび新規を含む入居企業は、これまで同様の優遇制度が維持されるとしている(2018年7月19日チャムパ長官への聞き取りによる)。
詳細はジェトロ「ラオスの経済特区(SEZ)」ページを参照。

宿泊業や飲食業における優遇

宿泊業の格付け制度を取得することで5つ星ホテルは5年間、4つ星ホテルは4年間の法人税免除が与えられる。また格付け取得後1年間の関税、付加価値税免除が付与される(宿泊施設に関する情報文化観光大臣合意第985号(2021年12月14日付))。同様に飲食業においても格付けを取得することで法人税および付加価値税免除が付与される(飲食業に関する情報文化観光大臣合意第986号(2021年12月14日付))。
なお、詳細はジェトロ調査レポート「ラオス投資ガイドブック2023」の第4章 ラオスの宿泊業(ホテルやゲストハウス、不動産賃貸業)について、および第5章 ラオスにおける飲食業に関する事業についてを参照。

その他

特になし。