外資に関する奨励

最終更新日:2025年05月05日

奨励業種

2024年改正投資奨励法第9条では、9つのセクターを奨励優遇対象に定めている。

政府は、国家の治安や永続性、環境、住民の健康や国の文化に甚大な悪影響が懸念される場合を除き、すべての業種、活動、全地域への投資を奨励するとしている(2024年改正投資奨励法第4条)。特に重視するセクターとして、次の9つのセクターが定められている(第9条)。

  1. クリーン農業、作物品種・動物品種の生産、工芸作物栽培、森林開発、環境生物多様性保全
  2. 農産物加工や環境に優しいその他の加工業、飼料・自然肥料・有機肥料・化学肥料・その他農業に必要な資材の生産、国家の伝統・独自な工芸品の生産、一郡一品(ODOP)製品、輸入代替・輸出商品の生産
  3. 病院、製薬・医療機器工場、伝統薬の生産と治療
  4. 教育、スポーツ、職業技術開発、教材・スポーツ用品の生産
  5. デジタル技術を使用した事業、R&D、天然資源やエネルギーの節約に資する環境に優しいイノベーションの使用
  6. 環境に優しく持続的な自然、文化、歴史観光産業の開発
  7. 公益に資するインフラ投資、サービス、開発。例えば、国道や鉄道の建設、上水道、下水処理、廃棄物処理サービス
  8. 特別経済区および特定経済区内への投資を受けるためのインフラ開発
  9. ロジスティクス、商品輸送、国境倉庫システム、ドライポート、トランジットやクロスボーダーサービス、陸・水・鉄道・空路による旅客・商品輸送

なお今後、各優遇分野の具体的な事業や条件は整理され、ガイドラインが発行される予定である。
2024年改正投資奨励法については、ジェトロ調査レポート「ラオス投資ガイドブック2025」第2章および3章も参照。

ジェトロ地域・分析レポート:ラオス、2024年投資奨励法を公布
ページ内(ジェトロ抄訳、以下、2024年投資奨励法(1.6MB))を参照。

各種優遇措置

投資に対する優遇措置としては、法人税に関する優遇、関税・付加価値税に関する優遇、土地利用に関する優遇がある。

法人税に関する優遇

2024年改正投資奨励法第10条ではラオス全土を2つの地区に分け、地区別の奨励策を実施している。

  • 第1地区:社会経済インフラが投資に利便性の低い地域
  • 第2地区:社会経済インフラが投資に利便性の高い地域

奨励業種および投資地域によって、次の優遇措置が与えられる。

表1 地区別の法人税優遇措置
地区 2024年投資奨励法
第1地区
社会経済インフラの利便性が低い地区
最大10年免除
  • 9条1、2、3項の事業:追加5年(最大計15年)
  • 教育セクター:全投資期間を通して免除
  • SEZデベロッパー:追加6年(最大計16年)
  • SEZへの入居企業(9条9項の事業は除く):追加2年(最大で計17年)
第2地区
社会経済インフラの利便性が高い地区
最大4年免除
  • 9条1、2、3の事業:追加3年(最大計7年)
  • 教育セクター:全投資期間を通して免除
  • SEZデベロッパー:追加4年(最大計8年)
  • SEZへの入居企業(9条9項の事業は除く):追加2年(最大で計9年)

なお、法人税の免除期間は、企業が売上もしくは所得を得た時点から開始される(11条)。
法人税および国土のリース・コンセッション費に係る投資優遇についての計画投資省大臣ガイドライン第0760号付属書2(2021年5月14日付)では、第1地区に分類される郡は以下の23郡。

表2 第1地区に分類される郡
都・県名 第1地区に分類される郡
ポンサリー県 マイ郡、サムパン郡、ニョートウー郡
ウドムサイ県 ンガー郡
ルアンパバン県 ポンサイ郡、パークセン郡、ビエンカム郡、ポントン郡
ホアパン県 ホアムアン郡、ヒアム郡、サムタイ郡
サイニャブリ県 サイサターン郡
シェンクワン県 ノンヘッド郡、モーク郡
ボリカムサイ県 サイチャムポーン郡
サワンナケート県 ノン郡、セポン郡
サラワン県 タオオイ郡、サムアイ郡
セコン県 ガルム郡、ダクチュン郡
アタプー県 サーンサイ郡
サイソムブン県 タートーム郡

なお、第1地区以外の市・郡は第2地区に分類される。

関税・所得税に関する優遇

法人税免税措置に加え、次の関税および所得税に関する優遇措置が提供される(2024年投資奨励法第12条)。
生産活動に関連する物品に対する関税について次の優遇策を定めている。

  1. 国内で供給が不可能な器具材料で固定資産や生産に直接使用する車両機械は関税が免除。化石燃料、ガス、潤滑油、化学薬品、アドミに使用する車両やその他の器具材料および車両機械の一時的な輸入は関税法に従う。
  2. 輸出のために生産に使用する原料、鉱物、器具材料、部品は関税支払いが一時停止。
  3. 輸入代替を目的に国内販売のための生産に使用する原料、鉱物、物資、部品は関税支払いが免除。
  4. 生産・栽培・飼育からの農産品、生産もしくは加工プロセスを経て完成品となる工業製品・工芸製品の輸出関税が免除。ただし各時期に定められる特定の規則にて規定される商品、物品は対象外。

また、2024年改正投資奨励法第9条で規定される奨励セクターの専門家の個人所得税は5%固定とされる。
企業が純利益を事業拡大のために再投資する場合、全純利益に占める投資額の比率に応じて、関係機関の証明を受けることで次年度の法人税が1年間免除される。事業が損失を計上した場合、翌年は繰越して利益と相殺することができる(第14条)。

付加価値税に関する優遇

付加価値税に関する優遇は2024年改正投資奨励法では付加価値税法に従うとのみ言及されている(第12条)。
付加価値税の詳細は「税制‐その他税制」の項を参照。

生産手段に係る関税の免税措置は、政府に承認された年間輸入計画書(マスターリスト)に基づいて実施される。

企業の輸入計画における関税・付加価値税上の投資奨励優遇に関する中央投資奨励管理委員会ガイドライン01号(2019年1月2日付)(仮訳はラオス日本人商工会議所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますウェブサイト「ドキュメント」を参照)では、マスターリストの運用に関して次のように定めている。

  • マスターリストは署名後から1年間の有効期限。期限が切れた後は、マスターリストに記載されている未輸入の品物の免税輸入権は破棄される。追加輸入や緊急輸入については価格や量は実際の必要に応じて申請が可能。
  • 企業の固定資産となる工場や建屋の建設のための建設資材や道具の輸入は建設期間中に1回のみ申請が可能である。国内にない、もしくは国内で購入することができない、あっても不足しているものに限る。
  • 生産に直接使用する原料、素材、部品、機械、車両機械のうち、ラオス国内で供給もしくは生産できないものはマスターリストの対象となる。一方で、生産に直接使用されない道具や機械交換部品の輸入は関税法や付加価値税法に従うとされる。中央省庁で登記されている企業は計画投資省投資奨励局投資ワンストップサービス室へ申請し承認を受ける。都・県レベルで登記された企業は、都・県計画投資局投資ワンストップサービス室へ申請する。ただし輸出のための生産工場で原産地証明書の発給を必要とする企業は、商工省もしくは都・県商工局が年次必要計画を承認した後に、財務省関税局へ申請する。電力・鉱山事業で政府とコンセッション契約を有する場合には、エネルギー鉱山省へ申請する。
  • 無償援助、ソフトローン事業におけるマスターリストは財務省に対して申請する。
  • 経済特区のデベロッパーや入居企業については経済特区奨励管理室へ申請する。

土地利用に関する優遇

2024改正投資奨励法第9条に規定されるセクターに投資を行う投資家は、前述の地区分類に従い国土のリースもしくはコンセッション費が次のとおり免除される(同第15条)。

  • 第1地区:10年間の免除。第9条1・2・3・4に該当する事業は5年間の免税期間が追加。
  • 第2地区:5年間の免除。第9条1・2・3・4に該当する事業は3年間の免税期間が追加。

また、コンセッション事業への投資家は次の優遇を受ける(同第16条)。

  1. 国土のリースおよびコンセッションの権利を有する土地使用権を、投資事業遂行のために、コンセッション契約の残期限内で譲渡を申請することが出来る。ただし、政府の承認を受けた開発計画等の50%以上の事業が完了し、契約で定める税務上の義務を果たし、関係当局からの承認を受けていることが必要。
  2. コンセッション地区以外でも、国土のリースもしくはコンセッションにより投資期間中に事務所や住居用の土地利用権を得る権利を有する。

経済特区での事業における優遇

各経済特区では、国家経済特区委員会と当該経済特区のデベロッパーの間で独自に設定した優遇措置が供与されてきた。現在日系企業が入居している主要な経済特区(首都ビエンチャンのビタ・パーク経済特区、サワナケート県のサワン・セノ経済特区、チャンパサック県のパクセー・ジャパン中小企業専用経済特区)では、次のとおり、ほぼ同様の優遇措置が提供されている。

  1. 法人税免除:利益が発生する年度から2~10年間(業種、投資額、総生産量における輸出割合に準ずる)
  2. 法人税免除期間終了後の法人税率:8%または10%
  3. 所得税:ビタ・パーク7%、サワン・セノ5%、パクセー・ジャパン5%
  4. 法人税免除後の配当税率:5%
  5. 付加価値税:0~5%
  6. 輸入原材料、事業用設備・機械等の輸入関税率・輸入税率:0%
  • サワン・セノ経済特区の管理規則および奨励政策に関する首相令第177号
  • パクセー・ジャパン経済特区の開発業者サワンTVSコンサルタント社へのヒアリング

投資奨励法の発布前に許可を受けている場合は、経済特区に関する法律や政府との契約による利益・便益は、契約終了まで変更されないとされている。計画投資省経済特区管理庁によると同規定に基づき、ビタ・パーク経済特区、サワナケート県のサワン・セノ経済特区、パクセー・ジャパン中小企業専用経済特区等のデベロッパーおよび新規を含む入居企業は、これまで同様の優遇制度が維持されるとしている(2018年7月19日チャムパ長官への聞き取りによる)。
詳細はジェトロ「ラオスの経済特区(SEZ)」ページを参照。

宿泊業や飲食業における優遇

宿泊業の格付け制度を取得することで5つ星ホテルは5年間、4つ星ホテルは4年間の法人税免除が与えられる。また格付け取得後1年間の関税、付加価値税免除が付与される(宿泊施設に関する情報文化観光大臣合意第985号(2021年12月14日付))。同様に飲食業においても格付けを取得することで法人税および付加価値税免除が付与される(飲食業に関する情報文化観光大臣合意第986号(2021年12月14日付))。
なお、詳細はジェトロ調査レポート「ラオス投資ガイドブック2023」の第4章 ラオスの宿泊業(ホテルやゲストハウス、不動産賃貸業)について、および第5章 ラオスにおける飲食業に関する事業についてを参照。

その他

特になし。