ラオス、工業団地に関する政府令を発布

(ラオス)

ビエンチャン発

2025年07月31日

ラオス政府は、6月6日付で「工業団地に関する政府令(第313号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発布し、7月23日に発効した。本政府令は、ラオスで初めての工業団地の開発と入居に関するルールを定めたもの。ここでは、工業団地を「基礎インフラ(注1)が整備され、製造業の受け入れが可能なゾーン」と定義している(第2条)。

工業団地は、デベロッパーによる投資によって開発され、経済特区の内外に設置することが可能であると定められた(第7条)。外資100%のデベロッパーによる開発も認められており(第9条)、総面積30ヘクタール以上であること、道路や電力などのインフラ整備に加え、職業訓練センターの設置が義務付けられている点が特徴だ(第8条)。

入居企業は、企業登録、建築許可、環境証明、操業許可などの申請を、すべて工業団地管理事務所を通じて行う(第21〜24条)。土地のリース契約はデベロッパーと入居企業の間で締結され、工業団地管理事務所が承認する(第31条)。

デベロッパーには、投資奨励法および経済特区関連法令に基づき、経済特区のデベロッパーと同様の優遇措置のほか、次の特別優遇措置が供与される(第28条)。また、デベロッパー自身が電力や水道を生産し、工業団地内に供給することも可能な点も注目される(第32条)。

1.デベロッパーへの特別優遇措置

  • 工業団地内およびアクセス部分のインフラ建設に必要な資材・機材の輸入、および国内供給に対する輸入関税・付加価値税(VAT)の免除
  • 電力・水道・通信設備、生産用建物、事務所、倉庫、洪水・災害防止、排水・廃棄物処理などへの投資に対する輸入関税・VATの免除
  • インフラ建設に使用する機械・車両の輸入関税・VATの免除
  • 道路、電力、水道、排水・廃棄物処理、公共施設の建設に対するVATの免除
  • 個人所得税率の減税(工業団地ごとに異なる)

さらに、入居企業には、投資奨励法および経済特区関連法令に基づく優遇措置(2025年2月3日付地域・分析レポート参照)に加え、次の分野に該当する事業などに対して特別優遇が供与される(第34条)。

2.特別優遇が供与される事業分野

  • 食品・農産物加工
  • 有機・無機肥料製造、畜産飼料生産
  • 農業機械、機械、自動車、部品の製造
  • エレクトロニクス、通信技術、デジタル、人工知能(AI)、電気製品、太陽光パネルなどの代替エネルギー製品や関連部品の製造
  • 鉱物加工による完成品製造
  • 化学工業、製薬、医療機器の製造

3.該当する入居企業への特別優遇措置

  • 国内販売を目的とした輸入代替品の原料・資材・機材・部品に対する輸入関税の免除
  • 輸出加工用の原料・資材・機材・部品に対する輸入関税の一時免除
  • 国家主席令で指定される鉱物など特定品目の輸出関税の減税
  • 国内生産がない原料・鉱物・資材・機材・部品の輸入時におけるVATの減税(生産・加工・混合・組み立てが目的)
  • 工業団地内のバリューチェーンにおける供給時のVATの減税
  • 随伴鉱物や未回収鉱物(注2)を使用する際の天然資源税の減税
  • 法人税・個人所得税に関する特別優遇(各工業団地に対する政府令で規定)

なお、本政府令に基づく工業団地として、ラオス北部のアマタ工業団地(2025年3月25日記事参照)および、中部のカリウム工業団地の建設準備が進められている。

(注1)道路、電力、水道、通信、排水・廃棄物処理、洪水予防、倉庫、防災システム、建物、住宅など。

(注2)随伴鉱物とは、特定の鉱物に付随して生成される鉱物資源で、未回収鉱物とは、採掘や精製時に分離できずに残った鉱物資源のこと。

(山田健一郎)

(ラオス)

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