外資に関する規制

最終更新日:2023年05月30日

最近の制度変更 

規制業種・禁止業種

内資・外資を問わず6分野での事業の実施が禁止されている他、14分野36業種については、ラオス国籍者のみに保全される業種として外資参入が認められていない。またネガティブリストに定められる14分野44業種については、企業登録前に関係機関による承認が必要である。ただし各省で独自に規定される外資規制も散見されることから注意が必要。

禁止事業

禁止事業分野リストに関する通達第1592号(2013年8月26日付)では、各関連法に基づき、次の6分野に関する事業の実施を禁止している。

  1. 危険化学物質を扱う事業(工業物質・化学物質の管理に関する商工省決定第1041号)
  2. 放射性鉱物を扱う事業(鉱物輸出に関する首相令第90号、鉱物法第2号)
  3. 産業用爆発物を除く武器・戦車を扱う事業(刑法第12号、爆発物の使用と管理に関する首相合意第39号)
  4. アヘン、ケシ、大麻、コカインおよびそれらの派生物を扱う事業(刑法第12号、麻薬法第10号、麻薬法施行令第76号)
  5. 紙幣、造幣インク、造幣機器、通貨偽造に使用される機器を扱う事業(ラオス銀行法第5号)
  6. その他、関連法に基づき禁止される事業

ラオス国籍者のみに保全される事業

ラオス国籍者へ保全される事業リストに関する商工大臣令第1328号(2015年7月13日付)PDFファイル(167KB)によると、ラオスの伝統事業や大規模資本・先進技術を要しない事業で、かつラオス人の雇用創出や生計向上に貢献する以下の14分野36業種については、ラオス国籍者のみに保全される事業と定められており、外資企業の参入は認められていない。

  1. 生薬の採集
  2. 加工:機織り、刺繍、小規模な木工・彫刻・カゴ編み、陶器の製造、等
  3. 15MW以下の水力発電事業
  4. 建物内の電気工事、水道管・エアコンの設置
  5. 40億キープ以下の自動車・バイクの修理
  6. 陸上乗客輸送
  7. 3つ星未満のゲストハウス、リゾート、ホテル
  8. 新聞・雑誌の印刷、歌詞の印刷・録音、コミュニティラジオ局・コミュニティテレビ局の設立、等
  9. 非貯蓄型マイクロクレジット、融資組合、等
  10. 歴史・自然・文化に関する調査、設計、建設、ラオス語翻訳、等
  11. 職業斡旋、建物のクリーニング、等
  12. 技術職業訓練教育(5カ年計画で奨励される項目は除く)、外国人向けラオス語教育
  13. 民間の診療所(クリニック)
  14. 靴・皮の修理、洗濯・ドライクリーニング、散髪・美容、葬儀、等

規制事業

ラオスのネガティブリスト事業リストとコンセッション事業リストの承認に関する首相令第03号(2019年1月10日付)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(815KB)(仮訳はラオス日本人商工会議所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますウェブサイト「ドキュメント」を参照)によれば、次の14分野44業種ネガティブリストに掲げられている。これらの業種については、外資の参入は担当省庁による審査を経た上で認められる。

  1. 農林業(一年生植物、多年生植物、畜産支援事業、植林など5業種)
  2. 鉱物採掘と加工業(概査、探査、鉱業コンサルタントなど2業種)
  3. 加工業(石油精製、レアアース精製、医薬品生産など4業種)
  4. 水道、排水、廃棄物処理業(危険な廃棄物収集、処理、リサイクルなど3業種)
  5. 所品輸送と倉庫業(航空輸送、クーリエなど4業種)
  6. ホテル・レストラン業(4つ星以上のホテル・リゾート1業種)
  7. 情報通信業(出版所、メディアの設立2業種)
  8. 金融、保険業(商業銀行、株式市場サービス、保険、宝くじなど4業種)
  9. 職業訓練、科学技術系事業(法律、会計、監査業務など4業種)
  10. 支援サービス、管理(職業斡旋サービス業1業種)
  11. 治安維持と捜査(警備会社1業種)
  12. 教育関連事業(就学前、初等・高等教育、職業訓練など6業種)
  13. 保健衛生、社会セクター事業(民間病院、医科歯科治療2業種)
  14. 芸術、娯楽(エンターテイメント、賭博、遊園地、総合観光5業種)

以上に該当する事業の企業登録については、計画投資省もしくは都・県の計画投資局内に設置される投資ワンストップサービス室(OSS)に投資申請を行う。同室が窓口となり、各関係機関・投資奨励管理委員会の審査を経て、投資家は申請から25営業日以内に投資許可と企業登録証を受け取る。投資承認の流れは、次の1.~3.の通り(改正投資奨励法第36条・第37条)

  1. 投資ワンストップサービス室は、投資家から提出された申請書類一式を2営業日以内に関係機関や地方に送付し、8営業日以内に文書で回答を受領する。回答が期限内に得られない場合は、承認されたものとみなす。
  2. 関係機関や地方から承認を受けた後、投資ワンストップサービス室は投資奨励管理委員会に書類一式を提出し、10営業日以内に審査を受ける。
  3. 審査後、5営業日以内に、投資ワンストップサービス室は投資許可証と企業登録証を投資家に発行する。

なお、投資が承認されない場合は、投資ワンストップサービス室は投資家に対し、3営業日以内に文書で通達しなければならない。

条件付きで外国企業が参入できる事業

外国投資家向け規制事業分野リストに関する通達第1327号(2015年7月13日付)で定められる11業種については、総資本金や出資条件等により、外国企業の出資比率には上限が定められている。また2015年9月22日付の、ショッピングセンター、百貨店に関する商工大臣合意第1950号により、大型商業施設建設における外資参入の条件が明確化された。その他の業種についても規制緩和の議論が進められているが、特にサービス業では各省レベルで規定される条件等もあるため、参入を検討する際には担当省庁への確認が必要。

表1 条件付きで外資参入可能な事業およびその条件
業種 外資出資比率上限および出資条件
卸売・小売 資本金200億キープ以上:100%出資が可能
同100億キープ以上~200億キープ未満:70%まで
同40億キープ以上~100億キープ未満:50%まで
同40億キープ未満:不可
運輸 タクシー業、国内陸上貨物運送業は100%出資が可能
その他は49%までの出資が可能
建設 道路・鉄道の建設は100%出資が可能(資本金2,400億キープ以上の場合。2,400億キープ未満は49%まで)
建物の建設、内装・外装、整地・埋め立ては49%まで
金融・保険 銀行業は100%出資が可能
保険業は49%まで
加工 コーヒー加工は20%まで。治療薬製造のための薬品製造は49%
ホテル 3つ星以上のホテルで60%まで
修理 資本金15億キープ以上で100%出資が可能
エンジニアリング 資本金40億キープ以上で49%まで
教育

自動車教習所は資本金80億キープ以上で49%まで
重機教習所は資本金150億キープ以上で100%出資が可能

健康・社会 医療事業は資本金10億キープ以上で49%まで
大型商業施設建設(ショッピングセンター、百貨店) 資本金1,600億キープ以上:100%出資が可能
同800億キープ以上~1,600億キープ未満:70%まで
同80億キープ以上~800億キープ未満:51%まで
同80億キープ未満:不可
インターネットショッピングモールサービス運営 300億キープ以上の登録資本金
外資比率90%まで

昨今、ラオスで外国企業の進出が増加しているサービス業のうち、外食業・小売業・学習塾事業・フィットネス/スポーツ教室事業・理美容業・マッサージ業については、ジェトロ調査レポート「ラオス投資ガイドブック2017」を参照。

土地関連サービスへの外資規制

土地に関連するサービス(土地の売買、仲介、測量、地価評価など)では外資企業は測量および地価評価サービスのみが許可されている(土地ビジネスに関する天然資源環境省大臣合意第4392号(2022年8月25日)。

観光業への外資規制

2022年9月30日付「観光業に関する情報文化観光大臣の合意第607号」にて、観光業では[1]外国人のラオス国内旅行を取り扱う事業(インバウンド事業)、[2]特定の地域において、国内外の旅行者へサービスを提供する事業には外国企業は参入することができない。詳細はジェトロ調査レポート「ラオス投資ガイドブック2023」を参照。

出資比率

ラオスでの外国企業による投資には、100%出資、現地企業との合弁、法人設立を伴わない契約に基づく現地企業との事業協力、という3つの形態がある。現地企業との合弁の場合、外国企業の最低出資比率は資本金総額の10%以上(改正投資奨励法第26条~第31条)となる。

改正投資奨励法では、新たな合弁投資形態として、国営企業と民間企業の合弁投資、政府と民間による合弁投資という2つの形態が追加された(同法第30条・第31条)。

外国企業の土地所有の可否

ラオス国内の土地はすべて国家が所有し、個人や法人が保有できるのは土地利用権あるいはリース・コンセッション締結権である。外国人および外国企業は永久的な土地利用権を持つことはできず、ラオス政府やラオス国民からのリースあるいはコンセッション供与によって、土地の使用権のみを保有することができる。

土地の権利

ラオスの土地はすべて国家が所有し(2015年改正憲法第17条、2019年改正土地法第3条)、個人や法人が保有できるのは、土地利用権あるいはリース・コンセッション締結権である。土地利用権はラオス企業およびラオス国民のみが保有でき、土地利用権証明書によって認められる永久的な土地利用の権利である。土地利用権は次の5つの権利から構成される。

  1. 土地の保護権:特定の利用目的のために土地を保護する権利
  2. 土地の使用権:政府の土地区画計画に則って、特定の目的のために土地を使用する権利
  3. 土地の用益権:土地のリースや証券化、担保としての利用などにより収益を得る権利
  4. 土地利用権の譲渡権:販売、譲渡、交換により土地利用権を他の人に譲渡する権利
  5. 土地利用権の相続権:土地使用権保有者の死亡により、夫、妻、子供、孫、両親、近縁者に土地使用権を相続する権利

土地利用権に関するすべての取引は、該当する土地の所在地を管轄する天然資源環境省土地管理局において、登記簿に記録されることとなっている。一方、土地利用権証明書が発行されていないケースや、1つの区画に複数の土地利用権証明書が発行されているケースが散見され、土地管理当局の管理能力不足、連携の欠如、恣意的な運用などが問題となっている。外国企業が正式な手続きを踏んでコンセッションあるいはリース契約を締結した土地に権利保有者を名乗るラオス人が現れ、権利を主張して事業の妨害を図るといった事例も見られるので、土地に関する契約を行う上では十分な注意が必要である。

外国企業による土地の利用

ラオスで外国人が生活する場合や外国企業がビジネスを行う場合には、[1]ラオス国籍者から借地する、[2]国有地のリースまたはコンセッションを受ける、または[3]期限付きで国有地を購入する方法がある。ラオス国籍者からの土地の借地は、借り手との合意で実施できる。契約期間は、30年間が上限。その期間の延長には、地方政府の許可が必要。また、借地契約書は村役場や公証人への登録に加えて、郡の天然資源環境事務所における土地利用権活動登録が必要(改正土地法第117条)。国有地のリースやコンセッションについても、契約期間は50年間。契約の延長には、政府または国会・地方議会の合意が必要(同第120条)。リースやコンセッションには入札を行うこと(同第119条)とされている。詳細な手続きは今後、規定されるとみられることから注意が必要。

2019年改正土地法では、新都市やコンドミニアムなどの分譲開発のために、政府は最大50年間の制限付きで国有地の土地利用権を、ラオス国籍者だけでなく外国人・外資企業に販売することができるとした(同第123条)。さらに、関係機関の合意があれば、その土地や建物を他人や法人に売却、貸し出し、相続、担保化、証券化することも可能とした(同第124条)。

コンセッション事業に参加する外国投資家は、土地利用において次の2つの面で優遇される(改正投資奨励法第16条)。

  1. コンセッション権の他人への譲渡:政府承認済みの開発マスタープラン・F/S・事業計画の45%以上の事業が完了し、かつ税務上の義務を果たし、関係当局からの合意を得た場合。
  2. コンセッション地区以外の政府用地の使用権:事務所や住居の建設用に限られ、都庁・県庁の合意が必要。投資期間内に限定される。

資本金に関する規制

一般事業の最低登録資本金は、企業法および関係省庁が定める法律に従って決まる。コンセッション事業の場合は総資本金の30%以上、経済特区における事業については各経済特区により異なる。

一般事業における最低登録資本金

旧投資奨励法では、関係法などで別途定められている場合を除き、外国投資家による一般事業の最低登録資本金は10億キープであったが(第17条)、改正投資奨励法では当該規定は削除され、一般事業の企業の登録資本金は企業法や関係法に従う、とされている(第51条)。
投資計画省の見解では、企業法や関係法で最低登録資本金額の定めがない業種においては、事業運営に必要な資産の総額にある程度の余剰を加えた金額が妥当とされる。ただし他省庁で異なる見解を提示されるケースが散見されており、そのような場合には、通常は商工省へ投資申請をする非ネガティブリスト事業であっても、投資計画省の投資ワンストップサービス室にまず投資申請をし、同室による関係省庁間協議において登録資本金額を検討することが可能である(2017年10月2日同省法務局へのヒアリングより)。
一般事業への投資を行う外国人投資家は、登録資本金の少なくとも30%を投資許可取得後90日以内に輸入する必要がある。資本は関係法に基づき現金または現物が可能。残金については、企業法もしくは関係法に従う。資本の輸入はラオス中央銀行による証明が必要である(改正投資奨励法第53条)。

コンセッション事業における最低登録資本金

コンセッション事業については、総資本の30%以上の登録資本金を必要とする(改正投資奨励法第52条)。投資総額に応じ、登録資本金の次の比率の額を投資許可取得後90日以内に輸入し、残額は同2年以内に輸入する必要がある(同法第54条)。

  • 投資総額1,000万ドル未満:3%
  • 投資総額1,000万ドル以上~5億ドル未満:2%
  • 投資総額5億ドル以上~10億ドル未満:1.5%
  • 投資総額10億ドル以上:1%

経済特区での事業における最低登録資本金

経済特区における投資については、各経済特区が定める規則が適用される。経済特区の規則がない場合には、前述の一般事業・コンセッション事業における登録資本金に関する規定が適用される。現在日系企業が入居する3つの経済特区における最低登録資本金は、次のとおり。

ビタ・パーク経済特区(首都ビエンチャン)
5万ドル(開発業者Nam Wei Development Co., Ltd.へのヒアリングより)
サワン・セノ経済特区(サワナケート県)、パクセー・ジャパン中小企業専用経済特区
  • 製造業、職業学校、倉庫業・運輸会社、建設業、ホテル業、工業用地・製造業の開発と建設、住宅、観光地開発、一般教育機関、病院、スーパーマーケット、内外子会社・支店(駐在員事務所を除く):10万ドル
  • 配送業、パッケージツアーの旅行業、卸・小売業などの一般サービス(前記以外のもの):5万ドル
    (サワン・セノ経済特区の管理規則および奨励政策に関する首相令第177号第15条(2003年11月13日付)、パクセー・ジャパン経済特区の開発業者サワンTVSへのヒアリングより)。

その他規制

特になし。