税制

最終更新日:2025年10月01日

法人税

インドの法人税は1961年所得税法に基づき、内国法人および外国法人に課される。内国法人は全世界所得、外国法人はインド国内所得が課税対象である。2025年度(2025年4月1日~2026年3月31日)に適用される法人税率は、法人の種類や課税対象所得額、税制(115BAA・115BABなど)により異なる。最低代替税(MAT)制度により、簿記上利益に対する最低税率15%が適用される場合がある。

法人税率の合理化

新たな法人税制度

国内製造会社は、一定条件下で軽減税率を選択できる(所得税法第115BAB条および第115BAA条)。
「第115BAB条」:2019年10月1日以降に設立/登記され、2023年4月1日までに製造・生産を開始した新設製造会社に法人税率15%(実効税率17.16%)を適用。発電事業の新設会社も対象。

「第115BAA条」:既存企業に法人税率22%(実効税率25.17%)を適用。
軽減税率を選択した場合、従来の税額控除や最低代替税(Minimum Alternate Tax:MAT)は利用できないが、第80M条の配当控除は請求可能である。2025年財政法では、これらの税率に変更はない。
従来の法人制度を選ぶ場合は、従来の法人税率・控除を引き続き適用でき、控除満了後に新税率への移行も可能である。

実効税率

〔2025年インド財政法(Finance Act)(財政法第一附則パート1 パラグラフE)、1961年所得税法〕

表1. 内国法人(基準年度※1の総収入金額や総受領高が40億ルピー超)
課税対象所得 実効税率
1,000万ルピー以下 31.20%
(法人税率30%+健康教育目的税4%)
1,000万ルピー超~1億ルピー以下 33.38%
※2(法人税率30%+課徴金7%+健康教育目的税4%)
1億ルピー超 34.94%
(法人税率30%+課徴金12%+健康教育目的税4%)

※1 基準年度とは、財政法により指定される年度。例えば、2025年3月期の基準年度は、2023年3月期と規定されている。
※2 実効税率計算方法

  1. 法人税率30%+課徴金(7%×30%=2.1%)=32.1%
  2. 健康教育目的税4%×32.1%=1.28%
  3. 実効税率32.1%+1.28%=33.38%
表2. 内国法人(基準年度の総収入金額や総受領高が40億ルピー以下)
課税対象所得 実効税率
1,000万ルピー以下 26.00%
(法人税率25%+健康教育目的税4%)
1,000万ルピー超~1億ルピー以下 27.82%
(法人税率25%+課徴金7%+健康教育目的税4%)
1億ルピー超 29.12%
(法人税率25%+課徴金12%+健康教育目的税4%)
表3. 第115BAA条に基づく新法人税制度を適用した場合の既存内国法人
課税対象所得 実効税率
課税対象所得に関わらず一律 25.17%
※3(法人税率22%+課徴金10%+健康教育目的税4%)

※3 実効税率計算方法

  1. 法人税率22%+課徴金(10%×22%=2.2%)=24.2%
  2. 健康教育目的税4%×24.2%=0.96%
  3. 実効税率24.2%+0.96%=25.17%
表4. 第115BAB条に基づく新法人税制度を適用した場合の新設国内製造業
課税対象所得 実効税率
課税対象所得に関わらず一律 17.16%
※3(法人税率15%+課徴金10%+健康教育目的税4%)

※4 実効税率計算方法

  1. 法人税率15%+課徴金(10%×15%=1.5%)=16.5%
  2. 健康教育目的税4%×16.5%=0.66%
  3. 実効税率16.5%+0.66%=17.16.%
表5. 外国法人
課税対象所得 実効税率
1,000万ルピー以下 36.4%
(法人税率35%+健康教育目的税4%)
1,000万ルピー超~1億ルピー以下 37.128%
(法人税率35%+課徴金2%+健康教育目的税4%)
1億ルピー超 38.22%
※4(法人税率35%+課徴金5%+健康教育目的税4%)

※5 実効税率計算方法

  1. 法人税率35%+課徴金(5%×35%=1.75%)=36.75%
  2. 健康教育目的税4%×36.75%=1.47%
  3. 実効税率36.75%+1.47%=38.22%

2020年度における総収入金額や総受領高が40億ルピー以下の国内法人には、法人税率25%(課徴金および健康教育目的税を含まない)を適用〔2022年インド財政法、1961年所得税法第1スケジュール パートⅢ 第E段落〕。

次のすべての条件を満たす場合には、内国法人の課税対象所得(特定の税率が適用される特定の所得を除く)に25%(課徴金および健康教育目的税を含まない)の軽減税率を自由選択で適用可能〔1961年所得税法 第115BA条〕。

  1. 当該国内法人は2016年3月1日以降に設立もしくは登録した。
  2. 物品の製造・生産業務および当該物品にかかわる研究・物流のみに従事する内国法人である。
  3. 免税、追加償却(一般償却を除く)または前年度の事業損失を利用していない。
  4. 軽減税率を適用するかどうかは選択可能で、確定申告期限内に所定の方法により選択している。

その他の国内法人には、基本税率30%、または前年度の総収入金または総受領高に基づき25%が適用される〔2022年インド財政法、1961年所得税法第1スケジュール パートⅢ 第E段落〕。
2025年財政法では、税率や課徴金に関して大きな変更はない。詳細は内国企業に関する国税局ウェブサイト(Income Tax Department外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)にて確認が可能。

事前納税制度(Advance Tax

当該会計年度に1万ルピー以上の納税義務のあるすべての課税対象者(会社または法人)は、〔1961年所得税法(Income Tax Act, 1961)〕で定められた算出方法に基づき、当該年度の課税所得額を見積り、各年度4回に分割し、法人税を支払わなければならない。

事前納税の納税期限と納税額〔1961年所得税法 第211条、第208条〕

  • 6月15日:法人税額(見積り)の15%以上
  • 9月15日:法人税額(見積り)の45%以上
  • 12月15日:法人税額(見積り)の75%以上
  • 3月15日:法人税額(見積り)の全額および調整額

最低代替税(Minimum Alternate Tax:MAT)

会計上の利益の15%が法人税額(控除などを含めた税法上の算出額)を上回る場合、最低代替税(MAT)を支払う必要がある。
実効税率は、法人の種類および課税対象所得額に応じ、次のとおり決定される〔1961年所得税法 第115JB条;課徴金、健康教育目的税は2018年インド財政法 第3条、第11条、第12条〕。
ただし、MATの規定は、第115BAA条および第115BAB条に基づいて新法人税制度を選択する会社には適用されない。

1. 内国法人
課税対象所得 実効税率
1,000万ルピー以下 15.60%
(基本税率15%+健康教育目的税4%)
1,000万ルピー超~1億ルピー以下 16.69%
※1(基本税率15%+課徴金7%+健康教育目的税4%)
1億ルピー超 17.47%
(基本税率15%+課徴金12%+健康教育目的税4%)

※1 実効税率計算方法

  1. 基本税率15%+課徴金(7%×15%=1.05%)=16.05%
  2. 健康教育目的税4%×16.05%=0.64%
  3. 実効税率16.05%+0.64%=16.69%
2. 外国法人
課税対象所得 実効税率
1,000万ルピー以下 15.60%
(基本税率15%+健康教育目的税4%)
1,000万ルピー超~1億ルピー以下 15.91%
(基本税率15%+課徴金2%+健康教育目的税4%)
1億ルピー超 16.38%
※2(基本税率15%+課徴金5%+健康教育目的税4%)

※2 実効税率計算方法

  1. 基本税率15%+課徴金(5%×15%=0.75%)=15.75%
  2. 健康教育目的税4%×15.75%=0.63%
  3. 実効税率15.75%+0.63%=16.38%
3. 新法人税制度を適用した場合の既存内国法人
最低代替税(MAT)の適用なし
4. 新法人税制度を適用した場合の新設国内製造業
最低代替税(MAT)の適用なし

国際金融サービスセンター(特別経済区(SEZ)内で事業を認められた金融サービス・業務の中心地域)に所在する、転換可能な外国為替のみで所得を稼得している企業および企業以外の法人の場合には、9%の基本課税率で最低代替税(MAT)を適用〔1961年所得税法 第115JB条〕。
輸出志向型企業(EOU)やSEZ等の特区に入居する企業が取得した利益もMATスキームの対象である〔1961年所得税法 第115JB条〕。
MATは、インドにおいて会計帳簿を作成する義務のある納税者に適用されるため、1961年所得税法上、次の規定による推定課税に基づく納税を行う外国法人に対しては、MATは適用されない。

  • 船舶事業にかかわる所得(第44B条)
  • 鉱油探査事業にかかわる所得(第44BB条)
  • 航空機事業にかかわる所得第(第44BBA条)
  • ターンキー電力事業等土木建設事業にかかわる所得(第44BBB条)

支払ったMAT・AMT(Alternate Minimum Tax (企業組合、信託等の企業以外の法人に適用される最低代替税))と計算上の法人税との差額はタックス・クレジット(Tax Credit)として取得できる。
当該タックス・クレジットは15年間繰り越し可能であり、法人税額がMAT・AMT額を上回る年度において、その上回る額の範囲で使用可能〔1961年所得税法 第115JAA条〕。
インド会計基準(Ind AS)準拠企業における、1961 年所得税法第 115JB 項に基づくMAT賦課のための帳簿利益の計算に関する明確化については、F.No.133/23/2015-TPL外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(35.9KB)を参照。

所得税申告義務

インド課税所得がある内国法人または外国法人は、インドにおいて所得税申告を行う義務がある。申告は所得税局ポータル上でオンライン提出する。提出者はPANおよび電子署名(Digital Signature Certificate)を保有している必要がある。
ただし、所得税法第115A(5)条の規定により、非居住法人の所得が配当、特定の受取利息、ロイヤリティー、技術役務料金のみで構成され、かつ源泉徴収税が適切に控除されている場合、所得税申告を実施する必要はない。

第115A条に基づく代表的税率
所得区分 租税条約に基づく税率 所得税法に基づく税率 源泉税率 所得税申告
技術役務料金 10% 10.92%(*) 10%
15% 10.92%(*) 10.92% 不要
外国企業から受け取った配当 10% 21.84%(*) 10%

所得税法第115A条は、2023年の財務法により改正された。

* 第115A条の税金(10%/20%)は、5%のサーチャージと4%の目的税によって増加されている。

税務申告(Filling of Return of Income

各種税務申告書の提出期限は以下のとおり(所得税法第139条)。

  1. 会社、会計監査が義務付けられている個人(個人事業主等)、または会計監査が義務付けられている組織体のパートナーの場合:当該会計年度(翌年度)の10月31日
  2. その他の納税者の場合:当該会計年度の7月31日

参照(国税庁):Income-tax Act, 1961外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

更新申告(Updated Return

更新申告(Updated Return)は次の既定条件を満たす場合にのみ、申告済みの確定申告を修正することが可能となる制度で、2022年4月1日より実施されている。

  1. これまで申告をしていなかった場合
  2. 所得が正しく申告されていなかった場合
  3. 確定申告の開示情報を修正する場合
  4. 所得額の修正をする場合
  5. 繰越欠損金を減額する場合
  6. 減価償却の繰越を減額する場合

一方で、以下の場合は当制度を利用することはできない。

  • Nilでの申告、もしくは損失申告の場合
  • 税額の合計額を減少させる修正である場合
  • 還付金額が発生、もしくは増額する場合
  • 税務調査や押収、起訴手続きが開始されている場合
    [1961年所得税法 第139条8A項]

当制度を利用する際には、提出時期に応じた罰金や課徴金が科せられる。

  • 当該年度から12カ月以内の利用:付すべき税額・利息の25%の追徴課税
  • 当該年度から12カ月超、24カ月以内の利用:50%
  • 当該年度から24カ月超、36カ月以内の利用:60%
  • 当該年度から36カ月超、48カ月以内の利用:70%
    [1961年所得税法 第140B条(2025年財政法改定反映)]

移転価格

移転価格報告書(Form 3CEB)の提出期限に関する変更

関連当事者間の国際取引(取引額問わず)および国内取引(2億ルピー超)を行うすべての納税者は、Form 3CEBを提出する必要がある。
Form 3CEBは、インドの会社とその関連当事者間での国際または国内取引が独立企業原則に従っているか言及する書類である。

表6. 各種提出期限一覧
適用の有無 移転価格報告書 所得税申告書
移転価格報告書が適用される場合 10月31日 11月30日
移転価格報告書が適用なしの場合 提出の必要なし 10月31日

発行された株価が適正価格を超える場合の課税

インドの一般営利法人からインド非居住者への株式発行において、その発行価格が適正価格を上回る場合は課税所得とみなされ、年度内に所得として申告していない場合は所得の申告漏れとして扱われる[1961年所得税法 第56条2項(ⅶb)]。ただし、同規定は廃止されることが決定され、2025~26会計年度以降は適用されない。

二国間租税条約

日印間で租税条約が締結されている。同条約を適用した場合の源泉課税率は、利子所得、配当所得、ロイヤルティーおよび技術役務提供報酬はすべて10%。

例えば、インド企業が日本企業から何らかの技術的役務の提供を受けた場合には、その支払いに際し、インド企業が10%の源泉税をインドで納めるが、収入を得た日本企業は日本で法人税を納める際に、インドでの納税証明を提出することにより、控除限度額の範囲で控除される〔日印租税条約 第23条〕。
なお、特定の政府系金融機関等が受取人の場合は源泉徴収されない(同条約第11条)。

25万ルピー以上の金融取引を行ったインドの居住者である法人(個人を除く)はPAN(Permanent Accounting Number)を取得する必要がある。取締役、パートナーなど当該法人の代表として行動する権限を有するいかなる者も、PANを取得する必要がある〔1961年所得税法 第139A 条、2018年財政法〕。
なお、受取人が非居住者であってもPANの取得が義務付けられる(受取人がPANを保有しているかどうかにより、源泉税の適用税率に影響がある)。

PANの取得方法については、所定フォーム(49AA)に登記書類などを添付し、インド国内のPAN申請センターに提出する必要があり、通常2~3週間で取得できる〔1961年所得税法 第139A条〕。 フォーム(Form No.10FおよびNo.49AA)、詳細は国税庁(Income Tax Department)のウェブサイトを参照。

国税庁(Income Tax Department外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

その他税制

個人所得税、源泉徴収税、間接税(物品・サービス税(GST)、関税等)、平衡税等がある。

個人課税・直接税

個人所得税

納税義務者

インドにおける個人所得税納税義務の有無と課税所得の範囲は、居住性の判定に伴って、次のとおり区別される〔1961年所得税法 第5条〕。

  1. 通常の居住者(ordinarily resident):インド国外で発生したものを含む、すべての所得
  2. 非通常の居住者(not ordinarily resident):
    1. インド国内で発生または受領した所得
    2. インド国内でコントロールされた事業に関して、インド国外で発生・受領した所得
  3. 非居住者(non-resident):インド国内で発生または受領した所得
    ただし、次の4条件を満たす場合、インド国内で発生・受領した所得であっても、インドの個人所得税を免税にできる〔日印租税条約〕。
    1. 日印租税条約における日本の居住者。
    2. インド滞在期間が課税年度で、183日を超えない。
    3. 報酬がインド国外の居住者の雇用者から支給されている。
    4. 報酬がインド国内の恒久的施設によって負担されているものでない。

※居住者/非居住者の区分〔1961年所得税法 第6条〕
次の1. 2.のいずれかに該当する場合、居住者(resident)に区分され、それ以外は非居住者。

  1. 当該会計年度に182日以上インドに滞在した場合
  2. 会計年度中に60日以上滞在し、かつ当該会計年度前の過去4年間(会計年度)で365日以上滞在している場合

※通常の居住者/非通常の居住者の区分
さらに、居住者は、次の3.4.のいずれにも該当しない場合、通常の居住者に区分される。

  1. 会計年度前の10年間のうち、過去9年間(会計年度)は非居住者であった場合
  2. 会計年度前の過去7年間(会計年度)の滞在日数が729日以下の場合
所得税率
旧個人所得税制度
  1. 超過累進課税方式

    個人所得税の税率は、超過累進課税方式により次のとおり。

    所得額(ルピー)と税率(2020年度より適用される税率)

    1. 250,000ルピー以下:0%
    2. 250,001~500,000ルピー:5%
    3. 500,001~1,000,000ルピー:20%
    4. 1,000,001ルピー以上:30%

    さらに、高額所得者に対しては、次の追加の課徴金が所得税全額に課せられる。

    • 5,000,001~1,000万ルピー:追加課徴金10%
    • 10,000,001~2,000万ルピー:追加課徴金15%
    • 20,000,001~5,000万ルピー:追加課徴金25%
    • 5,000万ルピー超:追加課徴金37%

    最終的に、所得税+課徴金に、健康教育目的税(4%)が付加される。

    各所得控除後の課税所得が50万ルピー以下である通常の居住者および非通常の居住者につき、所得税課税は行われるが、同時に割戻控除1万2,500ルピーが適用となる。その結果、各所得控除後の課税所得が50万ルピー以下である場合には、納税者に納税義務が発生しない。

    例:年収1,100万ルピーの納税者の場合、個人所得税の年間支払額は次のとおり。

    1. 課税収入25万ルピー:税率0%:税額0ルピー
    2. 同25万ルピー:同5%:同1万2,500ルピー
    3. 同50万ルピー:同20%:同10万ルピー
    4. 同1,000万ルピー:同30%:同300万ルピー
    5. (税額小計)311万2,500ルピー+(課徴金15%)46万6,875ルピー+(健康教育目的税4%)14万3,175ルピー
    6. 課税総額:372万2,550ルピー
  2. 各種控除
    1. 60歳以上のシニア居住者(前年年収上限30万ルピー)、80歳以上の高齢居住者(同50万ルピー)は免税。
    2. 2019年度から適用され、給与所得から5万ルピーまで基礎控除可能。
    3. 所得階層に関係なく、総所得から最大15万ルピーの特定の貯蓄分は控除可能〔1961年所得税法 第80C条〕。
    4. 自己(配偶者と扶養家族(子ども)を含む)、またはシニア居住者ではない両親の健康診断および医療保険料にかかる費用に対し、それぞれ最大2万5,000ルピーの控除可能〔1961年所得税法 第80D条〕。
      シニア居住者の健康診断および医療保険料にかかる費用に対し、当該控除が最大5万ルピー。
      なお、シニア居住者への医療費も控除対象となる〔2018年インド財政法〕。
    5. 普通預金口座に関連するシニア居住者以外の金利収入については、1万ルピーまで控除可能〔1961年所得税法 第80TTA条〕。
    6. 国民年金制度(National Pension Scheme)に対する拠出については、5万ルピーまで控除可能〔1961年所得税法 第80CCD条〕。
    7. シニア居住者の銀行、協同組織金融機関および郵便局からの金利利息収入については、最大5万ルピーまで控除可能〔1961年所得税法 第80TTB条〕。
新個人所得税制度 選択適用〔2020年インド財政法〕

2020年度より、個人の所得にかかる税率引下げ制度が導入されている。個人は、1961年所得税法第115BAC条に基づき、旧制度もしくは新個人所得税制度、どちらか一方を選択できる。ただし、2024~2025会計年度については、新税制が既定の税制となる。なお、事業所得(Professional Income)がない場合は、申告書を作成する際にどちらか一方を選択することが毎年可能となる。しかし、事業所得がある場合は、新個人所得税制度を選択した後は毎年の選択が不可能となり、1回のみ旧個人所得税制度に切替え可能となる。旧個人所得税制度を選択した場合、新個人所得税制度への切替えは事業所得がある限り不可能とされている。

  1. 超過累進課税方式
    新個人所得税制度の税率も超過累進課税方式となる。税率は次のとおり。[1961年所得税法第115BAC条]
2023~2024会計年度
所得額(ルピー) 税率
250,000以下 0%
250,001~500,000 5%
500,001~750,000 10%
750,001~1,000,000 15%
1,000,001~1,250,000 20%
1,250,001~1,500,000 25%
1,500,001以上 30%
2024~2025会計年度
所得額(ルピー) 税率
A. 300,000以下 0%
B. 300,001~700,000 5%
C. 700,001~1,000,000 10%
D. 1,000,001~1,200,000 15%
E. 1,200,001~1,500,000 20%
F. 1,500,001以上 30%
2025~2026会計年度
所得額(ルピー) 税率
400,000以下 0%
400,001~800,000 5%
800,001~1,200,000 10%
1,200,001~1,600,000 15%
1,600,001~2,000,000 20%
2,000,001~2,400,000 25%
2,400,000超 30%
高所得者追徴課税率

所得税額に対して以下の税率で課される。
所得500万ルピー以下:0%
500万ルピー超~1,000万ルピー以下:10%
1,000万ルピー超~2,000万ルピー以下:15%
2,000万ルピー超~5,000万ルピー:25%
5,000万ルピー超:37%
[2025年財政法第1スケジュール パートI]

※健康教育目的税は旧個人所得税制度と同税率が引き続き課税される。割戻控除1万2,500ルピーも引き続き適用される。

例:2024~2025会計年度(新税制下)において年収1,100万ルピーの納税者の場合、個人所得税の年間支払額は次のとおり。

  • 課税収入Aに対する税額(税率0%):0ルピー
  • 同Bに対する税額(同5%):2万ルピー
  • 同Cに対する税額(同10%):3万ルピー
  • 同Dに対する税額(同15%):3万ルピー
  • 同Eに対する税額(同20%):6万ルピー
  • 同F(150万ルピー超~1,100万ルピー)に対する税額(同30%):270万ルピー

税額小計:284万ルピー
(税額小計)284万ルピー+(課徴金15%)42万6,000ルピー+(健康教育目的税4%)13万6,640ルピー
課税総額:326万6,000ルピー

政府ウェブサイトが提供する所得税計算システムは以下を参照。
Income & Tax Calculator外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  1. 各種控除
    新しい個人所得税制度を選択した場合、1961年所得税法にあるほとんどの税額控除、免税等は利用ができなくなる。前記旧個人所得税制度での2.各種控除a.~g.は新個人所得税制度の下では利用不可能となる。しかし、国民年金制度(National Pension Scheme)に対する拠出については、給料(基本給+補填手当)の10%、あるいは、雇用者拠出分のいずれか低い方まで控除可能〔1961年所得税法 第80CCD(2)条〕とされる。
申告条件の変更

個人が会計年度中に次のいずれかの条件を満たす高価格取引を行った場合、総所得額が個人申告書提出の年収上限以下であっても、個人所得税申告が必要となる。

  1. 銀行や協同組合銀行に保有する1つ以上の当座預金口座の預金額が1,000万ルピーを超えている
  2. 本人または他人に対する海外旅行への支出が、合計20万ルピーを超える
  3. 10万ルピー超の電気代の支出
  4. 前年度の売上高(total sales, turnover or gross receipt)が600万ルピーを超える場合
  5. 前年度の事業総収入が100万ルピーを超える場合
  6. 前年度に控除・徴収された税額の合計が2万5,000ルピー以上の場合
  7. 前年の1つまたは複数の普通預金口座の預金総額が500万ルピー以上の場合

ブラックマネー法(The Black Money (Undisclosed Foreign Income and Assets) and Imposition of Tax Act, 2015

ブラックマネー法(以下「BMA法」)は、主にインド居住者が国外で保有する無申告の所得や資産を対象とする。適用される場合、無申告の国外所得・国外財産に対する税率30%とともに、税額の3倍の罰金や、違反内容によっては起訴の可能性もある。
しかし、国外銀行口座の合計残高が50万ルピー以下であれば、罰金は科せられない。

源泉徴収税(TDS)

配当以外の支払いに対する源泉徴収税

〔1961年所得税法〕における源泉徴収税
  1. 源泉徴収税率[Rates for tax deduction at source外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
    支払いの種類 居住者への適用税率 非居住者への適用税率 非居住者の場合の
    課徴金・健康教育目的税
    1. 社債利子を含む利子支払い(注1) 10%
    〔2025年インド財政法 Part Ⅱ of The First Schedule
    20%(グロスベース)
    〔2025年インド財政法 Part Ⅱ of The First Schedule
    (注2,3,4)

    課徴金
    課税所得1,000万ルピー以下:適用なし
    同1,000万ルピー超~1億ルピー以下:2%
    同1億ルピー超:5%

    健康教育目的税
    税額・課徴金に対して4%

    2. ロイヤルティー(注1) 10%
    〔1961年所得税法第194J条〕
    20%(グロスベース)
    (2023年財政法により10%から引き上げ)
    1.と同じ
    3. 技術サービス料(注1) 2%
    〔1961年所得税法第194J条〕
    映画用フィルムの販売、配布、または展示にかかるロイヤルティーの場合、税率2%が適用される
    20%(グロスベース)
    (2023年財政法により10%から引き上げ)
    1.と同じ
    4. プロフェッショナルサービス料 10%
    〔1961年所得税法第194J条〕
    10%(グロスベース) 1.と同じ
    5. 恒久的施設帰属所得 適用なし 40%(ネットベース)
    〔日印租税条約第11条6項、第12条5項、第7条〕
    1.と同じ

    注1:項目1、2、3の源泉徴収税率は、当該所得が恒久的施設帰属所得の場合には項目4の税率を適用。

    注2:20%の税率による源泉徴収税は、外貨建て借入れの際に適用。

    注3:インドルピー建て借入れで、項目4の要件を満たさない場合、40%の税率を適用。

    注4:2020年6月30日までに行われる次のいずれかに該当する、インド国外を源泉とする借入れに対する利子については、5%の軽減税率を適用〔1961年所得税法第194LC条、第194LB条〕。

    1. 外貨建て借入れ
    2. 外貨建て長期社債
    3. インフラ・デットファンド
    4. インドルピー建て社債(Masala Bond

    同法の第194LC条および第194LD条に基づく軽減税率の適用期間は、2020年7月1日から2023年7月1日まで延長される。
    なお、2020年4月1日以降2023年7月1日以前にIFSC承認の証券取引所に上場された長期社債/ルピー建て社債に対しインドの特定会社あるいは信託会社がインド国外から借入を行った場合の利子については、5%の代わりに4%の軽減税率が適用される。本改正は2020年4月1日から有効となっている(2020年財政法により改正)。

    ただし、インド法人や事業信託により2018年9月17日~2019年3月31日の間に非居住者(外国法人を含め)へインドルピー建社債を発行する場合においては、非居住者が受領する利子に対して注4の5%源泉徴収税は対象外となる〔2019年インド財政法、1961年インド所得税第10条4C項〕。

  2. PAN(Permanent Accounting Number)の源泉徴収者への提供が要件となる場合

    所得の受領者が居住者である場合、PANの提供は必須である。
    PANが提供されない場合には、20%の源泉徴収税の対象となる。

    所得の受領者が非居住者である場合、PAN提供は必須であるが、PANの利用が可能でない場合には、特定の情報(氏名、メール・アドレス、連絡先の電話番号、居住者証明書、本国の納税者番号)を取引時に提供する必要がある。
    ただし、源泉徴収税率・注4の長期社債に対する利子の性質を有する所得の場合には、当該特定の情報提供は不要〔1961所得税法 第206AA条、1962年所得税ルール、ルール37BC〕。

    しかし、PANの取得はインド所得税申告書提出のための必須要件であるため、取引の前にPANを取得できなかった非居住者は、その申告のため取引後に取得をする必要がある。

  3. LLPおよびパートナーシップのパートナーに対する給与等にかかる源泉徴収税率
    2025年4月1日より(2025-26年度)より、パートナーシップおよび有限責任事業体(LLP)がパートナーに支払う給与、報酬、利息、手数料、ボーナスなどの支払いは源泉徴収の対象とる。従前は従業員の給与にのみTDSが適用されていた。本規定により、パートナーシップまたはLLPは、パートナーへの年間合計支払額が20,000ルピーを超える場合、10%のTDS を差し引かなければならない。[Rates for tax deduction at source外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:194T条]
受取配当金および配当に対する源泉徴収

2020年財政法により配当分配税(DDT)制度が廃止され、2020年4月1日以降、配当所得は受取人(株主)側で課税される。したがって、配当支払法人は、支払時に源泉徴収を行う義務を負う。

  • 居住者向け配当:10%(所得税法第194条)
  • 非居住者向け配当:20%または租税条約上の軽減税率(第115A条・195条)
  • 法人間配当:二重課税防止措置が適用(第80条M項)
  • SPVからInVIT/REITなどの事業信託(第2(13 A)条)向け配当:源泉徴収免除(第10条23FC項)※2020~21課税年度から遡及適用
インド所得税法第80条M項に基づいて得られる利益単位 単位:インドルピー
事項 シナリオ1 シナリオ2
受益した受取配当金(A:会社X→会社Y) 100 100
会社Yが支払う配当金 70 130
法律第80M条に基づく控除額(B:会社Y) 70 100
会社Yが課税対象とする配当所得(A-B) 30 0
租税条約における源泉徴収税率
  1. 非居住者が租税条約を利用する条件
    PANの提供が必要。PANがない場合には、以下を提供することで租税条約上の軽減税率が適用可能〔1961年所得税法第206AA条、第90条〕。
    1. 居住者証明書
    2. フォーム 10F外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(475KB)
    3. 連絡先のメール・アドレス、電話番号
  2. 租税条約適用時の源泉徴収税率
    支払いの種類 適用税率 課徴金・健康教育目的税
    1. 利子支払い 10%
    〔日印租税条約第11条〕
    適用税率10%に含む。
    2. ロイヤルティー 10%
    〔日印租税条約第12条〕
    適用税率10%に含む。
    3. 技術サービス料 10%
    〔日印租税条約第12条〕
    適用税率10%に含む。
    4. 恒久的施設帰属所得 40%(ネットベース)
    〔日印租税条約第11条6項、第12条5項、第7条/2018年インド財政法 Part Ⅱ of The First Schedule

    前項「源泉徴収税率」を適用。

    5. 配当所得 10%
    〔日印租税条約第10条〕

    適用税率10%に含む。

    注:項目1、2、3の源泉徴収税率は、当該所得が恒久的施設帰属所得の場合には、項目4の税率を適用。

納税者は、租税条約と〔1961年所得税法〕のいずれか有利な税率を選択できる〔1961年所得税法第206AA条、第90条〕。

電子商取引における源泉徴収

電子商取引事業者(居住・非居住を問わず、自らプラットフォームを所有・運営・管理し、参加者に対する支払責任を負う者)は、インド国内の電子商取引参加者に販売・提供される取引に対して源泉徴収を行う義務がある(所得税法第194-O条、2020年10月1日から適用)。徴収は、販売額の入金時、または支払を行った時のいずれか早い時点で、0.1%の源泉徴収を行う。※2024年10月1日以降、従前の1%から0.1%に引き下げられている。
なお、PAN/Aadhaarを保有していない場合、規定の0.1%ではなく5%の税率で源泉徴収が行われる(206AA条)。
しかし当該事業者のプラットフォーム経由の売上総額が50万インドルピー以下であり、かつ、当該参加者がPANあるいはAadhaarを事業者に提示している場合、事業者は194-O条に基づく源泉徴収義務を負わないものとする。
なお、所得税法第194 O条の適用に関する通知(2023年12月28日付CBDT Circular No.20/2023外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(1.1MB))では、電子商取引事業者が関与する複数のモデルにおける適用方針やFAQが示されている。

現金引き出しに対する源泉徴収

高額現金取引抑制(※)のため、銀行口座などからの現金引き出しが年間1,000万ルピーを超えると、超過部分に2%の源泉徴収が課される〔1961年所得税法 第194N条〕。
銀行、協同組合銀行、郵便局などが、顧客が会計年度中に総額1,000万ルピー超の現金を引き出す場合1,000万ルピー超の現金に対して2%の源泉徴収を行う。
※受取人が協同組合である場合、非課税(源泉徴収不要)となる引き出しの閾値は3,000万ルピーとなる。
しかし、政府機関や銀行自身への支払いなど、特定の相手に対しては適用されない。

※現金取引抑制
現金取引を制限し各種電子決済システムでの取引促進のため、一定の高額取引や特定の事業支出において電子決済手段の導入を義務づける制度。〔所得法第269ST条、第269SU条等〕

間接税・物品関連課税

物品・サービス税(Goods and Services Tax:GST)

  1. 制度概要
    インドでは2017年にGSTが導入され、従来の複数の州税および中央税がGSTに包含されている。
    2025年9月22日付の改正により、GSTの税率は従来の4段階構造(5%・12%・18%・28%)から、主税率を5%と18%とした2段階へ簡素化された。12%および28%の区分は原則廃止され、対象品目は新たな2段階税率に再編されている。
    さらに、贅沢品・嗜好品(タバコ、炭酸飲料、高級車、ヨット、プライベート航空機など)には40%の特別課税が適用される。
    なお、一部の免税(0%)や低率(例:3%)の品目は引き続き存在する。
    また、一部の特定物品(原油、高速ディーゼル、ガソリン、天然ガス、航空タービン燃料、アルコール飲料)はGST制度対象外であり、旧法の付加価値税(VAT)・中央販売税(CST)、相殺関税(CVD)、追加関税(ADC)・特別追加関税(SAD)が、引き続き課税される。
    GSTの税率
    税率 商品カテゴリー
    5% 必需品(Essential Goods
    18% 一般商品(Standard Goods
    40% 嗜好品・贅沢品(Luxury and Sin Goods
    0% 特定商品(Specified Goods
  2. 課税構造
    GSTは、中央と州(またはUT)の双方が課税権を持つ二層構造となっており、取引の内容や性質に応じて、税金の種類が異なる。
    1. 同一州内での取引:州物品・サービス税(State Goods and Service Tax:SGST)+中央物品・サービス税(Central Goods and Services Tax:CGST)/連邦直轄領物品サービス税(Union Territory Goods and Services Tax:UTGST)
    2. 州間取引:統合物品・サービス税(Integrated Goods and Service Tax:IGST)
    3. 輸入取引:IGST+基本関税およびその他の課徴金
  3. 関連法令
    GSTは次の法令に基づき運営される。

    ジェトロ:インド物品・サービス税(GST)における取引別課税一覧と税構造PDFファイル(256KB)

    また、これら法令の下、さまざまなルールおよび通達が発行されている。

  4. 登録義務
    一定の年間売上高を超える事業者は、GST登録が義務付けられる。
    区分
    区分 登録義務基準:当該課税年度(4月~翌3月)の総売上高
    物品販売事業者 400万ルピー超(※200万ルピー超)
    サービス提供事業者 200万ルピー超(※100万ルピー超)

    ※特別カテゴリー州(アルナーチャル・プラデシュ、アッサム、マニプール、メガラヤ、ミゾラム、ナガランド、シッキム、トリプラ、ヒマーチャル・プラデシュ、ウッタラカンド)は基準値が半減。
    しかし、次の場合には売上高にかかわらず、当該課税年度内に登録をしなければならない〔2017年CGST法 第22条、第24条〕。

    1. 課税対象となる州間取引を行う事業者
    2. 臨時的課税事業者
    3. リバースチャージ制度に基づき納税義務がある者
    4. 電子商取引運営者経由で販売する個人・法人
    5. 非居住者である課税対象者
    6. 電子商取引事業者
    7. インプット・サービス・ディストリビューター(ISD)
    8. インドにいるGST未登録者である個人・法人に対して、インド国外からオンライン情報およびデータベースのアクセス・検索サービスを提供している個人・法人 など

    物品・サービスの提供者は通常GSTを納付するが、一定の場合は受領者がリバースチャージ制度に基づき納税する。
    リバースチャージ制度の対象となる物品・サービス、およびGST非課税の対象は、中央税・統合税それぞれの通達で指定されている。通達は頻繁に改正・更新されており、CBICのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認が可能。

  5. 税額控除
    登録者は、事業として使用する物品・サービスの仕入に対して支払ったGSTを仕入税額控除(Input Tax Credit、ITC)として相殺が可能。

    ジェトロ:インドGSTにおける仕入額控除とGST登録申告についてPDFファイル(249KB)

  6. ゼロ税率
    GST法上、輸出およびSEZ内の許可された事業は「ゼロ税率」として扱われる。
    GST登録者は輸出時に以下のいずれかを選択できる〔2017年10月4日付通達No.37/2017–Central Tax外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(342KB)
    • 念書またはBond(担保金)を提供し、非課税で輸出する。
    • IGSTを支払い(輸出取引は州間取引扱い)、後日、還付申請により還付金を受け取る。

    また、GST登録済みの個人または法人からのEOU(Export Oriented Unit:100%輸出指向型企業)への物品販売は「みなし輸出」扱いのため、販売者または購買者のいずれかが還付を受けられる。サービス提供は対象外。

    物品税関税中央局:2017年10月18日付通達(Notification No.48/2017-Central Tax外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(91KB)

    ケララ州では2019年8月1日からケララ洪水目的税(Kerala Flood Cess)が1%以下の税率課税されている。

  7. 電子請求書制度(E-invoicing)
    2020年10月より段階的に導入された電子インボイス制度は、すべての請求書を国のポータル(Invoice Registration Portal, IRP)に登録し、政府承認を得た上で発行する仕組みである。
    現在、年間売上高が5,000万インドルピー以上の企業は、原則としてE-invoicingの発行が義務付けられている。
    対象取引は登録納税者(B2B)に対する供給、SEZへの供給、輸出取引である。
    E-Invoicing制度に関するFAQは以下から確認できる。
    e-Invoicing FAQs外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関税

関税品目分類は、International Harmonized System of Nomenclature(HSN)に準拠し、〔1975年関税率法(Customs Tariff Act, 1975)および1962年関税法〕に基づき課税。
1962年関税法(Customs Act, 1962外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関税は輸出者に納税義務があり、次の税金で構成される。

  1. 基本関税(Basic Custom Duty:BCD)〔1975年関税率法 第2条〕

    物品の評価額に対して、関税表に規定された税率に基づき(原則0~10%)課税される。
    関税品目分類は、HS分類に準拠。

  2. 社会福祉課徴金〔2018年インド財務法第110条〕
    BCD額の10%(特定物品の場合3%)。(従来の教育目的税の代替)
  3. 統合物品サービス税(IGST)〔1975年関税率法 第3条7項・8項、2017年IGST法 第5条〕

    輸入品目によって0~18%(特定品目は40%)の税率。
    また、〔2017年6月28日付調達Notification No 2/2017-Integrated Tax (Rate)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(376KB)〕により、IGSTの免税対象物品を規定。

  4. GST補償税〔1975年関税率法 第3条9項、2017年物品・サービス(州への税収補償)税法第8条および関連別表〕

    たばこ、炭酸水、高級車等の特別な嗜好品、特定のサービスに対する特別追加税であり、仕入税額控除は、特別追加税の租税債務とのみ相殺できる〔2017年6月28日付通達Notificaion No.2/2017-Compensation Cess(Rate)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。
    GST評議会(Goods and Services Tax Council外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

※計算方法などの詳細は「関税制度」を参照。

健康税

特定の医療機器(HSN9018からHSN9022まで)の輸入に対し、健康税が課される。税率は輸入額の5%となる。

農業インフラ・開発目的税(Agriculture Infrastructure and Development Cess:AIDC)

1975年関税率法第一附則に規定された物品に対し、基本関税率を超えない範囲で設定されており、2.5~100%の税率で適用される。結果として基本関税率は引き下げられ、税負担は変わらない。AIDCは、基本関税と同様の取引額に基づいて計算される。
自由貿易協定あるいは事前認可制度または輸出指向型企業による関税免除を利用して輸入された物品に対しては、AIDCは免除される。特定の場合を除き、AIDCには社会福祉課徴金が課される。

国家災害偶発税(National Calamity Contingent Duty:NCCD)

国家災害偶発税は、パーン・マサラ、タバコ、石油および歴青油、携帯電話、自動車などに対し課せられる。税率は1~45%と幅がある。〔2001年インド財政法 第134条〕
NCCDは、評価額+物品税・基本関税を課税標準として課税される。

2003年度1年間の時限措置として導入されたが、現在も継続している。
適用税率:2001年インド財政法 別表 (The Seventh SchedulePDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(4KB)
2017年税制(改正)法(The Taxation Laws (Amendment) Act, 2017PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.04MB)

国際課税・その他税制

非居住者・オフショア投資に対する主な免税措置

  1. オフショアファンド事業所得の源泉地に関する特例
    海外ファンドが、インド国内のファンドマネージャーを通じて運用を行う場合、一定の条件を満たせば、それだけで当該ファンドがインド国内に恒常的拠点(PE)を有するものとはみなされない(所得税法第9A条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。
  2. IFSC(国際金融サービスセンター)所在の特定ファンドへの優遇
    IFSC内の特定ファンド(Specified Fund)が得る一定の所得について、インド非居住者投資家やオフショア銀行の投資部門に帰属する部分は、インドで課税されない(所得税法第10条4D項)。
  3. IFSCを通じたデリバティブ取引に関する優遇
    非居住者が、IFSC内のオフショア銀行部門と締結した一定のデリバティブ取引から得た所得はインドで非課税となる(所得税法第10条4E項)。
  4. ファンド再編時の株式譲渡にかかるキャピタルゲイン非課税
    ファンドの再に伴い、インド法人株式を「オリジナルファンド」から「リザルトファンド(移転先ファンド)」へ移転した場合、当該株式を売却して得られるキャピタルゲインについて、非居住者投資家に帰属する部分は非課税となる(所得税法第10条23FF項)。

電子商取引・デジタル広告等に対する平衡税(廃止)

注:2025年4月1日以降、平衡税に関する規定は適用されない。
平衡税は、インドに恒久的施設(PE)を持たない非居住者の法人に対し、インド国内向けのデジタル取引に課税する制度である。

  1. 税率と課税対象
    • 6%:デジタル広告サービス、デジタル広告枠の提供、関連サービスの対価(財政法第165条)※2016/06/01~2025/03/31まで適用
    • 2%:電子商取引事業者による、インド居住者への商品・サービス供給の対価(第165A条)※2020/04/01~2024/07/31のみ適用
  2. 適用除外
    • インドに恒久的施設を有し、かつ、当該電子商取引の供給またはサービスが当該恒久的施設と実質的に関連している場合
    • 電子商取引事業者の電子商取引の供給またサービスの年間売上高が2,000万インドルピー未満である場合
    • インドでの技術役務料金またはロイヤルティーとして課税される取引(所得税法第10条50項)
  3. コンプライアンス
    非居住者の電子商取引事業者は、財政法第166A条に基づき四半期ごとにChallan No.285を使用し平衡税を納付する。
    平衡税納付期日
    四半期 期日
    第1四半期(6月30日) 7月7日
    第2四半期(9月30日) 10月7日
    第3四半期(12月31日) 翌年1月7日
    第4四半期(3月31日) 3月31日

    遅延利息:未納額に対して月1%(財政法第170条)
    未納罰金:未納額と同額(同法第171条)
    年次報告書の提出:年度中に電子商取引の供給またはサービスに係る報告書を所定の様式で作成し、提出
    年次報告書の修正:年度の終了後2年以内に報告書の修正が可能
    年次報告書の不提出:提出するまで1日につき1,000ルピーの罰金が科されることがある。

  4. 所得税控除
    平衡税対象所得は通常の所得税から免除される(2020年財政法改正)。

税務訴訟の削減

  1. 直接税紛争解決制度
    直接税に関する係争中の訴訟の解決を目的とした紛争解決スキーム「Vivad Se Vishwas外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、「VSV」)が2020年3月17日に法令化され、2024年10月1日には、このスキームを拡充・改正する形で「Direct Tax Vivad Se Vishwas Scheme」(通称「DTVSV」または「VSV 2.0」)が施行されている。VSV 2.0の概要は次のとおりである。
    1. 対象となる訴訟:2024年7月22日時点で、裁判所や租税審判所等で係属中の直接税に関する紛争、不服申立てまたは裁判所への嘆願(writ)
    2. 支払額・救済内容:納税者は、係争中の税額の一定割合(提訴時期等により異なる)を支払うことで税務訴訟を終結させることができる
  2. フェイスレスアセスメント(電子税務調査)
    税務調査プロセスの効率性、透明性、説明責任を高めるために、所得税法に基づき「フェイスレスアセスメント」制度が導入された。 これにより、通常調査や推計課税を含むほぼすべての調査が電子化・非対面で実施されている。
    詳細は国税庁ウェブサイト(Faceless Scheme外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で確認できる(→ 3. Faceless Assessments)。
  3. フェイスレスアピール(電子控訴制度)
    控訴手続を電子化・非対面化する制度(所得税法第250条に6B項)の概要は以下のとおり。
    1. 技術的に実行可能な範囲で上訴手続の過程で担当官(異議申し立て)と上訴人との間の物理的対面を排除
    2. 規模の経済と機能の専門化によるリソー最適化
    3. 動的な管轄権を持つ上訴制度を導入し、1人または複数の担当官が処理する(異議申し立て)

    第274条も改正され、罰則手続きにも適用されている〔2020年財政法改正〕。
    詳細は国税庁ウェブサイト(Faceless Scheme外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で確認できる(→ 4. Faceless Appeals)。

  4. 租税裁判所(Income Tax Appellate Tribunal:ITAT)におけるフェイスレスアピール(電子控訴制度)
    所得税法第255条第(7)、(8)および(9)項に基づき、ITATによる不服申立て手続にもフェイスレス制度が導入されている。これにより、審理の効率性向上、透明性と説明責任の明確化、リソース活用の最適化が図られている。
  5. 中小納税者向け紛争解決委員会の設置(Dispute Resolution Committee:DRC)
    中小規模の納税者を対象とした簡易な紛争解決制度が導入されている(所得税法第245MA条)。
    1. 対象:課税対象所得が500万ルピー以下で、かつ、争点となる所得差額が100万ルピー以下である納税者
    2. 利用条件:重大な税法違反(拘留、起訴、有罪判決等)がない場合に限る
    3. 効果:DRCでの解決により罰則の減免または免除が可能
    Income Tax Department外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  6. 事前裁定委員会(Board for Advance Ruling:BFAR)
    1961年 所得税法 第245OB条に基づき、納税者が税務上の疑義について事前裁定を得られる制度。
    1. 対象:インド国内で取引を行う居住者・非居住者、インドにおける税務上の取扱いについて確認を希望する者
    2. 拘束力:事前決定は申請者または税務当局を拘束するものではなく、いずれの当事者も高等裁判所に上訴することができる。上訴期限は裁定通知日から60日以内(最大30日延長可)。
    3. 非対面対応:可能

    ITATにおける納税額納付期日延長申請(Stay of Demand
    納税者は、ITATに対し、納税額の20%以上を納付するか同額の保証金を納めることで、185日(最長365日)まで納税額納付期日の延長を申請できる。控訴の遅延が納税者に起因しない場合は、再延長申請も認められる。本制度は、AY2020-21から有効。

  7. 共同税務訴訟審査制度(Joint Commissioner (Appeals))の導入2023年4月1日より、少額案件を扱う共同税務訴訟機関が設置された(所得税法第246条)。従来の第1審査機関(Commissioner(Appeals))との取扱い案件を分けることで、納税者の不服申立ての早期解決を目指す。案件の移管も認められる[2023年財政法]。