モディ首相、物品・サービス税の大幅引き下げ発表

(インド)

ニューデリー発

2025年08月22日

インドのナレンドラ・モディ首相はインド独立記念日の8月15日、首都デリーで行った演説で、インドの消費税に当たる物品・サービス税(GST)の制度改革と適用税率の引き下げを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。GSTの運用を担当するGST評議会による承認を受けた上で、10月の「ディワリ(注)商戦」までの発効を目指す。

GSTは、州ごとに異なっていた間接税を統合する目的で、2017年7月に第1期モディ政権下で導入した。現在では品目ごとに0~28%まで細分化した税率を定めている。今回の改革では、同制度の合理化と効率化のため、原則として税率は2段階に集約する。これによって、これまで最高税率28%を適用していた「嗜好(しこう)品」と12%適用の「常用品」の大部分について、税率が引き下げとなるという。

現地報道によると、最高税率28%に設定されている冷蔵庫やエアコンなどの家電製品や二輪車、自動車(電気自動車を除く)が含まれる「嗜好品」の多くについて、税率は18%に引き下げる。12%が課されているチーズ、フルーツジュースなどの「常用品」についても、大部分が5%に移行する。なお、現在28%の税率がかけられている品目のうち、たばこなど一部の「嗜好品」については、例外的に新たに40%の税率を付与する見込みという(8月15日「ミント」紙など)。これを受けて、減税対象となるとみられる自動車や家電などの耐久消費財、飲料、食品などの分野で消費拡大への期待が高まっている。

インド最大の市中銀行の公営インドステート銀行(SBI)が8月19日に発表したレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、今回の税制改革により、年間19兆8,000億ルピー(約33兆6,600億円、1ルピー=約1.7円)の消費拡大が見込まれ、GDPは0.6ポイント押し上げられる可能性があるとされる。税収に関しては、年間8,500億ルピ―の損失が生じる恐れがあるが、減税による消費拡大や一部製品への追加税収により、影響は最小限に抑えられると予測した。

インドではGDPの約6割を民間消費が占めるなど、内需の伸びが経済成長の原動力となっている。他方で、2024年度(2024年4月1日~2025年3月31日)のGDP成長率は6.5%と、2023年度の9.2%と比較して鈍化した(2025年6月26日記事参照)。また、米国トランプ政権がインドからの輸入品に対して、8月27日から計50%の追加関税を課すことを発表したことで(2025年8月7日記事参照)、経済にも少なからず影響が生じるとみられている。減税により内需を支えることで、米国による追加関税の影響を最小限に抑え、安定的な経済成長を維持したい狙いがあるとみられる。

(注)「ディワリ」は、インドで多数派を占めるヒンドゥー教の最大行事で、2025年は10月後半に予定されている。ディワリは家財や衣料品の新調に適したタイミングとされるほか、従業員や親戚、友人などにギフトを送る習慣があることから、1年間で最も消費が伸びる時期で、大規模なセールもこれに合わせて実施される。

(丸山春花)

(インド)

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