Section 4. 人事・労務

4.9 日本の社会保障制度

日本では、国民皆保険制度を採用しており、日本に住所を有する者は、原則として、公的な健康(医療)保険及び年金保険に加入しなければなりません。

4.9.1 労働・社会保険制度の概要

日本には、一定の要件を満たす労働者に対し、企業が加入することを義務づけられている保険制度として、以下の4種類があります。

  1. (1)

    労働者災害補償保険:労働者の業務中または通勤中における傷害・疾病に対する保険

  2. (2)

    雇用保険:労働者の失業の給付及び雇用の安定を図る(助成金・奨励金等)ための保険

  3. (3)

    健康保険・介護保険:医療・介護の支出に対する保険

  4. (4)

    厚生年金保険:老齢、死亡、障害に対する給付のための保険

通常、労働者災害補償保険と雇用保険を合わせて「労働保険」、健康保険・介護保険と厚生年金保険を合わせて「社会保険」と言います。

加入手続については、初めて従業員・労働者を雇用した、法人化した等によりその企業がこれらの保険の適用対象となった際に、企業側が監督官庁に対し労働・社会保険の届出を行うことになります。保険料の支払は、企業側が従業員・労働者負担分の保険料をその給与から差引き、事業主負担分と併せて監督官庁に支払うのが一般的です。

また、2020年4月から、資本金或いは出資金が1億円を超える法人並びに相互会社、投資法人及び特定目的会社は、社会保険・労働保険に関する手続きを原則電子申請にて行うことが義務付けられています。

4.9.2 労働者災害補償保険の制度

表4-5 労働者災害補償保険の概要
適用 原則として、全ての労働者に強制適用。ただし、法人の役員、同居の親族等には適用されない者もいる。中小企業の事業主等(代表取締役等)も申請により特別加入可能。
給付 労働者が業務中または、通勤中の災害により被った負傷・疾病・障害・死亡に対して給付。
保険料 原則として、使用する労働者の賃金の総額に保険料率を乗じて算定される。保険料率は、その事業所の事業の種類により異なり、最高で8.8%(金属・非金属・石炭鉱業)、最低で0.25%(金融業、保険業、通信業、放送業等)まで(2024年4月改正)である。保険料は事業主のみが負担する。
アスベスト健康被害救済のための一般拠出金として、0.002%が上記の保険料率に上乗せされる。
届出 保険関係成立の日の翌日から10日以内に所轄労働基準監督署に届け出る。

4.9.3 雇用保険の制度

表4-6 雇用保険の概要
適用 原則、全ての一般労働者。ただし、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用する見込みであること。海外本社等からの赴任者で、海外で雇用保険に相当する制度に加入している者は、加入免除となる。
給付 被保険者である労働者が離職をした場合に、離職の理由、被保険者であった期間、年齢等により定まった額と期間の失業給付金が支給される。また、その他雇用の安定に係わる各種の給付も行う。
保険料 使用する労働者の賃金の総額に保険料率を乗じて計算した金額。保険料率は、一部の業種を除き1.55%。
事業主が0.95%、労働者が0.6%負担する(2023年4月改正)。
届出 保険関係成立の日翌日から10日以内に所轄公共職業安定所に届け出る。

4.9.4 健康保険・介護保険の制度

表4-7 健康保険・介護保険の概要
適用
適用事業所
全ての法人及び常時5人以上の従業員のいる一定の業種の個人事業所は、強制適用(外国企業の在日支店・営業所は法人扱いとなり、駐在員事務所は個人事業所扱いとなる)。
適用
被保険者
原則として、適用事業所に使用される全ての従業員。ただし、短時間労働者については、所定労働時間が一般従業員の4分の3以上である者*1 。海外本社からの赴任者、法人の代表取締役、代表者等も被保険者となる。ただし、米国、ベルギー、フランス、オランダ、チェコ、スイス、ハンガリー、及びルクセンブルクから日本に派遣される者がこれらの国の医療保険に加入している場合には日本での加入が免除される。
適用
被扶養者
被保険者によって主として生計を維持されている直系尊属、配偶者、子、孫、弟妹も、この保険給付の対象となる。
給付
療養の給付
保険医療機関(健康保険適用の指定を受けている医療機関で、日本国内の医療機関のほとんどがこれに当たる)で、療養に要した費用のうち7割は、保険者から直接医療機関に支払われ、3割は被保険者の負担となる。これは、歯科医療にも適用される。
給付
海外療養費
海外滞在中または旅行中に医療機関で療養費を支払った場合には、帰国後申請することにより、原則、その金額を日本の医療費に換算した金額の7割が保険者から被保険者に支給される。これは、外国人である被保険者が母国、その他の国で医療を受けた場合も同様。
給付
高額療養費
被保険者が同一の月(暦月)に同一の医療機関について支払った一部負担金の額等の金額が一定額を超えるときは、その超える額が高額療養費として支給される。
保険料 全国健康保険協会管掌健康保険の健康保険料は、被保険者の標準報酬月額*2(上限139万円)および標準賞与額*3(年間合計の上限573万円)の9.91%(東京都の場合*4)であり、被保険者および事業主がおのおの2分の1負担する。40歳以上65歳未満の被保険者については健康保険料に介護保険率1.59%が加わる(2025年3月)
組合管掌健康保険*5については、その保険料率の設定にある程度の裁量が認められている。
※ 40歳以上65歳未満の被保険者については介護保険が適用され、事業主が給与等から介護保険料を徴収し、納付する義務を負う。
届出 保険関係成立の日の翌日から5日以内に、所轄年金事務所または健康保険組合に届け出る。
※ 協会けんぽであればe-Gov電子申請システムの利用も可能
適用対象者以外の場合(国民健康保険)
適用 上記健康保険の適用とならない者は、住居地の市区町村で運営する国民健康保険に加入する。
給付 国民健康保険が行う給付は、一部を除き健康保険とほぼ同じ。
保険料 一定の範囲内で各市区町村により決定された保険料。
  1. ※

    日本では、上記のように公的な健康(医療)保険制度への加入が義務付けられているので、外国で民間の医療保険に加入して日本に赴任する場合には、その保険給付の内容が日本の健康保険となるべく重複しないものを選択するようにするとよい。

  1. *1

    従業員数51人以上の企業では、所定労働時間が1週間あたり20時間以上で月額賃金が88,000円以上の短時間労働者も、被保険者となる。また、従業員数50人以下の企業でも、労使の合意により、前述の所定労働時間および月額賃金の条件を満たす短時間労働者は、被保険者となる(学生は除く)。

  2. *2

    標準報酬月額は、給与などの報酬の月額を区切りのいい幅で区分したもの。

  3. *3

    標準賞与額は、賞与の千円未満を切捨てた額。

  4. *4

    全国一律であった健康保険協会管掌健康保険の保険料率は、2009年9月分より都道府県毎の保険料率に移行された。

  5. *5

    組合管掌健康保険は、企業が単独でまたは複数企業が共同で運営する健康保険組合による保険制度。

4.9.5 厚生年金保険の制度

表4-8 厚生年金保険の概要
適用
適用事業所
全ての法人及び常時5人以上の従業員のいる一定の業種の個人事業所は、強制適用(外国企業の在日支店・営業所は法人扱いとなり、駐在員事務所は個人事業所扱いとなる)。
適用
被保険者
原則、適用事業所に使用される全ての従業員(70歳を超える者を除く)。ただし、短時間労働者の場合は、所定労働時間が一般従業員の4分の3以上の者*1。海外本社からの赴任者、法人の代表取締役、代表者等も被保険者となる。
給付
老齢年金
原則として、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上で、かつ、65歳以上であるとき、支払った保険料と支払った期間に応じて計算した年金額がその者に支給される。
給付
障害年金
障害の基因となる疾病や負傷が被保険者である間に生じた場合には、その障害の程度、支払った保険料の金額、保険料を支払った期間等に応じて計算した年金額または一時金が支給される。
給付
遺族年金
被保険者、上記老齢年金の受給権者、または一定の要件を満たす障害年金の受給権者等の死亡によりその遺族に対して年金が支給される。
保険料
料率と負担
被保険者の標準報酬月額(上限65万円。ただし、 2027年9月から2029年9月までに段階的に75万円に引上げ予定)および標準賞与の額(上限150万円)の18.3%を被保険者と事業主で折半して負担する。
保険料
社会保障協定
現在、日本は、ドイツ、英国、韓国、米国、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国、フィンランド、スウェーデン、イタリアおよびオーストリアとの間でそれぞれ社会保障協定を結んでおり、これらの国の年金制度に加入している者が日本へ就労するために一時的に派遣される場合には、日本の公的年金制度への加入が免除される。必要に応じ、日本の関係機関より派遣元国において発給された適用証明書の提示が求められる。トルコ、ポーランド、ノルウェー、およびベトナムは政府間交渉中である。また、タイは予備協議中である。
保険料
脱退一時金
外国人が、6ヶ月以上の被保険者期間を有し、年金の受給資格期間を満たさずに帰国したときは、その者が被保険者であった期間等に応じて一定の計算をした金額の支給を請求することができる。
届出 保険関係成立の日の翌日から5日以内に、所轄年金事務所に届け出る。
※ e-Gov電子申請システムの利用も可能

適用対象者以外の場合(国民年金)

日本に住所を有する20歳以上60歳未満の者で、厚生年金保険に加入していない場合は、国民年金に加入する。月々の保険料は、定額(2025年4月から2026年3月は17,510円)で、老齢年金、障害年金および遺族年金の給付がある。また、厚生年金保険と同様、外国人に対する脱退一時金制度もある。

  1. *1

    従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上)の企業では、所定労働時間が1週間あたり20時間以上で月額賃金が88,000円以上の短時間労働者も、被保険者となる。また、従業員数100人以下の企業でも、労使の合意により、同じ条件を満たす短時間労働者は被保険者となる(学生は除く)。

4.9.6 駐在員事務所の労働・社会保険の適用

労働保険(労災・雇用保険):外国事業主が日本国内に置いた駐在員事務所に勤務する者については、その者が日本の労働基準法上の「労働者」に該当するのであれば、労働保険の適用を受けます。駐在員事務所の代表者が、労働者に該当するかどうかは、労働の実態をみて個別に判断されます。駐在員事務所の代表者が労働者でない場合は労働保険の適用を受けませんが、労災保険については、一定の条件を満たしている場合、特別加入制度という方法により、労災保険に加入することができます。

社会保険(健康・厚生年金保険): 従業員数5人未満の場合、事務所代表者を事業主とする任意適用(代表者は被保険者とならない)となります。また、従業員数5人以上で、一定の業種である場合、原則、強制適用となります。代表者は個人事業主となるため、原則被保険者となることはできませんが、海外本社と使用関係があると証明できる書面等を提出することによって、例外的に、被保険者となるケースもあります。最終的には管轄行政機関の個別判断によります。

4.9.7 労働・社会保険制度のまとめ

表4-9 労働・社会保険制度の一覧
保険 給付 適用 保険料率(年賃金総額の%) 備考
事業主負担 労働者負担
労働者災害
補償保険
業務中または通勤中の災害による傷病、障害、死亡等の場合に、療養、休業、障害、死亡に対する補償等が支給される 労働者を使用する全ての事業に適用 0.3%
(輸入卸売・販売業の場合)
-
  • 事業主等に対する特別加入制度あり
  • 保険料率は業種により異なる
雇用保険 失業者への給付、育児休業取得者・高年齢者への給付等 週所定労働時間が20時間以上の全ての労働者に適用 0.95% 0.6% 海外の失業補償制度の加入者は免除
健康・
介護保険
業務上、通勤中以外の傷病、出産等に対して給付される 全ての法人及び常時5人以上の従業員のいる一定の業種の個人事業所 5.00%
(40歳以上の者は5.91%)
5.00%
(40歳以上の者は5.91%)
保険料率は健康保険協会管掌健康保険(東京都)の場合
標準報酬月額の上限139万円
子ども・子育て
拠出金
社会福祉制度(児童手当)等に対する拠出金であり、労働者に対する福利厚生とは趣旨が異なる 社会福祉制度(児童手当)等に対する拠出金であり、労働者に対する福利厚生とは趣旨が異なる 0.36% - 標準報酬月額の上限65万円
合計 15.76%
(40歳以上の者は16.67%)
14.75%
(40歳以上の者は15.66% )
  1. ※

    保険料率は、2023年12月現在

  2. ※

    労働者災害補償保険料率に、しばらくの間、アスベスト災害拠出金として、0.002%が上乗せされる。

  3. ※

    給与が標準報酬月額の上限を上回っている場合の保険料は、上限における保険料となる。

表4-10 発効済みの社会保障協定
相手国 協定発効年月 保険期間の通算 二重適用の防止の対象となる社会保障制度
日本 相手国
ドイツ 2000年2月 有 年金 年金
英国 2001年2月 無 年金 年金
韓国 2005年4月 無 年金 年金
米国 2005年4月 無 年金、医療保険 年金、医療保険
ベルギー 2007年1月 有 年金、医療保険 年金、医療保険、労災保険、雇用保険
フランス 2007年6月 有 年金、医療保険 年金、医療保険、労災保険
カナダ 2008年3月 有 年金 年金(ケベック年金制度は除く)
オーストラリア 2009年1月 有 年金 退職年金
オランダ 2009年3月 有 年金、医療保険 年金、医療保険、雇用保険
チェコ 2009年6月 有 年金、医療保険 年金、医療保険、雇用保険
スペイン 2010年12月 有 年金 年金
アイルランド 2010年12月 有 年金 年金
ブラジル 2012年3月 有 年金 年金
スイス 2012年3月 有 年金
医療保険
年金、医療保険
ハンガリー 2014年1月 有 年金
医療保険
年金、医療保険、雇用保険
インド 2016年10月 有 年金 年金
ルクセンブルク 2017年8月 有 年金、医療保険 年金、医療保険、労災保険、雇用保険、介護保険、家族給付
フィリピン 2017年8月 有 年金 年金
スロバキア 2019年7月 有 年金 年金、医療保険、労災保険、雇用保険
中国 2019年9月 無 年金 年金
フィンランド 2022年2月 有 年金、雇用保険 年金、雇用保険
スウェーデン 2022年6月 有 年金 年金
イタリア 2024年4月 無 年金、雇用保険 年金、雇用保険
オーストリア 2025年12月 有 年金、医療保険、 雇用保険 年金、医療保険、労災保険、雇用保険

(2025年10月時点)

会社設立の手続き パンフレット

日本での会社設立に関わる基本的な法制度情報や各種手続きをまとめた冊子(PDF)を日本語および英語で提供しています。資料請求ボタンよりフォームに入力の上、ダウンロードしてください。

Section 4:人事・労務 各種申請書類

Section 申請書式名 備考 管轄省庁等
4.3 労働条件通知書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 下記項目より書式をダウンロードください:
手続名>労働条件通知書
厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.3 雇用契約書(例)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.5 時間外労働・休日労働に関する協定届(一般条項)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 下記項目より書式をダウンロードください:
手続名>時間外労働・休日労働に関する協定届
厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.5 時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 下記項目より書式をダウンロードください:
手続名>時間外労働・休日労働に関する協定届
厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.6 モデル就業規則 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.9 雇用保険被保険者資格取得届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 下記項目より書式をダウンロードください:
被保険者に関する手続き
厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.9 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.9 労働保険適用・徴収関係主要様式外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.9 被保険者報酬月額算定基礎届 70歳以上被用者算定届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.9 第3号被保険者関係届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.9 雇用保険適用事業所設置届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 下記項目より書式をダウンロードください:
事業所に関する手続き
厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.9 健康保険・厚生年金保険新規適用届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.9 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4.10 給与所得の源泉徴収票外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (備考なし) 国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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