Section 4. 人事・労務

参考

1. 解雇規制の国際比較

OECDでは、定期的にOECD各国の解雇規制について比較調査を行い、解雇規制の厳しさに関する分析及びランキングを行っています。2019年に行われた調査では、日本は、OECDの37か国中総合的に解雇規制の厳しくない順で13位でした。最も厳しくない国は、米国、スイス、カナダ等で、最も厳しい国は、チェコ、イスラエル、ポルトガル等でした。また、厳しくない順で、イギリスは6位、ドイツは16位、フランスは24位、スウェーデン27位でした。

日本は、裁判になった際の有効な解雇基準は厳しいものの、解雇手続きが簡単で解雇予告期間も短く、法的な解雇の金銭解決制度もないため多くの大陸ヨーロッパの国々よりも解雇規制が厳しくないと評価されたと思われます。

2. 労働組合

日本では、労働組合の活動は法律で保障されています。労働組合に加入しないことを条件に労働者を採用することは出来ませんし、組合員であると言う理由で不利益な取り扱いをしてもいけません。また、組合からの団体交渉の申し込みには、正当な理由がなく拒否することはできません。

日本の労働組合の推定組織率は、厚生労働省の調査によると、2022年6月現在で16.5%であり、減少傾向にあります。さらに、その組織率を企業の規模別(民営企業のみ)に見ると、従業員数1,000人以上の企業の推定組織率が39.6%であるのに対し、100人以上1,000人未満の企業では10.5%、100人未満の企業では0.8%であるというのが現状です。

3. 派遣労働者に対する労働法の適用

派遣労働者とは、労働契約を結んだ会社(派遣元)の指示で労働者派遣契約を結んでいる依頼主(派遣先)に赴き、派遣先の指揮命令に従って働く労働者のことです。

派遣労働者にも、労働基準法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法など労働法が適用されます。労働時間、休憩、休日について労働基準法を守る責任は派遣先にあり、時間外労働は派遣元(人材派遣会社)で三六協定を締結していることを前提に、その範囲で派遣先が命じることができます。その場合の割増賃金の支払は派遣元の責任で行います。年次有給休暇を確保する責任も派遣元にあり、派遣元は必要に応じて代替労働者を派遣先に派遣する義務があります。労働保険(労働者災害補償保険、雇用保険)と社会保険(厚生年金保険、健康保険)については派遣元に適用されますので、派遣元企業においてこれらの加入手続き・保険料の支払等が行われます。

派遣先が違法派遣(派遣期間制限違反、偽装請負、無許可派遣等)を受け入れた場合、その時点で、派遣先と派遣労働者との間に、直接雇用関係が成立したとみなされます。

4. 人事・労務に関する専門家への相談

社会保険労務士とは、人事・労務の専門家としての国家資格を持つ者です。企業の依頼に応えて、給与計算業務をはじめ、(1)労働・社会保険関係などの雇用に係る事務代理、(2)労務管理(就業規則の作成、賃金制度の設計・変更、雇用問題の改善等)及び安全衛生関係などのコンサルティング、(3)個別労使紛争の斡旋代理、(4)年金の相談・請求、(5)その他の雇用に係る業務を行っています。特に、上記(1)と(3)の業務については、開業社会保険労務士、社会保険労務士法人、あるいは弁護士でない者が業として行うことは法律で禁じられています。

会社設立または従業員・労働者採用時の手続き

法人・支店登記をした場合、また、従業員数が5人以上で、かつ、一定の業種(サービス業の一部、農林業、水産業、畜産業、法務などを除く)の場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入。また、所轄年金事務所または健康保険組合に届出(5日以内)。さらに、役員・取締役以外の従業員がいる場合、また、法人・支店登記をせず、従業員数が4人以下かつ、一定の業種以外でも、従業員・労働者が1人以上の場合、労働保険(労働者災害補償保険・雇用保険)に加入。労働基準監督署・公共職業安定所に届出(10日以内)。法定労働時間外・法定休日に従業員を働かせる可能性がある場合は、「時間外労働・休日労働に関する協定届」を所轄労働基準監督署に提出する。従業員数が10人以上の場合、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署に提出する。

毎年発生する手続き

社会保険の手続・支払先は、所轄年金事務所。ただし、健康保険組合に加入している場合は、原則、健康保険組合。毎年6月1日から7月10日は、労働保険に加入している場合は、年度更新(概算・確定保険料申告書)と、労働保険料を労働基準監督署に支払う。毎年7月は、社会保険に加入している場合、定時決定(算定基礎届)。賞与の支払があったときは、社会保険に加入している場合、賞与支払届。給与額に大幅な変動があったときは、随時改定(変更届)。給与支払時は、社会保険に加入している場合、社会保険料の従業員負担分を月毎に控除し、会社負担分とあわせて翌月末日までに支払う。労働保険に加入している場合は、雇用保険の従業員負担分を給与支払時に控除し、年度更新時まで預かる。新たに従業員を雇用したときは、社会保険に加入している場合、社会保険の資格取得届等を届け出る。労働保険に加入している場合は、雇用保険の資格取得届等を公共職業安定所に届け出る。従業員が退職したときは、社会保険に加入している場合、社会保険の資格喪失届等を届け出る。労働保険に加入している場合は、雇用保険の資格喪失届等を公共職業安定所に届け出る。

Section 4:目次


Section 4:人事・労務 各種申請書類

Section 申請書式名 申請様式の掲載箇所 管轄省庁
(当該制度箇所)
4-3 労働条件通知書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー内、手続名:労働条件通知書:【一般労働者用】 常用、有期雇用型を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-3 雇用契約書(例) 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-5 時間外労働・休日労働に関する協定届(一般条項)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー内、手続名:時間外労働・休日労働に関する協定届:新様式第9号 限度時間以内で時間外・休日労働を行わせる場合(一般条項)を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-5 時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー内、手続名:時間外労働・休日労働に関する協定届:新様式第9号の2限度時間を超えて時間外・休日労働を行わせる場合(特別条項)を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-6 就業規則(例)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます モデル就業規則を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 雇用保険被保険者資格取得届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「雇用保険被保険者資格取得届」から印刷 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「主な届出書様式の一覧」から、申請様式を参照 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「年度更新申告書計算支援ツール」を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険・厚生年金被保険者報酬月額算定基礎届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「主な届出書様式の一覧」から、申請様式を参照 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険被扶養者(異動)届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「主な届出書様式の一覧」から、申請様式を参照 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 労働保険、保険関係成立届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 雇用保険適用事業所設置届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「雇用保険適用事業所設置届」で内容入力・印刷 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険・厚生年金保険新規適用届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」から、申請様式を参照 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」から、申請様式を参照 国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-10 給与所得の源泉徴収票外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「[手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)」から、申請様式を参照 国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

会社設立の手続き パンフレット

日本での会社設立に関わる基本的な法制度情報や各種手続きをまとめた冊子(PDF)を提供しています。8種類の言語(日本語、英語、ドイツ語、フランス語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語、ベトナム語)で作成しています。
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