Section 4. 人事・労務

4.8 退職・解雇に係る法律

期間の定めのない労働契約を結んでいる労働者の自己退職(労働者が使用者に対して一方的に意思表示することによって労働契約が終了すること)の場合は、2週間前の事前通告でその効力が生じます。就業規則等で、退職予定日の2週間よりも前の通告を定めていた場合、確定した判例はありませんが、1ヵ月前以上の事前通告義務は効力がないとする裁判例があります。期間の定めのある労働契約を結んでいる労働者の自己退職については、労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後については、労働者は、その使用者に申し出ることによりいつでも退職することができますが、やむを得ない事由があるときは直ちに契約の解除をすることができます。

一方、解雇(使用者が労働者に対して一方的な意思表示をすることによって労働契約が終了すること)の場合には、いくつかの要件を満たしていなければなりません。紛争の際の立証責任は、使用者にあります。また、期間の定めのある労働契約を結んでいる場合、使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができません。

4.8.1 解雇が正当と認められる場合

解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければ、解雇権を濫用したものとして無効となります。そして、解雇が正当だと認められるためには、まず、あらかじめ就業規則などで、可能な解雇事由を明確に定めておく必要があります。また、日本では、当事者同士による和解の場合を除き、一定額の金銭の支払いによって、労働契約の解消が法律上当然に認められるということはありません。具体的な事例についての解雇の有効性の有無の判断は非常に難しいので、労働法の専門家(弁護士、社会保険労務士等)に事前に相談するとよいでしょう。

整理解雇(企業経営の悪化により、人員整理のために行う解雇)の場合は、多くの裁判例により、以下の4つの要件を満たしていることが、その解雇が合理的であると認められるために必要であるといわれています。

  1. (1)

    解雇の必要性

    企業が人員整理をしなければならないほどの経営上のやむを得ない事情があること

  2. (2)

    解雇を回避する努力

    配置転換、希望退職者の募集等、解雇を回避するための経営努力がなされていること

  3. (3)

    人選の妥当性

    解雇対象者の選定基準が合理的で、その運用が公正になされていること

  4. (4)

    解雇手続の妥当性

    労働組合や労働者と十分な話し合いが行われていること

一方で、整理解雇が必要なほどの状況では、労働者を解雇する代わりに、休業をさせて、その間に支払った休業手当に対して、原則3分の2(大企業は、2分の1)の助成金(上限額あり)が国から支払われる制度があります(雇用調整助成金)。

4.8.2 解雇が制限される場合

以下のような場合は、解雇が制限され、違反した場合には、罰則が適用されます。

  1. (1)

    労働者が業務上の負傷または疾病により休業する期間及びその後30日間

  2. (2)

    女性労働者が産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間休業している期間及びその後30日間

4.8.3 解雇が無効とされる場合

以下のような解雇は、無効となります。

  1. (1)

    妊娠中または出産後一年以内の女性労働者の解雇

  2. (2)

    労働者が、使用者の違法行為などを関係行政機関等に通報したことによる解雇

4.8.4 解雇手続

使用者は、労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前にその予告をしなければなりません。解雇予告をしないで即時に解雇しようとする場合は、解雇と同時に30日分の賃金(予告手当)を支払わなければなりません。ただし、以下のような場合で、所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告や予告手当なしに解雇することができます。

  1. (1)

    天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合

  2. (2)

    労働者の責に帰すべき事由により解雇されてもやむをえない場合

    • 事業場内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合
    • 著しく風紀を乱すことにより職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合
    • 雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
    • 原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
    • 遅刻・早退・欠勤を繰り返し、数回に亘って注意を受けても改めない場合

4.8.5 解雇の実務

日本では、使用者が労働者を何らかの理由で解雇せざるを得ないときに、法的に解雇の手続を取るという方法とは別に、実務上、経営状況や職務状況についてその労働者によく説明し、退職するように説得して、最終的に、労働者がその説得に応じて自主的に退職する場合が多くあります。ただし、過度な退職勧奨は解雇と解される場合があります。労働者が退職に応じるための様々な条件(退職金の上乗せ等)が話し合われることもあります。ただし、そのような説得行為は、退職に関する労働者の自由な意思形成を促す行為として許容される限度を逸脱し、労働者の退職についての自由な意思決定を困難にするものであったと認められるような場合には、違法性を有する、との裁判例が出ていることに留意が必要です。

4.8.6 退職後の競合忌避契約

日本では、職業選択の自由が憲法で保障されています。よって、退職後の一定期間、競合会社等への就職を禁止するという契約は、その期間、地域、職域、相当な補償の有無等を考慮して合理性がある場合にのみ、有効となります。ただし、企業の営業秘密の取り扱いに関しては、労働者が以前勤めていた会社の営業秘密を開示することも、企業がそれを不正に取得することも法律で禁じられています(不正競争防止法)。

4.8.7 取締役の終任・辞任・解任

株式会社の取締役は、任期の満了により終任となります。また、取締役は、いつでも自己の意思で辞任することができます。ただし、それにより欠員が生じる場合には、新任の取締役が就任するまで取締役の義務を免れることはできません。

取締役は、いつでも、かつ事由のいかんを問わず、株主総会の決議により解任され得ます。ただし、正当な理由なしに取締役を任期満了前に解任した場合には、会社は、解任によって生じた損害を賠償しなければなりません。

Section 4:目次


Section 4:人事・労務 各種申請書類

Section 申請書式名 申請様式の掲載箇所 管轄省庁
(当該制度箇所)
4-3 労働条件通知書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー内、手続名:労働条件通知書:【一般労働者用】 常用、有期雇用型を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-3 雇用契約書(例) 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-5 時間外労働・休日労働に関する協定届(一般条項)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー内、手続名:時間外労働・休日労働に関する協定届:新様式第9号 限度時間以内で時間外・休日労働を行わせる場合(一般条項)を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-5 時間外労働・休日労働に関する協定届(特別条項)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 主要様式ダウンロードコーナー内、手続名:時間外労働・休日労働に関する協定届:新様式第9号の2限度時間を超えて時間外・休日労働を行わせる場合(特別条項)を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-6 就業規則(例)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます モデル就業規則を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 雇用保険被保険者資格取得届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 申請様式を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「主な届出書様式の一覧」から、申請様式を参照 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.5MB) 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険・厚生年金被保険者報酬月額算定基礎届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「主な届出書様式の一覧」から、申請様式を参照 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険被扶養者(異動)届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「主な届出書様式の一覧」から、申請様式を参照 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 労働保険、保険関係成立届 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 雇用保険適用事業所設置届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 申請様式を参照 厚生労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 健康保険・厚生年金保険新規適用届外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」から、申請様式を参照 日本年金機構外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-9 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」から、申請様式を参照 国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
4-10 給与所得の源泉徴収票外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 「[手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)」から、申請様式を参照 国税庁外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

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