ジェトロ対日投資報告2025
第3章 新たなステージを迎えた対日直接投資拡大の取り組み 第1節 日本政府の関連政策
1. 経済財政運営と改革の基本方針2025
米国関税措置や物価高、地政学リスク等に対応しつつ、賃上げ起点の成長型経済実現を目指す
世界経済の不確実性が高まる中、日本国内では、人口減少下にあっても持続的な経済成長を続けるために、官民が連携し課題解決に取り組んでいる。現在、日本の名目GDPは600兆円を超え、賃上げも2年連続で5%を上回るなど、経済の好循環が動き始めている。
こうした中、2025年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2025」 (骨太方針2025)が閣議決定された。この方針の中で政府は、経済の持続的成長と国民生活の豊かさを向上させ、国民が「今日より明日はよくなる」と実感でき、ふるさとへの思いを高めることができる「新しい日本・楽しい日本」の実現を目指すとしている。そして、米国の関税措置や物価高など当面のリスクへの備えと対応に万全を期すとともに、賃上げを起点とした成長型経済の実現を目指すとし、そのための施策として、1.物価上昇を上回る賃上げの普及・定着、2.地方創生2.0の推進及び地域における社会課題への対応、3.「投資立国」及び「資産運用立国」による将来の賃金・所得の増加、4.国民の安心・安全の確保、の4つを示した。
このうち2.では、 「地方イノベーション創生構想」 など5つの柱からなる施策を示し、 「令和の日本列島改造」として推進していくとした。そして3.では、従来どおりGX、DXの推進やフロンティアの開拓、スタートアップの支援や海外活力の取り込み、資産運用立国の実現などを推進するとし、海外活力の取り込みの施策のひとつとして、政府は2030年の対日直接投資残高の目標を100兆円から120兆円に引き上げ、さらに2030年代前半のできるだけ早期に150兆円を目指す方針を示した。(図表3-1)。
骨太方針2025ではこのほか、中長期的に持続可能な経済社会の実現のための施策として、「経済・財政新生計画」の推進、主要分野(社会保障、少子化対策、教育再生、インフラ整備、地方財政基盤強化等)ごとの重要課題と取組方針、物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直し、などを掲げている。
| No. | 施策 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | GXの推進 |
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| 2 | DXの推進 |
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| 3 | フロンティアの開拓 |
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| 4 | 先端科学技術の推進 |
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| 5 | スタートアップへの支援 |
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| 6 | 海外活力の取り込み |
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| 7 | 資産運用立国の実現 |
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2. 対日直接投資促進プログラム 2025
5本柱・32施策の具体的計画を提示
日本政府は対日投資促進を目的に、定期的に有識者を集め、 「対日直接投資推進会議」等の会合を開催し、取り組むべき環境整備や推進策などを協議し、提示している。
同会議は2023年4月、対日直接投資の促進に向けた100の施策を「海外からの人材・資金を呼び込むためのアクションプラン」(以下、アクションプラン)として取りまとめた。これを推進する「海外からの人材・資金を呼び込むためのタスクフォース」(以下、タスクフォース)では、各施策の進捗についてフォローアップを行うとともに、取組を加速・深化すべき事項について議論。また内閣府では関係機関へのヒアリング等も行い、同会議はそれらを踏まえて2024年5月に、アクションプランの100の施策と追加的に指摘があった課題の中から、特に重点的に取り組むべき事項とその政策対応について整理した「対日直接投資加速化に向けた優先プログラム」 (以下、優先プログラム)を取りまとめた。
同年末時点の対日直接投資残高は53.3兆円となり、2014年末の23.7兆円から10年間で2倍以上に増加。このモメンタムをさらに加速させるため、タスクフォースは優先プログラム記載事項のフォローアップ(図表3-2)を行いながら、施策の充実・強化方針について、議論を重ねてきた。
これら議論を踏まえて、2025年6月には第13回対日直接投資推進会議が開催され、政府は対日直接投資残高を2030年に120兆円、2030年代前半のできるだけ早期に150兆円とする目標を定め、5つの柱・32の施策からなる「対日直接投資促進プログラム2025」(以下、促進プログラム)(図表3-3)を公表した。タスクフォースでの議論や、内閣府を中心に実施した関係機関へのヒアリングの結果を踏まえ、今後重点的に取り組むべき事項とその具体的な施策が示されている。
なお、2025年4月には、自由民主党の有志議員による「対日投資拡大議員連盟」が発足した。対日投資の現状や制度的課題について多角的な視点から検討し、政策提言を進めるとしており、促進プログラムにも議連の提言が反映されている。
| No. | 優先プログラム 4本柱 | 10施策 | これまでの取組 | 課題 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 日本での投資機会の拡大 | 1)総合経済対策における重点施策の 実効性担保、広報・周知 |
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| 2)二次投資の拡大に向けた課題抽出 |
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| 3)FDIタスクフォース設置5公館 (米・英・仏・独・豪)における 対日直接投資誘致活動の実施 |
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| 2 | アジア等の高度人材の確保 | 4)半導体等を始めとする重要分野の人材確保等に関する海外との比較調査 |
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| 5)在留資格の在り方等に関するニーズ 調査と具体的措置の検討 |
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| 6)(1) 世界的な研究者の呼び込み (2) 東南アジアやインド等の優秀な留学生の受入拡大、就職支援 |
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| 3 | 国内企業と海外企業との 協業促進 | 7)国内企業と海外企業のマッチング支援、 協業に向けた事例集の展開や対応策の検討 |
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| 8)(1) 投資家によるVCファンドのパフォーマンス 評価の国際標準への対応 (2) 経営上重要視する指標の開示推進 |
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(1)(2)企業に対する効果的な周知広報が必要 | ||
| 4 | ビジネス環境・生活環境の 整備 | 9)法人設立手続きの英語化・ワンストップ化 |
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| 10)銀行口座開設手続きの迅速化・円滑化 |
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| No. | 対日直接投資促進プログラム2025 5本柱 | 32施策 |
|---|---|---|
| 1 | 新規投資・二次投資の促進 |
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| 2 | 投資環境の整備 |
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| 3 | ビジネス環境・生活環境の整備 |
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| 4 | 対日直接投資ビジネスを支えるアジア等の高度外国人材の確保 |
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| 5 | 広報・プロモーション活動の強化 |
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3. 対内直接投資等に関する政令の改正
日本の安全等を損なうリスクが高いと認められる外国投資家に対する規制を強化
国際情勢の複雑化、社会経済の構造変化に伴い、安全保障が経済領域に拡大しており、対内直接投資等においても、技術・情報等の流出のおそれなど、経済安全保障上の懸念が高まっている。こうした動きに対応するため、2025年4月、外為法に関連する 「対内直接投資等に関する政令の一部を改正する政令」が閣議決定され、対内直接投資審査制度に新たな基準が設けられた。
対内直接投資審査制度の概要
- 外国投資家が日本の安全保障等の観点から指定される業種(指定業種)を営む企業(当該企業の子会社が指定業種を営む場合を含む) に対して対内直接投資を行う場合には、審査付事前届出が必要
- 外国投資家が経営に関与しない等の一定の基準を遵守する場合には、外国政府等による投資を除き、事前届出は免除(事前届出免除制度)
| 追加カテゴリー | 定義 | 事前届出免除 |
|---|---|---|
| 特定外国投資家 |
外国投資家のうち、以下(1)(2)のいずれかに該当する者(情報収集義務者等)
|
利用不可 |
| 特定外国投資家に準ずる者 |
形式的には特定外国投資家の要件を満たさない投資家であっても以下のような者
|
一定の範囲で利用可 |
| 特定コア事業者 |
経済安保推進法における特定社会基盤事業者 (※)で、かつコア業種に属する事業を営む事業者 ※基幹インフラが日本の外部から行われる役務の安定的な提供を妨害する⼿段として使用されることを防止するため、規制の対象となっている事業者 |
一定の範囲で利用可 |
事前届出免除制度(改正後)
〔注1〕コア業種とは、武器・航空機・宇宙開発・原子力関連製造業・修理業、ソフトウェア業、軍事転用可能な汎用品製造業、感染症医薬品製造業、高度管理医療機器製造業、重要鉱物資源に係る金属鉱業・製錬業、特定離島港湾施設等整備を行う建設業、肥料(塩化カリウム等)輸入業、永久磁石製造業・素材製造業、工作機械・産業用ロボット製造業、半導体製造装置等製造業、蓄電池製造業・素材製造業、船舶部品(エンジン等)製造業、金属3Dプリンター製造業・金属粉末製造業、サイバーセキュリティ関連業種、インフラ関連業種など
〔非上場株の場合〕
コア業種に係る株式取得については、従来よりすべての外国投資家に対し事前届出を義務付けている。その他の指定業種に係る株式取得については、
上場株の場合と同様、今回の改正により、特定外国投資家を事前届出が義務付けられるカテゴリーに追加。
〔出所〕財務省「対内直接投資等に関する政令の一部を改正する政令」についてを基にジェトロ作成
2025年
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