変化するアジア・大洋州の消費市場三井不動産が駐在員の住環境を支える賃貸物件を開発(マレーシア)

2025年3月19日

三井不動産は2016年、マレーシアに現地法人を設立。以来、住宅や商業施設、物流施設など、幅広く事業展開してきた。現在までに住宅開発6案件(うち分譲用5件、賃貸用1件)、商業施設2件、物流施設1件を手掛けてきた。

賃貸住宅案件として最新の「三井サービススイート・ブキッ・ビンタンシティセンター」では、日本人駐在員や外国人向けに快適な生活環境を追求。修繕や契約管理を一括対応するサービスなどで、安心感を醸している。当該事業について、マネジングディレクターの斉藤正義氏と、シニアマネジャーの山本一輝氏に、聞いた(インタビュー日:2024年12月9日)。

交通の利便性と日本人好みの内装が人気呼ぶ賃貸レジデンス

既述の「三井サービススイート」は、2024年9月に開業した。同社が開発した既存商業施設「ららぽーとブキッ・ビンタンシティーセンター」に隣接し、全269部屋。日本人をはじめ各国の駐在員が、主なターゲットだ。バスタブ、ウォッシュレットなどの住戸内設備に加え、大浴場、サウナ、ジム、ワーキングスペースなど充実した共用施設が特徴。特に大浴場は「日本品質」を追求し、入居者から好評を得ている。また、日本語対応できるコンシェルジュサービスを提供することで、外国での生活に不安を感じる駐在員に、大きな安心材料になっている。単身者向けの1ベッドルーム(注)から、家族向けの3ベッドルームまで、計4種類の間取りがある。

交通の利便性も高い。ハントュア駅に直結し、LRTやモノレールを利用可。ブキッ・ビンタン駅やKLセントラル駅に乗り継ぎなしで行ける。契約期間もマンスリー契約から1年契約まで幅広い選択肢を提供しており、多様な企業ニーズに応えられるのも強みだ。例えば、企業が研修のために月単位で物件を借りる場合や、駐在員が1年以上契約する場合などにも柔軟に対応できる。


「三井サービススイート」の外観(三井不動産提供)

内装(三井不動産提供)

また、山本氏によると、この「三井サービススイート」では、全室一括管理型の賃貸サービスを提供していることが特徴だ。それにより、設備の修理や交換が必要な場合に、迅速かつ効率的に対応できる。具体的には、コンシェルジュに依頼するだけで、テクニシャンが部屋に駆けつけ修繕などに取り掛かる。借り主にとって安心できる環境と言えるだろう。

マレーシアでは、賃貸物件オーナーとのトラブルが多い

マレーシアで住宅賃貸契約を締結する場合、オーナーと借り主が仲介会社を通じて交渉するのが一般的だ。その際、賃料、保証金、契約期間、修繕責任などを盛り込むことになる。

しかし、当地では日本と比較して、これらの法的基準が曖昧。オーナーごとに、契約条件が大きく異なるのが実情だ。こうした契約内容の不明確さが原因で、トラブルに発展しやすい。例えば、エアコンの修理や水漏れの対応にオーナーが「借り主の使用による損傷」と主張し、費用を借り主に請求することがある。また、入居後に重大な欠陥(配管の破裂やシロアリ被害など)が発覚した際、オーナーが修繕を拒否するケースも少なくない。

このような状況を防ぐには、賃貸契約時に必要項目を明確化することが重要だ。さらに、想定されるトラブルを事前に交渉し、オーナーとのコミュニケーションを密にすることが求められる。


注1:
「1ベッドルーム」とは、寝室1部屋に加え、リビングルームやキッチン、バスルームなどの生活空間を独立して設ける間取りのことを指す。
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課
近藤 皐平(こんどう こうへい)
2018年、TOKAIコミュニケーションズ入社。
2024年からジェトロに出向。