トルコにおける日本化粧品市場の可能性と課題
ユニネバ・コスメティクスに聞く

2026年6月3日

トルコの化粧品市場では近年、韓国(K-Beauty)や欧州ブランドが存在感を高める。特に若年層を中心にスキンケア、美容関連商品の需要が拡大している。SNSやインフルエンサーの影響力の高まりにより、消費者の購買行動も活性化しやすい環境にある。こうした市場環境の中、日本化粧品についても、「品質の高さ」や「肌への優しさ」といった点を評価する声が増加している一方、市場における存在感は依然として限定的であり、広く普及していないのが現状だ。

ジェトロは、トルコ国内で日本化粧品に特化した事業を展開するユニネバ・コスメティクス(Yuni Neva Cosmetics)の創業者ミカイル・アルスラン(Mikail Arslan)氏へのインタビューを行った。同氏はトルコ市場における日本の化粧品の現状と課題を整理するとともに、今後の市場展開に向けた可能性に注目する(取材日:2026年4月10日)。


創業者のミカイル・アルスラン氏(同社提供)

ユニネバ・コスメティクスの活動

質問:
事業内容は。
答え:
ユニネバ・コスメティクス(Yuni Neva Cosmetics)は2025年に設立した。トルコ初となる日本の化粧品専門のディストリビューターだ。私は化学工学の専攻を生かし、創業前はトルコ企業、外資系の化粧品企業で開発、化粧品の原料ビジネスを中心にB2B分野でキャリアを歩んできた。日本にも渡航し、日本の化粧品を多数試してきている。
ユニネバ・コスメティクス創業後は、ジェトロが運営するオンラインプラットフォーム「Japan Street」を通じて日本企業との関係構築を進めてきた。日本化粧品ブランドのトルコ市場における正規代理店として事業を展開する予定だ。
さらに2026年5月からは、日本化粧品に特化したECサイト「J Beauty TR(トルコ語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を立ち上げた(2026年05月27日付ビジネス短信参照)。サイトを通じて、オンラインを中心とした販売を強化する方針だ。中長期的には実店舗展開も視野に入れており、日本化粧品を直接消費者へ伝えることのできる場を作ることを検討している。
質問:
「J Beauty TR」のコンセプトは。
答え:
日本の化粧品を単なる消費財としてではなく、商品の設計思想、成分、使用感といった点から評価する姿勢を重視している。使い心地や品質の安定性を伝えることのできるプラットフォームにしていきたい。

日本化粧品に特化したユニネバ・コスメティクスのロゴ(同社提供)

トルコにおける日本化粧品の位置付け

質問:
トルコ市場で日本の化粧品のポジションは。
答え:
日本化粧品は、依然としてニッチな存在だ。一方、最近では消費者の認知度は確実に高まりつつある。要因としては、トルコから日本への旅行者が増えていることや、インフルエンサーによるSNS発信を背景に、日本製の化粧品を実体験として知る消費者が増えているからだろう。特に25~40歳の女性を中心に、「肌に優しい」「品質が高い」といったイメージが浸透している。短期的な流行のためではなく、品質、信頼性を重視する層からの関心が高い。市場としては未開拓ながらも、成長の余地は大きい。
質問:
日本の化粧品は、トルコでも多く販売されている韓国、欧州産の化粧品との比較は。
答え:
トルコ市場では、韓国化粧品が強い存在感を示している。例えば即効性をうたう強い広告力や、トレンドを意識した積極的なマーケティングにより、若年層を中心に市場を席巻しているといえる。欧州ブランド、特にフランス製品は高級感や品質面で評価が高い。一方で、価格に対して期待した効果が得られないと感じる消費者も少なくない。日本の化粧品は、肌本来の機能を長期的に守るという考え方、品質、機能性、テクスチャー、エレガンスのバランスに強みがあると考えている。例えば敏感肌でも使用できる品質などは、他国製品との差別化にもなっている。輸入される化粧品は高価格帯になることもあるが、消費者は信頼している製品には対価を払うため、価格だけが重要ではない。

日本の化粧品が直面する課題

質問:
トルコで日本の化粧品が浸透してこなかった背景は。
答え:
日本の化粧品がトルコ市場で十分に浸透してこなかった背景としては複数の課題が挙げられる。1つ目に、ブランド認知度の低さ、ローカライズされたマーケティングやストーリーテリングの不足がある。ブランドの発信が他国と比較して控えめであり、「分かりやすい効果」「話題性」が重要となるトルコ市場では、その価値が十分に目立たないことがある。そのため、ブランドの開発思想や、品質の高さを丁寧に説明する、消費者への教育的アプローチを取ることが重要だ。2つ目に、規制の複雑性がある。日本の化粧品をトルコに輸入する際は細かい対応が求められることがある。
質問:
トルコへ輸出する際の規制面の具体的な課題は。
答え:
日本の化粧品をトルコに輸入する際には、製品追跡システム(UTS)、製品情報ファイル(PIF)の作成、トルコ語の表示義務など、EUと同等の水準での厳格な対応が求められる。 使用できる原料成分についても、EUおよびトルコで登録・許可されている必要があり、事前準備には相応の時間と専門知識が必要となる。こうした規制をクリアできれば、トルコ市場にとどまらず、EUへの展開を視野に入れた事業展開も可能となる。

今後の展望

質問:
トルコにおける日本の化粧品の今後の見通しは。
答え:
トルコ市場は、若年層が多く、新しい商品に対する受容性も高い。SNSの高い普及率により消費者からのフィードバックを迅速に得られる環境であることから、テストマーケティングの場としても有望と評価している。また、地域のハブとして、EU、湾岸諸国、バルカン諸国への展開も視野に入れることができる。日本企業にとっては、短期的な成果を求めるのではなく、トルコにおける中長期的なブランド戦略、現地パートナーとの連携、ブランドストーリーの明瞭な発信が成功のカギとなるだろう。

執筆者紹介
ジェトロ・イスタンブール事務所
エミネ・ギョンジュ
テキスタイル会社勤務、日本の大学院留学、日本の通信社記者を経て、2013年からジェトロ・イスタンブール事務所に勤務。
執筆者紹介
ジェトロ・イスタンブール事務所
遠藤 誠吾(えんどう せいご)
2018年、ジェトロ入構。展示事業部、静岡事務所、企画部海外地域戦略班(中東担当)を経て2025年から現職。