リ・イマジンで日本の食文化を世界に発信(東京都、IKIGAI Ritual)
2026年4月28日
株式会社IKIGAI Ritual(本社:東京都)は、日本の発酵食品を使ったスイーツブランド「UPBEET!Tokyo
(アップビート・トーキョー)」や、国産の良質なさつまいもを使用したスナックブランド「BENI BITES
(ベニバイツ)」をリリース。多様化する食への価値観、スタイルを超えて、日本の食文化の素晴らしさをひとつのテーブル囲んで楽しんでもらいたい思いから、プラントベース&グルテンフリー、日本のこだわりの食材を主原料にした商品を展開している。(取材日:2026年2月26日)

世界中の良いものが集まる展示会に日本製品が無いことに衝撃を受ける
- 質問:
- 輸出に挑戦しようと思ったきっかけは。
- 答え:
- いつか海外に日本のよいものを、という思いは長い間持ち続けていた。2023年3月、米国・アナハイムで行われた「Natural Products Expo West 2023」の視察に行ったことが直接のきっかけとなった。新型コロナ禍で久しぶりの海外視察だった。こんなに面白い製品が米国や世界にはあふれているのだと思うと同時に、日本のプロダクトが非常に少ないことに大きな衝撃を受けた。さまざまな製品が世界中から集まっているのに日本のものがない。「日本には素晴らしいものがたくさんあるのに」という思いがあふれて、輸出、海外展開を頑張ろうとの思いを強く持った。
- 質問:
- 米国から帰国してすぐにジェトロの「中小企業海外ビジネス人材育成塾(以下、育成塾)」に申し込んでいるが、その背景は。
- 答え:
- いざ海外市場へと考えたときに、関税のことや価格の決め方など基本的なことを全く分かっていなかった。その時ちょうど育成塾「食品コース」が募集中だと知り、輸出の基礎から学べると思って応募した。講座が始まる前の事前学習からも多くのことを学んだ。事前学習の資料は今でも大切に見返している。
- 質問:
- 育成塾に参加してから、2年ほどして「中小企業海外ビジネス人材育成塾プラス(以下、育成塾プラス)」に参加しているが、この間の輸出に向けた活動内容は。
- 答え:
- 2023年3月期の育成塾に参加した当時は、国内向けに販売していたプラントベース&グルテンフリースイーツの中からドーナツの輸出を検討していた。この商品は、冷凍で出荷し、現場で解凍して販売するため、輸送と現地での保管のコールドチェーン構築が課題だった。そこで、当時開発中だった干し芋を使ったスナックバー「BENI BITES」の輸出検討を開始した。BENI BITESは、私が鹿児島県出身で、さつまいもを使った商品を作りたいとの思いから開発した商品だ。常温で輸送・保管ができるので、輸出に向いていると考えた。ジェトロの「新輸出大国コンソーシアム専門家による海外展開ハンズオン支援(以下、ハンズオン支援)」も受けて検討を進めた。この時期、国内も含めて事業のステージが変わってくる中で悩んでいた。次のステップに進むために自分自身にブーストをかけたいと考えていたところ、育成塾プラスの案内があった。日々の仕事をこなしていると目先の業務に飲み込まれてしまう。塾の皆と学ぶ機会があると、商談資料にしても期間を決めて作ることができ、戦略のブラッシュアップなどもできるので非常に良かった。特に、自分たちの強みにフォーカスできたことがとても実用的だった。
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米国市場向けBENI BITES(IKIGAI Ritual提供)
現場での試行錯誤から生まれた米国向け商品
- 質問:
- ターゲットとしていた米国市場での具体的な成果は。
- 答え:
- 米国では現地セレクトショップや日系大手小売企業と日本食材スーパーなどでの販売が始まった。日系大手小売企業では2025年12月から販売を開始し、直後から月間1,500本が売れるヒットとなった。加えて、当初から目標にしていた、ロサンゼルスを拠点とするオーガニックやマクロビオティックの食品を扱う高級スーパーマーケットチェーンでの取り扱いが決定した。
- 西海岸は米国の中でも食の健康に対する意識が高いエリアで、プラントベースやオーガニック・グルテンフリーが浸透している。2023年3月に渡米したときにも、飛び込みで現地スーパーのバイヤーと商談し、ある程度の手ごたえを感じてはいたが、今回この高級スーパーでの取り扱いが決まったことは今後の米国展開への弾みとなる。
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米国小売り店で販売されるBENI BITES(IKIGAI Ritual提供) - 質問:
- 米国で販売している製品と日本で販売している製品はフレーバーのラインアップが違うが、なぜ日本と違う製品を準備したのか。
- 答え:
- 育成塾で輸出の基礎を学んだあと、2024年秋にジェトロの「J-StarX Food Frontiers USAコース(以下、J-StarX)」で米国・サンフランシスコへの派遣プログラムに参加した。その機会に現地の消費者の生の声や反応を集めることができた。研修の前後に現地に滞在した2カ月間で、スーパーの店頭や一般企業のラウンジなどで試食イベントを開催し、消費者に実際に食べてもらって直接感想を聞いた。大変厳しい評価や目をそむけたくなるような反応もあったが、日本市場向けの商品ラインアップでは米国の消費者にアピールできず、米国の消費者に好まれる味やフレーバーの商品を開発しなければならないことに気付いた。
- その後も、商品サンプルを作っては現地に飛んで、ブラインドテスト(注1)や、A/Bテスト(注2)などを行い、その結果に基づき製品を改良することを繰り返した。
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試食イベントで現地消費者の意見を聞く神宮司氏(IKIGAI Ritual提供)
周りのサポートに支えられ電光石火で米国市場参入
- 質問:
- 2024年秋に米国市場向けの製品開発を決断してから、1年足らずで商品開発、出荷している。大手食品・消費財メーカーが行う市場調査や商品開発の手法をしっかり実行し、短期間で米国向け商品を開発できた背景は。
- 答え:
- 小さい会社だからこそ意思決定や行動に移すのが早いこと、周りの方々に支えられていることの両面があると思う。私自身が現地でブラインドテストや調査をして、それに基づき意思決定している。それに伴い、製品スペックを変更し、パッケージデザインも変えるわけだが、生産工場の方々やパッケージデザイナーの方のサポート無しでは実現できなかった。
- 昨年(2025年)6月の「Summer Funcy Food Show 2025」に出展するため、生産工場には大変タイトなスケジュールでの商品開発をお願いした。「チャンスなので行かせてほしい」という私の気持ちを汲んでいただき、FDAの対応を含めて商品を間に合わせてくれた。この展示会では、日本の調味料メーカーの現地法人のブースを間借りした。同社は1970年代から米国に進出し、現地で製造・販売をしている。同社の、「頑張っている日本の新しいブランドを応援したい」との思いからサポートしてもらったかたちだ。
- 質問:
- 米国進出を目指したときからの目標だった西海岸の高級スーパーでの取り扱いが決まったきっかけは。
- 答え:
- 2025年のJ-StarXのメンターから、この企業様へ新製品取り扱いのアプリケーションを出してはどうかとアドバイスをもらった。まずはアプライすることも経験だと思って社内メンバーと一緒にフォームを埋めて提出したところ、2026年初頭に採用の連絡をもらった。
- 現在は、商品を納入するための準備で現地とのやり取りを重ねている。米国のSweet Potatoは、食感や風味など同じSweet Potatoでも日本のさつまいもとは似て非なるものだ。そういったことを丁寧に伝えるように意識している。
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米国の展示会で行われたBENI BITESの試食(IKIGAI Ritual提供) - 質問:
- 米国市場進出を着実に進めている印象だが、途中どのような苦労があったか。
- 答え:
- 「二歩進んで一歩下がる」の繰り返しだったと感じている。特に米国の政権が変わった影響は大きかった。関税の引き上げや関連法規の変更によって米国市場を諦めたという人もいるが、その気持ちはよく理解できる。先行投資のコストもある中、関税増の影響で販売価格を見直さざるをえず、ぎりぎりまで原価を抑えるなど、私自身も心が折れそうになることが少なからずあった。しかし、それでも繰り返し現地へ行くと、米国での食や健康への関心の高さを実感し、当社商品の可能性を感じた。加えて、商品に対して率直に評価してもらい、消費者から直接「感動した」というようなメッセージをもらうこともあり、この商品の魅力をもっと伝えていきたいという気持ちに突き動かされた。
日本の伝統を世界で受け入れられるように変換する「リ・イマジン」
- 質問:
- あらためて、神宮司さんにとっての海外ビジネスとは。
- 答え:
- 振り返ると、初めての起業は飲食店だった。私自身が、以前に国際線客室乗務員として世界中を飛び回る中、自分が感動した海外の朝食を日本の皆さんにも味わってもらいたいという思いで、卵料理を中心とした朝食メニューなどを提供した。一方で、日本にもまだ世界に知られていない伝統的食文化がたくさんあり、それらを海外に発信したいという思いも持ち続けていた。自分が海外で刺激を受けた気持ちを、逆に海外の方に日本の良いもので感じてほしいと思った。
- 日本のものを海外に向けて紹介する際には、そのまま発信するやり方もあるが、私は「リ・イマジン」をキーワードにしている。海外の方に受け入れやすいようにイメージを変換して伝えていくことが、われわれの役割だと思っている。例えば、UPBEET!Tokyoのプラントベースのドーナツには3年間熟成したみりんを使っている。日本の伝統的な食文化である発酵食品をそのまま提供するのではなく、プラントベース&グルテンフリーのドーナツとして提供することで、海外の方に受け入れやすく変換して広めている。BENI BITESの米国市場向け商品の1つにMISO PROTEIN BROWNIEがあるが、これは発酵食品である味噌(みそ)とプロテイン、ブラウニーを組み合わせることで、味噌の味に抵抗なく、また、健康意識の高い人でもブラウニーの味を楽しめるという点で人気商品となっている。これからも、リ・イマジンで世界中の人に日本の伝統食品の良さや素晴らしい食文化を伝えていくことが夢だ。
- 執筆者紹介
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ジェトロ知的資産部海外ビジネス人材育成課
志摩 浩史(しま こうじ) - 大手日用品メーカーで海外マーケティングや新規国・新市場開拓などを担当。複数の現地法人にも駐在。2023年ジェトロ入構。





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