インドが世界生産9割のひまし油、バイオプラ原料としての利用拡大

2026年4月8日

インドは、バイオプラスチック原料としても利用が広がり始めているトウゴマ(ひま種子=ひまし)の9割を生産する。中でも西部グジャラート州(以下、GJ州)はインドの生産量の大部分を担う一大産地だ。ひましから抽出されるひまし油の工業用途は、塗料から自動車部品までと幅広く、近年は日本でもひまし油由来で環境配慮型の製品が市場に現れている。日本政府がバイオプラスチックの導入量を12年間で40倍超に引き上げる野心的な目標を掲げる中、ひまし油は非可食で、食料供給面で競合しない農作物であり、今後の需要拡大が見込まれる。

世界のひまし油供給を一手に担うグジャラート州

インド南部テランガナ州立ジャヤシャンカール・テランガナ農業大学の「ひまし見通し(2026年1月)」によると、インドは世界のひまし生産量の92%を占める(図1参照)。1990年代初めまでは、インドとブラジル、中国が3大産地だったが、現在は中国、ブラジルともに世界での生産割合は1%程度にとどまる。収穫前のひましは暑さに強い植物で、世界の多くの地域で栽培が可能だが、栽培プロセスとコストの兼ね合いからインド1強時代を迎えている。

インドの地域別生産量では、GJ州が抜きんでている。2024年度(2024年4月~2025年3月)の同州のひまし生産量は前年度から2割減ったものの、125万5,000トンでインド全体の約8割を占める(図2参照)。世界のひまし油供給を、同州がほぼ一手に担っている状況だ。インド溶剤抽出業者協会は、GJ州で年次開催する世界ひまし会議の2026年度開催資料で、世界のひまし派生品市場は60億ドル超との推定を示し、「インドへの依存度が高い」と指摘する。

図1:世界のひまし主要生産量割合
インドが生産の92%を占め、残りはモザンビーク4%、ブラジル、中国、タイ、ミャンマーが1%ずつ。

出所:テランガナ州立ジャヤシャンカール大学「ひまし見通し(2026年1月)」

図2:2024年度州別ひまし生産量(推定、単位:1,000トン)
州別生産量はグジャラート州が125万5,000トン、ラジャスタン州が27万4,000トン、アンドラ・プラデシュ州とテランガナ州を合わせて5万4,000トン、その他が7,000トン。

出所:インド溶剤抽出業者協会

メーカー機能を持つ化学品商社の楠本化成は約20年前にインド進出を果たした。新規事業開発室部長の大内裕樹氏は、生物資源(バイオマス)原料への注目が集まる中、「ひまし油誘導体に対する関心も非常に高まっているのを感じる」と語る(2026年1月27日ヒアリング)。インド進出当初は塗料用添加剤を調達するのが主な活動だったが、3年ほど前に現地パートナーである地場ロイヤル・キャスター・プロダクツ社の製品を日本の顧客に紹介する業務も始めた。顧客からの要望を受けて、同社に「ここをこうしてほしい」というフィードバックもしている。また、代替原料としてのひまし油誘導体への注目が集まる中で、顧客がさまざまな用途を検討し引き合いが増えている。

バイオマス資源としてひまし油が注目されるのは、二酸化炭素排出量の削減効果があるためだ。また、植物由来の原料としては、食料用途と供給の取り合いにならないこともひまし油の優位点だ。非可食の点から、かつては利用価値が低い農作物とみられていた。大内氏は、「過去には農家があまり作りたがらない作物だった。近年はバイオマス原料としての価値が再評価され、インドでも品種改良や農家の保護などの取り組みが行われている」という。


グジャラート州で栽培されるひま(楠本化成提供)

ひまし(楠本化成提供)

日本向け輸出は国別6位

インド商工省の貿易統計によると、2024年度のひまし油輸出量は対世界全体で前年度比7.1%増の約69万トン。うち日本向けが11.2%増の1万7,561トンで、国別6位となっている(表1参照)。日本で販売されるひまし油由来製品の全てが日本で加工されているわけではないので全体像を表すものではないが、日本の税関の統計では2025年(暦年)のインドからの輸入量が1万5,059トンとなり、ひまし油輸入全体の99%超を占めた。ひまし油誘導体の輸入量はタイから2割ほどあるが、残りがインドからの輸入だ(表2、表3参照)。

表1:インドからの国別ひまし油輸出量(単位、トン、前年度は%、△はマイナス)注:年度は4月~翌年3月。
国名 2023年度 2024年度 前年度比
中国 320,050.5 341,550.5 6.7
オランダ 76,541.6 75,140.8 △ 1.8
米国 57,956.6 65,175.1 12.5
フランス 51,102.6 56,421.3 10.4
タイ 16,922.0 20,693.7 22.3
日本 15,797.5 17,560.7 11.2
シンガポール 12,926.3 13,514.0 4.6
イタリア 7,372.0 10,122.0 37.3
ベルギー 7,191.7 9,953.2 38.4
韓国 10,267.7 9,887.3 △ 3.7
計(その他含む) 646,964.1 692,752.7 7.1

注:年度は4月~翌年3月。

出所:インド商工省

表2:日本のひまし油輸入量
(単位:トン)注1:年は暦年。 注2:0は輸入量が1トン未満の年、―は統計に記載されていない年。
インド 中国 米国 欧州 その他
2021年 18,356 4 9 1
2022年 17,176 0 1 0 1
2023年 16,971 0 4
2024年 16,507 1 0
2025年 15,059 4 1

注1:年は暦年。
注2:0は輸入量が1トン未満の年、―は統計に記載されていない年。

出所:日本税関

表3:日本のひまし油誘導体輸入量(単位:トン)注1:年は暦年。 注2:―は統計に記載されていない年。
インド タイ その他
2021年 8,094 1,367 1
2022年 7,273 1,290
2023年 4,454 1,371 3
2024年 6,501 1,570 14
2025年 5,158 1,404

注1:年は暦年。
注2:―は統計に記載されていない年。

出所:日本税関

日本バイオプラスチック協会が2026年1月に公表した、日本の2023年のバイオプラスチック市場規模推計は18万3,000トンだった。ひまし油来のバイオポリアミドやバイオポリウレタンを含む非生物分解性のバイオマスプラスチックが57%、生物分解性プラスチックが43%を占める。2018年のバイオプラスチック出荷量は4万4,757トンだったことから、大幅に拡大しているとみられる。2018年時点のバイオプラスチック出荷量のうち、ポリアミドの割合は14.5%、バイオウレタンを含む「その他」が4.1%だった。

化粧品スポンジを開発

化粧品スポンジで世界最大のシェアを持つ雪ヶ谷化学工業は、ひまし油由来の原料を40%使用したウレタンフォーム「テコラ」を2022年に発売した。化粧品メーカーのアイシャドーチップや、クッションファンデーションパフなどで使用されている。化粧スポンジの原料に、フェアトレードに基づいて収穫した天然ゴムを2021年に導入したことなどに続く、環境配慮の取り組みだ。原料は、GJ州にある三井化学とひまし油生産地場最大手ジャヤント・アグロ・オーガニクス、伊藤製油の合弁会社であるバイタル・キャスター・ポリオールで製造されている。

雪ヶ谷化学工業社長の坂本昇氏は、ウレタンフォームの石油由来低減を考慮していたときにひまし油由来のバイオポリオールに出会ったという(2026年2月12日ヒアリング)。実際に製品に使ったところ、従来の「テラ」と変わらない品質になった。テコラは、ウレタン用バイオポリオールを40%使用することで、製造から廃棄までの二酸化炭素排出量を36%超削減できる。製造プロセスでは、発泡のために配合を変える必要があったが、設備などは既存のものを使用でき、調達からのリードタイムなどにも問題は感じていない。アイシャドーチップは大手化粧品メーカーでも採用されており、今後も従来品を作りながら、製品にエコのエッセンスを入れる提案を続ける意向を示している。


ひまし油由来原料を40%使用した「テコラ」の例(雪ヶ谷化学工業提供)

販売本数最大の眼鏡のフレームに採用

日本の眼鏡専門店でシェアトップ「眼鏡市場」を運営するメガネトップは、販売本数最大のブランド「フリーフィット」のリブランディング時に、素材に環境配慮の要素を入れることを考え、樹脂にひまし油由来のバイオポリアミドを採用した。2019年ごろに開発に着手し、2020年12月に発売した。ひまし油由来原料を45%使用している。

ひまし油由来のバイオポリアミドはフランスの化学大手アルケマから調達しており、同社はドイツの同業BASF、地場ジャヤントなどと持続可能なひまし栽培プログラムを2016年に立ち上げている。メガネトップ商品部部長の櫻井憲一郎氏は、同社として初めて「意識的に取り組んだエコ製品」であり、現在のフリーフィットの販売本数のうち、4割程度がバイオポリアミドを含んだフレームの製品であることを明らかにした(2026年2月25日ヒアリング)。

従来の軽くて弾力性のあるモデルのものと比べて遜色はないという。櫻井氏は、「重くなく、素材の透明度が高いため発色も良い」と述べ、原料として汎用(はんよう)性が高いとの見解を示す。販売対応に際して、店員から素材について紹介していると語った。当初はエコ製品として店頭でも説明を表示していたが、顧客は素材よりも主にデザインで選んでいるとみている。


ひまし油原料45%を使用するフリーフィット
(メガネトップ提供)

販売時に表示しているサステナブルマーク
(メガネトップ提供)

日本能率協会総合研究所MDBによると、バイオポリアミドは耐久性、耐熱性があり、自動車の燃料チューブやエンジン周辺品、エアブレーキチューブなどにも利用されている。今後の世界と日本のバイオポリアミド市場はともに年8%成長すると予測している(2026年1月21日ヒアリング)。

日本の環境省は、2021年に公表した「バイオプラスチック導入ロードマップ」で、2030年のバイオプラスチック導入量を2018年比で40倍超となる200万トンにする野心的な目標を掲げている。GJ州が生産を一手に担うひまし油由来のバイオプラスチックの日本での流通も、ますます拡大することが見込まれる。

執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課
今野 至(こんの いたる)
出版社、アジア経済情報配信会社などを経て、2023年9月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所
飯田 覚(いいだ さとる)
2015年、ジェトロ入構。農林水産食品部、ジェトロ三重を経て、2021年10月から現職。