酵素の力でおいしく炊き上げ(日本)
商用米輸出と大塚薬品工業の挑戦

2026年4月9日

日本からの商用米(家庭向け主食米とは市場や用途が異なる業務用米)の輸出は着実に増加しており、今後さらに海外市場を拡大していくには、日本産米の国際競争力を一層強化していく必要がある。そのためには食味の良さや高い品質といった日本産米本来の価値を正しく訴求するとともに、ブランド化の推進や、おにぎり・和食など日本の食文化と一体となった需要創出が重要となる。

日本国内では、外食産業や中食(総菜や弁当などの家庭外で調理された食品を持ち帰って食べる形態)・小売業を中心に、炊飯改良剤を炊飯時に使用することで、日々安定した炊き上がりと食味を実現している。海外においても、炊飯改良剤は、環境や条件などの違いによる炊きムラを抑え、日本産米本来のおいしさを最大限に引き出す有効な手段だ。

独自の高い技術、ノウハウにより、主に酵素を使った炊飯改良剤を長年製造販売する企業がある。近年輸出にも積極的に取り組む大塚薬品工業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(本社:埼玉県川越市)だ。本レポートでは、同社の田中聡司氏(代表取締役社長)、内村匡一氏(取締役営業部長)、大貫直輝氏(営業部海外推進課長)に、現在の輸出状況および今後の展望について聞いた(取材日:2026年1月26日)。

日本からの米の輸出拡大

まず、日本からの商用米(注1)輸出に関して、2021年から2025年までの5年間の輸出動向をまとめた(表、図参照)。2025年の世界向け輸出金額は前年比15.4%増の138億8,000万円であった。2021年の59億3,300万円と比較すると、5年間で2倍以上に輸出額が伸びている。

国・地域別の輸出額を見ると、首位の香港向け輸出は35億7,100万円(前年比9.3%増)であった。2位の米国向け輸出は31億4,000万円(同24.3%増)、3位のシンガポール向け輸出は15億4,500万円(同14.2%増)であった。次に台湾、タイ、カナダ、オーストラリア、英国、ドイツ、アラブ首長国連邦(UAE)と続いており、世界各国・地域へ輸出されている。

図:米(商用米)の年別輸出動向(2021年~2025年)
棒グラフは輸出額、折れ線グラフは輸出数量を表しています。まず、棒グラフについて説明します。輸出額は年を追うごとに増加しています。世界全体の輸出額は、2021年が59億3,300万円、2022年が73億8,200万円、2023年が94億1,100万円、2024年が120億2,900万円、2025年には138億800万円となっています。棒グラフは国や地域ごとの色分けになっており、主な輸出先として、香港、米国、シンガポール、台湾、タイなどが積み上げられています。このうち香港と米国の割合が大きく、全体を押し上げています。次に、折れ線グラフで示される輸出数量について説明します。数量は年々増加しており、2021年は22,833トン、2022年は28,928トン、2023年は37,186トン、2024年は45,112トン、そして2025年には46,573トンとなっています。特に2021年から2024年にかけて大きく伸びています。まとめると、この図は2021年から2025年にかけて、商用米の輸出額と数量がともに継続して増加していることを示しています。

注:2025年の輸出額上位10カ国・地域を抽出。
出所:農林水産省「商業用の米の輸出数量等の推移」(政府による食糧援助を除く)

表:米(商用米)の年別輸出動向(2021年~2025年)(単位:トン、100万円)注:2025年の輸出額上位10カ国・地域を抽出。
国・地域名 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
数量 金額 数量 金額 数量 金額 数量 金額 数量 金額 前年比伸び率(%)
数量 金額
1 香港 8,938 2,118 9,880 2,344 11,301 2,630 13,474 3,267 13,522 3,571 0.4 9.3
2 米国 2,244 625 4,459 1,169 6,883 1,768 8,784 2,527 9,896 3,140 12.7 24.3
3 シンガポール 4,972 1,025 5,742 1,201 5,593 1,153 6,406 1,353 6,361 1,545 -0.7 14.2
4 台湾 1,907 575 2,532 716 3,116 877 3,577 1,016 3,329 1,037 -6.9 2.1
5 タイ 625 162 1,045 256 1,299 307 1,787 461 2,862 812 60.2 76.2
6 カナダ 210 69 382 104 1,629 394 2,138 546 1,902 567 -11 3.9
7 オーストラリア 893 283 1,245 390 1,204 386 1,351 460 1,253 480 -7.3 4.3
8 イギリス 332 104 526 162 587 193 853 290 1,093 416 28.1 43.4
9 ドイツ 185 68 239 81 582 186 867 269 749 275 -13.6 2.5
10 アラブ首長国連邦 96 45 130 49 389 116 487 172 590 218 21.1 26.6
その他 1,055 343 1,010 306 1,271 402 1,618 511 1,725 631 6.6 23.6
世界 22,833 5,933 28,928 7,382 37,186 9,411 45,112 12,029 46,573 13,880 3.2 15.4

注:2025年の輸出額上位10カ国・地域を抽出。

出所:農林水産省「商業用の米の輸出数量等の推移」(政府による食糧援助を除く)

米・パックご飯・加工米飯・米粉および米粉製品は、農林水産省「輸出拡大実行戦略(2025年5月)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の輸出重点品目に選定されており、2030年までに総額で922億円(うち米国向けは216億円、EU・英国向けは176億円、シンガポール・台湾・香港向けは141億円など)を目標としている。同戦略では、具体的な方策として「中食・外食などの日系企業の海外展開を促進し、日本産米の利用拡大を図る」や「有機食品への関心の高まりを切り口に有機米の販売促進を図る」などとしている。農林水産省の認定農林水産物・食品輸出促進団体外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますである全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますや自治体、生産者団体などが中心に、海外における販促活動に積極的に取り組んでいる。

なお、販売などの目的で米を日本から輸出する場合には、食糧法の規定に基づき、地方農政局などへ輸出数量の事前の届け出が義務付けられている(注2)。また、輸出先国では、輸入に関する規制や法令、植物検疫が必要な場合があるため、留意が必要だ(注3)

日本産米の良さを世界でプロモーション

米国や香港などにおいては、おにぎりやすしなどを取り扱う日本食レストランの増加により、外食向けを中心に日本産米需要が増加した。

特に、おにぎりは各国・地域で広がりを見せている。日本産米で作ったおにぎりは、冷えても柔らかさと粘りがあり、米本来のおいしさを伝えることができる。また、テイクアウトが可能で手軽に食べられることに加え、外食に比べてコストパフォーマンスが高いことから、近年海外においても幅広い層に支持されている。

また、日本産米が有する「甘み(旨み)」「もっちりふっくら」「冷めてもおいしい」などの特長を、海外の消費者や飲食事業者に正しく理解してもらうため、JFOODOやジェトロなどは関連団体とともに、米を活用したメニュー提案や適切な炊飯方法の紹介などを目的としたプロモーションイベントを各地で実施している(詳細は、ジェトロ「輸出品目別レポート 米PDFファイル(1.05MB)」を参照)。

酵素の力で調理現場の悩みを解決、大塚薬品工業の炊飯改良剤「炊飯ミオラ」

米は水温や気温、水質の違いなどによって、炊き上がりが大きく左右される繊細な食材であり、同じ条件であっても常に均一な品質を維持することが難しい。特に海外では、水質や調理環境、調理習慣の違いから炊き方によっては、高品質な日本産米であっても本来のおいしさが最大限に引き出されないという課題がある。そのような中、海外においても、日本産米本来のおいしさを安定して引き出すためのソリューションが、大塚薬品工業が提供する炊飯改良剤「炊飯ミオラ」だ。

大塚薬品工業は、「炊き上がりを安定させたい」「ツブ感が欲しい」「釜離れをよくしたい」などの調理現場からの要望に対し、炊飯技術の改善や品質安定化に関するノウハウを長年蓄積し、解決策を提案してきた。その代表的な製品である炊飯ミオラは、発売から64年を迎えるロングセラー商品であり、国内の外食産業や中食・小売りなど、主に業務用分野で広く活用されている。炊飯ミオラの最大の特長は、米が本来持つ力を独自の酵素技術によって補い、調理者の経験や、米や調理器具の品質差、水質の違いに依存せず、常にふっくらとしたおいしいご飯を炊き上げられる点だ。これにより、安定した品質を提供することが難しい環境下でも、日本産米の「甘み(旨み)」「もっちりふっくら」「冷めてもおいしい」といった特長を最大限に引き出すことが可能となる。

こうした特性は、海外で日本産米の魅力を正しく伝えるうえで極めて有効であり、日本産米の価値向上と市場拡大を支えるツールとして期待されている。

大塚薬品工業の炊飯改良剤「炊飯ミオラ」とすし専用「炊飯ミオラゴールド」(同社提供)


炊飯改良剤を使用した炊き上がりの違い(注4)
左:不使用、中央:すし専用「炊飯ミオラゴールド」使用、右:「炊飯ミオラ」使用(ジェトロ撮影)

海外でもおいしいご飯を提供、炊飯ミオラの海外展開

大塚薬品工業の輸出事業は、40年以上前に米国市場向けから始まった。きっかけとなったのは、米国ですし屋を営む店主からの要望だった。店主は日本で使用していた炊飯ミオラの品質と効果を高く評価しており、「米国でも同じ品質のご飯を提供したい」との強い希望があった。この声をきっかけに炊飯ミオラの海外展開が始まった。当時、同社では製品の輸出を想定していなかったものの、炊飯ミオラは「使用期限3年」「常温保存可能」「粉末製品」という、輸出に適した特徴を兼ね備えていることから、国内商社を通じた取り扱いが実現し、輸出が徐々に拡大していった。海外では、ミシュラン掲載店や有名店からローカル店まで幅広く利用されており、シェフや従業員などの口コミなどにより同社製品が広がっていると聞く。

昨今の日本食市場の拡大も相まって、海外市場でのビジネスチャンスは大きいと捉え、海外市場にさらに注力している。2025年には海外営業の専任者を配置した海外推進課を新設し、海外展示会に出展、海外出張するなど積極的に海外事業を進めている。現在は北米、欧州、アジア、オセアニア、南米、アフリカなど幅広い地域にわたり、50カ国・地域以上に展開している。海外では日本食レストランに限らず、中華料理店や韓国料理店、タイ料理店など、多様な調理現場で炊飯ミオラが活用されている。米を扱うさまざまな食文化に適応できる強みがあり、輸出拡大の伸びしろが大きい。

ドバイでも関心が高まる炊飯ミオラ

大塚薬品工業は、日本食が既にある程度浸透している北米・アジア以外の地域として、中東や中南米、アフリカなどの新市場の開拓も進めている。

同社は、2025年8月にジェトロ埼玉のUAEバイヤー招聘(しょうへい)商談事業に参加し、ドバイの高級日本食レストランのシェフ1名とバイヤー2名に炊飯ミオラを使用した冷凍ずしをその場で解凍して提供し、商談した。

このシェフとバイヤーは既に炊飯ミオラの存在を知っており、中東でも一定の認知がされていることがわかった。今回、同社のプレゼンテーションを受け、冷凍してもみずみずしさが保たれる炊飯ミオラの効果をシェフらが知ったことにより、商談から2週間余りで成約へ結びついた。その後も初回の量を上回るリピート注文があり、今後、さらなる輸出量の増加と中東への市場拡大が期待される。

ジェトロ埼玉UAEシェフ・バイヤー招聘事業2025(同社提供)

今後の海外展開、大塚薬品工業の挑戦

今後の輸出展望について、大貫氏は「今後は米やすし関連企業とともに展示会へ積極的に出展し、試食だけでなく、シェフや外食事業者の皆さまに炊き上がりの違いを体験してもらいたい。海外では日本食市場の拡大などを背景に需要の伸びが続いており、10年後には海外売上高が国内売上高を上回る規模への成長を目指す」と目標を語った。

大塚薬品工業の炊飯改良剤「炊飯ミオラ」は、世界中で日本産米の価値を高めることにつながる。今後もその魅力を正しく伝えていくことで、日本産米市場のさらなる成長が期待される。

なお、輸出先国を多角化する上で、各国の現地輸入規制、食品規制の情報を日々把握することが難しいことが、課題の1つとなり得る。輸出者や現地輸入者などからの情報とともに、ジェトロ「輸出に関する制度」などを活用し、継続的に情報収集することが重要だ。


川越工場前で撮影、左から3人が大貫氏(左)、内村氏(中央)、田中氏(右)(ジェトロ撮影)

注1:
HSコード100610、100620、100630、100640。政府による食糧援助を除く。 本文に戻る
注2:
米の輸出に届け出が必要だが、米加工品(米粉など)は届け出の必要はない。届け出を行わない、虚偽の届け出により米を輸出した場合には、20万円以下の過料に処せられるため注意が必要。届け出の方法など詳細は、農林水産省「米麦等を輸出される方へ」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。 本文に戻る
注3:
詳細は、ジェトロ「日本からの輸出に関する制度」や、全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会「日本産コメ・コメ加工品輸出ハンドブック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を参照。 本文に戻る
注4:
炊飯ミオラを使用したご飯では、炊飯器で米を炊く際に米の芯まで均一に加熱されたときにできる「カニ穴」が見られる。また、ふっくら粒が立っているのを確認できた。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ農林水産食品部 市場開拓課調査チーム
庄田 幸生(しょうだ こうき)
2025年、ジェトロ入構。現在、農林水産物・食品の輸出に関して、各国の市場情報や輸入規制、法令などの調査を担当。
執筆者紹介
ジェトロ農林水産食品部 市場開拓課調査チーム 課長代理
古城 達也(ふるじょう たつや)
2011年、ジェトロ入構。人材開発支援課、ジェトロ横浜、ジェトロ・ニューヨーク事務所、ジェトロ諏訪を経て、2024年11月から現職。現在、農林水産物・食品の輸出に関して、各国の輸入規制、法令や市場情報などの調査や、日本企業からの輸出相談窓口を担当。
執筆者紹介
ジェトロ埼玉(執筆当時)
中野 宏美(なかの ひろみ)
2014年、民間金融機関に入社。2024年からジェトロに出向、同年から現職。