モンゴル日本商工会が景況感、ビジネス環境を調査

2026年3月11日

在モンゴルの日系企業で構成されるモンゴル日本商工会は、会員企業に対してアンケート調査を行った。本稿では主な調査結果を抜粋し、モンゴルの景況感とビジネス環境、モンゴルにおけるビジネスチャンス、日本企業が直面している問題について概観する。

在モンゴルの日系企業50社に対してアンケートを実施

モンゴル日本商工会が2025年9月に会員企業50社にアンケートを行った結果、48社から回答を得た。

回答した会員企業の内訳は、現地法人が29社(60.4%)、駐在員事務所が15社(31.3%)、その他が4社(8.3%)だった(図1参照)。

図1:回答企業の法人ステータス(全48社中)
現地法人60.4%、駐在員事務所31.3%、その他8.3%

出所:モンゴル日本商工会アンケート

景況感は不透明感から中立的

2025年のモンゴルの景況感については「どちらともいえない」と回答した企業が最も多く、「悪い」「若干悪い」が「良い」「若干良い」を上回った。「若干悪い」の理由として、石炭価格の下落による輸出の鈍化、物価上昇を挙げる回答が多かった(図2参照)。

図2:2025年のモンゴルの景況感
良い4.2%、若干良い14.6%、どちらともいえない47.9%、若干悪い16.7%、悪い16.7%

出所:モンゴル日本商工会アンケート

今後のモンゴルの景気見通しについては、「どちらともいえない」が68.8%を占めたが、「良くなる」との回答も18.8%あった。「どちらともいえない」の理由として、中国経済の先行き不透明感やモンゴル国内の政治的・政策的な不安定さなどが挙げられた。また「良くなる」と答えた理由としては、資源価格の回復やインフラ投資の拡大などが挙げられた。「悪くなる」との回答は12.5%で、理由としては、インフレ、地政学的リスクなどが挙げられた(図3参照)。

図3:今後のモンゴルの景気見通しについて
良くなる18.8%、どちらともいえない68.8%、悪くなる12.5%

出所:モンゴル日本商工会アンケート

各社の業績はまちまち

各社の2025年の売り上げ見通し(売り上げを計上できない駐在員事務所を除く)については、「上昇」が10.0%、「やや上昇」が32.5%、「変わらない」が37.5%、「やや減少」が10.0%、「減少」が10.0%を占めたが、業種ごとの傾向はみられなかった。

一方、各社の経費は「上昇」が29.2%、「やや上昇」が50.0%、「変わらない」が20.8%で、「やや減少」「減少」と回答した企業は無かった。

人件費やオフィス賃料の上昇などが、各社の経費を押し上げているとみられる(投資コスト比較参照)。

資源以外で有望な業種

資源以外で有望と思う業種を各社に聞いた(複数回答可)ところ、多かった順に、「不動産業」と「宿泊業・飲食サービス業」が19件、「金融業・保険業」が15件、「情報通信業」と「建設業」が14件と続いた。また、「その他」のうち、観光業を挙げた企業が4件あった(表1参照)。

表1:資源以外で有望と思う業種(複数回答可)(単位:件)
業種 件数
不動産業 19
宿泊業・飲食サービス業 19
金融業・保険業 15
情報通信業 14
建設業 14
卸売・小売業 12
教育・学習支援業 9
自動車・二輪車修理 8
農林業 8
運輸・倉庫業 8
電気・ガス・蒸気・空調供給 6
生活関連サービス業・娯楽業 4
製造業 3
その他 7

出所:モンゴル日本商工会アンケート

今後の外国投資の見通し

モンゴルへの外国投資の今後の見通しについては、「増加する」が4.2%、「やや増加する」が45.8%、「変わらない」が37.5%、「やや減少する」が8.3%、「減少する」が4.2%だった(図4参照)。

図4:モンゴルへの外国投資の今後の見通し
増加する4.2%、やや増加する45.8%、変わらない37.5%、やや減少する8.3%、減少する4.2%

出所:モンゴル日本商工会アンケート

モンゴルのビジネス環境

モンゴルでのビジネスにおける魅力について、各社から寄せられた回答をまとめると、主な内容は以下のとおりだった(順不同)。

  • 将来性があり、今後も経済成長が見込める
  • 競合が少なく、未開拓の市場とビジネスチャンスがある
  • 他国より若い人口構成により、今後も生産年齢人口の増加が見込める
  • 広大で豊かな自然
  • 資源関連ビジネスのポテンシャル
  • 法整備・規制が柔軟で、挑戦しやすい環境
  • 親日的な国民性、日本ブランドの優位性
  • 新しいもの好きな若者が多く、消費者向けビジネスに可能性
  • 優秀なモンゴル人材
  • 地理的位置関係

モンゴルのビジネス環境について各社に理由とともに質問したところ、「良い」が8.3%、「若干良い」が29.2%、「どちらともいえない」が31.3%、「若干悪い」が16.7%、「悪い」が14.6%だった。理由については表2のような回答が寄せられた。

表2:ビジネス環境の回答とその主な理由注:「良い」「若干良い」を選んだ回答者の理由の記載は無かった。
回答 理由の例
どちらともいえない
  • 地政学リスクの存在
  • 民間企業への政策支援の不足、国営企業優先
若干悪い
  • 仕入れ価格と人件費の上昇による利益減少
  • 日本の中古車に対する規制
  • 不透明な法規制と頻繁な制度変更
  • 行政手続きの煩雑さ
  • 情報開示の不備
  • 中国製品との競争が厳しい
悪い
  • 優良案件は規模感が小さい
  • 物価高によるコスト増
  • 地方への交通インフラ整備が不十分
  • 鉱物輸出における恣意(しい)的法解釈
  • 中国・ロシアを経由する物流の障害

注:「良い」「若干良い」を選んだ回答者の理由の記載は無かった。
出所:モンゴル日本商工会アンケート

外国企業が国内企業と比べて不利だと思う点についての質問には、訴訟、税関手続き、市場アクセス(経営許可、外資出資比率規制など)、政府の財政支援・補助金、ライセンス供与などを挙げる企業が多かった(表3参照)。

表3:国内企業と比べて不利だと思う点(複数回答可)(単位:件)
項目 件数
訴訟 16
税関手続き 15
政府の財政支援・補助金 14
市場アクセス(経営許可、外資出資比率の規制など) 13
ライセンス供与 12
規制執行 11
政府調達 9
資金調達 7
所有権・JV要件 6
知的財産権保護 5
その他 12

出所:モンゴル日本商工会アンケート

また、各社が直面している経営上の課題についての質問には、人件費の上昇、新規市場開拓、国内情勢(主に政治)の影響、新規採用の難しさ、税務対策、物流コストの上昇、経営ガバナンスの問題、国際情勢の影響などを挙げる企業が多かった(表4参照)。

表4:直面している経営上の課題(複数回答可)(単位:件)
課題 件数
人件費の上昇 26
国内情勢(主に政治)の影響 17
新規採用の難しさ 14
税務対策 13
物流コストの上昇 13
経営ガバナンスの問題 10
国際情勢の影響 9
新規市場開拓 9
訴訟対策 8
生産コストの上昇 7
デジタル化による業務効率化 6
脱炭素への取り組み 2
生産・供給体制の見直し 2
商品開発 2
CSR、寄付金などの対応 1
その他 8

出所:モンゴル日本商工会アンケート

モンゴルでのビジネスにおける問題点としては、主な内容は以下のとおりだった(順不同)。

  • 訴訟をちらつかせた圧力、リーガルハラスメント
  • 従業員の労働意識の低さ、責任回避と報連相不足
  • 行政手続きの透明性の欠如
  • 交通インフラの未整備による渋滞や地方への移動の困難さ
  • 法制度の不明瞭さ、頻繁な変更、法改正の情報伝達の遅さと猶予期間の短さ
  • 税制・関税の複雑さ、免税・税還付手続きの煩雑さ
  • 商業道徳の欠如、領収書を出さないこと
  • 外資系企業によるライセンス取得の困難さ
  • 一貫性のない政策運営による、企業の中長期的な計画や投資判断の困難さ
  • コンプライアンス、ガバナンスの低さ
  • 土地制度の外資制約
  • 人材不足
  • 融資金利の高さと金融・為替の不確実性
  • 物価上昇と価格転嫁の困難さ、代金回収リスク
  • 中国経由の物流における問題

物流を巡る問題

アンケート調査におけるビジネス環境上の問題として指摘された、鉱物輸出に係る問題および中国・ロシアを経由する物流の障害について、2026年1月にジェトロがモンゴルにおいて関連事業者などにヒアリング調査を行った。調査によると2024年11~12月頃より、鉱物資源および関連品目について、モンゴル発中国(天津港など)経由での日本など第三国への輸出が中国税関により通関を止められる事例が複数確認された。具体的には、モンゴルから鉄道を利用し輸出する一部の鉱物関連品目について、中国の内モンゴル自治区の二連浩特(エレンホト)税関において、「第三国向けには輸出通関できない」と判断され、中国を経由して輸送できないケースが確認された。輸出通関できない根拠や理由については税関からは説明がない状況となっており、ビジネス環境において大きな問題となっている。

モンゴルの労働環境

モンゴルにおける日本人の労働環境について各社に質問したところ、「良い」が2.1%、「若干良い」が18.8%、「どちらともいえない」が54.2%、「若干悪い」が18.8%、「悪い」が6.3%だった。

ポジティブな理由として、親日的、英語や日本語が比較的通じる、などが挙げられた一方、ネガティブな理由として、生活インフラ(交通渋滞、急な通行止め、急な停電)や医療体制が不十分で、長期滞在の心理的・身体的ハードルが高い、などが挙げられた。

モンゴル人の労働環境(労働市場)に関する質問では、「良い」が6.3%、「若干良い」が16.7%、「どちらともいえない」が45.8%、「若干悪い」が22.9%、「悪い」が8.3%だった。

「良い」の理由として、労働者が労働法によって非常に強く守られていることが挙げられた。これは雇用されるモンゴル人にとっては良い環境であるが、雇用主側の日系企業の中では、労働者の権利が強すぎるといった声もある。

「若干悪い」「悪い」の理由として、物価と比べて給与が低い、有能な人材の国外流出、勤労意欲や業務遂行力の低さ、離職率の高さ、通勤環境の厳しさ(渋滞、冬季の寒さ・大気汚染)などが挙げられた。

政府への要望事項

モンゴル政府への要望事項として、さまざまな項目が挙げられたが、以下の特徴や傾向がみられた。

  1. 制度・政策面
    税制・法制度・通関・入札制度など、ビジネス環境の整備に関する要望が多く見られた。透明性の確保や政治の安定も重要なテーマとして挙がっている。
  2. 経済支援・外資誘致
    外資系企業への支援や補助金制度の整備、投資促進に関する要望が複数。
  3. 社会・インフラ面
    インフラ整備(物流・環境)や教育・人材育成など、長期的な発展に向けた基盤強化の声も多い。
  4. 倫理・ガバナンス
    行政の透明性に対する懸念が複数挙げられており、信頼性の向上が求められている。

モンゴルは若い人口・資源・未開拓市場という大きな魅力を持つ一方、制度的・政治的リスクやインフラ・倫理面の課題がビジネスの障壁となっている。特に外資にとって法制度の安定性と透明性の確保が重要な改善ポイントといえる。

執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所(在ウランバートル)
藤井 一範(ふじい かずのり)
2012~2015年、ジェトロ・北京事務所コレスポンデント(在モンゴル)を経て、2018年からジェトロ・北京事務所レジデントエージェント(在モンゴル)。