プロポーズ関連サービスの高度化とインバウンド需要の広がり(日本)
花屋から生まれた新しいサービスの事例から

2026年4月16日

東京都内でフラワーギフト事業を手がけるUca外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(東京都渋谷区)は、プロポーズ向けのギフトや演出サービスを通じて事業を広げている企業だ。立ち上げからおよそ20年、フラワーデザインやギフト販売という強みを活かしつつ、顧客のリアルな声や相談に丁寧に向き合う中で、現在のプロポーズ演出サービスへと発展させてきた。

特に近年は、日本でプロポーズをしたいと考える海外の顧客が増えており、香港や台湾などの代理店との提携も進んでいる。この動きはフラワーギフト事業の枠を超えて、観光や体験型サービスとしての新たな価値を生み出している。

同社の代表取締役でフラワーデザイナーでもある片山結花氏に、同社の取り組みやインバウンド誘致におけるサービス産業の可能性について聞いた(取材日:2026年2月17日)。

独自のプロポーズ演出事業を立ち上げ

片山氏はフラワーコーディネーターとして活躍していた当時、イタリア高級ファッションブランドのFENDIが主催する「シンデレラオーディション」に選ばれたことをきっかけに、著名なフラワーアーティストであるニコライ・バーグマン氏とのつながりができた。同氏の下、片山氏はイベント装飾(フラワーディスプレー)などでさらなる経験を積んだ。これがメディアに取り上げられたことで依頼が増え、2007年の独立・会社設立へとつながったという。 Ucaでは現在、プロポーズ専用のフラワーギフトが売上高の約7割を占めている。年間約6,000件が全国へ届けられており、花びらにオリジナルメッセージを入れる「花びらメッセージ」などの独特なサービスは同社の強みの1つとなっている。

同社がプロポーズ分野に力を注ぐきっかけとなったのは、店頭に寄せられた顧客の声だ。片山氏はフラワーコーディネーターとして活動する中で、花びらにメッセージを入れたバラの注文の多くがプロポーズ目的であると気づいた。さらに男性の顧客から「(女性は)どのようなプロポーズが良いか」といった相談がたびたび寄せられていた。

こうしたニーズを踏まえ、単にギフトを提供するだけでなく、演出そのものをサポートする「How to プロポーズ」事業を立ち上げた。都内のレストラン・映画館・プラネタリウムなどと連携し、顧客の要望にあわせて企画立案から当日のサポートまで、パートナーが喜ぶプロポーズをトータルでプロデュースする体制を構築している。事業の実現までに3~4年をかけ、サービス内容を慎重に整えていったという。

インバウンド需要の拡大と海外展開支援

観光庁のインバウンド消費動向調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(232KB)によると、コト消費の金額が増加している(注)。新型コロナ禍が落ち着いた頃から、同社では海外からの問い合わせが少しずつ増え始めたため、英語や中国語での対応も進めた。その結果、香港・台湾を中心にニーズが広がり、現地の代理店とも提携して観光・体験型サービスの提供を始めることとなった。

2025年に入ると米国からの問い合わせが増えた。現在は現地の提携先を模索しているという。欧米圏にも視野を広げたことでインバウンド市場にさらなる新しい可能性が広がっている。

同社では、ジェトロのハンズオン支援を活用し、海外の提携先の調査・開拓を推進している。同社のサービスは形のない演出を輸出する「体験型サービス」であるため、海外の代理店に価値を理解してもらうまでには時間と労力がかかるという課題がある。それでも成功事例が増えるにつれてSNSや口コミを通じて認知が広がり、海外での存在感は少しずつ高まっているという。

顧客ニーズの変化に対応した演出を提供

プロポーズのスタイルは近年ますます多様化しており、映画館やプラネタリウムを利用したサプライズは年々人気を集めている。

映画館では、2人の思い出の写真やメッセージをまとめたオリジナルムービーを上映し、そのあと男性がステージに登場して思いを伝える演出が好評だ。普段貸し切ることのできない静かな場所である映画館が「2人だけの舞台」となる瞬間に強い感動が生まれるという。

プラネタリウムでは、出会った日の星空や思い出の星座を再現し、星空の下でプロポーズする演出も人気だ。海外から訪れたカップルの中には、満天の星空の下でダンスをしたケースもあった。日本でのロマンチックな体験の需要は、年々増加しているそうだ。

最近では、女性側から「こんなプロポーズがいい」と事前にリクエストするケースも増えており、プロポーズが「男性からの一方的なサプライズ」ではなく、「2人で作り上げる特別なイベント」へと変わりつつある点が印象的だ。


映画館やプラネタリウムを貸し切る『How to プロポーズ』(同社提供)

Ucaが描くインバウンド成長戦略

片山氏が常に大切にしていることは「お客様の声に耳を傾ける」姿勢であり、実際に寄せられた相談が新しいサービスの種となってきた。20年近く事業が続く背景に、「花」という軸を大切にしながら顧客の気持ちに寄り添い、付加価値を生み出してきた同氏の心構えがうかがえる。

日本国内で少子化が進み、婚姻数が減少する中、プロポーズ関連市場の縮小は避けられない。その中で同社は、海外の顧客によるインバウンド・プロポーズの需要を、今後の成長につながる大切な柱としている。

アジアから欧米へと対象地域を広げながら提携先の強化を進め、日本を「人生の特別な日のための場所」として選んでもらう、こうした取り組みが、新しい形の「体験型インバウンド」につながっていくことが期待される。


片山結花代表取締役(同社提供)

注:
国土交通省 観光庁「インバウンド消費動向調査(2025年暦年)」 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部調査企画課
岡田 篤子(おかだ あつこ)
海外調査部、ビジネス展開支援部、総務部などを経て、2022年6月から現職。