中国企業、2025年にシンガポールで7,000社弱が新たに登記

2026年3月10日

インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムでは近年、中国からの直接投資額が拡大傾向にある。シンガポールでは、中国企業による登記が近年、増加傾向にある。

ASEAN各国で中国からの対内直接投資が拡大、シンガポールでは2025年に7,000社弱が拠点設立

図1は、ASEAN加盟主要国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)における2023年以降の対内直接投資動向について、執筆時点(2026年2月上旬)で入手可能な通年データ、または各年の第1四半期から第3四半期までの累計額を基に整理したものだ。

これらの国のうち、インドネシア、タイ、ベトナムでは、この3年間で中国からの直接投資が増加した様子が確認できる。マレーシアでは2024年に落ち込みがみられるが、2025年は2023年の水準を上回る(いずれも第3四半期までの累計ベースの比較)。

図1:ASEAN主要国の中国からの対内直接投資額推移
インドネシア、タイ、ベトナムでは2023年以降、中国からの直接投資額が増加している。

注1:インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイは国際収支基準(ネット、フロー)での各年第1四半期から第3四半期の累計額(暫定値)。親子関係原則(海外親会社の自国関連会社への投資を「対内投資」とする)および資産負債原則(海外から自国への投資を「負債」〔対内投資〕)ともに入手可能な場合は、親子関係原則を採用(日本銀行ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。フィリピンは「収益の再投資」および「負債性資本」を含まない。
注2:ベトナムは認可基準の通年の金額。新規、拡張、出資・株式取得の合計。
注3:マレーシアは各年第3四半期末のレートで換算。
出所:インドネシア銀行、マレーシア中央銀行、フィリピン中央銀行、タイ銀行、ベトナム外国投資庁、IMFデータから作成

それでは、シンガポールでの中国企業の動向はどうか。シンガポールの2025年の対内直接投資統計(フロー)は、2026年5月までに発表される予定だ。そこで本稿では、シンガポール政府への登記情報を基に、中国企業のシンガポール進出の動向を把握する。シンガポールの会計企業規制庁(Accounting and Corporate Regulatory Authority:ACRA)(注1)の認定データベンダーであるハンドシェイクス(Handshakes)社によると、ACRAに登録された中国企業数は、2025年12月末時点で26,435社に上る(注2)

ACRAに登記されている中国企業を設立年別に整理したのが図2だ。2021年から2025年に設立された企業は19,737社に上る。直近3年だけを見ても増加傾向が続いており、2025年には6,819社が設立された。日本からの投資により2025年に設立された企業数(263社)の約26倍に相当する。

図2:シンガポールにおける中国企業(設立年)
シンガポールに登記する中国企業(株式所有比率10%超が在中国の企業・個人の場合)は近年増加傾向にある。

注:在シンガポール企業への出資割合が10%以上の株主の所在地が中国となっている企業が対象(2026年1月30日入手)。清算した企業などは除く。
出所:ハンドシェイクス社提供データから作成

シンガポールの中国企業を設立年別・業種別に整理したのが表1だ。1951年以降2025年までの累計、および直近3年間(2023年~2025年)の累計のいずれにおいても、「非専門卸売」が占める割合が最も大きい。順位の変動はあるものの、「持ち株会社」「経営コンサルタント」「ソフトウエアおよびアプリケーション開発」が上位4業種を占める構図に大きな変化はない。これら4業種で、累計および直近3年間のいずれにおいても全体の約50%を占める。

表1:シンガポールにおける中国企業(業種別)〔単位:構成比(%)〕 注1:図2の注参照。 注2:企業登記の際、事業内容に近い業種コード「シンガポール産業分類基準(SSIC)」を最大2つ〔「主要事業(Primary Business Activity)」と「第2次事業(Secondary Business Activity)」〕選択する。本稿の分類は「主要事業」に基づく 。「業種」は国際標準産業分類などを基に意訳。カッコ内は対応するSSIC。 注3:累計および2023年~2025年の各年それぞれの上位5業種、ならびに小売業・飲食業を抽出して掲載。
業種 1951年~2025年 2023年~2025年 2023年 2024年 2025年
非専門卸売(46900) 30.3 30.7 28.8 31.6 31.1
持ち株会社(64202) 7.7 6.9 7.3 6.6 6.9
経営コンサルタント(70201) 5.3 5.6 4.9 5.1 6.4
ソフトウエアおよびアプリケーション開発(62011) 5.0 5.2 5.3 5.5 5.0
船舶運送(50021) 2.0 1.3 1.7 1.5 1.0
情報技術コンサルタント(62021) 1.8 2.2 2.3 2.4 1.9
その他 47.8 48.1 49.6 47.3 47.9
参考:小売(471~478)および飲食(561~562) 3.7 4.2 3.2 4.2 4.8

注1:図2の注参照。
注2:企業登記の際、事業内容に近い業種コード「シンガポール産業分類基準(SSIC)」を最大2つ〔「主要事業(Primary Business Activity)」と「第2次事業(Secondary Business Activity)」〕選択する。本稿の分類は「主要事業」に基づく。「業種」は国際標準産業分類などを基に意訳。カッコ内は対応するSSIC。
注3:累計および2023年~2025年の各年それぞれの上位5業種、ならびに小売業・飲食業を抽出して掲載。
出所:ハンドシェイクス社提供データ、シンガポール統計局資料、および総務省資料 などを基に作成

また、「船舶運送」の割合が減少する一方で、「情報技術コンサルタント」の割合が増加しているのも特徴の1つといえる。さらには、「小売および飲食」も拡大しており、一般消費者向けの商品・サービスが浸透している様子を映し出している。シンガポールに本社を構える調査会社であるブラックボックス・リサーチ(Blackbox Research)社によると、中国のライフスタイルブランドがシンガポールの次世代消費者の取り込みを進めている〔ブラックボックス・リサーチ社の資料参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注3)〕。

最大の競合先として中国企業、BtoCでも存在感

先に挙げた国々に進出する日系企業から、中国を最大の競合相手とみなす声が高まっている。ジェトロが海外進出日系企業を対象に実施したアンケート調査によると、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムでは、最も競合する競争相手として中国企業を挙げた割合が前年調査と比較して増加した(表2)。一方、シンガポールでは全体の割合がわずかに減少したが、一般消費者(BtoC)向けビジネスに携わる日系企業での回答割合が増加した。

表2:最も競合する競争相手として中国企業を挙げた割合(単位:%、%ポイント)(△はマイナス値、ーは値なし) 注1: カッコ内は、最も競合する競争相手の質問に回答した企業数(2024年度調査/2025年度調査)。各年8月から9月にかけて調査を実施。その他の詳細については、ジェトロのウェブサイトを参照。 注2:「全体」の内訳は売上高に最も貢献している主要製品・サービスの、半数以上を占める主な販売先。 注3:小数点第2位以下は端数処理している。
所在国 2025年度調査 前年度調査からの増加幅
全体 一般消費者
(B to C)
企業
(B to B)
その他 全体 一般消費者
(B to C)
企業
(B to B)
その他
インドネシア(333/333) 25.8 1.5 23.7 0.6 8.4 1.2 6.6 全増
マレーシア(239/323) 27.9 2.8 24.8 0.3 1.9 1.1 0.5 全増
フィリピン(87/147) 21.8 0.7 20.4 0.7 10.3 全増 8.9 全増
タイ(374/585) 30.8 0.9 29.7 0.2 3.0 0.1 2.7 全増
ベトナム(505/737) 19.9 0.8 19.1 1.9 0.6 1.3
参考:シンガポール(256/391) 24.6 2.0 21.7 0.8 △ 0.4 0.9 △ 1.3 △ 0.0

注1: カッコ内は、最も競合する競争相手の質問に回答した企業数(2024年度調査/2025年度調査)。各年8月から9月にかけて調査を実施。その他の詳細については、ジェトロのウェブサイトを参照。
注2:「全体」の内訳は売上高に最も貢献している主要製品・サービスの、半数以上を占める主な販売先。
注3:小数点第2位以下は端数処理している。
出所:ジェトロ「海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」

在シンガポール日系企業からは、「脱中国の動きが加速する中で、中国企業のASEAN進出が強まり、需要増加が見込まれる」(在シンガポール日系非製造業企業A社)(注4)との声が挙がるように、ASEANに進出する中国企業とのビジネス機会を模索する動きもみられる。また、シンガポール以外のASEANに進出する日系企業からも、「総売り上げは伸び悩んでいるが、中国の自動車メーカー向けの取引が増えている」(在インドネシア日系非製造業企業B社)、「マレーシアやベトナムに進出する中国企業から材料調達に関する問い合わせを受けている」(在マレーシア日系製造業企業C社)など、ASEANに進出する中国企業から受注する例もみられる。一方で、「中国国内でパートナーとして認められ、取引実績がなければ、ビジネスにつながらない」(在タイ日系非製造業企業D社)など、ASEAN現地における営業の難しさを指摘する意見も聞かれる(注5)


注1:
シンガポールで、現地法人や支店設立の登記は、原則としてACRAに届け出る。ただし、通貨金融庁など、別の政府機関が管轄している場合を除く。 本文に戻る
注2:
本原稿では、中国の住所を持つ法人・個人の出資が10%以上の企業を「中国企業」と定義した。 本文に戻る
注3:
レポート閲覧の為には名前とEmailアドレスを入力する必要がある。本文に戻る
注4:
海外進出日系企業実態調査 ―シンガポール分析編―外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を参照。 本文に戻る
注5:
2025年11月から2026年1月までに実施したヒアリングに基づく。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・シンガポール事務所次長
朝倉 啓介(あさくら けいすけ)
2005年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、国際経済研究課、公益社団法人日本経済研究センター出向、ジェトロ農林水産・食品調査課、ジェトロ・ムンバイ事務所、海外調査部国際経済課を経て現職。