米国カリフォルニア州で加速する蓄電池(BESS)導入
データセンター需要の拡大と電力需給構造の変化
2026年8月7日
米国カリフォルニア州では、電力系統の制約や再生可能エネルギー導入の拡大、データセンターなどを中心とした電力需要の増加を背景に、大規模蓄電池(BESS)の導入が急速に進展している。蓄電池は今や、安定的な電力系統の運用と供給力の確保を担う重要なインフラとして位置付けられている。本稿では、同州における蓄電池プロジェクトの最新動向および電力需給構造の変化について概観する。
直近1年で蓄電池関連プロジェクトが3つ承認
カリフォルニア州では、ギャビン・ニューサム知事(民主党)が拡張した迅速許認可制度(注1)の下、2025年6月以降に3件の蓄電池関係のプロジェクトが承認されている(表参照)。大規模太陽光発電と蓄電池の併設型に加え、サンフランシスコ近郊のアラメダ郡では蓄電池単独のプロジェクトが承認され、用途や立地に応じた蓄電池活用の多様化が進んでいる(2026年6月5日付ビジネス短信参照)。加えて、蓄電池に関する7件のプロジェクトが申請されている。これらが承認されると、さらなる開発の加速が期待される。
| プロジェクト名 | 所在地 | 承認時期およびステータス | 発電容量/蓄電池容量(出力/容量) | 概要 |
|---|---|---|---|---|
| ダーデン・クリーンエネルギー・プロジェクト(Darden Clean Energy Project) | フレズノ郡(州中部セントラルバレー) | 2025年6月承認 |
(太陽光)1,150MW (蓄電池)1,150MW/4,600MWh |
州内での発電容量最大規模級の太陽光+蓄電池一体型プロジェクト |
| ソーダ・マウンテン太陽光発電プロジェクト(Soda Mountain Solar Project) | サンバーナーディーノ郡(州南東部ロサンゼルス近郊内陸) | 2026年4月承認 |
(太陽光)300MW (蓄電池)300MW / 1,200MWh |
中規模のハイブリッド案件(太陽光+蓄電池) |
| ポテンシア・ヴィリディBESS(Potentia-Viridi BESS) | アラメダ郡(州北部ベイエリア) | 2026年5月承認 | 400MW / 3,200MWh | 単独蓄電池としては大規模、都市近郊型 |
| コンパス・エネルギー貯蔵プロジェクト(Compass Energy Storage Project) | サン・ファン・カピストラーノ(州南部ロサンゼルス近郊) | 審査中 | 250MW/1,000MWh | 都市圏に対応する単独BESS |
| コービーBESSプロジェクト(Corby Battery Energy Storage System Project) | ソラノ郡(州北部ベイエリア) | 審査中 | 300MW/1,200MWh | 系統調整用の単独BESS |
|
バカ・ディクソン電力供給拠点プロジェクト (Vaca Dixon Power Center Project) |
ソラノ郡(州北部ベイエリア) | 審査中 | 157MW/457MWh | 系統調整用の単独BESS |
| シーホークBESS(Seahawk BESS) | サンタクルーズ郡(州北部ベイエリア南側) | 審査中 | 200MW / 800MWh | 再生可能エネルギーの統合および系統安定化に対応する単独BESS |
| ヴィラコチャヒルBESSプロジェクト(Viracocha Hill Battery Energy Storage System Project) | アラメダ郡(州北部ベイエリア) | 審査中 | 90.7MW/362.8MWh | 単独BESS |
| プレーリーソング系統信頼性強化プロジェクト(Prairie Song Reliability Project) | ロサンゼルス郡(州南部ロサンゼルス) | 審査中 | 1,150MW/9,200MWh | 系統安定供給用の単独BESS |
| パーキンズ再生可能エネルギープロジェクト(Perkins Renewable Energy Project) | インペリアル郡(州南部サンディエゴ近郊) | 審査中 |
(太陽光)1,150MW (蓄電池)1,150MW/4,600MWh |
再生可能エネルギーと蓄電池のハイブリッド式 |
出所:カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)ウェブサイトからジェトロ作成
逼迫するカリフォルニア州の電力需給
蓄電池の導入拡大の背景には、電力の需要側と供給側それぞれの事情がある。カリフォルニア州の電力需要は2019年から2020年代中盤にかけて26万ギガワット時(GWh)台で推移してきたが、2020年代後半に増加基調に転じ、2031年には30万GWhを超えると見込まれている(図参照)。州のエネルギー政策を担うカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)は、データセンターの建設や、電気自動車(EV)の普及、建物の電化などが、電力需要を押し上げると予測する。とりわけ、近年のデータセンターは単一施設で数百メガワット(MW)規模という大規模な電力需要を伴う場合もあり、電力需給の逼迫が懸念される(注2)。このため、必要電力の補完やバックアップ電源の機能をもつ蓄電池の有用性は大きい。
注:2025年以降は推計値。
出所:CECウェブサイトからジェトロ作成
供給側の制約と発電・系統接続のボトルネック
供給側では、太陽光発電の大規模導入により、昼間の過剰発電と夕方のピーク需要への対応(いわゆるダックカーブ)が、系統運用上の課題となっている。蓄電池はこの課題に対し、昼間の余剰電力を吸収し、夕方に放電することで需給調整機能を担う中核的手段とされている。さらに、蓄電池は発電設備と切り離して柔軟に配置できることから、需要地近傍や系統連系の制約が大きい地点に設置することで系統混雑を緩和し、系統運用の安定化に寄与する独立型蓄電池の重要性が高まっている。
発電設備の系統接続における構造的制約も蓄電池が必要となる要因だ。カリフォルニア州独立系統運用機関(CAISO)によれば、カリフォルニア州における発電設備の系統接続の完了率(系統接続申請案件のうち商業運転に至った案件の割合)は10~11%にとどまる一方、撤回率(開発事業者が系統接続を取り下げた割合)は約73%に達する(2026年6月時点)。残る案件の多くも審査や接続待ちの状態にある。さらに、2024年後半に申請された108件の案件のほとんどが2028年以降の商業運転を想定しており、接続までに数年単位の時間を要する(注3)。
すなわち、発電設備の開発スピードに比べて、実際の系統接続が大きく遅れており、必ずしも即時に系統へ電力供給できない状況となっている。なお、この傾向は全米でもみられ、連邦エネルギー省傘下のローレンス・バークレー国立研究所(LBNL)の送電網接続分析(Interconnection Queue)によれば、2000~2019年に全米で申請された発電プロジェクトのうち商業運転に至ったのは容量ベースで13%にとどまる(2024年末時点)。77%が事業者によって撤回、約1割が接続前の調査などで長期滞留し、結果として約9割が未稼働のままだ。さらに、接続申請から接続完了までの期間(中央値)は2000年代前半の2年未満から、2024年には4年以上へと大幅に長期化している。特にカリフォルニア州は6年を超え、他の主要州を大きく上回る遅れが生じている。
こうした電力供給制約の深刻化を受け、ハイパースケーラー(注4)は電源確保に直接関与する動きを強めている(2025年6月17日付ビジネス短信参照)。従来は電力会社に依存していた電力調達を、自社による電源確保やエネルギーインフラ投資によって賄うことが目的だ。一方、データセンター開発企業も蓄電池を活用した電源確保を進めている。例えば、EVバッテリーのリサイクルを主業としていたレッドウッドマテリアルズ(Redwood Materials)は、使用済みEVバッテリーを再利用した蓄電池と太陽光発電を組み合わせた蓄電システムを人工知能(AI)データセンター向けに供給している。データセンター事業者であるアラインドデータセンターズ(Aligned Data Centers)やサイラスワン(CyrusOne)も、大規模蓄電池の導入計画を発表している。このように、データセンターなどの大口需要家の間では、蓄電池を活用して電源確保や需給調整機能の一部を担う動きが広がっている。供給機能の一部を需要側が取り込む事例も見られ始めており、需要拠点が系統運用を補完する役割を担う可能性が高まっている。
CAISO・CECの共通認識:蓄電池は「電力システムの中核インフラ」へ
本稿で整理した電力需給構造の変化について、ジェトロが2026年6月に実施したCAISOとCECへのヒアリングでは、両者はともに蓄電池を電力システムの信頼性と電力供給を支える中核インフラとして位置付けていた。一方で、CAISOは系統運用の観点、CECはエネルギー政策として導入拡大を推進する観点というそれぞれ異なる立場から、その重要性を示した。
具体的には、CAISOは、蓄電池が電力の出力調整や再生可能エネルギーの変動吸収、ピーク需要対応を通じて系統安定化に寄与すると評価した。また、太陽光発電の出力が低下する夕方以降に生じる純需要のピークであるネットピークへの対応や、緊急時の電力供給維持など系統信頼性にも重要な役割を果たしているとした。一方CECは、そうした系統信頼性の向上と再生可能エネルギーの最大活用の両立を実現する基盤技術として蓄電池の重要性を指摘した。リチウムイオン電池のコスト低下を背景に蓄電池の導入は急速に拡大しており、州の迅速許認可制度の下で過去1年に1,850MWの蓄電池が導入され、さらに数千MW以上の案件が審査中という。電力需要の増加を受け、CECは2045年までに州の電力を100%クリーンエネルギーにするという目標達成に向け、再生可能エネルギー、蓄電池、新技術を組み合わせた電力システムの構築を進める意向だ。CAISOとCECの双方が蓄電池を中核資源と位置付けていることは、カリフォルニア州における電力システムの構造転換が系統運用面と政策面の同時並行で進んでいることを示唆する。
カリフォルニア州では、太陽光発電の拡大に伴う需給変動への対応に加えて、系統接続という供給側の制約やEV・データセンターなどによる電力需要の増加といった複数の要因が作用する中で、蓄電池は単なる電力需給の調整手段にとどまらず、安定的な系統の運用と電力供給の確保を担う基盤インフラとして、今後も役割を拡大していくことが予想される。
- 注1:
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カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)が太陽光発電、陸上風力発電、エネルギー貯蔵システムなどのクリーン・再生可能エネルギー施設、クリーンエネルギー技術やその構成部品を製造・組み立てる施設の許認可を一元的に監督できる仕組み。
- 注2:
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実際、米国エネルギー情報局(EIA)によれば、データセンターが集積するバージニア州では、データセンター建設などにより、商業部門の電力需要が2019~2025年に約3,000万MWh増加したという。
- 注3:
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108件のうち、蓄電池単独または太陽光との併設案件が81件と全体の4分の3を占め、申請案件数からも再生可能エネルギーによる発電の不安定性に対応するための蓄電池の重要性が高まっていることが読み取れる。なお、案件内容はデータセンターに限らない。
- 注4:
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膨大な計算資源やインフラを所有し、大規模なクラウドコンピューティングサービスを提供する事業者。アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどが含まれる。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・サンフランシスコ事務所 ディレクター
芦崎 暢(あしざき とおる) - 民間企業にて海外事業立ち上げなどを担当後、2018年ジェトロ入構。ECビジネス課、デジタルマーケティング部、ジェトロ名古屋を経て、2023年8月から現職。





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