新車販売は低迷も、BEVと輸出が拡大(インドネシア)
中古車市場の拡大が新車需要を下押し

2026年6月1日

国内新車販売の低迷が続く一方、BEV販売と輸出が拡大し、市場構造の変化が鮮明になった。BEV市場では中国系が存在感を高めたが、販売拡大は輸入車に大きく支えられている。また、中古車市場の拡大が新車需要を下押ししている。インドネシア市場は、新車内需が牽引する段階から、BEV輸入、輸出、中古車市場が併存する段階に移りつつある。本稿では、2025年のインドネシア自動車市場の動向について紹介する。

国内新車市場は弱含み、バッテリー式電気自動車(BEV)販売は拡大

こうした変化の前提として、国内新車市場の弱さがある。新車販売台数は前年比7.2%減の80万3,679台となり、2024年に続き100万台を大きく下回った。内訳は、乗用車が63万5,379台、商用車が16万8,300台だった(表1参照)。生産台数も前年比4.1%減の114万7,600台にとどまり、国内需要の弱さが生産面にも影響した。

一方で、BEVの販売拡大、完成車(CBU)・完全ノックダウン(CKD)方式によって国内生産された車両の輸出の増加、中国系メーカーを中心とした輸入車の急増、中古車市場の拡大など、市場構造の変化も鮮明になった。2025年の自動車市場は、単なる景気循環による販売減ではなく、消費者行動、メーカー間競争、電動化政策、輸出拠点としての位置付けの変化など、複合的な要因が重なった年だった。

表1:自動車の生産・販売・輸出の対前年比(2024~2025年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
販売/生産/輸出 項目 2024年 2025年 前年比
販売 乗用車 672,986 635,379 △ 5.6
商用車 192,737 168,300 △ 12.7
合計 865,723 803,679 △ 7.2
生産 乗用車 1,026,976 983,474 △ 4.2
商用車 169,688 164,126 △ 3.3
合計 1,196,664 1,147,600 △ 4.1
輸出 CBU 472,194 518,212 9.7
CKD 46,311 63,263 △ 36.6
合計 518,505 581,475 △ 12.1

出所:インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)からジェトロ作成

販売減の背景には、複数の要因がある。第1に、自動車ローン金利の高止まりや与信審査の厳格化により、分割払いで新車を購入する消費者の負担が増した。第2に、車両価格の上昇が中間所得層の購買余力を圧迫している。2025年12月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比2.92%だったが、新車価格はそれを上回るペースで上昇しているとの指摘もある。所得の伸びが追いつかなければ、消費者は購入時期を先送りするか、中古車へ移行する傾向が強まる。第3に、商用車販売の低迷も市場全体を押し下げた。2025年の商用車販売は16万8,300台で、物流、建設、資源関連などの事業用需要にも慎重姿勢がみられた。

BEV販売が10万台を突破、中国系・新興勢が主導

販売台数を燃料別に見ると、ガソリン車が45万5,948台で最多だった。一方、BEVは10万3,930台に達し、販売全体の12.9%を占めた(図1参照)。ディーゼル車は17万3,240台、ハイブリッド車(HEV)は6万5,323台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は5,235台だった。2025年は、BEV販売台数がHEVを上回った。

BEV販売をブランド国籍別に見ると、中国が8万8,987台と大半を占め、次いでベトナムが1万885台、韓国が1,828台で続いた。日本勢のBEV販売は限定的であり、中国系・新興勢の勢いが続いている(表2参照)。

図1:燃料別販売台数(2021~2025年)
2025年はガソリン車が56.7%で最多、ディーゼル車が21.6%、BEVが12.9%、HEVが8.1%。BEVは2021年の0.1%未満から2025年に12.9%へ拡大し、HEVを上回った。

出所:ガイキンドからジェトロ作成

表2:BEV国別販売台数(2025年)(単位:台、%)
国名 台数 割合
中国 88,987 85.6
ベトナム 10,885 10.5
韓国 1,828 1.8
ドイツ 824 0.8
フランス 660 0.6
インドネシア 455 0.4
日本 190 0.2
スウェーデン 101 0.1
合計 103,930 100.0

出所:ガイキンドからジェトロ作成

日系が首位維持も前年比減、中国勢が急迫

販売をブランド別に見ると、トヨタ自動車が25万431台で首位を維持し、ダイハツが13万677台、三菱自動車が7万1,781台、スズキ自動車が6万6,345台、本田技研工業(ホンダ)が5万6,495台と続いた。日系メーカーは依然として上位を占め、販売網、アフターサービス、部品供給、ブランド信頼性の面で強みを維持している。一方、前年同期と比較すると、軒並み減少した(表3参照)。そのような中、中国のBYDは4万6,711台で6位に入り、DENZAブランドを含むBYDグループでは前年度比約3.3倍となる5万4,185台となった。奇瑞汽車も約2.1倍となる1万9,391台だった。2017年から中国ブランドの中では比較的早く進出をしている上汽通用五菱汽車(ウーリン)は、前年同期比マイナス15.1%の1万8,605台だった。特にBEVでは、日系メーカーが強みを持つ内燃機関車やHEVとは異なり、価格、航続距離、充電性能、車載ソフトウエア、先進装備などが競争軸になっている。

表3:ブランド別販売台数(2024~2025年)注:BYDには、DENZAブランドを含む。
順位 ブランド名 国名 2024年 2025年 シェア
(2025年)
前年同期比
増加率
1 トヨタ自動車 日本 288,982 250,431 31.2 △ 13.3
2 ダイハツ 日本 163,032 130,677 16.3 △ 19.8
3 三菱自動車 日本 72,217 71,781 8.9 △ 0.6
4 スズキ自動車 日本 66,809 66,345 8.3 △ 0.7
5 本田技研工業 日本 94,742 56,495 7.0 △ 40.4
6 BYD 中国 16,669 54,185 6.7 225.1
7 三菱ふそう 日本 27,804 25,310 3.1 △ 9.0
8 いすゞ 日本 26,296 25,046 3.1 △ 4.8
9 奇瑞汽車 中国 9,191 19,391 2.4 111.0
10 現代自動車 韓国 22,361 19,012 2.4 △ 15.0
合計 865,723 803,679 100 △ 7.2

注:BYDには、DENZAブランドを含む。

出所:ガイキンドからジェトロ作成

BEV拡大は輸入依存、現地生産化が次の焦点

生産をブランド別に見ると、トヨタ自動車が51万1,248台で最大となり、三菱自動車が16万6,180台、ダイハツが13万441台、スズキ自動車が8万7,945台、現代自動車が7万866台と続いた。販売と同様、生産面でも日系メーカーの存在感は大きい。

燃料別では、ガソリン車が86万971台、ディーゼル車が15万9,209台、HEVが9万7,462台だったのに対し、BEVは2万3,934台にとどまった。販売ではBEVが10万台を超えた一方、生産は限定的で、需要拡大は輸入依存だったとみられる。

インドネシア政府は、豊富な埋蔵量を抱えるニッケル資源を活用し、精練施設やバッテリー製造工場、完成車(BEV)工場への投資誘致につなげる下流化政策を推進している。ただし、現時点では輸入車がBEV需要の多くを担っており、今後は現地生産と現地調達をどこまで進められるかが課題となる。

実際、2025年の自動車輸入台数(17万7,613台)は、2024年の9万7,010台から大幅に増加した。燃料別では、BEVが10万6,394台で最多となり、輸入全体の59.9%を占めた。ディーゼル車は4万3,484台、ガソリン車は1万9,520台、HEVは7,881台だった。BEVの輸入元では、中国が8万4,229台、ベトナムが2万289台で大宗を占めた。ブランド別ではBYDが7万4,513台(DENZAブランド含む)、ビンファストが2万289台、AIONが6,839台だった。

政府によるBEV優遇措置や、将来の現地生産を前提とした輸入販売が、BEV市場拡大を後押ししたとみられる。2023年に改正された大統領令79号では、2027年末までに同規定を利用した台数分のBEV国内生産を条件に、一定の要件を満たしたBEVや関連部品について、輸入税や奢侈(しゃし)税を2025年末まで免除する措置などを含む財政インセンティブが導入された。

同措置は2025年末で終了したが、2026年には内務大臣規則11号でBEV向け自動車税(PKB)と自動車所有権移転税(BBNKB)の減免が規定された。また、同年4月の通達では、中東情勢の不安定化に端を発するエネルギー価格・供給の不安定化や再生可能エネルギー支援を踏まえ、各州知事に対してBEV向けPKB・BBNKB免除の措置を講じるよう要請した。さらに、2026年5月時点の報道によると、政府は四輪EV10万台、電動二輪10万台を対象とする追加支援を検討していた。当初は同年6月初めの導入を目指し、具体的には、四輪EVでは付加価値税(VAT)の40~100%を政府が負担し、電動二輪には1台当たり500万ルピアを補助する案が示されていた。その後、補助制度や税制スキームの精査に時間を要するとして、導入を7月に延期するとしている。

輸出は拡大、フィリピン・ベトナム向けが牽引

輸出は国内販売とは対照的に拡大した。2025年の輸出台数は、CBUが51万8,212台、CKDが6万3,263台で、合計では58万1,475台となった。2024年の51万8,505台から約12%増加した。輸出先では、フィリピンが18万9,942台で最大となり、ベトナムが9万3,274台、メキシコが6万4,311台、サウジアラビアが3万6,330台、タイが2万6,027台と続いた(表4参照)。ASEAN域内向けが中心だが、メキシコや中東向けも一定規模を占めており、インドネシアは国内市場に加え、広域輸出拠点としての役割を強めていることがうかがえる。

ブランド別では、トヨタ自動車が29万8,457台、三菱自動車が15万3,236台、現代自動車が6万2,697台、スズキ自動車が3万6,488台だった。国内販売が伸び悩む中、輸出の重要性は一段と高まっている。

表4:輸出先上位と主要輸入BEVブランド(2024~2025年) (単位:台、%)(ーは値なし)

輸出先国
輸出先国 2024年 2025年 割合
(2025年)
フィリピン 174,601 189,942 32.7
ベトナム 84,555 93,274 16.0
メキシコ 48,360 64,311 11.1
サウジアラビア 43,834 36,330 6.2
タイ 14,231 26,027 4.5
ペルー 12,109 21,259 3.7
UAE 14,710 12,695 2.2
日本 5,246 12,073 2.1
マレーシア 12,167 10,766 1.9
チリ 6,592 8,295 1.4
総輸出台数 518,505 581,475 100.0
輸入BEVブランド注:BYDには、DENZAブランドを含む。
輸入BEVブランド 国名 2024年 2025年 割合
(2025年)
BYD 中国 16,767 74,513 70.0
ビンファスト ベトナム 20,289 19.1
AION 中国 1,240 6,839 6.4
GEELY 中国 1,800 1.7
ポリトロン インドネシア 765 0.7
CITROEN フランス 361 660 0.6
GWM 中国 630 0.6
XPENG 中国 293 0.3
MINI ドイツ 373 203 0.2
MAXUS 中国 150 0.1
総輸入台数 20,294 106,394 100.0

注:BYDには、DENZAブランドを含む。

出所:ガイキンドからジェトロ作成

中古車市場の拡大が新車需要を圧迫

新車販売低迷の背景として、中古車市場の拡大も見逃せない。インドネシア大学経済社会研究所(LPEM)によると、2024年の中古車販売台数は180万台に達し、新車販売(86万6,000台)の約2.1倍となった。新車と中古車を合わせた市場に占める中古車の比率は67.5%で、2005年以降で最も高い水準だった。

2019年時点では、新車販売104万3,000台、中古車販売103万3,000台とほぼ同規模だった。しかし、2020年には新型コロナウイルスなどの影響で新車販売が57万9,000台に落ち込む一方、中古車販売は112万6,000台に増加し、中古車比率は66.0%へ急上昇した。その後も中古車優位の状況は続き、中古車販売は2022年に134万台、2023年に140万台、2024年に180万台へ拡大した(図2参照)。2019~2024年を見ると、新車販売は約17%減少した一方、中古車販売は約74%増加した。これは、新車販売の低迷が一時的な買い控えだけでは説明できないことを示しており、消費者が価格面で手の届きやすい中古車へ移行している可能性を示唆している。

図2:新車販売と中古車販売の推移(2005~2024年)
2024年は新車866千台に対し、中古車は1,800千台となり、中古車比率は67.5%。2019年は新車と中古車がほぼ同規模だったが、2020年以降は中古車が新車を大きく上回っている。

出所:LPEMからジェトロ作成

中古車市場の拡大には、新車価格の上昇、自動車ローン金利の高止まり、中間所得層の購買力低下などがあるとみられる。中古車市場の成長は、低価格・省エネ車(LCGC)や低価格多目的乗用車(MPV)といった新車の量販セグメントにも影響を及ぼす可能性がある。同じ予算で、新車の小型・低価格車ではなく、より車格の高い中古MPVなどを選ぶ消費者が増えれば、価格に敏感な初回購入層や中間所得層を主な対象とする新車販売を下押しする可能性がある。

また、中古車市場は新車メーカーにとって単なる競合要因にとどまらない。中古車の流通量が増え、品質保証やファイナンスが整備されれば、中古車購入の心理的なハードルはさらに下がる。OLXmobbi、Carsome、Carro、Moladinなど、オンライン売買、査定、保証、ローンを組み合わせたサービスも存在感を増している。こうしたサービスは、中古車市場の透明性と利便性を高め、新車需要の回復を抑制する要因となる可能性がある。

2026年はBEV優遇策、BYD現地生産、日系対応が焦点

2026年の焦点は、BEV優遇策の行方、輸入BEVの反動減の有無、国内消費の回復、そして日系メーカーの対応にある。2025年のBEV販売は、税制優遇や輸入拡大に支えられた側面が大きく、優遇策の変更や終了は販売ペースに影響する可能性がある。特に、2025年に急増した中国・ベトナムからのBEV輸入が、どの程度現地生産へ移行するかが注目される。

最も注目されるのがBYDの動向だ。同社は西ジャワ州スバン県で工場建設を進めており、2026年第1四半期の生産開始を目指していた。工場の年産能力は15万台とされる。2026年5月時点で稼働開始は確認されていないが、量産開始時期、生産車種、稼働率が焦点となる。現地生産が本格化すれば、輸入依存してきたBEV市場構造が変化し、価格競争や国産化率への対応も次の焦点となる。

また、BYDは2026年5月、PHEV投入も発表した。これまでBEVは充電ステーションの制約からジャカルタなどの首都圏を中心に普及していた。PHEV投入により、ジャワ島以外を含む地方部まで販売が広がるかが注目される。

日系メーカーにとっては、既存の販売網、HEV技術、現地生産基盤を活用しながら、どの価格帯・車種で電動車市場に対応するかが課題となる。インドネシアでは依然として価格競争力が重視され、電動車でも、中間所得層が購入しやすい価格帯へ近づけられるかが、普及にあたってのカギとなる。

一方、国内新車販売が80万台前後にとどまる中、中古車市場の拡大が続けば、新車需要の本格回復には時間を要する可能性がある。2025年のインドネシア自動車市場は、新車販売の低迷の一方で、輸出拡大、BEV輸入の急増、中古車市場の拡大が同時に進行した。市場は、日系メーカー中心の新車販売による内需主導型から、BEV輸入、輸出拡大、中古車市場が併存する新たな段階に入りつつある。今後は、BEVの現地生産化と中古車市場の動向が、新車市場の回復力を左右することになりそうだ。

執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
大滝 泰史(おおたき やすふみ)
2014年、ジェトロ入構。総務部広報課、アムステルダム事務所、福井貿易情報センターを経て、2021~2023年に経済産業省通商政策局経済連携課に出向。CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)の英国加入プロセスなどの日本のEPA/FTA(経済連携協定/自由貿易協定)交渉および利活用促進のための業務に従事。その後、調査部国際経済課を経て、2023年12月からジャカルタ事務所で広域調査員として勤務。