食品添加物規制を14年ぶりに刷新(メキシコ)
許可リストの統合に加え、使用基準、申請、表示、更新制度を見直し

2026年9月14日

メキシコ保健省は2026年8月21日、食品、飲料、サプリメントに使用できる添加物と加工助剤、その衛生要件を定める新省令を連邦官報で公布した(2026年8月26日付ビジネス短信参照)。新省令は公布後60営業日の11月中旬に発効し、2012年省令と、2013年および2016年の改正を廃止する(附則第1条、第2条)。今回の改正は許可リストの統合だけでなく、使用条件、事前評価、表示、経過措置、将来の更新方法まで含む。改正は多岐に及び、かつ今後も規制内容が更新される可能性がある。本レポートでは、日本企業への影響が大きいポイントや、今後留意すべき事項を整理する。

ウェブ更新を含む制度を11付属書に統合

新省令は、旧省令と同じ11付属書の構成を維持する(第3条、表1)。一方、連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)が連邦官報未掲載のままウェブサイトで公表してきた新規物質や既存添加物の用途拡大を取り込み、2026年時点の許可リストとして再構成した。

旧制度では、2012年省令、2013年・2016年改正、さらに付属書別のウェブ更新を照合する必要があり、各添加物に適用される現行条件を特定しにくかった。新省令はこれらを一本化したものだが、単なる再編集にとどまらず変更が多岐に及ぶ。個々の添加物について、使用できる食品カテゴリー、最大使用量、用途制限、注記なども変更されており、事業者は新旧リストを改めて照合する必要がある。

表1:新省令の11の付属書出所:2026年8月21日付保健省令(第2条、第3条)を基に作成
付属書 内容
I 許容1日摂取量(ADI)が設定された一般添加物(保存料、乳化剤、酸化防止剤など)
II 適正製造規範(GMP)に基づき使用できる一般添加物
III ADIが設定された着色料
IV GMPに基づき使用できる着色料
V チューインガム用精製物質
VI 酵素
VII ADIが設定された甘味料
VIII GMPに基づき使用できる甘味料
IX 乳児用調製乳、フォローアップ調製乳、特別栄養用途向け調製乳に使用できる添加物
X 加工助剤
XI 香料

出所:2026年8月21日付保健省令(第2条、第3条)を基に作成

注:ADIは、人が生涯にわたり毎日摂取しても健康への悪影響がないと推定される、体重1キログラム当たりの1日摂取量。食品ごとの添加物の最大使用量とは異なる。

GMPに基づく使用と個別制限の関係を明確化

付属書II、IV、V、VI、VIII、X、XIに収載された物質は、適用される衛生規定または新省令に個別の制限がない限り、全ての製品カテゴリーに数値上限を設けず、適正製造規範(GMP)に従って使用できる(第6条)。

したがって、これらの添加物には、原則として食品カテゴリー別の一律の数値上限は設定されない。一方で、付属書上で個別条件や注記、製品別の衛生規定、新省令の別の規定に使用制限が定められている場合がある。このため、GMPに基づく使用が認められた物質についても、対象製品に適用される個別規定を確認する必要がある。

また、乳児用調製乳、フォローアップ調製乳、特別栄養用途向け調製乳については、付属書IXに収載された添加物のみ、同付属書が定める条件と最大使用量の範囲で使用できる(第7条、付属書IX)。

原料由来の添加物移行を容認、一部食品の着色料は対象外

新省令は、食品の原材料に適法に使用された添加物が、その原材料を通じて最終製品に移行する「キャリーオーバー原則」を定義した(第2条)。この原則により、最終製品に添加物を直接加えていない場合でも、その製造に用いた複合原料などに添加物が含まれていれば、一定の条件の下で最終製品に残存することが認められる。

また、調理済みまたは半調理済みの食品は、構成原料への使用が認められている添加物を、各原料の配合割合に応じて含有できる。これに加え、当該食品への使用が明示的に認められている添加物も使用できる(第8条)。

ただし、付属書IIIの一般注記は、このキャリーオーバー原則の例外として、一部の食品について着色料の移行を認めていない。具体的には、油脂、乳児用食品、卵製品、果汁、魚介・食肉製品、トマト加工品などは、新省令で個別の定めがない限り、原材料を通じて移行した着色料が認められない。

このため、輸出者は、最終製品に着色料を直接使用しているかだけでなく、香味原料、調味液、製菓材料などの複合原料に着色料が含まれていないか、その着色料のキャリーオーバーが最終製品で認められるかも確認する必要がある。

付属書にない食品用途はCOFEPRISが事前評価

許容1日摂取量(ADI)(注1)が設定された一般添加物、着色料、甘味料について、付属書に記載のない食品への使用を希望する場合は、使用量を含めCOFEPRISの事前評価を受ける必要がある(第5条)。

申請者は、国際食品規格委員会(CODEX)、米国、カナダ、EUそれぞれの規制状況に加え、既に認められている用途と新たな用途を合算した暴露評価、同評価に用いたメキシコ人の食品摂取データを提出する(第5条第1~6号)。これは、4法域の全てで当該用途が許可されていなければならないという意味ではない。各法域の規制状況を申請資料として示し、既存用途を含むメキシコ国内での推定摂取量を基に、COFEPRISが安全性を判断する仕組みである。

着色料は数値による管理を強化

安息香酸・安息香酸塩については、2016年改正時点の旧省令と比べ、非アルコール香味飲料の上限が1リットル(L)当たり600ミリグラム(mg)から250mgとなるなど、一部食品カテゴリーで上限が引き下げられている。このほか、クリーム類や乳菓などでも、2016年改正時点の旧省令を下回る上限が新省令に反映された(付属書I「安息香酸・安息香酸塩」の項、表2)。同じ添加物でも食品カテゴリーごとに上限や換算基準が異なるため、添加物の名称だけでは適否を判断できない。

表2:安息香酸・安息香酸塩の上限変更例注:実際の適否を判断する際は、製品カテゴリー、対象となる安息香酸塩、安息香酸への換算方法、他の保存料との併用条件、付属書中の注記も確認する必要がある。
食品カテゴリー 旧基準 新基準
非アルコール香味飲料 600mg/L 250mg/L
クリーム類 1,000mg/kg 500mg/kg
乳菓 1,000mg/kg 300mg/kg
液状卵黄・液卵 1,000mg/kg 500mg/kg
小麦粉トルティーヤ 1,000mg/kg 500mg/kg
サプリメント 2,000mg/kg 1,000mg/kg

注:実際の適否を判断する際は、製品カテゴリー、対象となる安息香酸塩、安息香酸への換算方法、他の保存料との併用条件、付属書中の注記も確認する必要がある。

出所:2016年の保険省令改正および2026年8月21日付保健省令の付属書I「安息香酸・安息香酸塩」の項を基に作成

ただし、これらの上限の多くは、新省令で導入されたものではない。COFEPRISは旧省令下でも官報掲載を伴わない付属書の更新をウェブサイト上で公表し、一部の使用基準を既に適用していた。例えば、非アルコール香味飲料の上限250mg/Lは2020年5月15日、クリーム類の500mg/キログラム(kg)は2023年1月1日、乳菓の300mg/kgは2023年7月1日にそれぞれ発効していた。このため、新省令の意義は使用基準の引き下げではなく、官報未掲載のまま運用されてきた旧制度下の更新内容を統合し、法令上明確化した点にあると言える。

新省令では、従来GMPに基づき使用できた一部着色料について、食品別の数値上限を設定した。対象製品には、新基準に適合するため公布から24カ月の移行期間が設けられている(付属書III、附則第4条)。

また、金、銀、アルミニウムの着色料は、新たな許可リストに収載されていない。発効後6カ月以内に利害関係者から収載申請がなければ、その後18カ月以内に製品処方から除去する必要がある(附則第6条)。ここでいう収載申請は、当該着色料を新リストに収載するための申請であり、各食品企業が自社製品について個別に再申請するという意味ではない。なお、付属書IIIには、個々の合成着色料についてレーキ(注2)を含めて収載する例がある。附則第6条が対象とする「アルミニウム」の具体的範囲は明示されていないため、個別の着色料の収載内容を確認するとともに、今後のCOFEPRISの案内にも留意する必要がある。

赤色3号(エリスロシン)は、今回の制度刷新に先立つ2026年5月28日付の別の保健省令により、旧省令の付属書III第12項が失効し、許可リストから削除された。COFEPRISは、メキシコ市場における推定摂取量がADIを上回ると判断した。使用企業には、同年5月の省令の附則第2条により、製品の再処方と在庫消化のため24カ月の移行期間が設けられている。

甘味料の表示に注意、純度・汚染物質基準も確認

甘味料を含む製品は、製品100グラムまたは100ミリリットル当たりの甘味料の含有量を、ミリグラムまたはグラムで表示する必要がある。卓上甘味料については、1回分当たりの濃度と、該当する場合にはADIも表示する(第9条)。

日本からメキシコに加工食品を輸出する企業は、製品に使用する甘味料の名称と含有量を確認し、メキシコ向けの表示に必要な情報を現地輸入者に提供できるようにしておく必要がある。甘味料に関する数量表示は、現地の大手法律事務所による新省令の解説でも主要な表示要件として挙げられている。

新省令は、添加物そのものに含まれる汚染物質についても上限を定めている。一般添加物には、ヒ素1キログラム当たり3mg(3mg/kg)、重金属40mg/kg、鉛10mg/kgの上限が設定される。着色料には、水銀1mg/kg、残留溶媒は単独または合計50mg/kgなどの基準も適用される。

企業は、食品への添加量だけでなく、添加物原料の規格書、分析証明書、原料純度、適用される規格への適合状況も確認する必要がある。新省令の許可リストは、利害関係者からの申請のほか、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)などによる評価や、関係国・地域の規制動向を踏まえて変更される。

経過措置は対象製品によって異なる

旧省令では、付属書I、III、VIIに記載のない食品用途でも、CODEX、米国、カナダまたはEUの規制を参照して添加物を使用できた。こうした用途を新省令の発効後も継続する事業者は、新省令の公布後12カ月以内にCOFEPRISへ申請する必要がある。申請が認められなかった場合は、不承認決定から24カ月以内に製品を再処方しなければならない(附則第5条)。

表3:主な経過措置
対象 期限・対応 根拠
新省令の発効 公布後60営業日 附則第1条
旧省令と2013年・2016年改正の廃止 新省令の発効時 附則第2条
変更された付属書の更新 3カ月ごとにCOFEPRISウェブサイトで更新。省令は6カ月ごとに連邦官報で公布 附則第3条
GMPから数値上限に変更された一部着色料 公布から24カ月以内に新基準に適合 附則第4条
旧省令下で付属書未記載用途での使用 公布後12カ月以内に申請。不承認の場合は決定から24カ月以内に再処方 附則第5条
金、銀、アルミニウムの着色料 発効後6カ月以内に収載申請がなければ、その後18カ月以内に除去 附則第6条
エリスロシン 再処方と在庫消化のため24カ月 2026年5月28日付省令の附則第2条

出所:2026年5月28日付および8月21日付保健省令を基に作成

新省令の公布をもって、全製品の処方や表示を一律に変更するのは適切ではないと指摘する識者もいる。使用している添加物、食品カテゴリーなどによって適用される規制内容が異なるほか、最大使用量や経過措置にも差がある。製品ごとに適用される要件を確認し、対応を検討する必要があるだろう。

3カ月ごとのウェブ更新に留意

COFEPRISの評価により、添加物または加工助剤の使用、制限もしくは禁止が決定された場合、その決定は該当する公文書が申請者に通知された後に効力を生じ、COFEPRISのウェブサイトで公表される(第15条)。また、収載添加物に変更があった付属書は3カ月ごとに同ウェブサイトで更新され、省令は6カ月ごとに官報(DOF)で公布される(附則第3条)。このため、許可リストは省令の公布時点で固定されるものではなく、その後も更新される仕組みといえる。

更新状況は、COFEPRISの「食品添加物」ページ(スペイン語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。同ページは2026年8月31日時点でも旧省令に基づく内容だが、新省令でも付属書の更新先として同URLが指定されている。

日本企業は、メキシコ向け製品について、次の事項を一覧化し、現地輸入者や原料供給者と確認することが望ましい。

  1. 使用している添加物の名称、および新省令の付属書への収載状況
  2. 添加物を使用する食品カテゴリー
  3. 最大使用量と換算基準
  4. 複合原料から最終製品への移行
  5. 甘味料に関する表示
  6. 原料の純度と汚染物質基準
  7. 適用される経過措置と対応期限
  8. COFEPRISへの申請の要否

今回の改正への対応に当たっては、新省令との照合に加え、その後の付属書の更新にも留意する必要がある。四半期ごとの更新状況を定期的に確認し、対象製品への影響を継続して点検することが望ましい。


注1:
ADIは、人が生涯にわたり毎日摂取しても健康への悪影響がないと推定される体重1キログラム当たりの1日摂取量。食品ごとの添加物の最大使用量とは異なる。 本文に戻る
注2:
レーキとは、水溶性の着色料をアルミニウム系の基材に固定し、水や油脂に溶けにくくした着色料。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課主幹(中南米)
中畑 貴雄(なかはた たかお)
1998年、ジェトロ入構。貿易開発部、海外調査部中南米課、ジェトロ・メキシコ事務所、海外調査部米州課を経て、2018年3月からジェトロ・メキシコ事務所次長、2021年3月からジェトロ・メキシコ事務所長、2024年5月から調査部主任調査研究員、2025年4月から現職。単著『メキシコ経済の基礎知識』、共著『グローバルサプライチェーン再考: 経済安保、ビジネスと人権、脱炭素が迫る変革』、『NAFTAからUSMCAへ-USMCAガイドブック』など。