グローバルに挑む浜松のスタートアップ ZeroOne
2026年4月16日
中部地域では、自動車・輸送機械を中心とした製造業の集積を背景に、ものづくり産業が高度に発展してきた。こうした産業基盤は、新たな技術開発やイノベーション創出に取り組む企業にとって成長を後押しする土台となっており、スタートアップの数も増えている。また、自治体・大学・金融機関が連携し、起業支援や海外展開支援など多様なプログラムが整備されている。その中でも浜松市は、行政・地域金融機関・支援機関が一体となり、スタートアップ支援拠点の整備や資金提供プログラムの拡充、イベントの開催などを通じてエコシステム強化を進めてきた。こうした支援環境を活用し、創業当初からASEAN市場を中心に海外展開を視野に入れてきたのが、デジタルツインとIoTによる空間可視化ソリューションを開発する浜松発スタートアップZeroOne
だ。
ZeroOneの創業者である内山隆史氏に、起業のきっかけや資金調達に成功した出来事、海外展開を目指すに至った経緯、今後の展望について聞いた(取材日:2026年2月20日)。

- 質問:
- 事業内容は。
- 答え:
- 当社は2019年創業 。デジタルツイン とIoT技術を活用し、物理空間における人を含む動線データや設備稼働状況、空気環境や熱中症リスクをリアルタイムに可視化するソリューションを開発している。最初のオリジナルプロダクトとなった、デジタルツインを用いた空間モニタリングシステム「no-miz」は、新型コロナ禍の時期にCO₂濃度や混雑度、人流といった情報を3D空間上に集約し、プライバシーに配慮しながら感染症リスクをリアルタイムに可視化した点が特徴だった。現在は、この基盤技術を製造現場向けに応用した、設備監視や動線分析、安全管理を実現した製造業DXソリューションシステムのZEKOOを主力商品として展開しており、医療から製造業まで幅広い領域において、課題の早期発見と業務効率化に貢献している。
- 質問:
- 起業した理由は。
- 答え:
- 前職でVR内覧システムに携わる中で、バーチャルとリアルの融合を新しい課題解決に活用できると考えたことが、起業の大きなきっかけとなった。その後、新型コロナ禍で顕在化した病院の混雑問題に対し、自らの技術とアイデアで解決できると確信を持ち、起業を決意した。
- 質問:
- 飛躍の転機となった出来事は。
- 答え:
- 浜松いわた信用金庫が主催するビジネスプランコンテスト「チャレンジゲート」への挑戦だ。2022年3月の第3回チャレンジゲートにおいて最優秀賞を受賞したことで、外部からの評価が高まり、事業計画をブラッシュアップする機会に加えて地域金融機関との接点が急拡大し、その後の資金調達を加速させることができた。 この受賞を起点として、2024年8月には、「やらまいか2号ファンド」および「めいぎんベンチャー1号ファンド」より出資を受け、研究開発や製品の高度化に投資できる基盤が整った。前者は浜松いわた信用金庫がLP(有限責任組合員)を務め、信金キャピタルがGP(無限責任組合員)として運営し、後者は名古屋銀行がLPを務め、名古屋キャピタルパートナーズがGPとして運営する。さらに同年11月には、浜松市が実施する「浜松市ファンドサポート事業(令和6年度第1期)」に採択され、自治体による投資支援を受けることで、地域企業・行政との連携強化が進んだ。
- 質問:
- 海外を目指したきっかけは。
- 答え:
- 海外を創業当初から視野に入れた背景には、ジェトロが主催するグローバル・スタートアップ・アクセラレーションプログラム(GSAP)2023への参加がある。知人から紹介されて参加を決めた同プログラムでは、世界的アクセラレーターによる英語主体の支援を受け、海外市場を前提とした事業設計を学ぶ機会が得られた。メンターからの「国内から始めていては遅い」「知財は海外市場を前提に取得すべき」といった助言が、海外志向を固める大きなきっかけとなった。
- 質問:
- どのように海外展開を進めているか。
- 答え:
- 日系製造業の進出が多く市場規模が拡大するASEANを最優先のターゲットと位置付け、海外展開の準備を進めている。ジェトロの支援を活用し、2024年10月にはシンガポールの「SWITCH 2024」 に出展。そこでインド・チェンナイ発の画像解析スタートアップと出会った。同社は創業間もないながら日本・シンガポール市場を狙っており、議論を重ねる中で技術的な親和性を感じ、同年11月に秘密保持契約(NDA) を締結した。2025年3月にはチェンナイを訪問し、既存の監視カメラ映像を用いた連携要件の整理を進めた。現在は、同社の技術をリテール事業者向け新プロダクトへ実装し、浜松市や名古屋市内での実証実験を重ね、大手企業2社への納入が決定した。
- 翌年度もジェトロの出展支援を通じて「SWITCH 2025」に参加し、東南アジアで会計監査サービスを提供する企業と接点を得た。同地域で事業を進める上で重要なパートナーとして協議を進めているほか、韓国企業からは当社が課題としてきた技術領域を補完し得る企業を紹介してもらい、現在NDA締結に向けて調整中だ。こうした展示会を通じ、海外での技術連携の幅が確実に広がりつつあると実感している。
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SWITCH2025出展の様子(同社提供) 
来場者の注目を集める同社ブース(同社提供) - 質問:
- 今後の展望は。
- 答え:
- 今後は、ASEANの中でも市場性や導入可能性が高い国をいくつかに絞り込み、現地パートナーの発掘や協業、販路開拓を進めていきたい。また、海外VCからの資金調達にも抵抗はなく、適切な投資家と組むことで、資金だけでなく事業開発やネットワーク面でも大きな価値が得られると考えている。海外展示会などへの参加も継続し、最も成長できる進出先を見極めながら、ZEKOOや新プロダクトの海外展開を本格化させていくつもりだ。
- 執筆者紹介
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ジェトロ浜松
杉山 希実(すぎやま のぞみ) - 2021年、ジェトロ入構。プラットフォームビジネス課を経て、2024年12月から現職。





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