在韓国日系企業のビジネス動向
厳しさ増す事業環境下での現状と見通し

2026年4月17日

ジェトロは、2025年8~9月に「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」(以下、「同調査」)を実施し、在韓国日系企業94社から回答を得た。本稿では、同調査および全世界編の回答結果と在韓国日系企業へのヒアリングを基に、(1)営業利益見通し、(2)米国追加関税措置の影響、(3)事業展開を中心に、在韓国日系企業のビジネス状況を概観する(インタビュー実施日:2026年1月23~26日)。

2025年の業績見通しは弱含み、需要減少が下押し要因に

同調査では、ビジネス状況の定点的な観測のため、毎年、営業利益見通しについて調査している。在韓国日系企業の2025年の営業利益を見ると、「黒字」を見込む企業の割合は76.9%だった。これは、全世界平均(66.5%)を10ポイント以上上回っており、在韓国日系企業の黒字比率は相対的に高い水準にあることが分かる。

一方で、在韓国日系企業の黒字比率は例年と比べると悪化している。2025年の黒字企業の割合は前年調査比で3.5ポイント低下した。過去10年間の調査結果では、韓国の黒字企業の割合は、おおむね80%を上回る水準で推移してきた。80%を下回ったのは、日韓関係が緊張した2019年、および新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年の2年のみで、今回の結果は2020年以来5年ぶりとなる(図1参照)。また、2025年に「赤字」を見込む企業の割合は8.8%と、前年から2.3ポイント上昇した。黒字企業の割合は他国・地域と比較すると高い水準を維持しているが、韓国単体では低下しており、企業の収益環境がやや弱含んでいるといえよう。

次に、在韓国日系企業が、2025年の営業利益が前年と比較してどう変化すると見込んでいたかを見たい。「改善」の回答は前年から6.5ポイント低下した28.3%、「悪化」は前年調査から8.7ポイント上昇した35.9%だった(図1参照)。全世界平均と比較すると、「改善」(全世界:35.8%)は大きく下回る一方、「悪化」(同:25.6%)は大きく上回った。改善と悪化の回答割合の差を示すDI(Diffusion Index)はマイナス7.6ポイントとなり、韓国における景況感の厳しさが際立つ結果となった。

図1:過去10年間の在韓国日系企業の営業利益見込み(前年との比較)と黒字割合の推移
2016年(n=174)は、改善32.2%、横ばい35.1%、悪化32.8%で、黒字割合は81.0%。2017年(n=117)は、改善36.8%、横ばい44.4%、悪化18.8%、黒字割合82.1%。2018年(n=132)は、改善31.8%、横ばい43.2%、悪化25.0%、黒字割合84.9%。2019年(n=134)は、改善21.6%、横ばい41.0%、悪化37.3%、黒字割合79.1%。2020年(n=123)は、改善17.1%、横ばい35.8%、悪化47.2%、黒字割合71.8%。2021年(n=101)は、改善52.5%、横ばい31.7%、悪化15.8%、黒字割合85.3%。2022年(n=82)は、改善39.0%、横ばい39.0%、悪化22.0%、黒字割合85.5%。2023年(n=74)は、改善29.7%、横ばい32.4%、悪化37.8%、黒字割合84.0%。2024年(n=92)は、改善34.8%、横ばい38.0%、悪化27.2%、黒字割合80.4%。2025年(n=92)は、改善28.3%、横ばい35.9%、悪化35.9%、黒字割合76.9%。

注:nは回答企業数を示す。
出所:ジェトロ「海外進出日系企業実態調査(2016~2025年度)」

在韓国日系企業の営業利益見通しが悪化した背景には、どのような要因があるのだろうか。営業利益が「悪化」すると回答した企業に、その理由を尋ねたところ「現地市場での需要減少」が63.6%と最も多かった(複数回答)。

需要減少の背景の1つとして、韓国経済全体の減速が挙げられる。2025年の実質GDP成長率は、第1四半期(1~3月)が前期比0.2%減と、マイナス成長になった。第2四半期(4~6月)は前期比0.7%増を記録したが、これは前期の落ち込みの反動によるところが大きかった。このように経済が伸び悩んだのは、民間消費の伸び悩みに加え、建設投資の不振によるものだった。また、韓国銀行(中央銀行)発表の2025年通年の実質GDP成長率見通し(注1)は、2024年11月時点では1.9%だったが、その後、2025年2月には1.5%、5月には0.8%へと下方修正された。これは、景気の見通しが徐々に悲観的になってきたことを示す。8月に発表された見通しでは0.9%と下げ止まったものの、依然、低水準にとどまった。本調査の実施時期が8~9月であったことを踏まえると、厳しい経済見通しが市場全体に慎重な見方を広め、在韓国日系企業の回答結果に一定程度影響したと考えられる。さらに、自由記述欄においても、営業利益見通しへのマイナス要因として、「景気後退」や「内需の低迷」に言及する回答が複数みられた。

競争環境の変化や外需減速も影響

在韓国日系企業の営業利益見通しが悪化した理由として、そのほかには、どのような要因が挙げられたのだろうか。調査結果によると「韓国経済全体の減速」に次いで、「他社との競合激化等によるシェア縮小」(39.4%)、「輸出先市場での需要減少」(36.4%)の順で回答が多かった(複数回答)。

「他社との競争激化等によるシェア縮小」について自由回答やヒアリング結果を見ると、一部から中国企業の動向を背景とした競争環境の変化について声が挙がった。具体的には、中国の過剰供給を背景とした熾烈(しれつ)な価格競争や、米国関税の影響を見込んだ在庫の積み増しが重なったことで受注が滞ったとする企業がみられた。また、顧客となる韓国企業が中国企業との競争激化に直面することによる競争優位の低下がサプライチェーンを通じて自社ビジネスに影響しているという声もあった(注2)

さらに、韓国への輸入時に適用されるアンチダンピング(AD)税もコスト要因の1つとして挙げられた。AD税の適用は特定の品目に限られるものの、該当する企業にとっては輸入時のコストの大幅増につながり、収益を下押しする要因として認識されている状況がうかがえる。

米国関税の影響は意識されるも、業績への波及は見極めが必要

2025年に国際ビジネス上で最大の注目を集めたのが米国関税政策だ。本節では、2025年度調査の新規章である「米国追加関税措置の影響」の回答を基に在韓国日系企業における米国向け輸出の実態と、関税措置が事業活動に及ぼした影響の程度を整理する。

まず、米国向け輸出の有無を見ると、在韓国日系企業のうち、直接輸出する企業が25.8%、間接輸出する企業が32.3%に上った(複数回答)。直接・間接の両方で輸出する重複を除いて計算すると、回答企業の半数にあたる50.5%が米国に輸出していることになる。全世界の合計や主要国(注3)と比べると、在韓国日系企業は米国向けに輸出する企業の割合が相対的に高いことが分かる(図2参照)。

図2:主要国の対米国取引状況の比較
全地域計(n=701)において、米国向け輸出は直接が12.9%、間接が14.8%、合計で25.2%。国別では、メキシコ(n=182)が最も米国に輸出する企業の割合高い。韓国(n=93)は直接25.8%、間接32.3%、合計50.5%。その他は、米国への輸出をする企業の割合が多い順にカナダ(n=78)、フランス(n=62)、イタリア(n=98)、ベトナム(n=898)、ドイツ(n=632)、日本(n=246)、台湾(n=160)、英国(n=69)、オランダ(n=83)、中国(n=766)、インド(n=376)、インドネシア(n=375)、シンガポール(n=472)、ブラジル(n=98)、UAE(n=75)、オーストラリア(n=125)、南アフリカ共和国(n=54)の順となっている。

注:nは回答企業数を示す。
出所:ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(全世界編)」

次に、米国関税による影響を見ると、米国に輸出している企業のうち43.5%が「関税によるマイナスの影響が大きい」と回答した。そのほかの回答は、「マイナスとプラスの影響が同程度」が2.2%、「影響はない」が17.4%、「現時点ではわからない」が37.0%となった(注4)。具体的な影響としては、「米国市場におけるコスト競争力の低下」が52.4%と最も多く、次いで「需要の減少」が47.6%となっており、関税措置が在韓国日系企業の事業活動に一定の影響を及ぼしている状況がうかがえる。

このように、調査結果を見ると在韓国日系企業は他の国・地域と比較して米国向けの輸出取引が多く、関税によるマイナスの影響を受けた企業も少なくない。一方で、その影響が企業全体の業績を左右する水準に達しているかについては、慎重に評価する必要がある。今回ヒアリングを実施した3社のうち2社が米国向けに輸出し、いずれも直接・間接の両形態で輸出していた。しかし、ヒアリング時には、米国関税によるマイナスの影響の存在は認識しつつも、現時点では収益全体への影響は限定的にとどまっていると回答した。

前述の回答の背景の1つとして、在韓国日系企業の輸出構造が関係しているとみられる。同調査によると、在韓国日系企業の平均輸出比率は32.2%にとどまり、回答企業の半数以上が25%未満だった(図3参照)。また、輸出先の内訳(平均値)を見ると、日本向けが32.0%と最も高く、中国(20.9%)、ASEAN(17.0%)が続いた一方、米国向けは10.6%にとどまった(図4参照)。すなわち、米国に輸出する企業は比較的多いものの、企業の輸出比率および輸出全体に占める米国向けの比率は相対的に高くない。これを踏まえて、米国関税は在韓国日系企業のビジネスにとって無視できない外部要因ではあるものの、必ずしも業績全体を左右するほどの決定的なマイナス要因にはなっていなかったと考えられる。

図3:売上高に占める輸出比率
内訳は、輸出比率0%が29.1%と最も多く、次いで1~25%未満が24.1%、50~75%未満が17.7%、75~100%未満が13.9%、25~50%未満が12.7%となっている。輸出比率が100%の企業は2.5%にとどまる。平均輸出比率として32.2%が表示されている。

注:回答企業数は79社。
出所:ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」

図4:輸出先の内訳(平均値)
輸出先別の構成比は、日本が32.0%と最も高く、次いで中国が20.9%、ASEANが17.0%、米国が10.6%。このほか、欧州が7.0%、台湾が3.3%、インドが2.1%、香港が0.4%、オーストラリア・ニュージーランドが0.4%、その他国・地域が6.3%となっている。

注:回答企業数は52社。
出所:ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」

国内需要の伸び悩みなど背景に、事業拡大姿勢は慎重化

次に、今後の事業展開の方針を見てみたい。今後1~2年間に韓国で事業を「拡大」すると回答した企業は41.5%だった。前年度調査から14.4ポイント低下しており、事業拡大に慎重な姿勢の企業が増加したと分かる(図5参照)。この減少幅は全世界編の主要国およびアジア・オセアニア編の中で最大だった。

図5:事業展開の方針(2024~2025年)
2024年(n=93)は、事業を「拡大」すると回答した企業が55.9%、「現状維持」が41.9%、「縮小」が2.2%で、「第三国・地域への移転・撤退」は0%。2025年(n=94)は、「拡大」が41.5%、「現状維持」が53.2%、「縮小」は5.3%、「第三国・地域への移転・撤退」は0%。

注1:「第三国(地域)へ移転、撤退」はいずれも0%。
注2:nは回答企業数を示す。
出所:ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」

調査実施当時の韓国経済の状況が芳しくなかったことは、営業利益見込みだけでなく、事業拡大意欲にも影響を及ぼしていると考えられる。実際に、拡大しない理由について自由回答を見ると、市況や韓国国内産業での需要や投資の減少を考慮して拡大を見送るという回答が複数みられた。一方で、拡大する企業の最多の理由は「現地市場・ニーズの拡大」(61.5%)だった。これらから、在韓国日系企業の事業展開は、国内の需要動向に大きく左右される傾向にあることが分かる。そのほかの拡大しない理由は、国内での競争環境の激化、労務コストの上昇などの要因への言及があった。

「拡大」以外の回答を見ると、「現状維持」が53.2%、「縮小」が5.3%だった。前年調査からの変化を見ると「現状維持」が11.3ポイント増加しており、拡大意向から静観に転じた企業が多いと読み取れる。短期的には需要減少をはじめとした厳しい事業環境への直面によって静観しながらも、中長期的な事業機会を引き続き模索している状況といえよう。

取引規模は限定的ながら、輸出先として米国を重視

これまで見てきたように、在韓国日系企業の事業活動を左右する最大の要因は国内環境であるといえる。一方で、企業の事業活動を取り巻く環境を考える上では、輸出先市場の動向といった対外要因についても確認しておく必要がある。本節では、在韓国日系企業の輸出方針について整理したい。

輸出を行う企業に対して現在重視している市場を聞いたところ、「米国」を選択した企業が41.5%と最多となった(複数回答)。そのほかの回答は「日本」(39.6%)、「中国」(34.0%)などが続いた(図6参照)。また、今後の有望な輸出市場についても「米国」を挙げる企業の割合は28.3%とインドと並んで最多となり、「日本」「中国」(いずれも26.4%)、「ベトナム」(24.5%)などが続いた(複数回答)(図7参照)。現在および将来いずれも、最大の輸出先である日本よりも米国を重視する企業が多いことに注目し、その背景を探る。

前節で示したとおり、在韓国日系企業の輸出構造上、米国向け輸出の比率は必ずしも高くない。企業にとっての米国市場の重要性と、現時点での取引規模は必ずしも一致していない。こうした違いの背景には、在韓国日系企業の事業上の立ち位置があるとみられる。多くの在韓国日系企業は、韓国市場向けの内販や、韓国企業向けの部材・中間財・設備供給を主軸とする。米国市場への関与も、直接輸出のみならず韓国企業を経由した間接輸出が多い。これがまさに、米国関税の設問で在韓国日系企業の米国向け輸出が多かった要因の1つと考えられる。

以上を踏まえると、在韓国日系企業にとっての米国の重要性は、顧客である韓国企業の事業戦略と密接に関係している。韓国企業による米国への投資は、米国市場の規模や成長性を背景に、以前から中長期的な事業計画の一環として進められてきた。近年は、製造業を中心に、二次電池や半導体、自動車関連分野などで米国内に生産・販売拠点を構築する動きが続く(注5)。このような動きは、サプライチェーンを通じて取引先にも波及するため、在韓国日系企業においても、顧客企業の米国での事業展開を見据えた対応が一定程度求められる状況だとみられる。輸出市場として米国を重視する姿勢の背景には、単純な取引量の多寡だけでなく、サプライチェーンの構造を踏まえた中長期的な視点が存在していると考えられる。

図6:現在重視している輸出市場(複数回答)
重視する輸出市場として最も多いのは米国で41.5%、次いで日本が39.6%、中国が34.0%。以下、ベトナム28.3%、インドネシア20.8%、インド18.9%、欧州17.0%、タイ15.1%、台湾9.4%、マレーシア5.7%、シンガポール3.8%、フィリピンおよびオーストラリア・ニュージーランドはいずれも1.9%。

注1:調査全体で5%以上回答があった輸出市場を抜粋。
注2:回答企業数は53社。
出所:ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」

図7:今後の有望な輸出市場(複数回答)
有望な輸出市場として最も多く挙げられているのは米国とインドで、いずれも28.3%。次いで、日本と中国がともに26.4%、ベトナムが24.5%、欧州が15.1%、インドネシアが13.2%、タイが7.5%、マレーシアとシンガポールがそれぞれ3.8%、フィリピンおよびオーストラリア・ニュージーランドはいずれも1.9%。

注1:調査全体で5%以上回答があった輸出市場を抜粋。
注2:回答企業数は53社。
出所:ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」


注1:
韓国銀行の経済見通しは、3カ月に1回、2月、5月、8月、11月に公開される。 本文に戻る
注2:
韓中企業の競争については、地域・分析レポート特集「韓国企業の海外展開の今と新たな挑戦」の韓国企業の中国事業の明暗シリーズを参照いただきたい。 本文に戻る
注3:
2025年度調査の主要国は、米国、メキシコ、ブラジル、英国、フランス、ドイツ、オランダ、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、インド、オーストラリア、中国、韓国、香港、UAE、南アフリカ共和国を指す。 本文に戻る
注4:
同設問には「プラスの影響が大きい」も選択肢として含まれるが、在韓国日系企業の回答は0%。 本文に戻る
注5:
韓国企業による米国進出動向については、「加速する韓国企業の対米直接投資」を参照いただきたい。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課
向野 文乃(むかいの あやの)
2020年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課(2020~2022年)、岐阜貿易情報センター(2022~2025年)を経て、2025年8月から現職。