カナポリス、食と健康分野に強み
米NC州ライフサイエンス産業(3)
2025年4月25日
全米屈指のバイオクラスターとして、ライフサイエンス関連企業を中心に集積が進むノースカロライナ州のリサーチ・トライアングル・リージョン。州政府などが1950年代から取り組んできた環境整備の努力の成果だ。一方で、州内の他地域でもライフサイエンス分野の新しいエコシステムが形成されつつある。本稿の前編「米NC州ライフサイエンス産業(1)概要とウィンストン・セーラムの取り組み」と、中編「米NC州ライフサイエンス産業(2)中心部の再開発と再生医療分野の取り組み」では、ウィンストン・セーラムを取り上げた。後編では、近年整備が進められている、食と健康分野に強みのあるリサーチパーク、ノースカロライナ・リサーチ・キャンパス(NCRC)を紹介する。
実業家主導による繊維産業からライフサイエンス分野への転換
ノースカロライナ州最大の都市シャーロットの北、約30マイル(約48キロメートル)に位置する都市カナポリス(図参照)にNCRCがある。約1,525万平方フィート(約141万6,400平方メートル)の敷地に9つの研究センターと1つのラボが立地し、栄養学と臨床研究を通じて健康増進に取り組む科学コミュニティだ。企業や起業家と連携し、より安全で栄養価の高い作物、より健康的な食品、精密栄養学の研究開発に取り組んでいる。
NCRCのあるカナポリスは、1906年にカナポリスの南に隣接する町コンコードで創業した綿製品メーカーのキャノン・ミルズにより形成された企業城下町だった。同社は1982年、後に青果物大手ドール・フード・カンパニーの会長となるデービッド・H・マードック氏により買収された。同氏は、工場の自動化をはじめとする資本設備の刷新やダウンタウンの再開発に2億ドルを投じた。これを経て、1984年にカナポリスは市制へと移行した。その後、繊維メーカーがマードック氏から同地の事業を買収したものの、2003年には、グローバル化と繊維産業の海外移転の影響を受け、同繊維メーカーは破産し、約4,800人という同州史上最大規模の人数が解雇された。
マードック氏は同地の工場跡地を再購入することを2005年に発表した。同地での繊維産業の衰退を受け、15億ドルを投じて、栄養学研究と健康に関する国際的ハブとして工場跡地にNCRCを建設する意向だ(注1)。2008年には、ノースカロライナ大学システム(注2)と州政府の参画が表明された。
カナポリス市によると、10年以上にわたる州からの運営支援金、連邦政府や財団の研究助成金、マードック氏自身による初期建設への投資など、2022年時点で10億ドル以上がNCRCに投入された。マードック氏は、NCRC内のデービッド・H・マードック研究所 (DHMRI)に世界最高レベル感度の950メガヘルツ(MHz)MR(核磁気共鳴)装置を購入し、デューク大学が主導する大規模な生物医学研究に3,500万ドルを寄付した。また、2014年には、NCRCに年間1,500万ドルを寄付する基金の設立を発表するなど、多大な貢献をしている。

出所:カナポリス市

9つの研究センターとフード・イノベーション・ラボ
NCRCは2008年10月に発足した。メインキャンパスとなるデービッド・H・マードック・コア・ラボラトリービル、隣接するノースカロライナ大学(UNC)栄養研究所ビルとノースカロライナ州立大学果物・野菜・科学研究所ビルが開所した。2025年3月時点では、ノースカロライナ大学システムに属する7大学(注3)、デューク大学の各研究センターおよびデービッド・H・マードック研究所と(表1参照)、ノースカロライナ・フード・イノベーション・ラボ(NCFIL)が、NCRCに立地している。
機関名 | 専門領域 | 概要 |
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アパラチアン州立大学ヒューマン・パフォーマンス・ラボラトリー |
栄養学 運動免疫学 |
メタボロミクス、プロテオミクス、リピドミクス、ゲノミクスを用いたヒト生物学的システムアプローチに重点を置く。 |
デービッド・H・マードック研究所 | ゲノム、メタボローム研究 | NCRCの創設者の名を冠した研究所。NCRCの中核施設として2007年に設立。最先端のゲノムおよびメタボローム研究サービスおよび機器の提供を専門とする。 |
デューク・カナポリス(デューク臨床・トランスレーショナル科学研究所(CTSI)の一部門) | 精密ゲノム学、集団健康研究 |
2007年設立。研究参加者の多様なコミュニティと連携し、精密ゲノム学と集団健康研究を加速させる最先端施設を運営。 コミュニティ参加型研究モデルを用いて1万4,000人以上のボランティアを登録。 |
ノースカロライナ農業技術州立大学センター・フォー・エクセレンス・イン・ポストハーベスト・テクノロジーズ | ポストハーベスト技術、食品科学 | ポストハーベスト技術と食品科学の最先端研究を実施。農場から出荷された後の食品の品質と安全性向上に焦点を当て、果物や野菜のより良い保存、加工方法を研究。 |
ノースカロライナ・セントラル大学栄養研究プログラム | 栄養研究 | 機能性食品や漢方薬から生理活性天然物を特定し評価する研究を実施。代謝学および栄養ゲノム学のアプローチを使用し、がんや糖尿病などの疾患やそれらの多くの合併症の予防および治療法を研究。 |
ノースカロライナ州立大学プランツ・フォー・ヒューマン・ヘルス研究所 | 植物生物学、遺伝学、栄養科学 | 2008年設立。植物化合物と、疾病予防および健康維持との関連性の発見、実用化に向けた学際的研究を実施。植物栽培および研究のための環境制御グロースチャンバー(植物成長用試験装置)を備える。 |
ノースカロライナ大学チャペルヒル校栄養研究所 | 精密栄養学 | 精密栄養学(食事に対する要求や反応における個人差がどのように個々の栄養ニーズに影響を与えるかを研究)に関する基礎科学および橋渡し研究に取り組む。基礎・応用研究のための高度なウェット・ラボや臨床施設などを備える。 |
ノースカロライナ大学シャーロット校バイオインフォマティクス研究サービス | バイオインフォマティクス | 研究者、医療機関、バイオテクノロジー・製薬会社に、バイオインフォマティクス・データ解析、解析パイプラインの構築、データの可視化、生物統計学に関する支援を提供。 |
ノースカロライナ大学グリーンズボロ校トランスレーショナル・バイオメディカル研究センター | 脂肪肝疾患、1型糖尿病、糖尿病合併症 | 肝疾患、糖尿病分野で基礎研究と橋渡し研究を実施。アルコール誘発性肝疾患のメカニズムと治療アプローチ開発に注力するほか、糖尿病の系統生物学的調査や糖尿病合併症の早期バイオマーカーのためのバイオ分析ツールの開発にも取り組む。 |
出所:各機関ウェブサイトなどからジェトロ作成
NCFILは、2019年11月にオープンしたプラントベース(植物由来の原材料)の食品の研究、開発、商品化を支援する施設だ(注4)。食品の研究開発やパイロットプラントの提供、コンサルテーションなどを通じて、既存の食品企業、スタートアップや起業家の商品開発を支援している。1万6,000平方フィート(約1,486平方メートル)の施設に米国内で唯一、米国食品医薬品局(FDA)のcGMP(注5)に適合した設備を備えており、研究を実際のビジネスにつなげることを目指している。
NCFILは、パイロットプラントと製品開発ラボ兼テストキッチンの提供という2つの機能を備える。パイロットプラント・マネージャーのジョセフ・ヒルデブランド氏によると、施設には2つの大きな利点があるという。1つは、90以上の機器を備えており、食品製造で行われるほぼ全てのユニット操作をシミュレーションできる点だ。NCFILでは、工場で大量生産する時と同じ環境で試作品が製造できる。2つ目の利点は、NCFILはFDAのcGMPに準拠した施設なので、NCFILで製造した製品を一般向けに販売できる点だ。加えて、NCFILはノースカロライナ州立大学により管理されているため、学内の多様な分野の専門家の知識を活用することもできる。
表2および参考はNCFILの主な設備を示している。ただし、設備の拡充は随時行われている。また、品質保証(QA)・品質コントロール(QC)用の機器や、栄養分析用機器なども設置されている。




NCFILのパイロットプラント、テストキッチン(ジェトロ撮影)
工程 | 種類 |
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ウェット処理 |
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粉砕・混合 |
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抽出 |
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乾燥 |
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熱処理 |
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パッケージング |
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出所:NCFILウェブサイトからジェトロ作成
参考:製品開発ラボ兼テストキッチン主要設備
- 種類
- 製品分析・試験機器(粘度/糖度/pH/テクスチャー、色、微生物など)
- ウォークインおよびリーチイン冷蔵庫・冷凍庫
- 食器洗浄機、手洗いシンク、実験用シンク
- 層流フード、ヒュームフード
- 食品成分ライブラリー
- インキュベーターと環境チャンバー
- コーヒー豆焙煎(ばいせん)機
- ピーナッツバター製造機
- 業務用コンロ、グリドル
- ディープフライヤー
- グリルステーション
- コンベクションオーブン
- 各種冷蔵・冷凍機能
- 業務用電子レンジ
出所:NCFILウェブサイトからジェトロ作成
NCFILの利用を希望するスタートアップや企業は、プロジェクト目標と成果を記した業務明細書を提出し、それに基づき利用・支援の可否や費用が決定される。利用内容に応じた設備費、室料、人件費から利用料が積算される。NCFILは主に州立大学や州政府の資金で運営されており、低価格で利用できる点も魅力の1つだ。
国内外の食関連企業がNCFILを活用
NCFILは州内企業のみならず、米国のほかの州や外国の企業にも利用されている(表3参照)。企業がNCFILに持ち込むアイデアは、プラントベース・ジャーキーやキノコ加工品など多様だ。NCFILでは最先端の機材を用いることができる。製造時間の短縮や製品の安定性向上の実現、複数回にわたる試作が可能だ。その過程では、NCFILの専門家からの助言を得ることもできる。助言の内容は、原材料やフレーバー、大量生産のための製品手法の微調整、FDAが定める規則に関するものなど様々だ。さらに、NCFILの協力を得ることで、協業連携を行う際の業界における信頼性の確保や、地元大学とのネットワークの構築につながる。
例えば、食品・飲料メーカー向けひよこ豆たんぱく素材を製造するイスラエルのイノヴォプロは、NCFILで試作品を開発し、製品の機能性の実証や官能検査を実施した。イスラエルにも自社のラボを持つが、NCFILを利用することで米国の顧客向けに新鮮なサンプルを製造することが可能だ。
NCFILがサポートするのはプラントベース食品の開発だけではない。培養魚肉の生産に取り組むスタートアップのアトランティック・フィッシュは、NCFILを活用してブラックシーバスの培養肉を世界で初めて開発した(2024年4月15日付ビジネス短信参照)。同社は細胞株や魚の細胞を育てる方法については知見があったが、食品として加工するにあたり、NCFILから食品科学分野のアドバイスや潜在顧客向けの試食会開催の支援を受けた。
企業・組織名 | 本社 | 事業内容 | NCFIL活用事例 |
---|---|---|---|
ハウ・リバー・マッシュルーム (Haw River Mushrooms) |
ノースカロライナ州 グラハム |
キノコ栽培、 キノコ加工食品製造 |
NCFILの最先端設備を利用してキノコ・ジャーキーの製造工程を改善し、製造時間短縮と製品安定性の向上を実現。 また、NCFILから製品開発のアイデアや公的補助金への応募についてのアドバイスも受けている。 |
バーベキュー (Barvecue) |
ノースカロライナ州 コーネリアス |
プラントベース・バーベキュー食品製造 |
自社製品の概念実証を実現後、製造方法として「高水分押出成形」(植物性原料を繊維状の肉へと変える技術)に関心を持ちNCFILにコンタクトを取った。 NCFILでは、技術的指導や支援を受けて試作品を作成。同社の成長過程に応じたトレーニングやプロセス支援も受けている。同社の製品は、自然食品やオーガニック食品を専門とする米大手スーパーマーケット「ホールフーズ」でも取り扱いがある。 |
ミリ・ミルク (Milli Mylk) |
ニューヨーク州 ニューヨーク |
プラントベース・フリーズドライ・ミルク |
NCFILの支援を受け、大量生産に対応できるよう試作品を改良し、栄養価、鮮度、風味を保持したフリーズドライ製法を発見した。NCFILは共同製造者の選定プロセスも支援。NCFILと協力することで、業界における一定の信頼性が得られた。 同社は2022年8月、投資家から500万ドルのシード資金を調達。 |
スピリッツ・オブ・アルケミー (Spirits of Alchemy) |
ノースカロライナ州 シャーロット |
アルコールフリー・カクテル副材料製造 |
NCFILのHTST/UHTサーマル・プロセッサーなどを使用し、製品のホット充填(フィリング)を行う。 また、製品の味の検討にNCFILの味覚に関する専門知識を活用。 NCFILが提供する米国食品医薬品局(FDA)が定める規則に関する知識やFDAとのネットワークも、製品を市場に販売する上で重要な情報である。 |
ウェストロック・コーヒー・カンパニー (Westrock Coffee Company) |
アーカンソー州 ノースリトルロック |
コンシューマーブランド向けコーヒー、紅茶、エキスなどの製造 |
NCFILのあるカナポリスに隣接するノースカロライナ州コンコードに製造施設を保有。 NCFILの先進的な装置や技術を利用し、アイデアの製品化を実現。缶詰製造用の最新装置や、液体処理装置、濃縮用の逆浸透・順浸透装置を使用している。NCFILの設備利用を通じて自社工場に設置すべき装置の把握が可能となった。 |
シュア! (Sure!) |
ニュージャージー州 モンクレア |
幼児用飲料、乳児用粉ミルク | NCFILでは、プラントベース・ミルクの試作品の開発にあたり、FDAのガイドラインに沿ったレシピのアドバイスや大規模生産のために必要な機器の検討について協力を得た。 |
イノヴォプロ (InnovoPro) |
イスラエル、ラーナナ | 食品・飲料メーカー向けひよこ豆たんぱく素材製造 |
2021年の米国での製品販売開始以来、NCFILを利用している。 NCFILでは、試作品を開発し、製品の機能性の実証や官能検査を実施。最先端の設備と作業環境が、高品質の試作品の開発を実現可能にした。イスラエルにも同社のラボを持つが、NCFILを利用することで、米国の顧客向けに新鮮なサンプルを製造することが可能となった。 NCFILとの関係を通じて、地元の大学とネットワークを構築し、製品の分析や測定を行う機会も得た。 |
アトランティック・フィッシュ (Atlantic Fish Co.) |
ノースカロライナ州 ローリー |
培養シーフード開発 |
投資家のアドバイスからNCFILを知った。 5種類ほどの魚種の中から、細胞の成長が早かったブラックシーバスに着目。細胞株や魚の細胞を育てる方法は知っていたが、それを食品にするという課題に対し、NCFILは食品科学の分野で助言を受けたほか、試食会の開催で支援を受けた。 |
18 チェスナッツ (18 Chestnuts) |
ノースカロライナ州 アッシュビル |
ヴィーガンスープ製造 |
2024年9月に発生したハリケーン・へリーンが同州西部にもたらした甚大な被害により、アッシュビルの自社施設での製造が困難となった。NCFILに支援を求め、NCFILの施設で製造を継続した。 NCFILの最先端設備を使用することで、製造時間が大幅に短縮された。同社とは異なる製造工程や科学的知見に基づいた食品製造の方法を知ることができた。NCFILスタッフの知見は、今後予定する商品の種類の拡大にも有益。 同社の商品は、自然食品やオーガニック食品を専門とする米大手スーパーマーケット「ホールフーズ」でも取り扱いがある。 |
ミヨシ油脂 | 東京都墨田区 | 食用加工油脂製品、工業用油脂などを製造 | 2023年、米国での事業拡大開始のため、市場参入の支援を得られる協力先としてNCFILと提携。NCFILの最新鋭の設備、広範な市場情報と人脈、そして 「ワンストップ・ショップ」(植物性食品ビジネスのコンサルティングから商品化までのあらゆる段階を支援できること)としてのラボの能力を評価。同社のプラントベース油脂は、NCFIL が頻繁に扱う代替乳製品や肉製品に役立つものとしてNCFILからも協業が期待されている。 |
出所:NCFILウェブサイトからジェトロ作成
NCFILは、提携関係を築く「インダストリー・パートナー」と呼ばれる企業から、資金提供や製品の寄付、専門知識の提供を受けている。また、インダストリー・パートナー自身も、NCFILを活用して自社製品の開発が可能だ(表4参照)。
企業・組織名 | 本社 | 事業内容 | NCFILとの協力関係 |
---|---|---|---|
ブルー・マウンテン・フレーバーズ (Blue Mountain Flavors) |
ノースカロライナ州 キンストン |
食品香料(油溶性、水溶性、オールナチュラル、コーシャ、ハラール、ベジタリアン、非遺伝子組み換え(GMO-free)食品など)の開発・製造。1998年創業。 | NCFILを初期段階から支援。NCFIL支援のきっかけは、ノースカロライナ州で、スタートアップや中小企業の創業機会が失われ、多くの農産物が州外で販売されることで、資金が州外に流出しているのを目の当たりにしたこと。 |
ビューラー (Bühler Inc.) |
スイス、ウツヴィル ノースカロライナ州ケーリー |
スイスの大手食品加工機器メーカー。 |
NCFILはパイロットプラントに同社の押出成形機を設置。 2022年と2023年、NCFILでツインスクリューエクストルーダーの短期実践コース(4日間)開催。 |
マザー・マーフィーズ・フレーバーズ (Mother Murphy's Flavors) |
ノースカロライナ州 グリーンズボロ |
飲料、パン、菓子、乳製品用の香料(エマルジョン、エキス、液体、粉末、スプレードライ)の開発・製造。1946年創業。 | 寄付によりNCFILを支援。 |
ネッチ・プレミア・テクノロジーズ (Netzsch Premier Technologies, LLC) |
ペンシルベニア州 エクストン |
ドイツの湿式粉砕機、乾式粉砕機、分散機製造大手、ネッチ・グループの北米子会社。食品製造業を含むさまざまな業界に複数の工業製品と機器を提供。 | 2023年、NCFILのパイロット・プラントに粉砕機と空気分級機のモジュールプラントを設置。 |
ノボネシス (Novonesis) |
デンマーク、リュンビュー、ノースカロライナ州フランクリン |
世界的バイオソリューション企業。 2024年1月、デンマークの産業用酵素メーカーのノボザイムズと乳酸菌スタータ大手のクリスチャン・ハンセンが合併し、社名をノボネシスに変更。 |
2023年、NCFILに資金援助を実施。また、NCFIL内に自社の酵素ライブラリーを設置。プラントベース飲料開発に取り組むスタートアップにNCFILを紹介し、自社酵素も活用した商品開発を支援。 |
ウェストロック・コーヒー・カンパニー (Westrock Coffee Company) |
アーカンソー州 リトルロック |
コンシューマーブランド向けコーヒー、紅茶、エキスなどの製造 | NCFILの顧客として施設を利用するともに、NCFILのフードテック・ピッチコンテストを賞金スポンサーとして支援。 |
出所:NCFILウェブサイトからジェトロ作成
そのほか、NCFILは2023年、フードテック・ピッチコンテストを初めて開催した。コンテストは、スタートアップ・ステージとアーリー・ステージの2部門に分かれて開催され、10社が参加した。プラントベース食品の研究開発の専門家やベンチャーキャピタルなどが審査員を務めたほか、NCFILを利用し商品化に成功した企業の代表も参加し、コンテスト参加者に助言した。スタートアップ・ステージの優勝者はNCFILの1日無料アクセス(5,000ドル相当)を、アーリー・ステージの優勝者はNCFIL専門家との3時間の無料相談(1,000ドル相当)を獲得した。
2022年4月、NCRC内および周辺の土地を取得した不動産会社は、今後10年間で少なくとも5億ドル規模のオフィス、商業、医療、住宅プロジェクトを通じて開発を推進する計画を発表した。栄養学と健康分野の研究に学際的に取り組む9つの研究機関と、スタートアップや企業とともに研究成果のビジネスへの転換に取り組むNCFILを擁するNCRCのさらなる拡充が期待される。
- 注1:
- NCRC設立構想の背景には、マードック氏の3番目の妻の死が関係しているという。1985年に妻をがんで43歳の若さで亡くしたマードック氏は、栄養と運動に関心を持つようになったといわれている。
- 注2:
- ノースカロライナ大学(UNC)システムは、16の大学とノースカロライナ・スクール・オブ・サイエンス・アンド・マスマティクスから成る公立大学システム。
- 注3:
- アパラチア州立大学、ノースカロライナ農業技術州立大学、ノースカロライナ・セントラル大学、ノースカロライナ州立大学、UNCチャペルヒル校、シャーロット校、グリーンズボロ校。
- 注4:
- NCFILは、NCRCとノースカロライナ州立大学、ノースカロライナ州農業消費者サービス省、ノースカロライナ州経済開発パートナーシップ(EDPNC)の連携により生まれた。NCFIL設立に際し、440万ドルの同州の予算が充てられたほか、運営支援のために経常資金70万ドルも投入されることとなった。
- 注5:
- FDAが施行する「現行の適正製造規範(Current Good Manufacturing Practice)」。製造プロセスと施設の適切な設計、監視、管理を保証するシステムを規定するもの。食品および栄養補助食品製造に適用される。一般に、食品工場の設計や建設、工場の敷地や設備、従業員や施設の衛生管理、食品製造中の生産およびプロセス管理などの事項を扱う。
米NC州ライフサイエンス産業

- 執筆者紹介
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ジェトロ・アトランタ事務所
横山 華子(よこやま はなこ) - 民間企業勤務を経て2024年2月から現職。