自動車販売数は過去最高更新、インフラ計画によるEV普及加速に期待(UAE)
2025年6月5日
国際自動車工業連合会(OICA)によると、2024年のアラブ首長国連邦(UAE)の自動車販売台数は30万6,279台で、前年比18.2%増加した。世界全体の伸び率(前年比2.7%増)を大幅に上回る増加となった。内訳をみると、乗用車が26万8,876台(同19.3%増)、商用車は3万7,403台(同10.8%増)にそれぞれ増加した(表参照)。
項目 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 24/23年比 | 24/19年比 |
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乗用車 | 129,901 | 156,780 | 171,414 | 225,386 | 268,876 | 19.3% | 35.4% |
商用車 | 28,810 | 32,064 | 36,125 | 33,753 | 37,403 | 10.8% | 10.7% |
全体 | 158,711 | 188,844 | 207,539 | 259,139 | 306,279 | 18.2% | 31.8% |
出所:国際自動車工業連合会(OICA)
UAE経済は、2024年の実質GDP成長率が3.8%(推計値)と堅調に推移し、その結果、自動車の需要が増えたと考えられる。また、国外からの来訪者数増加が自動車需要を後押ししたともみられる。国外からドバイへの宿泊を伴う来訪者数はここ数年で過去最多値を毎年更新しており、2024年は前年比9.0%増の1,872万人だった。さらなる観光客の増加に伴い、ドバイでの観光目的の移動需要が増えていることや、UAEに滞在する外国人の人口増加に伴い、個人での自動車の利用需要も増加しているとみられる。IMFによると、UAEの人口は2023年の1,068万人から2024年は1,100万人に増加すると予測しており、ドバイ首長国単体の統計でも、2023年の366万人から2024年には386万人に増加(前年比5.5%増)した。
日本からの輸出増加も、中国車が台頭
UAEで日本車の人気は引き続き高い。日本の財務省貿易統計によると、2024年の日本からUAEへの輸出額127億7,600万ドル(前年比22.8%増)のうち、自動車は41億5,500万ドルで、対UAE輸出額全体の32.5%を占めている。日本からの国別の輸出台数を見ても、UAE向けが世界3位で、前年比11.7%増の約36万台となっている(2025年2月3日付ビジネス短信参照)。
他方、中国車を目にする機会が日に日に増えており、中国車の台頭が目立つ。とりわけ中国メーカーの電気自動車(EV)やハイブリッド車の増加が顕著だ。UAE連邦競争力・統計局の統計データによると、中国からのEV、ハイブリッド車の輸入額は、2023年の40億3,900万ディルハム(約1,575億2,100万円、1ディルハム=約39円)から、2024年は64億8,300万ディルハム(前年比60.5%増)となっている。続くドイツの8億7,000万ディルハム(同34.6%減)、米国の3億7,400万ディルハム(同33.9%減)と比べて、中国からの輸入額が突出している。また、中国からのEV、ハイブリッド車の再輸出額は、2023年の9,000万ディルハムから、2024年は400万ディルハムに減少している。これは、UAE市場に流通している中国メーカーのEV、ハイブリッド車が増えている証左と言える。
インフラ開発推進による一層のEV普及に期待
UAEでは政府が引き続きEV普及を後押ししている。同国は2023年にドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)を契機に、再生可能エネルギーの発電能力を3倍にする目標を掲げ(2024年2月5日付地域・分析レポート参照)、2050年までに一般車両の50%をEVにすることを目指すと発表した。また、ドバイ首長国でも、2030年までに公共部門で使われる車両の30%をEV、またはハイブリッドにする目標を掲げ、EVの登録や駐車場、充電料や有料道路の通行料の減免など、インセンティブを提供している。ドバイ電気水道局(DEWA)によると、ドバイ全土に740カ所以上のEV充電スポットが設置されており、2024年10月時点で3万4,970台以上のEVがドバイを走行している。2025年にはEV充電スポットの設置を1,000カ所まで増やす目標を掲げている。
また、米国のEV大手テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は2025年2月にドバイで、EVによるシャトル運行専用地下トンネル網「ドバイ・ループ」の建設計画を発表した。同氏が経営するボーリングコーポレーション(TBC)がこの計画に参画する。ループは既に米国ラスベガスで運用されている先行事例がある。人口密度の高い地域での渋滞解消につなげる効果が見込まれており、さらに、EV普及への後押しにもなると期待されている。同年同月には「空飛ぶクルマ」の開発などを手掛けるスカイドライブ(SkyDrive、愛知県豊田市)がドバイのヘリコプターチャーター会社AeroGulf Servicesとの間で、空飛ぶクルマの事業検討に関する覚書を締結。SkyDriveの空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」最大50機をプレオーダーすることに合意した。今後、両社はパーム・ジュメイラでの商用飛行を目指し、ルートを検討していく(2025年3月7日付ビジネス短信参照)。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・ドバイ事務所
清水 美香(しみず みか) - 2010年、ジェトロ入構。海外調査部中東アフリカ課、海外調査企画課、ジェトロ埼玉などを経て、2023年9月から現職。