2024年の乗用車新車登録台数は3.2%減、HEVは36.2%増(フランス)
2025年6月9日
フランスの2024年の乗用車新車登録台数は前年比3.2%減の171万8,416台だった。バッテリー式電気自動車(BEV)の新車登録台数は2.6%減の29万614台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は10.2%減の14万6,392台と前年割れになった。一方、PHEVを除くハイブリッド車(HEV)は36.2%増の58万8,897台と大幅な伸びが続いた。
乗用車の新車登録台数は減少、中古車は高水準維持
フランス自動車工業会の発表資料(フランス語)(182KB)によると、2024年の乗用車新車登録台数は前年比3.2%減の171万8,416台となった。中古車の新規登録台数(フランス語)
(110KB)は3.1%増の535万4,171台と増加に転じたが、自動車関連情報を発信するオート・プリュス(2025年1月7日付)によると、新型コロナウイルス危機前の水準(560万台超)には届かなかった。在庫の増加に伴い価格が緩やかに低下したものの、歴史的に見れば中古車販売は依然として高い水準を維持した。
小型商用車(車載量5.1トン未満)の新車登録台数は前年比0.7%増の38万1,854台、大型トラック(車載量5.1トン以上)は0.3%増の4万8,983台といずれも小幅な増加にとどまった。
乗用車新車登録台数をメーカー・ブランド別にみると(表1参照)、ルノー・グループは、ルノーが前年比0.2%減の27万7,297台、グループ傘下のルーマニア・ダチアは7.3%減の14万4,979台と低迷した。日産は2万8,371台と前年より22.2%減少した。
ステランティスは、プジョーが前年比3.6%減の23万2,713台、シトロエンが11.4%減の11万1,536台と前年からの減少が続いた。フィアットは18.8%減の3万2,770台と落ち込んだ。
外国勢では、トヨタが前年比18.1%増の12万7,519台となり、前年に外国勢トップだったドイツのフォルクスワーゲン(VW)を抜いて最大シェアを取り戻した。VWは0.7%減の11万9,360台と伸び悩んだが、グループ傘下のチェコ・シュコダは16.3%増の4万4,501台と好調な伸びを示した。
ドイツの高級車ブランドは、BMWが前年比12.7%増の6万7,147台と増加が続いたが、メルセデス・ベンツは1.1%減の5万1,267台、アウディが3.0%減の4万7,917台と低迷した。
韓国勢は、起亜が前年比10.8%減の4万3,861台、現代が8.0%減の4万5,451台と減少に転じた。米国勢は、フォードが15.5%減の4万3,623台となった。テスラは、国内BEV市場の低迷や後述するエコカー購入補助金制度改正の影響を受け、35.4%減の4万709台と大幅減を記録した。
中国BEVメーカー、MGの新車登録台数も前年比26.3%減の2万4,599台と減少した。一方、2023年にフランスでBEV販売を開始したBYDは、2024年4月に大手販売代理店エミール・フレイと契約を結び、新車登録台数が約10.4倍の5,415台に達した。
メーカー・ブランド | 登録台数 | 前年比 |
---|---|---|
ルノー | 277,297 | △ 0.2 |
プジョー | 232,713 | △ 3.6 |
ダチア | 144,979 | △ 7.3 |
トヨタ | 127,519 | 18.1 |
フォルクスワーゲン | 119,360 | △ 0.7 |
シトロエン | 111,536 | △ 11.4 |
BMW | 67,147 | 12.7 |
メルセデス・ベンツ | 51,267 | △ 1.1 |
アウディ | 47,917 | △ 3.0 |
現代 | 45,451 | △ 8.0 |
シュコダ | 44,501 | 16.3 |
起亜 | 43,861 | △ 10.8 |
フォード | 43,623 | △ 15.5 |
テスラ | 40,709 | △ 35.4 |
オペル | 40,007 | △ 7.5 |
フィアット | 32,770 | △ 18.8 |
日産 | 28,371 | △ 22.2 |
MG | 24,599 | △ 26.3 |
スズキ | 24,093 | 10.2 |
合計(その他を含む) | 1,718,416 | △ 3.2 |
出所:フランス自動車工業会(CCFA)資料を基にジェトロ作成
ハイブリッド車の新車登録台数は大幅増、燃料タイプ別でトップに
乗用車新車登録台数を燃料タイプ別に見ると(表2参照)、PHEVを除くHEVの登録台数は、前年比36.2%増の58万8,897台と前年からの大幅な伸びが続いた。乗用車新車登録台数に占めるHEVの割合は34.3%と前年からほぼ10ポイント増加し、燃料タイプ別の登録台数でガソリン車を抑えてトップとなった。
BEVの新車登録台数は、前年比2.6%減の29万614台と減少したが、全体に占める割合は16.9%と前年とほぼ変わらなかった。PHEVは10.2%減の14万6,392台だった。BEVとPHEVを合わせると、乗用車新車登録台数に占める割合は25.4%となった。
一方、前年に増加したガソリン車は、前年比20.9%減の50万7,756台と減少し、全体に占める割合は29.5%と前年の36.2%から大きく縮小した。ディーゼル車は、27.2%減の12万4,952台と減少が続き、全体に占める割合は7.3%と前年に引き続き1割を下回った。
燃料 | 2023年 | 2024年 | ||
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登録台数 | 登録台数 | 構成比 | 伸び率 | |
ガソリン | 641,582 | 507,756 | 29.5 | △ 20.9 |
ディーゼル | 171,728 | 124,952 | 7.3 | △ 27.2 |
ハイブリッド車(HEV) | 432,299 | 588,897 | 34.3 | 36.2 |
プラグインハイブリッド車(PHEV) | 162,950 | 146,392 | 8.5 | △ 10.2 |
バッテリー式電気自動車(BEV) | 298,219 | 290,614 | 16.9 | △ 2.6 |
その他(注) | 67,945 | 59,805 | 3.5 | △ 12.0 |
合計 | 1,774,723 | 1,718,416 | 100.0 | △ 3.2 |
注:燃料電池、液化天然ガス、バイオエタノールなど。
出所:フランス自動車工業会(CCFA)資料を基にジェトロ作成
BEVの新車登録台数が減少した背景には、2023年10月に、EVの新車購入またはリース契約に対し購入価格の一部を補助する環境報奨金制度が改正され、適用対象が欧州域内で生産されたモデルに限定されたこと(2023年12月21日付ビジネス短信参照)や、2024年12月の政令で環境報奨金が最大7,000ユーロから4,000ユーロに大幅減額されたこと(2024年12月5日付ビジネス短信参照)などが影響したものと見られる。
グリーンモビリティに関する情報発信を行う「モビリテ・ヴェルト」が発表(2025年1月3日付)したBEVのモデル別乗用車新車登録台数をみると、環境報奨金の適用から外れたモデルの減少が目立った。米国テスラの「モデルY」は2万8,576台と最多になったが、前年より23.0%減った。同「モデル3」も52.7%減の1万1,613台と落ち込んだ。欧州域外で生産されているダチアの「スプリング」は5,144台と前年から82.7%減少した。韓国の現代「コナ」は16.9%減の4,771台、中国MGの「MG4」は59.7%減の8,079台と減少に転じた。
2024年に初めて導入された、低所得世帯向けのBEV公的リース制度により、約5万世帯が市場価格よりもはるかに低い料金である月額100~150ユーロでBEVを利用できるようになった。同リース制度の対象になったプジョー「e-208」は前年比4.0%増の2万3,602台、ルノー「トゥインゴ」は32.9%増の1万1,299台と、いずれもプラスの伸びを示した〔「モビリテ・ヴェルト」(2025年1月3日付)〕。リース用の車両として購入されたことが考えられる。
欧州電気自動車協会フランス支部AVERE Franceによると、BEVの中古車市場は拡大を続けた。2024年第4四半期は前期を14%上回る4万1,564台の中古車が販売された。ルノー「ゾエ」の販売台数が6,488台でトップとなり、プジョー「e- 208」が3,921台、フィアット「Fiat 500」が3,071台と続いた。中古BEVの平均価格は1年間で17.4%低下した。
なお、AVERE Franceによれば、公共用充電スタンドの数は2024年12月末時点で15万4,694カ所と前年より31%増加した。
国内生産台数は減少、トヨタ工場が国内最大の製造拠点に
欧州自動車工業会(ACEA)の発表(846KB)によれば、2024年のフランス国内における乗用車生産台数は、84万9,437台と前年より12.4%減少した。経済紙「レゼコー」の集計(2025年3月19日付)によれば、商用車を含む自動車の国内生産台数は前年比11%減の134万台だった。新型コロナウイルス危機の影響で生産量が激減した2020年の生産量を4万台上回ったが、半導体不足で混乱が続いた2021年の水準に届かなかった。
レゼコー紙によると、国内に5カ所の工場を持つステランティスの生産台数は56万5,000台となり、前年の73万7,000台から23%減少した。欧州およびフランス国内での新車需要の低迷に加え、一部の工場で部品の供給が不足したことや、プジョー3008やシトロエンC5などモデルチェンジを前に生産を控える動きが影響したと説明した。
ルノーの国内生産台数(商用車を含む)については、レゼコー紙は前年比2%増の48万6,960台と堅調だったと報じた。ルノーは2023年11月に、EV関連事業子会社「アンペア」を設立し、BEVの国内生産を、北部オー・ド・フランス地域圏の3カ所の工場から成る「アンペア・エレクトリシティ」に集約した。これに伴い、イル・ド・フランス地域圏にあるフラン工場は、2024年にBEV「ゾエ」の生産を停止したが、リサイクル工場への転換により閉鎖を免れたとした。
トヨタ自動車のフランス国内における生産台数は、前年比2.1%増の27万9,613台だった。オー・ド・フランス地域圏のヴァランシエンヌ工場は、ルノーやステランティスの他の工場を抑え、生産規模で国内最大となった。
フランス政府の発表によれば、BEVおよびHEVの国内生産台数は、2024年末に64万台に達した。政府は2030年までにBEV・HEVで年間200万台の生産を目指しており、国家投資計画「フランス2030」の枠内で、これまでに570件の関連プロジェクトに対し37億7,800万ユーロの補助金を支給した。
また、政府は2027年でのバッテリーの完全自給を目指し、オー・ド・フランス地域圏に建設予定のバッテリーのギガファクトリープロジェクトを支援した。ACC(ステランティス、メルセデス・ベンツ、トタルエナジーズ子会社SAFTによる共同出資)、ベルコール、台湾プロロジウム・テクノロジー、AESCグループ、ティアマト(Tiamat)が建設を発表している。このうち、ACCは2023年に一部稼働した。
スタートアップのティアマトは2024年1月、北部ボーヴ市のジュール=ヴェルヌ産業団地に欧州初のナトリウムイオン電池のギガファクトリーを建設することを正式に決定した。このギガファクトリーは、5ギガワットアワー(GWh)の生産能力を持ち、2026年に稼働予定だ。
中国車の輸入は前年より25.6%減
フランス税関の統計によると、乗用車(HSコード8703)の輸出台数は、前年比15.0%減の113万5,091台となった。輸出相手国1位はベルギーで4.2%減の18万5,285台、2位のイタリアが17.2%減の11万4,681台、3位のドイツが31.7%減の10万7,632台といずれも減少した。ドイツ向け輸出は、過去2年間でほぼ半減した。4位のスペインは4.4%減の8万3,822台、5位の英国は13.8%減の8万1,726台となった。日本への輸出は、80.9%減の1,560台と前年の8,150台から大幅に減少した。
乗用車の輸入台数は、前年比3.7%減の195万7,155台となった。最大の輸入相手国であるスペインは40万6,191台と前年より11.9%増加した。2位のドイツは、10.2%増の28万9,235台で、新型コロナウイルス危機前の水準を超えた(2019年は27万4,905台)。一方、EU域外からの輸入減が目立った。4位のモロッコは6.2%減の15万7,993台、6位のトルコが19.3%減の12万2,234台、9位の韓国は22.2%減の6万1,610台となった。7位の中国は、2023年に前年から倍増した後、2024年は10万470台と前年比25.6%減少した。日本からの輸入は、5.5%減の3万9,251台と前年割れになった。
乗用車のうち、BEVの輸入台数は30万187台となり、前年より8.5%減少した。特に、最大輸入相手国だった中国が、環境報奨金制度の改正を受けて、5万8,163台と前年からほぼ半減した。PHEVも3.6%減の12万4,124台と低迷した一方、HEVは国内販売台数の拡大を背景に34万9,430台となり、71.2%の大幅増を記録した。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・パリ事務所
山﨑 あき(やまさき あき) -
2000年よりジェトロ・パリ事務所勤務。
フランスの政治・経済・産業動向に関する調査を担当。