乗用車生産は過去最高、新規登録台数は前年比約5%増(チェコ)
2025年6月6日
チェコの2024年の乗用車新車登録台数は前年比4.6%増加した。ハイブリッド車〔ハイブリッド車(HEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)〕とバッテリー式電気自動車(BEV)の増加が大きく寄与した。特にBEVは、政府の購入支援プログラム実施の影響もあり、64.7%増の大幅増を記録した。
一方、2024年の乗用車の国内生産台数は前年比3.9%増で、2018年の過去最高記録を更新した。ただし、BEVとPHEVを合わせた電動車の生産台数は16.4%減少し、国内生産台数に占める割合も前年の12.9%から10.4%に後退した。
2024年の新車登録台数は前年比4.6%増
2025年2月5日付チェコ自動車輸入者連盟(SDA)の発表(チェコ語)(3.07MB)によると、2024年の乗用車の新車登録台数は前年比4.6%増加し、23万1,600台に達した。新型コロナウイルス禍前の2019年の水準(24万9,915台)には及ばなかったものの、2020年以降の5年間で最高を記録した(表1参照)。
項目 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
登録台数 | 192,314 | 230,857 | 259,693 | 271,595 | 261,437 | 249,915 | 202,971 | 206,876 | 192,087 | 221,422 | 231,600 |
前年比 | 16.7 | 20.0 | 12.5 | 4.6 | △ 3.7 | △ 4.4 | △ 18.8 | 1.9 | △ 7.1 | 15.3 | 4.6 |
出所:チェコ自動車輸入者連盟(SDA)
登録台数増加の要因について、SDAから分析を請け負う大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は2025年1月7日付資料(チェコ語)(984KB)で、経済が回復傾向にあること(2025年3月5日付ビジネス短信参照)とともに、消費者や企業の購買意欲が増大したためと指摘している。
トヨタが3位に浮上
2024年の新車登録台数をメーカー、ブランド別にみると、トップは地場系のシュコダ〔フォルクスワーゲン(VW)グループ〕で、全体の33.7%を占めた(表2参照)。2位は前年同様、現代(8.8%)が維持したが、前年3位だったVW(6.7%)は前年比17.9%減で4位に退き、8.9%増と順調な伸びを示したトヨタ(8.2%)が4位から3位に浮上した。また、トヨタのレクサスブランドは52.1%増と大幅な伸びを示し、構成比が1.0%に達した。
メーカー、ブランド | 2023年 | 2024年 | ||
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台数 | 台数 | 構成比 | 前年比 | |
シュコダ | 77,490 | 78,097 | 33.7 | 0.8 |
現代 | 20,068 | 20,309 | 8.8 | 1.2 |
トヨタ | 17,435 | 18,994 | 8.2 | 8.9 |
フォルクスワーゲン | 18,938 | 15,555 | 6.7 | △ 17.9 |
起亜 | 11,424 | 10,743 | 4.6 | △ 6.0 |
ダチア | 7,830 | 9,422 | 4.1 | 20.3 |
メルセデス・ベンツ | 8,642 | 8,061 | 3.5 | △ 6.7 |
フォード | 5,655 | 6,601 | 2.9 | 16.7 |
ルノー | 4,010 | 5,495 | 2.4 | 37.0 |
BMW | 6,037 | 5,459 | 2.4 | △ 9.6 |
プジョー | 4,360 | 5,063 | 2.2 | 16.1 |
ボルボ | 3,020 | 5,025 | 2.2 | 66.4 |
MG | 2,609 | 4,101 | 1.8 | 57.2 |
アウディ | 4,060 | 3,951 | 1.7 | △ 2.7 |
テスラ | 1,618 | 3,716 | 1.6 | 129.7 |
スズキ | 2,960 | 3,512 | 1.5 | 18.7 |
オペル | 2,723 | 3,419 | 1.5 | 25.6 |
KGモビリティ(旧双竜) | 3,170 | 3,379 | 1.5 | 6.6 |
シトロエン | 2,100 | 2,863 | 1.2 | 36.3 |
レクサス | 1,529 | 2,326 | 1.0 | 52.1 |
クプラ | 1,784 | 2,138 | 0.9 | 19.8 |
マツダ | 2,133 | 1,769 | 0.8 | △ 17.1 |
セアト | 2,819 | 1,582 | 0.7 | △ 43.9 |
ホンダ | 812 | 1,398 | 0.6 | 72.2 |
日産 | 814 | 1,291 | 0.6 | 58.6 |
ランドローバー | 922 | 951 | 0.4 | 3.2 |
スバル | 999 | 841 | 0.4 | △ 15.8 |
三菱 | 390 | 812 | 0.4 | 108.2 |
フィアット | 607 | 641 | 0.3 | 5.6 |
ポルシェ | 814 | 633 | 0.3 | △ 22.2 |
合計(その他含む) | 221,422 | 231,600 | 100 | 4.6 |
出所:チェコ自動車輸入者連盟(SDA)
ハイブリッド車部門、依然としてトヨタがトップ独走
2024年の乗用車新車登録台数の拡大には、ハイブリッド車を含む電動車の増加が大きく貢献した。ハイブリッド車部門(HEVとPHEV)の登録台数は5万1,432台で、前年の4万804台から26.0%増となっている(表3参照)。新車登録台数全体に占める割合は18.4%から22.2%に増加した。トップは依然としてトヨタで、前年比19.0%増の1万1,845台だった。また、レクサスは59.7%増と急増し、同部門の構成比を前年の3.4%から4.3%に伸ばした。
メーカー、ブランド | 2023年 | 2024年 | ||
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台数 | 台数 | 構成比 | 前年比 | |
トヨタ | 9,950 | 11,845 | 23.0 | 19.0 |
シュコダ | 3,741 | 5,881 | 11.4 | 57.2 |
メルセデス・ベンツ | 3,142 | 4,629 | 9.0 | 47.3 |
ボルボ | 2,827 | 4,001 | 7.8 | 41.5 |
BMW | 4,280 | 3,887 | 7.6 | △ 9.2 |
スズキ | 2,914 | 3,509 | 6.8 | 20.4 |
フォード | 3,508 | 3,278 | 6.4 | △ 6.6 |
レクサス | 1,389 | 2,218 | 4.3 | 59.7 |
ルノー | 1,461 | 1,666 | 3.2 | 14.0 |
マツダ | 1,507 | 1,521 | 3.0 | 0.9 |
ダチア | 1 | 1,452 | 2.8 | 145100.0 |
ホンダ | 792 | 1,362 | 2.6 | 72.0 |
日産 | 665 | 1,041 | 2.0 | 56.5 |
現代 | 1,033 | 793 | 1.5 | △ 23.2 |
プジョー | 149 | 518 | 1.0 | 247.7 |
レンジローバー | 399 | 474 | 0.9 | 18.8 |
起亜 | 582 | 421 | 0.8 | △ 27.7 |
ランドローバー | 321 | 421 | 0.8 | 31.2 |
合計(その他含む) | 40,804 | 51,432 | 100.0 | 26.0 |
出所:チェコ自動車輸入者連盟(SDA)
BEV登録台数、国家支援制度を背景に大幅増
2024年のBEVの新車登録台数は1万933台で、前年比で64.7%増加した(表4参照)。新車登録台数全体に占める割合は前年の3.0%から4.7%に上昇した。メーカー、ブランド別では、テスラが前年比2.3倍と大幅増の3,716台で、2位のシュコダ(1,644台)を引き離して、ダントツでトップとなっている。3位は同約8.7倍超で躍進したボルボ、以下、VW、BMWと続いている。また、まだ少数ながら、比亜迪(BYD)、東風汽車(DFMC)、上海蔚来汽車(NIO)、ジーカー(Zeekr)などの中国メーカーも新たに国内で登録されている。
PwCは前述の同社資料でBEV登録台数の増加に関して、2024年に実施されたゼロエミッション車購入支援制度(2024年3月28日付ビジネス短信参照)の影響が大きいと指摘している。同プログラムは、法人向けBEVと燃料電池車(FCV)の購入、EV充電器の設置を対象に、国立開発銀行(NRB)が融資保証と助成金を提供するもので、同年3月に募集開始、10月に予算上限額に達したため終了した。NRBの発表によると、申請受け付けが終了した同年10月14日時点でこの制度を利用したBEVの購入台数は6,140台(軽商用車191台、トラック3台を含む)だった。メーカー別にみると、テスラが2,593台で圧倒的に多く、以下、VW(569台)、ボルボ(541台)、シュコダ(533台)と続いている。EV充電器に関しては、2,696カ所の法人充電施設の設置が実現した。
また、国内の公共充電インフラの整備も進んでいる。運輸研究センター発表のデータによると、2024年末時点の公共充電施設数は2,943(充電器数5,218)で、2023年末の2,451(同4,379)から増加した。
一方、FCVはBEV同様、上述の購入支援制度の対象となっていたにもかかわらず、2024年の新規登録はなかった。FCV用の公共水素ステーションも、運輸研究センターのデータ上では、国内で開設されているものは3カ所にとどまっており、整備が進んでいない状態だ。
メーカー、ブランド | 2023年 | 2024年 | ||
---|---|---|---|---|
台数 | 台数 | 構成比 | 前年比 | |
テスラ | 1,618 | 3,716 | 34.0 | 129.7 |
シュコダ | 1,442 | 1,644 | 15.0 | 14.0 |
ボルボ | 112 | 971 | 8.9 | 767.0 |
フォルクスワーゲン | 607 | 682 | 9.1 | 12.4 |
BMW | 394 | 578 | 5.3 | 46.7 |
メルセデス・ベンツ | 451 | 522 | 4.8 | 15.7 |
現代 | 539 | 496 | 4.5 | △ 8.0 |
MG | 61 | 428 | 3.9 | 601.6 |
起亜 | 260 | 275 | 2.5 | 5.8 |
トヨタ | 117 | 186 | 1.7 | 59.0 |
オペル | 91 | 173 | 1.6 | 90.1 |
フォード | 69 | 173 | 1.6 | 150.7 |
プジョー | 183 | 157 | 1.4 | △ 14.2 |
ルノー | 73 | 155 | 1.4 | 112.3 |
アウディ | 112 | 105 | 1.0 | △ 6.3 |
ダチア | 101 | 103 | 0.9 | 2.0 |
フィアット | 45 | 90 | 0.8 | 100.0 |
ポルシェ | 46 | 87 | 0.8 | 89.1 |
ミニ | 30 | 78 | 0.7 | 160.0 |
シトロエン | 96 | 64 | 0.6 | △ 33.3 |
KGモビリティ(旧双竜) | 0 | 63 | 0.6 | — |
レクサス | 9 | 26 | 0.2 | 188.9 |
BYD | 0 | 22 | 0.2 | — |
日産 | 17 | 21 | 0.2 | 23.5 |
東風汽車(DFMC) | 0 | 17 | 0.2 | — |
クプラ | 87 | 15 | 0.1 | △ 82.8 |
フィスカー | 0 | 12 | 0.1 | — |
NIO | 0 | 11 | 0.1 | — |
ロールスロイス | 4 | 9 | 0.1 | 125.0 |
ジープ | 21 | 6 | 0.1 | △ 71.4 |
スバル | 17 | 6 | 0.1 | △ 64.7 |
マツダ | 13 | 6 | 0.1 | △ 53.8 |
スマート | 1 | 6 | 0.1 | 500.0 |
ジーカー | 0 | 5 | 0.0 | — |
合計(その他を含む) | 6,640 | 10,933 | 100.0 | 64.7 |
出所:チェコ自動車輸入者連盟(SDA)
2024年の生産台数、過去最高を記録
1月21日付チェコ自動車工業会(AutoSAP)の発表によると、2024年の国内乗用車生産台数は前年比3.9%増加して145万2,881台に達し、新型コロナ禍前の2018年(143万7,396台)の過去最高記録を更新した(図参照)。

出所:チェコ自動車工業会(AutoSAP)
AutoSAPのマルチン・ヤーン会長は、逆境の中で生産台数が増加し、記録更新を達成した事実を評価している。ヤーン会長は「不安定なサプライチェーンや、地政学リスクの悪影響、経済成長の緩慢化、依然として高止まりしているエネルギー価格などの悪条件にもかかわらず、2024年は素晴らしい結果を達成できた。この実績はチェコの自動車工業が国内、そして欧州経済の重要な柱であり続けていることを証明している」と述べた。
2024年の実績をメーカー別にみると、国内最大メーカーのシュコダ・オートの生産台数は89万6,933台(国内乗用車総生産台数に占めるシェア61.7%)で、前年比で3.7%増加した(表5参照)。トヨタモーター・マニュファクチャリング・チェコ(TMMCZ、トヨタグループ)は22万5,058台(同15.5%)で、前年比17.0%増と大幅な伸びを示した。AutoSAPは、TMMCZが2023年の特に春季と夏季に部品供給が停滞し、生産停止を余儀なくされた結果、同年の年間生産台数が低下した事実を指摘している。同社の2024年生産台数の半数は、Bセグメントのコンパクトカー「ヤリス」のハイブリッドモデルが占めた。一方、現代チェコ(現代自動車グループ)の生産台数は33万890台(同22.8%)で、前年比2.8%減となった(2023年は前年比5.6%増)。同社では、電動車のバッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の生産台数の合計が全体の16.5%を占めた。同社のイ・チャンギ社長は、欧州でのEV需要が期待したほど伸びなかった事実が実績に影響したと説明している(2025年1月27日付ビジネス短信参照)。
表5:乗用車の国内生産、販売、輸出台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー | 生産 | 前年比 | 国内販売 | 前年比 | 輸出 | 前年比 |
---|---|---|---|---|---|---|
シュコダ・ オート |
864,889 | 24.8 | 87,784 | 23.4 | 777,105 | 25.0 |
TMMCZ | 192,427 | △ 4.9 | 3,279 | 40.9 | 189,148 | △ 5.4 |
現代チェコ | 340,500 | 5.6 | 14,554 | 2.1 | 325,946 | 5.7 |
合計 | 1,397,816 | 14.8 | 105,617 | 20.4 | 1,292,199 | 14.3 |
メーカー | 生産 | 前年比 | 国内販売 | 前年比 | 輸出 | 前年比 |
---|---|---|---|---|---|---|
シュコダ・ オート |
896,933 | 3.7 | 84,476 | △ 3.8 | 812,457 | 4.5 |
TMMCZ | 225,058 | 17.0 | 2,623 | △ 20.0 | 222,435 | 17.6 |
現代チェコ | 330,890 | △ 2.8 | 14,824 | 1.9 | 316,066 | △ 3.0 |
合計 | 1,452,881 | 3.9 | 101,923 | △ 3.5 | 1,350,958 | 4.5 |
出所:チェコ自動車工業会(AutoSAP)
BEV、PHEVの生産台数、前年比16.4%減
2024年の乗用車のBEVとPHEVを合わせた電動車の生産台数は15万1,162台で、2023年の18万887台より16.4%減少した(表6参照)。うちBEVは11万3,232台で13.3%減、PHEVは3万7,930台にとどまり、24.6%減となった。全国内生産台数に占める電動車の割合は10.4%で、2023年の12.9%から後退した。
メーカー別では、シュコダ・オートが9万6,534台(BEV 7万9,932台、PHEV 1万6,602台)、現代チェコが5万4,628台(BEV 3万3,300台、PHEV 2万1,328台)となっている。TMMCZはハイブリッド車(HEV)を生産しているが、AutoSAPではHEVの統計は公表していない。
表6:乗用車におけるBEV、PHEVの国内生産台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
メーカー | BEV | 前年比 | 全生産台数に占める割合(注) | PHEV | 前年比 | 全生産台数に占める割合(注) | 計 | 前年比 | 全生産台数に占める割合(注) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シュコダ・オート | 86,732 | 51.6 | 10.0 | 22,103 | 50.6 | 2.6 | 108,835 | 51.4 | 12.6 |
現代チェコ | 43,839 | 46.8 | 12.9 | 28,213 | △ 15.0 | 8.3 | 72,052 | 14.3 | 21.2 |
合計 | 130,571 | 49.9 | 9.3 | 50,316 | 5.1 | 3.9 | 180,887 | 34.0 | 12.9 |
メーカー | BEV | 前年比 | 全生産台数に占める割合(注) | PHEV | 前年比 | 全生産台数に占める割合(注) | 計 | 前年比 | 全生産台数に占める割合(注) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シュコダ・オート | 79,932 | △ 7.8 | 8.9 | 16,602 | △ 24.9 | 1.9 | 96,534 | △ 11.3 | 10.8 |
現代チェコ | 33,300 | △ 24.0 | 10.1 | 21,328 | △ 24.4 | 6.4 | 54,628 | △ 24.2 | 16.5 |
合計 | 113,232 | △ 13.3 | 7.8 | 37,930 | △ 24.6 | 2.6 | 151,162 | △ 16.4 | 10.4 |
注:「全生産台数に占める割合」は各社の生産台数、「合計」はTMMCZの生産台数を含む国内全乗用車生産台数に対する割合。
出所:チェコ自動車工業会(AutoSAP)

- 執筆者紹介
-
ジェトロ・プラハ事務所
中川 圭子(なかがわ けいこ) - 1995年よりジェトロ・プラハ事務所で調査、総務を担当。