2025年はアフリカビジネス拡大のチャンス
大阪・関西万博とTICADでアフリカへ
2025年6月16日
2025年は、「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)と、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が開催される。国際機関が公認する大規模な万博(登録博)の開催は5年に1回で、日本開催は2005年の「愛・地球博」以来20年ぶりとなる。TICADは3年に1回(注1)、アフリカと日本で交互に開催しており、日本開催は6年ぶりだ。2025年は大阪・関西万博と日本開催のTICADが重なる貴重な年で、アフリカビジネスに関心を持つ日本企業にとって絶好の機会だ。アフリカの政財界から要人が来日し、併せて開かれるビジネスフォーラムや投資セミナーには、アフリカのビジネスパーソンが多数参加する。日本とアフリカの経済交流が促進され、日本企業のアフリカビジネス拡大に向けた取り組みが充実する1年になる。本稿では、アフリカビジネスに関心のある企業が大阪・関西万博とTICADの場をどう活用できるのか紹介する。
大阪・関西万博:アフリカビジネスに取り組むための一歩
大阪・関西万博では、アフリカの40カ国が複数の国や地域と共同出展する「コモンズ館」にパビリオンを設置しているほか、モザンビークやアルジェリア、エジプトなど6カ国が単独でパビリオンを構えている(注2)。

アフリカは日本人にとってなじみが薄く、「アフリカ」としてひとくくりにされがちだが、実際は大小さまざまな54カ国によって構成され、多様性に富んだ大陸だ。各国のパビリオンでは、それぞれの社会や文化、自然環境などに関する展示が行われ、国によっては有望なスタートアップや、現地でビジネスに取り組む日本人を紹介している。仮想現実(VR)を用いた体験型の展示や、コーヒーの提供など、さまざまな工夫が行われており、国ごとに違った楽しみ方ができる。こうしたパビリオンを巡っていくと、「アフリカ」と語られるその中に、全く異なる国々が含まれていることに気づく。例えば、同じ縫製品の展示でも、エチオピアなどは皮革製品を展示しているが、米国向けの縫製産業が集積しているレソトは、ジーンズやTシャツなどの衣料品を展示している。

マリなど、サハラ砂漠を中心とした砂漠の文化をテーマにした国もあれば、モザンビークやタンザニアのような島国や沿岸国では、海路交易やリゾート観光をテーマにした国もある。野生動物やバオバブといったサバンナ以外の自然環境も、アフリカ大陸の多様性を表している。日本では、アフリカと言えば貧困や感染症のイメージが強いが、国家開発計画に関する展示や、都市の様子を紹介している国もあり、日本では報道されないアフリカの姿について知ることができる。
「アフリカ」としてではなく、それぞれの国を個別に見ていくマインドこそ、アフリカビジネスに取り組む上で重要な最初の一歩だ。

また、ナショナルデーに合わせて、各国の要人が来日し、その機会を捉えてビジネスフォーラムやセミナーが開催されている。例えば、タンザニアは5月25日のナショナルデーに合わせて、マジャリワ・カシム・マジャリワ首相が来日し、翌26日に大阪でビジネス投資観光フォーラムを開催した。フォーラムには複数の大臣のほか、財界人も多数参加し、タンザニアのビジネス情報の紹介や投資誘致に向けたプレゼンテーションが行われた。また、日本企業とタンザニア企業との間でネットワーキングの場が設けられるなど、両国間のビジネス促進が図られた(2025年5月28日付ビジネス短信参照)。

従来、こうしたビジネスフォーラムやセミナーは東京で実施されることが多いが、2025年は大阪・関西万博のナショナルデーに合わせ、大阪で実施されるケースも多い。特に西日本の企業にとっては、東京まで行かずとも、大阪でこうしたイベントに参加できる点は大きなメリットだ。アフリカの政財界の要人やビジネスパーソンが地方にまで足を運ぶ機会は珍しく、大阪・関西万博の開催年ならではだ。
なお、各国のナショナルデーに関連したビジネスフォーラムやセミナーは、以下の団体などのサイトで確認することができる。
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アフリカビジネス協議会(JBCA)
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大阪商工会議所
(アフリカ以外の情報も含む)
TICAD:より実践的なビジネス交流の場として活用
大阪・関西万博の会期中の2025年8月20~22日には、横浜で第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の開催も予定されている。TICADは、1993年に日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)と共同で開催してきた国際会議だ。中心テーマはアフリカの開発だが、2019年のTICAD7では、「ビジネスをTICADの中心に」という考えに基づき、TICAD史上初めて民間企業が公式なパートナーと位置づけられ、TICADは次第に日アフリカのビジネス促進のプラットフォームとしての役割を強化してきた。
- 参考:「世界は今-JETRO Global Eye:アフリカをビジネスのパートナーに!―TICAD7に見る新たな可能性―」(2019年9月26日付ジェトロウェブサイト)
ジェトロは5月13日、TICAD9で「TICAD Business Expo &Conference」を開催することを発表した(ジェトロウェブサイト参照)。当該イベントは「Japan Fair」「Africa Lounge」「イベントステージ」「テーマ展示」という4つのゾーンで構成され、各ゾーンの大まかな内容は以下のとおりだ。
- Japan Fair:アフリカ各国から来日する政府要人や財界人に向け、日本企業の優れた製品・技術・サービスをブース展示で紹介する。
- Africa Lounge:アフリカビジネスに関心のある日本のビジネスパーソンらを対象に、アフリカ各国政府による投資・ビジネス情報を展示する。
- イベントステージ:日本企業によるセミナーやテーマ別パネルディスカッションを実施する。ジェトロも、アフリカ財界のキーパーソンを迎えたパネルディスカッションや、ポップカルチャー、イノベーションをテーマとしたイベントを企画中だ。
- テーマ展示:「ポップカルチャー」と「イノベーション」の2つのテーマで展示を実施する。
このうち、Japan Fairには、過去最多となる196社・団体(うち中小企業107社)の日本企業の参加が決定し、ジェトロが主催するアフリカ関連イベントとしては過去最大級の規模となる予定だ。
日本企業にとっては、Africa Loungeやイベントステージを通してアフリカの投資・ビジネス情報について知ることができるほか、アフリカの有望企業や財界人との交流が可能だ。また、既にアフリカビジネスに取り組んでいる日本企業も多数出展するため、そうした企業とのネットワーキングや交流にも活用できる。
なお、「TICAD Business Expo &Conference」の参加登録はジェトロの公式ウェブサイトから可能だ。
大阪・関西万博とTICADで最後のフロンティアに挑む
アフリカは「貧困」「紛争」「野生動物」「伝統的社会」などのイメージが強く、日本にとって地理的にも心理的にも遠い場所だ。しかし、ジェトロが2024年12月に発表した「2024年度進出日系企業実態調査(アフリカ編)」によると、アフリカに拠点を構える日系企業のうち、黒字を見込む企業はアフリカ全体で前年比1.4ポイント増の59.8%で、比較可能な2013年以降の最高を更新した。また、今後1~2年の事業展開について「拡大」と答えた企業は、アフリカ全体で2023年から3.0ポイント増の57.0%と、インドなどを含む南西アジアに次いで高い結果となった。アフリカは制度や規制、財政の不安定さなど課題も多いが、一部の日系企業は人口増加に伴う市場の拡大を見込んで、アフリカ市場に挑戦し、事業拡大につなげている。
「最後のフロンティア」と呼ばれるアフリカ市場への足掛かりとして、いかに大阪・関西万博とTICADの場を活用できるかがカギだ。
- 注1:
- 2013年のTICADⅤまでは5年おきに日本開催だったが、2016年にケニアで初めてアフリカ開催されて以降、3年おきに日本とアフリカの交互で開催されている。
- 注2:
- 2025年2月13日時点で出展を表明している国。開館状況とは異なる。

- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部中東アフリカ課
坂根 咲花(さかね さきか) - 2024年、ジェトロ入構。中東アフリカ課で主にアフリカ関係の調査を担当。