2024年の新車販売は49万台超え、国産EVや輸入車が増加(ベトナム)

2025年6月23日

2024年のベトナム国内の新車販売は49万台超と推計される。ベトナム自動車工業会(VAMA)の発表値が34万142台(前年比12.6%増)だったのに加え、VAMAの発表値に計上されていないヒュンダイ・タインコンが6万7,168台(0.4%減)、ビンファストが約8万7,000台(約2.7倍、納車台数)となった。輸入車やビンファストの国産の電気自動車(EV)が牽引し、約40万台にとどまった2023年から2割以上増加した。

本レポートでは、2024年の新車販売実績を車種別やボディータイプ別などで振り返る。併せて、2025年の見通しも探る。

VAMA公表の新車販売台数は、輸入車が前年比39%増

ベトナムの新車販売は2016年に30万台、2019年に40万台を超え、2022年には50万台を突破した。2023年は経済減速の影響で反落し、前年比約2割減の約40万台となったが、2024年は2022年に次ぐ販売台数を記録した。経済の回復や、各社の積極的な新モデルの投入、販売促進などに支えられた。

VAMA発表の新車販売台数(2024年)は前年比12.6%増の34万142台だった。このうち、国産車(海外ブランドを含む)は前年比4.8%減の17万2,730台、輸入車は38.8%増の16万7,412台だった(図1参照)。

図1:2018年から2024年のベトナム新車販売台数の推移(単位:台)
VAMA非加盟を含むと2018年は約35万台、2019年は約42万台、2020年は約41万台、2020年は約41万台、2022年は約51万台、2023年は約40万台、2024年は約49万台。VAMA発表の新車販売台数のうち、国産車(海外ブランドを含む)は前年比4.8%減の17万2,730台で、輸入車は38.8%増の16万7,412台だった。

注1:点線はVAMA公表外の販売台数。2018年はヒュンダイ・タインコン発表の販売台数。
2019年以降はビンファスト、2024年はTMTモーターズの販売台数も含まれる。
注2:ビンファストの販売台数について、2023年は報道での推定値、2024年は同社発表の概数を計上している。
出所:VAMA公表資料、各社の発表や報道に基づきジェトロ作成

販売台数を月別に確認すると、輸入車は2024年の年初、前年(2023年)からの低迷が続いたが、4月以降は前年同月比を上回った(図2参照)。国産車は伸び悩んだものの、政府が自動車販売奨励策として、国産車の自動車登録料を半減する措置を適用した9月~11月の3カ月間は、前年同月比を大きく上回った。

図2:2024年の国産車と輸入車の月別販売台数と前年同月比(単位:台、%)
輸入車は、年初こそ前年(2023年)からの低迷が続いたが、4月以降は前年同月比を上回った。国産車は伸び悩んだものの、政府が自動車販売奨励策として国産車の自動車登録料を半減する措置を適用した2024年9月~11月の3カ月間 は、前年同月比を大きく上回った。この間の国産車の販売台数は6万5,727台に達し、年間の国産車販売台数の4割近くを占めた。輸 入車も販売台数を落とすことなく、前年同月比を大きく上回る販売台数を記録した。しかし、12月になると、国産車の販売台数は、支援が終わった反動から前年同月比46.5%減まで落ち込んだ。

注:VAMA公表外(ヒュンダイ・タインコン、ビンファスト、TMTモーターズ)の販売台数は含まれない。
出所:VAMA公表資料に基づきジェトロ作成

政府は、国産車の自動車登録料を半減する措置を過去3回(2020年6月~12月、2021年12 月~2022年5月、2023年7月~12月)にわたって実施してきた。この措置は、新型コロナウイルス禍や経済減速の影響で生産と販売が落ち込んだ国内自動車メーカー(外資を含む)を支援する目的で導入した。2024年に開始した4回目の支援措置では、例えば、本体価格が300万円の国産車を新たに購入する場合、通常30万~36万円ほどかかる同登録料が半減される。

9月~11月の3カ月間の国産車の販売台数は6万5,727台に達し、年間の国産車販売台数の4割近くを占めた。また、各メーカーやディーラーがこの期間に政府の支援とは別に、販促キャンペーンを実施したため、輸入車も販売台数を落とすことなく、前年同月比を大きく上回る販売台数を記録した。ただし12月になると、国産車の販売台数は、支援が終わった反動から、前年同月比46.5%減まで落ち込んだ。

VAMA発表による新車販売台数を車種別にみると、2024年は乗用車が25万7,900台(前年比11.8%増)、商用車が7万9,332台(14.8%増)、特別目的車(ダンプトラックなど)が2,910台(32.0%増)だった(図3参照)。

図3:2018年から2024年の車種別新車販売台数(単位:台)
2024年は乗用車が25万7,900台(前年比11.8%増)、商用車7万9,332台(14.8%増)、特別目的車(ダンプトラックなど)2,910台(32.0%減)になった。

注:VAMA公表外(ヒュンダイ・タインコン、ビンファストなど)の販売台数は含まれない。
出所:VAMA公表資料に基づきジェトロ作成

VAMAが発表した販売台数(34万142台)のうち、加盟企業に限ったデータ(合計29万5,979台)を地域別にみると、ベトナム北部は12万8,502台(前年比5.5%増)、南部は11万2,676台(5.5%増)、中部は5万4,801台(14.9%増)で、特に中部の伸びが目立った。乗用車(ハイブリッド車を含む)に限ると、北部は10万801台(8.9%増)、南部は8万4,141台(2.3%増)、中部は4万5,219台(13.5%増)で、南部で個人消費が伸び悩んでいる様子がみられた。

三菱やビンファストなどの販売、大きく増加

公表データを基に主要メーカー・ブランド別の販売台数(輸入車を含む)をみると、ヒュンダイ・タインコンが前年比0.4%減ながら、6万7,168台で首位になった(表1参照)。トヨタが16.0%増の6万6,576台で2位、フォードが10.1%増の4万2,175台で3位だった。上位10の中では、4位の三菱が前年比33.4%増と大きく販売台数を伸ばした。

表1:主要ブランド・メーカー別の販売台数(2024年)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
ブランド・メーカー 2023年 販売台数 シェア 前年比
ヒュンダイ・タインコン(注1) 67,450 67,168 18.5 △ 0.4
トヨタ 57,414 66,576 18.3 16.0
フォード 38,322 42,175 11.6 10.1
三菱 30,894 41,198 11.3 33.4
タコ・起亜 40,773 34,570 9.5 △ 15.2
タコ・マツダ 35,632 32,601 9.0 △ 8.5
ホンダ 23,802 28,267 7.8 18.8
タコ・トラック 14,535 15,996 4.4 10.1
いすゞ(注2) 8,671 10,522 2.9 21.3
スズキ(ビスコ) 13,317 10,262 2.8 △ 22.9
プジョー 3,038 3,490 1.0 14.9
タコ・バス 1,630 2,255 0.6 38.3
ドータイン 949 2,189 0.6 130.7
タコ・プレミアム(BMW、MINI) 2,110 2,077 0.6 △ 1.6
レクサス 1,793 1,552 0.4 △ 13.4
日野(注2) 2,555 1,464 0.4 △ 42.7
ビナモーター(注2) 285 371 0.1 30.2
サムコ 239 297 0.1 24.3
大宇バス 202 117 0.0 △ 42.1
ビエム 216
合計(注3) 343,827 363,147 100.0 5.6

注1:ヒュンダイ・タインコンの販売台数は自社基準に基づく。
注2:いすゞ、日野、ビナモーターは、バスシャーシを含まない。
注3:VAMAに加盟していない輸入ブランドやビンファストの台数が反映されていないため、合計の台数は図1と一致しない。
出所:VAMA公表資料、ヒュンダイ・タインコンの発表、各種報道を基にジェトロ作成

モデル別(乗用車)にみると、三菱のエクスパンダー(Xpander)が1万9,498台で、2年連続の首位だった(表2参照)。フォードのレンジャー(Ranger)が1万7,508台で2位、タコ・マツダのCX-5が1万4,781台で3位だった。4位は2024年に新発売した三菱のエクスフォース(Xforce)で、三菱は2モデルが上位5位に名を連ねた。

表2:乗用車の販売台数上位10モデル(2024年)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 モデル メーカー 形態 台数 北部 中部 南部 前年比
1 エクスパンダ―
(Xpander)
三菱 MPV 19,498 6,241 4,019 9,238 △ 1.2
2 レンジャー
(Ranger)
フォード ピックアップ 17,508 6,945 4,011 6,552 8.8
3 CX-5 タコ・マツダ クロスオーバー 14,781 8,951 1,826 4,004 △ 12.1
4 エクスフォース(Xforce) 三菱 SUV 14,407 6,045 4,876 3,486
5 ヴィオス
(Vios)
トヨタ セダン 14,210 6,527 2,755 4,928 5.1
6 アクセント
(Accent)
ヒュンダイ・タインコン(注) セダン 13,538 △ 22.4
7 ヤリスクロス
(Yaris Cross)
トヨタ SUV 11,174 4,865 3,458 2,851 264.6
8 エベレスト
(Everest)
フォード SUV 10,841 5,089 2,082 3,670 8.8
9 シティ
(City)
ホンダ セダン 10,500 5,172 2,622 2,706 6.1
10 クレタ
(Creta)
ヒュンダイ・タインコン(注) SUV 8,640 △ 19.4

注:ヒュンダイ・タインコンはVAMAに加盟しておらず、同社の販売台数は独自の基準に基づく。
出所:VAMA公表資料、ヒュンダイ・タインコンの発表に基づきジェトロ作成

ビンファスト(地場複合企業ビングループ傘下)は、発表データが「納車」のみで、販売実績の詳細を公表していないが、2024年の国内納車台数を約8万7,000台前後としている。納車した車両は全て電気自動車(EV)だ。2023年は約3万2,000台と推計されることから、納車台数は前年比2.7倍とみられる(2024年10月3日付地域・分析レポート「ビンファストが年間3万台超のEVを納車、中国EVメーカーも参入(ベトナム)」参照)。2023年まではグループ内のタクシー会社への販売が大半を占めていたが、2024年8月から納車を始めたミニのスポーツ用多目的車(SUV)「VF3」が一般消費者の人気を集めた。同社の発表によると、モデル別の納車台数のトップは、タクシーなどにも使われる小型SUV「VF5」(3万2,000台以上)だったが、「VF3」がそれに続いた。「VF3」の納車台数は8月以降の5カ月間で2万5,000台を超えた。

VAMA加盟企業に限ったボディータイプ(車両形態)別の販売台数では、SUVが8万3,002台、多目的車(MPV)が5万2,723台、セダンが4万7,521台だった(表3参照)。SUVやMPVの販売台数がセダンを上回ったのは、2023年に続いて2年連続で、SUVやMPVを好む消費者嗜好(しこう)が見て取れる。2019年と2024年を比較すると、セダンの販売台数は半数以下となり、その減少分を補うかたちで、SUV、MPV、クロスオーバーの台数がいずれも大きく増加している。

表3:主な車両形態別販売台数の推移(単位:台、%)(△はマイナス値)
形態 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2019~2024年の
増減率
SUV 56,885 60,880 64,091 85,903 62,234 83,002 45.9
MPV 39,533 28,560 22,051 55,288 53,062 52,723 33.4
セダン 101,542 93,905 75,588 90,984 52,658 47,521 △ 53.2
クロスオーバー 10,231 17,868 28,094 34,544 37,837 28,923 182.7
ピックアップトラック 22,767 19,697 25,325 22,762 20,122 23,163 1.7

注:VAMA公表外(ヒュンダイ・タインコン、ビンファストなど)の販売台数は含まれない。
出所:VAMA公表資料に基づきジェトロ作成

中国ブランドもベトナム市場に参入

ベトナムの自動車市場では、日系や韓国系ブランドに加えて、地場のビンファストなどの販売動向が目立つものの、2024年は中国のBYDや奇瑞汽車(チェリーオート)などの中国メーカーが新たにベトナム市場に参入した。これらの中国ブランドの販売台数は非公表のため、上述の販売台数(49万台超)に計上できないが、ベトナム税関局の輸入データをみると、2024年の中国からの完成車輸入台数は3万1,001台(前年比179.2%増)で、過去最多となった(表4参照)。ベトナムの完成車輸入先はインドネシア、タイが中心ではあるが、中国メーカーがベトナムでの販売に注力すると、中国からの輸入台数がさらに増加し、競争が激化する可能性もある。

表4:各国・地域からの完成車輸入台数の推移(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021年 2022年 2023年 2024年 前年比
インドネシア 44,250 72,671 42,676 70,728 65.7
タイ 80,903 72,003 53,942 63,769 18.2
中国 22,595 17,333 11,102 31,001 179.2
日本 3,175 2,408 3,437 3,903 13.6
米国 1,628 2,462 2,432 654 △ 73.1
合計 159,879 173,740 119,046 173,423 45.7

注:合計はその他の国・地域も含む。
出所:ベトナム税関局

また、前述に先立つ中国ブランドの動きとしては、2023年から地場のTMTモーターズがベトナム国内で製造・販売する上汽通用五菱汽車(SGMW)の「五菱・宏光ミニEV」がある。TMTモーターズの発表によると、2023年の販売台数は591台だったものの、2024年は前年比約130%増となる1,358台だった。同社は中部フーイエン省でタクシーサービスを提供するレッツゴータクシーとの提携を強めるなど、地方都市でのシェア拡大を目指す事業展開を図る。

2025年の新車販売は出足堅調も、不透明感漂う

VAMA発表の2025年1~4月の新車販売台数は、前年同期比23.4%増の10万1,834台だった。車種別にみると、乗用車が同21.5%増の7万1,855台、商用車が27.5%増の2万8,979台、特別目的車が49.5%増の1,000台だった。また、国産車は前年同期比13.5%増の4万8,964台で、輸入車は35.0%増の5万2,870台となった。

2024年の年初の販売が特に低調だったことなどを踏まえると、やや力強さに欠けるものの、車種、国産車・輸入車を問わず、販売台数は前年同期を上回っており、安定した推移をみせている。

また、現地報道によると、ビンファストの2025年1~4月の累計販売(納車)台数は4万4,691台となった(VNエクスプレス5月13日)。通年では初の10万台突破が期待できるペースだ。ビンファストをはじめとするEV向けの自動車登録料の免除延長も追い風となりそうだ。9人乗り以下のバッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)の登録料は、2022年3月から免除されていた(2023年4月25日付地域・分析レポート「ベトナム自動車産業は市場拡大に期待、EVや裾野政策は手探り続く」参照)。当初、2025年3月~2027年2月は内燃機関車の半額相当の登録料が課される予定だったが、政府はこの2年間も登録料の免除を続けることとした。引き続きEV普及や環境負荷の軽減を奨励することが目的とみられる。

ただし、足元では、米国の関税政策などを巡る不透明感の高まりから、国内経済の減速を懸念する声もある。今後の販売について、中期的には、人口の増加や経済成長に伴う消費市場の拡大が期待できるが、短期的には、消費マインドが予測しにくい状況が続きそうだ。

執筆者紹介
ジェトロ・ハノイ事務所 ディレクター
萩原 遼太朗(はぎわら りょうたろう)
2012年、ジェトロ入構。サービス産業部、ジェトロ三重、ハノイでの語学研修(ベトナム語)、対日投資部プロジェクト・マネージャー(J-Bridge班)を経て現職。