市場と規制の動きを概観
EU乗用車販売減に底打ち感、EVが好調(1)

2023年9月7日

EUの乗用車市場は、新型コロナウイルス感染拡大後、伸び悩んだ。しかし2022年には、販売、生産台数ともに、底打ち感が出てきた。支えているのは2020年以降、好調な電気自動車(EV)市場だ。

本レポートは2回シリーズで構成する。第1回は、欧州自動車工業会(ACEA)の経済・市場報告書2022年版PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(579KB)(2023年2月発表)などから、市場概観と関連規制の動向を紹介する。また第2回は、EV市場を深掘りしていく。

2023年は新車登録台数が緩やかな回復へ

まず、EU市場の新車登録台数を見ていく。ACEAによると、2022年のEU26カ国(マルタを除く、注1)の乗用車の新車登録台数は、前年比4.6%減の約926万台だった(図1参照、注2)。

月別に見ると、2022年8~12月は前年同月比増だった。しかし上半期は、部品不足によって供給不足が続いた。これが響き、通年では3年連続で前年を下回ったかたちだ。一方で2023年上半期は、登録台数が前年同期比18.0%増。約540万台に達した(図2参照)。ACEAは2023年5月時点の予測で、2023年の登録台数は4年ぶりに1,000万台を超えると見込んでいる。

図1:EU26カ国における2019~2023年の乗用車の新車登録台数
2019年は約1,303万台、2020年は約994万台、2021年は約970万台、2022年は約926万台、2023年の予測値は約1,075万台。

注:2023年5月発表データに基づく。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

図2:EU26カ国における2022年1月~2023年6月の月別乗用車の新車登録台数および増減率(前年同月比)
2022年1月は約68万台、前年同月比6.0%減。2月は約72万台、6.7%減。3月は約84万台、20.5%減。4月は約68万台、20.6%減。5月は約79万台、11.2%減。6月は約89万台、15.4%減。7月は約74万台、10.4%減。8月は約65万台、4.4%増。9月は約79万台、9.6%増。10月は約75万台、12.2%増。11月は約83万台、16.3%増。12月は約90万台、12.8%減。2023年1月は約76万台、11.3%増。2月は約80万台、11.5%増。3月は約109万台、28.8%増。4月は約80万台、17.2%減。5月は約94万台、18.5%増。6月は約105万台、17.8%増。

注:2023年1、7月発表データに基づく。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

国別では、欧州の4大自動車市場のうち、ドイツは前年比微増(1.1%増)だったが、フランスは7.8%減、イタリア9.7%減、スペイン5.4%減だった(表1参照)。

表1:2022年のEU26カ国の国別乗用車の新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
国名 2021年 2022年 前年比
ドイツ 2,622,132 2,651,357 1.1
フランス 1,659,003 1,529,035 △ 7.8
イタリア 1,458,032 1,316,702 △ 9.7
スペイン 859,477 813,396 △ 5.4
ポーランド 446,647 419,749 △ 6.0
ベルギー 383,123 366,303 △ 4.4
オランダ 322,318 312,129 △ 3.2
スウェーデン 301,006 288,087 △ 4.3
オーストリア 239,803 215,050 △ 10.3
チェコ 206,876 192,087 △ 7.1
ポルトガル 146,637 156,304 6.6
デンマーク 185,312 148,293 △ 20.0
ルーマニア 121,208 129,328 6.7
ハンガリー 121,920 111,524 △ 8.5
ギリシャ 100,911 105,283 4.3
アイルランド 104,932 105,253 0.3
フィンランド 98,484 81,698 △ 17.0
スロバキア 75,700 78,841 4.1
スロベニア 53,988 46,339 △ 14.2
クロアチア 44,915 42,939 △ 4.4
ルクセンブルク 44,372 42,094 △ 5.1
ブルガリア 24,537 28,684 16.9
リトアニア 31,454 25,544 △ 18.8
エストニア 22,336 21,571 △ 3.4
ラトビア 14,348 16,713 16.5
キプロス 10,624 11,627 9.4
EU合計 9,700,095 9,255,930 △ 4.6

注:2023年1月発表データに基づく。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

燃料タイプ別では、ガソリン車(構成比36.4%)とディーゼル車(16.4%)のシェアが合計で過半に及ぶ。しかし、登録台数はいずれも減少した(それぞれ、前年比12.8%減、19.7%減)。

一方、好調だったのはハイブリッド式EV(HEV)とバッテリー式EV(BEV)だ。HEVは前年比8.6%増。構成比が初めて2割を超えた。2021年はディーゼル車の登録台数とほぼ同じだったのに対し、2022年はHEVが約57万台も上回った。BEVは前年比28.0%増。EU市場で初めて、100万台を超えた。BEVのシェアは12.1%を占めた(表2参照)。

表2:2022年のEU26カ国の乗用車の燃料タイプ別新車登録台数および新車登録全体に占める割合(単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料タイプ 2021年 2022年 前年比 構成比
ガソリン 3,867,378 3,371,153 △ 12.8 36.4
ハイブリッド式電気自動車(HEV) 1,924,732 2,089,653 8.6 22.6
ディーゼル 1,897,206 1,522,686 △ 19.7 16.4
バッテリー式電気自動車(BEV) 877,985 1,123,778 28.0 12.1
プラグインハイブリッド車(PHEV) 864,103 874,182 1.2 9.4
天然ガス自動車(NGV) 43,120 18,298 △ 57.6 0.2
その他 226,361 257,458 13.7 2.8

注1:BEVには燃料電池車(FCEV)が、PHEVにはエクステンデッド・レンジ電気自動車(EREV)も含まれる。
「その他」とは、液化石油ガス(LPG)車などの代替燃料車を指す。
注2:2023年2月に発表されたデータに基づく。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

主要メーカーグループの市場シェアは、フォルクスワーゲン(VW)グループ(25.1%)が最多。これに、ステランティス(19.7%)、ルノーグループ(10.6%)が続いた。日系メーカーでは、トヨタグループがBMWを抜いて域内5位(7.2%)になった。前年比7.7%増と、主要メーカーで最大の伸びを記録した(表3参照)。

表3:主要メーカーグループの2022年のEUの乗用車の新車登録台数、市場シェア(単位:台、%)(△はマイナス値)
グループ名 2021年 2022年 伸び率 市場シェア
フォルクスワーゲン(VW) 2,447,943 2,321,030 △ 5.2 25.1
ステランティス 2,122,729 1,823,725 △ 14.1 19.7
ルノー 1,028,884 984,558 △ 4.3 10.6
現代 828,411 849,580 2.6 9.2
トヨタ 615,083 662,280 7.7 7.2
BMW 658,788 624,940 △ 5.1 6.8
メルセデス・ベンツ 548,965 549,023 0.01 5.9
フォード 389,421 380,380 △ 2.3 4.1
ボルボ 212,084 191,445 △ 9.7 2.1
日産 172,591 155,012 △ 10.2 1.7
マツダ 121,821 108,213 △ 11.2 1.2
ジャガー・ランドローバー 69,692 58,492 △ 16.1 0.6
三菱自動車 63,122 54,057 △ 14.4 0.6
ホンダ 38,248 39,923 4.4 0.4

注:2023年1月発表データに基づく。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

なお、2022年3月にドイツ工場が開所した米国のテスラはACEAの統計(表3)には含まれていない。ドイツのシュミット自動車リサーチによると、欧州18カ国(注3)での2022年のテスラの販売台数は前年比37.1%増の22万8,229台だった。

中欧諸国の後押しで生産台数が増加

ACEAによると、生産台数は5年ぶりに前年比増になった。2022年のEUの乗用車生産台数は、前年比8.3%増の1,089万123台。上半期は、半導体不足の影響を受けた。下半期は勢いを取り戻し、通年で上向いた。しかし、新型コロナ前の2019年と比較するとまだ23%少ない。

最大生産国はドイツ(13.1%増)で、スペイン(8.5%増)、チェコ(10.9%増)が続いた。ACEAはチェコのほか、ルーマニア(21.1%増)やハンガリー(8.6%増)など中欧諸国で生産が増え、EU全体の生産台数の増加につながったとした(表4参照)。

表4:2022年の域内上位10カ国の乗用車生産台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
国名 2021年 2022年 伸び率
ドイツ 2,946,320 3,332,609 13.1
スペイン 1,598,986 1,734,272 8.5
チェコ 1,095,096 1,214,746 10.9
スロバキア 976,947 970,275 △ 0.7
フランス 852,812 950,188 11.4
ルーマニア 420,755 509,465 21.1
イタリア 447,673 486,111 8.6
ハンガリー 416,843 452,551 8.6
スウェーデン 253,488 251,446 △ 0.8
ベルギー 222,105 243,293 9.5
EU合計 10,055,833 10,890,123 8.3

注:2021年は経済・市場報告書2022年版、2022年は2023年5月発表データに基づく。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

EU域外への輸出額は過去最高、域外最大の輸入相手国は中国

ACEAによると、2022年のEUの乗用車輸出台数は555万2,244台(前年比10.2%増)、輸入台数は324万3,811台(4.2%増)だった。輸出額は1,573億1,500万ユーロ(24.4%増)、輸入額は616億2,600万ユーロ(15.4%増)で、貿易収支は956億8,900万ユーロ(31.0%増)の黒字だった。EU統計局(ユーロスタット)によると、輸出額は過去最高となった。

2022年のEUの輸出相手国を金額ベースで見ると、米国(前年比43.5%増)、英国(21.9%増)、中国(15.1%増)の順で、日本は7位だった。輸入相手国を金額ベースで見ると、首位は前年6位だった中国(58.9%増)。これに、英国、米国が続いた。日本は5位(7.9%増)だった(表5参照)。

表5:2022年のEUの乗用車の輸出入額

輸出(単位:100万ユーロ、%)(―は値なし)
順位 相手国 2021年 2022年 伸び率
1 米国 25,375 36,424 43.5
2 英国 21,717 26,480 21.9
3 中国 21,071 24,256 15.1
4 韓国 6,333 8,441 33.3
5 スイス 6,402 7,460 16.5
6 トルコ 4,650 6,088 30.9
7 日本 6,083 6,085 0.0
世界全体 126,475 157,315 24.4
輸入(単位:100万ユーロ、%)(―は値なし)
順位 相手国 2021年 2022年 伸び率
1 中国 5,896 9,369 58.9
2 英国 8,278 9,103 10.0
3 米国 8,140 8,624 5.9
4 韓国 7,111 7,871 10.7
5 日本 7,049 7,606 7.9
6 トルコ 6,139 6,304 2.7
7 メキシコ 4,588 5,081 10.7
世界全体 53,413 61,626 15.4

注:2023年5月発表データに基づく。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

中国は、2022年にEUにとって最大の輸入相手国になった。その輸入は2021年以降、急増した。2018年と比較すると、2022年の輸入金額は約24倍、台数は約4倍に伸びている(図3参照)。

図3:2018~2022年のEUの中国からの乗用車の輸入台数および輸入額
輸入台数は、2018年は約13万台、2019年は約13万台、2020年は約17万台、2021年は約44万台、2022年は約52万台。輸入金額は、2018年は約4億ユーロ、2019年は約7億ユーロ、2020年は約18億ユーロ、2021年は約59億ユーロ、2022年は約94億ユーロ。

注:2023年5月発表データに基づく。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

その理由はEVにある。ドイツのメルカトル中国研究所(MERICS)と米民間調査会社ロジウム・グループ(ロジウム)の共同調査によると、2022年に中国からEUへ輸出されたEVは約37万1,000台。2020年の約4.6倍になり、輸出金額は約83億ユーロに達した。その多くは上海工場で生産されたテスラ車や、中国企業傘下の欧州メーカー車だ。ただし近年は、比亜迪(BYD)や上海蔚来汽車(NIO)など新興メーカーも相次いで欧州に進出している(2022年10月12日付地域・分析レポート参照)。

MERICSとロジウムは、その動きについて、以下の点を指摘した。

  • 中国の対欧州(EU27カ国と英国)直接投資は、2017年まではエネルギーやインフラ、不動産、金融分野が中心だった。
  • しかし、欧州の資本規制や投資スクリーニング(審査)の厳格化などを受け、こうした分野への投資は大きく減少。代わって伸びたのが最終消費者向け製品や自動車分野への投資だった。自動車関連投資は、2022年に全体の53.3%を占めた。
  • 自動車関連投資は従来、企業買収が主だった。吉利汽車(ジーリー)によるボルボの子会社化の例が象徴的だ。
    対して近年は、拡大する欧州EV市場を重要市場と位置付け、EVバリューチェーン全体で積極的に展開している。米国での事業拡大の難しさからも、今後は中国から欧州へのEV関連投資が増加するとみられる。
  • バッテリー企業の案件としては、寧徳時代新能源科技(CATL)や蜂巣能源科技(SVOLT)などの欧州進出例がある。2018年以降に発表された中国のバッテリー企業による対欧投資は約175億ドル規模に上る。2030年までに、欧州の生産能力の約20%を占めると予測される。

また、現地生産の開始・強化を視野に入れる自動車メーカーもある。例えば、ジーリー傘下のボルボは、スロバキアにEV専用の新工場建設を発表している(2022年7月15日付ビジネス短信参照)。そのほか、BYDがEU域内に工場の建設を検討しているとの報道もある。

経済安全保障の観点から、EUが中国への依存低減へとかじを切る中(2023年7月4日付ビジネス短信参照)、EV分野で中国との関係が今後どのように変化していくか注目だ。

新CO2排出基準規則が発効、次期排ガス規制案の審議も始まる

EUの環境規制面では、欧州委員会がゼロエミッション車の普及促進の両輪と位置づける2つの法案で動きがあった。(1)乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案と、(2)自動車からの大気汚染物質の新たな排出基準を定める規則案(Euro7)だ。

(1)のCO2排出基準規則改正案については、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が2022年10月に暫定合意。欧州議会とEU理事会は、それぞれ2023年2月、3月に採択。5月15日に同規則(注4)が発効した(2022年10月31日付2023年3月30日付ビジネス短信参照)。

同規則では、2035年以降、内燃機関搭載車生産の実質禁止が規定された。ただしドイツは、炭素中立とされる合成燃料(e-fuel)を使用する内燃機関搭載車について、例外扱いを求めている。欧州委との協議で、炭素中立な燃料だけを使う車両の2035年以降の販売について積極的に検討することで合意を取り付けたという。片や欧州委は、

  • 非バイオ由来の再生可能燃料(RFNBO)を使用する車両の型式認証に関して、実施規則案を早期提案すること、
  • 合成燃料だけを使用する車両がCO2排出削減に寄与することに関して、委任規則案を2023年秋に提案すること、

を表明した。また、欧州委は同規則の運用について、2026年までに進捗状況評価を公表する。

(2)のEuro7は、窒素酸化物(NOx)の排出量の基準値を現行規制より厳格化し、規制対象とする汚染物質の追加を提案したもので、欧州委が2022年11月に発表。乗用車については、2025年7月1日の適用開始を目指すとした。Euro7からはEVも規制対象に含め、バッテリーの耐久性基準の策定を進める。対象物質については、ブレーキやタイヤの摩耗による汚染物質(マイクロプラスチック)も追加した(2022年11月11日付ビジネス短信参照)。

この案に対し、自動車関連業界からは「電動化を推進するはずのEUが、内燃機関搭載車の改良を求めている」「リードタイムが不十分」といった不満が噴出している。やや立ち位置が違うのが、欧州タイヤ・ゴム製造協会(ETRMA)で、汚染物質の排出基準を設けることは適切とした。その一方で、規制は国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)の騒音・タイヤ関連分科会(GRBP)で策定される基準や検査方法に沿ったものにすべきなどと提言した。

現地報道によると、チェコなど複数の加盟国も自動車業界に追加負担を求めるものと批判している。EU理事会と欧州議会でEuro7の審議がどう着地するか注目される。


注1:
ACEAは、マルタを統計に含めていない。その理由としては、データ入手が不能なことを挙げた。
注2:
ACEAは、台数データを随時更新することがある。
注3:
EU14カ国(ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、デンマーク、アイルランド、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、オーストリア、フィンランド、スウェーデン)と、ノルウェー、アイスランド、スイス、英国の計18カ国。
注4:
規則(EU) 2023/851外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

EU乗用車販売減に底打ち感、EVが好調

  1. 市場と規制の動きを概観
  2. EV普及支援に本腰
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所
滝澤 祥子(たきざわ しょうこ)
2016年からジェトロ・ブリュッセル事務所勤務。