EU、2035年の全新車のゼロエミッション化決定、合成燃料に関する提案が焦点に

(EU)

ブリュッセル発

2022年10月31日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は10月27日、乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案について暫定合意に達した(EU理事会の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます欧州議会の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委員会が2021年7月に発表した気候政策パッケージ「Fit for 55」(2021年7月15日記事参照)で提案した規則案(改正案も含む)の中で、両機関による初の合意となった。今回の暫定合意を受け、改正規則案は両機関での正式な承認手続きを経て、EU官報掲載から20日後に発効する。27日の発表時点で暫定合意したテキストはまだ公表されていない(暫定合意の主な内容については添付資料表参照)。

新たなCO2排出基準については、欧州議会(2022年6月10日記事参照)、EU理事会(2022年6月30日記事参照)双方が「支持する」とした欧州委案が維持されたことから、EUでは2035年までに「全ての新車をゼロエミッション化」、すなわち、同年以降は内燃機関搭載車の生産を実質禁止することが確定した。ただし、EU理事会の提案により、欧州委が2026年に進捗評価を行い、プラグインハイブリッド技術などの開発状況を考慮して規則の見直しを行う余地を残した。

また、合成燃料など炭素中立な燃料(CN燃料)のみを使用する車両の2035年以降の販売について、欧州委が新たな提案を行うとした。これについて、現地報道によると、法的拘束力を持たない「前文」に盛り込まれる見込みで、対象となる車両が救急車など特別な用途の車両だけなのか、内燃機関搭載車も含むCN燃料を使用する全ての車両を対象としているのか、EU理事会の発表では明確にしていない。

自動車業界、あらためて「全ての技術の活用」を強く訴え

欧州自動車工業会(ACEA)は27日付の声明で、2030年までにEUの新車販売の約6割をゼロエミッション車(ZEV)が占めるとの予測を示し、2035年に向けて「一刻も無駄にしてはならない」として、(1)充電インフラの整備、(2)再生可能エネルギーや原材料の安定した供給、(3)電気自動車(EV)の大量生産や価格引き下げの実現、(4)自動車部門の雇用への影響緩和などに、EUは自動車業界と協力して取り組まなければならないとした(ACEAプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、ZEV市場の拡大や原材料の供給状況を評価するため、欧州委による「しっかりとした、意義のある」進捗評価の実施を求めた。さらに、インフレ加速やバッテリー価格上昇がZEV市場拡大の障壁になり得るとし、EUは新車以外も含めた保有車両全体のCO2排出量を考慮する必要があると指摘。電動化一択ではなく、CN燃料など脱炭素に貢献する全ての技術の活用を訴えた。

欧州自動車部品工業会(CLEPA)も同日発表した声明で、ACEAが挙げた上記の課題に取り組む必要性を訴えると同時に、脱炭素化に向けて、電動化が果たす役割を認めながらも、エネルギー価格の高騰や特定の供給源への原材料依存の増大といった不確実性があると指摘した(CLEPAプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。部品業界はイノベーションや従業員のリスキリングなどに多額の投資をしているが、インフレなどに伴い、約7割の事業者が収益性低下に直面しているとした。そこで、部品業界が開発を続けてきたハイブリッド技術、水素自動車といった多様な技術は、再生可能エネルギーを利用すれば炭素中立と訴え、欧州委によるCN燃料利用に道を開く新たな提案と、CO2排出を効果的に削減するため、車両のライフサイクル全体の排出量の測定方法の策定への期待を表明した。

(滝澤祥子)

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