2021年米新車市場は予想を下回る前年比3.4%増の1,508万台
供給不足が顕著となる中、本格的なEVシフトに向けメーカーは始動

2022年5月27日

米国の2021年の新車販売台数は、前年比3.4%増の1,508万1,117台となった。新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだ2020年からの繰り越し需要などにより、年前半は好調に伸びた一方、パンデミック後の半導体不足や港湾物流の停滞(2021年4月8日付ビジネス短信参照)などを要因とする在庫不足といった影響により、年後半は大きく落ち込み、年間販売台数は年初時点の予測を下回る結果となった。また、2021年の生産台数は、前年比2.9%増の906万9,069台だった。大型車志向がさらに強まったほか、高級車人気も相まって、車両価格は過去最高水準にまで上昇した。 メーカー別では、トヨタが初の首位となったほか、韓国勢の勢いにも注目が集まった。各メーカーの電気自動車(EV)へのシフトも本格化し、モデル数の増加などから、EVが全車に占める割合は前年の2.2%から4.1%に拡大した。

モーターインテリジェンスの発表(2022年1月4日)によると、米国の2021年の新車販売台数は、前年比3.4%増の1,508万1,117台だった(図1参照)。新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだ2020年からの繰り越し需要などが年前半の販売を押し上げた一方、パンデミック後の半導体不足や港湾における物流の停滞(2021年4月8日付ビジネス短信参照)などを要因とする在庫不足により、年後半は需要を満たすことができず、年初時点で予測されていた1,550万~1,600万台(2021年4月14日付地域・分析レポート参照)を下回る結果となった。また、パンデミック前の2019年比では11.6%減となった。

四半期ごとにみると、第1四半期(1~3月)は前年同期比11.9%増、第2四半期(4~6月)は50.0%増と順調に回復したが、第3四半期(7~9月)は12.8%減、第4四半期(10~12月)は21.2%減と落ち込んだ(図2参照)。

図1:新車販売台数推移(年間)
新車販売台数は、リーマンショックの影響により2009年に1,043万台となったが、その後増加して、2015年以降5年連続で1,700万台台を維持した。しかしながら2020年は新型コロナウイルスの影響で1,458万台に減少。2021年は好調な需要が下支えし回復基調にあったものの、半導体不足などにより在庫が減少したことから、年初の予測を下回る、1,508万台となった。

注:対象は、乗用車、小型トラック(バン、ピックアップトラック、SUV)。大型トラックは含まない。
出所:モーターインテリジェンス 発表データを基にジェトロ作成

図2:新車販売台数推移(四半期)
2021年の新車販売台数を4半期ごとにみると、1Q393万台、2Q443万台、3Q342万台、4Q331万台となった。また、前年同期比は、1Q11.9%増、2Q50.0%増、3Q12.8%減、4Q21.2%減となった。

出所:モーターインテリジェンス 発表データを基にジェトロ作成

パンデミックの後遺症による深刻な在庫不足

半導体不足が自動車産業に与えた影響に関しては、英国調査会社IHSマークイットのグローバル自動車販売予測エグゼクティブディレクター、コリン・カウチマン氏が「チップ危機はわれわれが思っていたよりも広く深いものであった」(モータートレンド、2021年12月27日)と述べるなど、専門家を含め業界の予想を超えるものであった。自動車生産販売に対する半導体不足の影響を調査するオートフォーキャスト・ソリューションズ(AFS)によると、2021年12月中旬までに北米において半導体不足により生産計画を満たせなかった車両の合計台数は、2019年の生産実績の13%強にあたる216万台に上ったという(オートモーティブニュース、2022年1月27日)。特に米系メーカーへの影響が大きく、フォードは2019年実績の2割強(21.4%)にあたる約59万台、ゼネラルモーターズ(GM)も1割台半ば(16.1%)にあたる約45万台が、それぞれの生産計画台数から減少した。日系メーカーへの影響は比較的少なかったものの、トヨタやホンダ、日産についても2019年実績のそれぞれ1割前後が消失した、と報告されている。物流の停滞に関しては、例えば国際物流プラットフォームのフレイトスが、中国から米国までの貨物輸送にかかる日数(注1)について、 パンデミック前(2019年12月)の43日から、2021年12月には1カ月以上も長い80日にまで増加した、と試算している。中国は米国の自動車部品輸入額の1割以上を占めており、自動車業界にも同様の影響があったとみられる。

こうした供給サイドの停滞により、在庫状況は大幅に悪化した。売上在庫比率(販売台数に対する在庫台数の比率)をみると、第1四半期には前年同期比1.98にまで回復していたものの、第4四半期には0.89にまで落ち込んだ(図3参照)。在庫日数(注2)をみても、例えばフォードが 2019年12月時点で 93日分であったところ、2021年同月には34日分へと、トヨタでも59日分から18日分へと減少しており、ほぼすべての主要メーカーで落ち込みが確認された。

図3: 販売台数に対する在庫車両の割合
販売台数に対する在庫車両の割合を四半期ごとにみると、1Qは1.98であったところ、4Qには0.89まで落ち込んだ。

出所:モーターインテリジェンス、トゥルーカー・ドット・コム 発表データを基にジェトロ作成

大型車・高級車人気と供給不足で 車両価格は上昇傾向

部門別にみると、乗用車が前年比2.9%減と減少する一方で、小型トラックが5.4%増加した(表1参照)。これにより、全販売台数に対する小型トラックのシェアは、データの確認できる1980年以降で最高の77.3%となり、消費者の乗用車離れと大型車志向がさらに顕著になった(表1、図4参照)。クラス別では、ホンダ「シビック」やトヨタ「カムリ」に代表されるスタンダードクラスの伸びが0.3%増にとどまる一方で、テスラ「モデル3」やレクサス「ES」、メルセデスベンツ「Sクラス」などを含むプレミアムクラスが13.2%増となり、全体の押し上げ要因となっている。

表1:2021年の新車販売台数の内訳(単位:台、%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2020年
販売台数 前年比 構成比 販売台数
乗用車小計 3,417,072 △ 2.9 22.7 3,517,829
階層レベル2の項目ミニバン、フルサイズバン 695,863 0.9 4.6 689,783
階層レベル2の項目ピックアップトラック 2,833,500 △ 3.4 18.8 2,934,706
階層レベル2の項目SUV(スポーツワゴン、CUVを含む) 8,134,682 9.4 53.9 7,438,223
小型トラック小計 11,664,045 5.4 77.3 11,062,712
合計 15,081,117 3.4 100.0 14,580,541

出所:モーターインテリジェンス発表データを基にジェトロ作成

図4:タイプ別販売台数推移
乗用車は、リーマンショックの影響により2009年に541万台にまで減少し、その後、2014年には771万台にまで増加したが、その後減少が続き、2021年には342万台となった。他方で、小型トラックは2009年以降増加を続け、2019年は1,224万台となった。2020年は新型コロナウイルスの影響で1,106万台に落ち込んだものの、2021年には1,166万台にまで回復した。小型トラックは2012年より乗用車を上回り、それ以降その差は拡大している。

出所:モーターインテリジェンス 発表データを基にジェトロ作成

こうした大型車や高価格帯車の人気高まりに加え、在庫減を背景にメーカーの値下げ幅が限定的であったことにより、2021年の平均車両販売価格は1台当たり3万8,755ドルと高い水準になった。特に最終月の12月には4万1,950ドルとなり、データが確認できる2013年以降では最高水準を記録した(自動車関連情報サイト「TrueCar」)。なお、メーカーによる平均割引価格は、2015年以降で最も低い1台あたり2,736ドルであった。

トヨタがメーカー別初の首位、 韓国メーカーの存在感にも注目

主要メーカーの販売台数をみると、トヨタが前年比10.4%増と好調で、販売台数でGMを上回り初の米国首位になった(表2参照)。 続く2位はGMで13.1%減、3位フォードが7.0%減、4位ステランティスが2.2%減と米系メーカーの販売台数は軒並み減少した。続くホンダは8.9%増、日産は8.7%増と伸びた。さらに、韓国メーカーも好調で、現代は小型SUV(スポーツ用多目的車)「ツーソン」や小型乗用車「エラントラ」が、起亜は乗用車「K5」「フォルテ」が大きく伸び、それぞれ23.3%増、19.7%増と大きく増加した。両社を合計した販売台数シェアは前年の8.4%から9.9%に拡大し、ホンダ(9.7%)や日産(6.5%)を上回る規模に成長した。次いで、スバルは小型CUV「フォレスター」などが2桁減となり4.6%減だった一方、フォルクスワーゲン(VW)は2021年に市場投入した小型SUV「タオス」と、バッテリー式電気自動車(BEV)のSUV「ID.4」が好調で、11.7%増となった。また、シェア12位の電気自動車メーカーのテスラは、SUV「モデルY」「モデルX」がいずれも前年比約3倍となり、全車合計で71.4%増と大幅に増加した。新車販売台数全体の伸びに対する寄与度では、同社はトヨタ、現代に続き第3位となっている(図5参照)。

表2:メーカー別生産、販売台数(2021年販売台数が多い順)(△はマイナス値、-は値なし)
メーカー 項目 販売 生産
2019年 2020年 2021年 前年比(%) 構成比(%) 寄与度
(ポイント)
2020年 2021年 前年比(%) 構成比(%)
トヨタ 合計 2,383,349 2,112,940 2,332,262 10.4 15.5 1.50 1,003,927 1,143,172 13.9 12.6
乗用車 849,989 676,975 729,063 7.7 4.8 495,690 489,630 △ 1.2 5.4
小型トラック 1,533,360 1,435,965 1,603,199 11.6 10.6 508,237 653,542 28.6 7.2
GM 合計 2,877,590 2,535,283 2,202,582 △ 13.1 14.6 △ 2.28 1,612,339 1,489,350 △ 7.6 16.4
乗用車 388,833 238,703 138,425 △ 42.0 0.9 236,587 144,068 △ 39.1 1.6
小型トラック 2,488,757 2,296,580 2,064,157 △ 10.1 13.7 1,375,752 1,345,282 △ 2.2 14.8
フォード 合計 2,406,188 2,034,708 1,891,753 △ 7.0 12.5 △ 0.98 1,753,704 1,713,244 △ 2.3 18.9
乗用車 349,091 193,064 67,479 △ 65.0 0.4 72,793 65,590 △ 9.9 0.7
小型トラック 2,057,097 1,841,644 1,824,274 △ 0.9 12.1 1,680,911 1,647,654 △ 2.0 18.2
ステランティス 合計 2,211,813 1,825,850 1,785,075 △ 2.2 11.8 △ 0.28 1,180,055 1,365,501 15.7 15.1
乗用車 207,449 160,975 161,569 0.4 1.1 0 0 0.0 0.0
小型トラック 2,004,364 1,664,875 1,623,506 △ 2.5 10.8 1,180,055 1,365,501 15.7 15.1
ホンダ 合計 1,608,170 1,346,787 1,466,630 8.9 9.7 0.82 966,448 856,324 △ 11.4 9.4
乗用車 706,463 549,700 537,524 △ 2.2 3.6 363,420 258,489 △ 28.9 2.9
小型トラック 901,707 797,087 929,106 16.6 6.2 603,028 597,835 △ 0.9 6.6
日産 合計 1,345,681 899,217 977,639 8.7 6.5 0.54 431,069 451,788 4.8 5.0
乗用車 544,135 330,255 340,063 3.0 2.3 147,908 129,210 △ 12.6 1.4
小型トラック 801,546 568,962 637,576 12.1 4.2 283,161 322,578 13.9 3.6
現代 合計 710,007 638,653 787,702 23.3 5.2 1.02 490,909 546,506 11.3 6.0
乗用車 341,847 234,475 277,745 18.5 1.8 235,663 172,651 △ 26.7 1.9
小型トラック 368,160 404,178 509,957 26.2 3.4 255,246 373,855 46.5 4.1
起亜 合計 615,338 586,105 701,416 19.7 4.7 0.79 現代に含む
乗用車 233,074 203,190 253,484 24.8 1.7
小型トラック 382,264 382,915 447,932 17.0 3.0
スバル 合計 700,117 611,942 583,810 △ 4.6 3.9 △ 0.19 314,458 269,646 △ 14.3 3.0
乗用車 306,828 247,607 241,641 △ 2.4 1.6 75,558 54,830 △ 27.4 0.6
小型トラック 393,289 364,335 342,169 △ 6.1 2.3 238,900 214,816 △ 10.1 2.4
VW 合計 592,031 516,220 576,831 11.7 3.8 0.42 90,949 112,123 23.3 1.2
乗用車 260,980 203,701 157,872 △ 22.5 1.0 7,333 9,361 27.7 0.1
小型トラック 331,051 312,519 418,959 34.1 2.8 83,616 102,762 22.9 1.1
BMW 合計 375,664 307,989 367,936 19.5 2.4 0.41 361,361 435,212 20.4 4.8
乗用車 168,132 130,239 152,260 16.9 1.0 0 0 0.0 0.0
小型トラック 207,532 177,750 215,676 21.3 1.4 361,361 435,212 20.4 4.8
テスラ 合計 178,950 205,600 352,471 71.4 2.3 1.01 356,311 426,477 19.7 4.7
乗用車 165,700 132,825 139,530 5.0 0.9 283,165 288,706 2.0 3.2
小型トラック 13,250 72,775 212,941 192.6 1.4 73,146 137,771 88.4 1.5
マツダ 合計 278,552 279,076 332,756 19.2 2.2 0.37 0 0 0.0 0.0
乗用車 80,018 58,619 64,414 9.9 0.4 0 0 0.0 0.0
小型トラック 198,534 220,457 268,342 21.7 1.8 0 0 0.0 0.0
メルセデスベンツ 合計 358,410 325,915 329,574 1.1 2.2 0.03 223,923 233,026 4.1 2.6
乗用車 140,261 95,709 85,219 △ 11.0 0.6 13,758 0 △ 100.0 0.0
小型トラック 218,149 230,206 244,355 6.1 1.6 210,165 233,026 10.9 2.6
ボルボ 合計 108,234 110,129 122,173 10.9 0.8 0.08 27,845 26,700 △ 4.1 0.3
乗用車 21,432 15,432 11,781 △ 23.7 0.1 27,845 26,700 △ 4.1 0.3
小型トラック 86,802 94,697 110,392 16.6 0.7 0 0
その他 合計 310,988 244,127 270,507 10.8 1.8 0.18 0 0
乗用車 57,637 46,360 59,003 27.3 0.4 0 0
小型トラック 253,351 197,767 211,504 6.9 1.4 0 0
合計 合計 17,061,082 14,580,541 15,081,117 3.4 100.0 3.43 8,813,298 9,069,069 2.9 100.0
乗用車 4,821,869 3,517,829 3,417,072 △ 2.9 22.7 1,959,720 1,639,235 △ 16.4 18.1
小型トラック 12,239,213 11,062,712 11,664,045 5.4 77.3 6,853,578 7,429,834 8.4 81.9

注:現代の生産台数には起亜が含まれる。
出所:モーターインテリジェンス、オートモーティブニュースデータセンター発表データから作成

図5:販売台数増加に対するメーカー別寄与度
2021年全新車販売台数の前年比に対するメーカー別寄与度をみると、トヨタが1.50%、現代が1.02%、テスラが1.01%、ホンダが0.82%、起亜が0.79%、日産が0.54%、VWが0.42%、BMWが0.41%、マツダが0.37%、その他 が0.18%、ボルボが0.08%、メルセデスベンツが0.03%、スバルが△0.19%、ステランティスが△0.28%、フォードが△0.98%、GMが△2.28%ポイントとなった。

注:対象は、乗用車、小型トラック(バン、ピックアップトラック、SUV)。大型トラックは含まない。
出所:モーターインテリジェンス

EVシェアは4.1%に増加、各社電動化に向け本格的にシフト

2021年1月に就任したジョー・バイデン米国大統領による、温室効果ガス削減に向けた一連の政策を受け、各メーカーは電動化へ本格的に舵(かじ)を切り始めた。複数のメーカーが新モデル(車種)を展開しており、2021年は新たにバッテリー式電気自動車(BEV)が16モデル、プラグインハイブリッド車(PHEV)が10モデル、それぞれ市場投入され、年末の段階ではそれぞれ39モデル、42モデルが市場に出そろうかたちとなった。タイプ別では、SUVやピックアップトラックのEV化を優先して開発する傾向が始まっており、米系メーカーではGMがピックアップトラック「シルバラード」や「ハマー」、フォードがピックアップトラック「F150」といった、ガソリン車の中でも人気のある大型車のBEVモデルを生産開始している。

EV(BEVとPHEV)における消費者への選択肢の広がりは、販売増にもつながった。BEVの販売台数は前年比88.4%増、PHEVは約2.1倍とそれぞれ大きく増加し、合計では92.1%増の61万5,724 台となった(図6参照)。これにより、EVが全車に占める割合は前年の2.2%から4.1%へと大きく上昇した。また、ハイブリッド車(HEV)も73.1%増と大幅に増加し、EVと合わせた電動車全体では80.8%増の142万1,369台となり、全体に占める電動車の割合も、前年の5.4%から9.4%に増加した。

EV市場をメーカー別にみると、テスラが前年比71.4%増の35万2,471台となり、EV車のシェアの6割弱(57.2%)を占め、市場を牽引している。次いでトヨタが、PHEV「プリウス」「RAV4プライム」の販売台数増加により、前年の2.9倍の5万2,767台となった。フォードは「マスタングマックE」、VWは「ID.4」(いずれもBEV)が好調で、それぞれ6.0倍、2.8倍と大幅に増加した。なお、トヨタはHEVも65.6%増と大きく伸びたことから、同社販売台数に占める電動車の割合は前年の15.9%を上回る25.0%となった。

図6:電気自動車の販売台数推移
完全電気自動車とプラグインハイブリッド車の合計販売台数の推移をみると、販売台数は2015年から2020年まで1年毎に11万4,023台、15万9,616台、19万5,581台、36万1,315台、32万6,644台、32万526台、61万5,724台となった。全販売台数に対する完全電気自動車とプラグインハイブリッド車の合計の割合は0.7%、0.9%、1.1%、2.1%、1.9%、2.2%、4.1%となった。

出所:2019年まではエネルギー省、2020、2021年はモーターインテリジェンス発表データを基にジェトロ作成

EV化に向けた、大型投資案件の発表も相次いだ。GMは2020年から2025年までのEV化と自動化に350億ドル、フォードも2025年までにピックアップトラック「F-150」など複数モデルのEV化に向け220億ドル以上の投資計画を発表した。また、ステランティスも2025年までに300億ユーロ超の投資を明らかにしたほか、韓国メーカーの現代と起亜はEVの生産拠点設立などを目的として、米国で74億ドルの投資を行うと発表した(2021年7月15日付ビジネス短信参照)。日系メーカーでは、トヨタがノースカロライナ州でのバッテリー工場建設や(2021年12月7日付ビジネス短信参照)、ケンタッキー工場での水素トラック用燃料電池モジュールの生産開始などを発表している(2021年8月27日付ビジネス短信参照)。

2022年は在庫問題の解消に期待

2022年の販売台数に関して、主な専門機関は、年後半に半導体不足を含む在庫問題が改善するとの見通しから、2021年を上回る1,540万~1,600万台の範囲を予測している(図7参照)。1,550万台と予測するIHSマークイットは、 年前半は在庫の状況の見通しが立たないものの、年末にはパンデミック以前に近い水準にまで回復し、2023、2024年のさらなる回復に拍車をかける、との見方を示している。また、1,600万台と予測するコックスオートモーティブは、2022年も需要サイドの力強さは続き、ガソリン価格の上昇や新たなモデルの市場投入が見込まれることから、特にEV市場がさらに勢いづくとみている。なお、年間を通した半導体不足の影響に関し、前出のAFS は、北米で約42万台に上ると発表している(2022年3月7日時点)。

図7:2022年年間予測販売台数(万台)
販売台数の実績は、2019年1,706万台、2020年1,458万台、2021年1,508万台となった。2021年の予測販売台数は、全米自動車ディーラー協会1,540万台、IHSマークイット1,550万台、LMC オートモーティブ1,590万台、コックス・オートモーティブ1,600万台となった。

注:予想販売台数は 、2021年12月後半~2022年1月前半の発表値。
出所:モーターインテリジェンス、各社ホームページ

2021年の生産台数は2019年比で15.1%減

オートモーティブニュース データセンターの発表によると、2021年の生産台数は前年比2.9%増の906万9,069台となった(表2参照)。パンデミックによる工場稼働停止などで大幅に落ち込んだ前年に比べると増加したものの、半導体不足や部品供給の停滞といった前出したような影響により、パンデミック前の2019年比では15.1%の大幅減となった。メーカー別でみると、フォードが2.3%減、GMが7.6%減、ステランティスが15.7%増、トヨタが13.9%増、ホンダが11.4%減、現代(起亜を含む)が11.3%増、日産が4.8%増、スバル14.3%減、VWが23.3%増となった。


注1:
出発地と目的地の倉庫間の輸送にかかる日数。
注2:
在庫として保有する台数が、何日分の販売に相当するかを示す。

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2022年6月20日)
(誤)図7:2020年年間予測販売台数(万台)
(正)図7:2022年年間予測販売台数(万台)
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 リサーチ・マネージャー
大原 典子(おおはら のりこ)
民間企業勤務を経て2013年からジェトロ・ニューヨーク勤務。自動車産業を柱に米国の産業調査を担当。