2022年上半期のアジア発米国向け海上コンテナ、混雑する西海岸を敬遠(米国)

2022年8月4日

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中のサプライチェーンに大きな影響を及ぼした。中でも、海上輸送については、港湾の混雑やコンテナの不足、それらに伴う輸送費の高騰などにより、今なお数多くの企業が困難に直面している。

本稿では、米国調査会社デカルト・データマインの海運統計データを参考にしながら、2022年上半期(1~6月)のアジア発米国向けの海上コンテナについて考察したい。

アジア主要国からの海上コンテナ輸送が増加

2022年1~6月の米国向け海上コンテナの輸送量は、前年同期比3.4%増の1,468万6,110TEU(20フィートコンテナ換算)。アジア上位10カ国・地域のいずれかを出港地(注1)とする海上コンテナに限ると、4.5%増の1,047万1,341TEUになった(表1参照、注2)。米国向け全体に占める当該国・地域の割合は、71.3%(前年同期から0.7ポイント増)だった。

その中で国・地域別に見ると、上位から中国、韓国、ベトナム、台湾、インド、シンガポールの順。前年同期から、シンガポールとインドの順位が入れ替わった。

輸送量最大の中国は、前年同期比4.1%増の622万7,199TEU。米国向け全体に占める割合は42.4%(前年同期から0.3ポイント増)だった。続く韓国が8.2%増の105万9,807TEU。ベトナム、台湾、インド、マレーシア発も前年同期より増えた。他方、シンガポール、タイ、香港、日本発の海上コンテナは、前年同期より減少した。

表1:米国向け海上輸送の国別比較(2022年1~6月TEU順) (単位:TEU、母船積み地ベース、%、ポイント)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 出港地 TEU 米国向け全体に占める割合
2021年
1~6月
2022年
1~6月
前年同期比 寄与度 2021年1~6月 2022年1~6月 前年同期差
1 中国 5,982,873 6,227,199 4.1 1.7 42.1 42.4 0.3
2 韓国 979,432 1,059,807 8.2 0.6 6.9 7.2 0.3
3 ベトナム 816,468 914,048 12.0 0.7 5.8 6.2 0.5
4 台湾 538,398 539,981 0.3 0.0 3.8 3.7 △ 0.1
5 インド 332,922 426,827 28.2 0.7 2.3 2.9 0.6
6 シンガポール 439,637 422,315 △ 3.9 △ 0.1 3.1 2.9 △ 0.2
7 タイ 282,132 277,140 △ 1.8 △ 0.0 2.0 1.9 △ 0.1
8 香港 289,441 214,107 △ 26.0 △ 0.5 2.0 1.5 △ 0.6
9 日本 221,579 201,626 △ 9.0 △ 0.1 1.6 1.4 △ 0.2
10 マレーシア 140,141 188,293 34.4 0.3 1.0 1.3 0.0
米国向け全体 14,196,530 14,686,110 3.4 3.4
米国向けアジア上位10カ国・地域全体 10,023,023 10,471,341 4.5 3.2 70.6 71.3 0.7

出所:デカルト・データマイン

中国発の海上コンテナの内訳をHS上位2桁でみると(表2参照)、家具、寝具(HS94類)が前年同期から1.8%減少(寄与度:マイナス0.4ポイント)し123万1,649TEUに。それでも、2位の一般機械(HS84類)と比べて約2倍のコンテナ量だ。一方で中国発コンテナの増加に寄与したのは、履物(HS64類)やプラスチック(HS39類)。ちなみに、前者は前年同期比35.1%増(プラス0.9ポイント)、後者は9.1%増(プラス0.8ポイント)だった。

日本発の海上コンテナは、前年同期比9.0%減の20万1,626TEU。米国向け全体に占める割合は、前年同期比0.2ポイント減の1.4%になった。内訳をみると、上位10品目のうち7品目が前年同期比減だった。品目別には、特に一般機械(HS84類)、プラスチック(HS39類)、自動車・同部品(HS87類)が減少した。それぞれ、前年同期比17.9%減(寄与度:マイナス4.0ポイント)、16.9%減(マイナス1.8ポイント)、4.8%減(マイナス1.0ポイント)だ。

表2:中国と日本の米国向け海上輸送主要品目(2022年1~6月TEU順)

中国(単位:TEU、母船積み地ベース、%、ポイント)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 品目 TEU
2021年1~6月 2022年1~6月 前年同期比 寄与度
1 HS 94:家具、寝具 1,254,021 1,231,649 △ 1.8 △ 0.4
2 HS 84:一般機械 618,967 619,715 0.1 0.0
3 HS 39:プラスチック 512,867 559,787 9.1 0.8
4 HS 85:電気機器 536,170 521,145 △ 2.8 △ 0.3
5 HS 95:玩具、遊戯用具 449,052 483,589 7.7 0.6
6 HS 73:鉄鋼製品 276,302 271,965 △ 1.6 △ 0.1
7 HS 87:自動車・同部品 244,630 262,416 7.3 0.3
8 HS 64:履物 156,559 211,558 35.1 0.9
9 HS 63:紡織用繊維 197,392 190,404 △ 3.5 △ 0.1
10 HS 61:衣類および衣類付属品 146,397 183,344 25.2 0.6
中国発の輸送量合計 5,982,873 6,227,199 4.1 4.1
日本(単位:TEU、母船積み地ベース、%、ポイント)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 品目 TEU
2021年1~6月 2022年1~6月 前年同期比 寄与度
1 HS 87:自動車・同部品 48,448 46,146 △ 4.8 △ 1.0
2 HS 84:一般機械 49,820 40,880 △ 17.9 △ 4.0
3 HS 40:ゴム 18,787 20,372 8.4 0.7
4 HS 39:プラスチック 23,793 19,772 △ 16.9 △ 1.8
5 HS 85:電気機器 17,015 16,999 △ 0.1 △ 0.0
6 HS 73:鉄鋼製品 6,936 6,807 △ 1.9 △ 0.1
7 HS 28:無機化学品 4,477 4,216 △ 5.8 △ 0.1
8 HS 29:有機化学品 3,060 3,456 12.9 0.2
9 HS 90:光学機器 3,561 3,043 △ 14.6 △ 0.2
10 HS 22:飲料および酒類 2,024 2,777 37.2 0.3
日本発の輸送量合計 221,579 201,626 △ 9.0 △ 9.0

出所:デカルト・データマイン

アジア発コンテナ取り扱いが、西海岸以外に振り替えられる例も

ここで、アジア上位10カ国・地域発の海上コンテナ(前年同期4.5%増)について、米国の港湾別に2022年1~6月の取扱量を比較してみる。上位から(1)ロサンゼルス港(カリフォルニア州)、(2)ロングビーチ港(カリフォルニア州)、(3)ニューヨーク・ニュージャージ港(ニューヨークとニュージャージの両州)、(4)サバンナ港(ジョージア州)の順だ(表3参照)。メキシコ湾に位置するヒューストン港(テキサス州)は、前年同期の7位から5位に上昇した(2022年7月26日付ビジネス短信参照)。

他方、寄与度でみると、上位からニューヨーク・ニュージャージ港(プラス2.5ポイント)、ヒューストン港(プラス1.5ポイント)、サバンナ港(プラス1.3ポイント)の順。すなわち、西海岸の港湾は含まれなかった。ロサンゼルス港は首位を維持しながら、その取扱量は前年同期と比べて6.1%減(マイナス1.7ポイント)だった。

表3:アジア上位10カ国・地域発の海上コンテナに関する米国の港湾別取扱量の比較
(2022年1~6月TEU順)(単位:TEU、母船積み地ベース、%、ポイント)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 到着港 地域 TEU アジア上位10カ国・地域発
米国向け全体に占める割合
2021年1~6月 2022年1~6月 前年同期比 寄与度 2021年1~6月 2022年1~6月 前年同期差
1 ロサンゼルス港 西海岸 2,752,485 2,585,923 △ 6.1 △ 1.7 27.5 24.7 △ 2.8
2 ロングビーチ港 西海岸 2,156,891 2,186,799 1.4 0.3 21.5 20.9 △ 0.6
3 ニューヨーク・ニュージャージ―港 東海岸 1,232,782 1,486,355 20.6 2.5 12.3 14.2 1.9
4 サバンナ港 東海岸 1,002,764 1,129,622 12.7 1.3 10.0 10.8 0.8
5 ヒューストン港 メキシコ湾 366,561 521,358 42.2 1.5 3.7 5.0 1.3
6 ノーフォーク港 東海岸 425,927 493,946 16.0 0.7 4.2 4.7 0.5
7 オークランド港 西海岸 448,237 416,893 △ 7.0 △ 0.3 4.5 4.0 △ 0.5
8 チャールストン港 東海岸 335,221 414,628 23.7 0.8 3.3 4.0 0.6
9 シアトル港 西海岸 340,443 365,300 7.3 0.2 3.4 3.5 0.1
10 タコマ港 西海岸 421,795 332,217 △ 21.2 △ 0.9 4.2 3.2 △ 1.0
米国向けアジア上位10カ国・地域全体 10,023,023 10,471,341 4.5 4.5

出所:デカルト・データマイン

サンペドロ湾に面するロサンゼルス港とロングビーチ港だけではない。西海岸に位置する複数港湾で、海上コンテナの取扱量は相対的に増えなかった。その背景には、港湾の混雑があるとみられる。それをもたらした要因の1つが、新型コロナウイルスの感染拡大に基づく米国消費者の巣ごもり需要だ。その高まりにより、中国などアジア発米国向けの海上コンテナが増加した。これにより、陸上輸送の中核を担う鉄道網が混雑。同時に、新型コロナウイルスに感染するトラック運転手や荷役労働者が相次いだ。このことにより、米国の物流網全体で人手不足に陥り、西海岸には大量のコンテナが滞留する事態になった。

これに対して、西海岸の主要港、ロサンゼルス港とロングビーチ港は、滞留コンテナに対して追加料金を課す方針を示すなど改善を図った(2021年10月28日付ビジネス短信2022年1月5日付ビジネス短信参照)。しかし、運航スケジュールを読みづらい西海岸は敬遠されやすくなった。代わりに、東海岸やメキシコ湾の港湾で荷下ろしする海上運送業者が増加したというわけだ。

サンペドロ湾(ロサンゼルス港とロングビーチ港)には、2022年上半期時点でもアジア上位10カ国・地域を出港した海上コンテナの約46%が届く。米国の港湾全体を比較してこの両港での取扱量が特に減った品目としては、(1)家具、寝具(HS94類)、(2)電気機器(HS85類)、(3)一般機械(HS84類)がある。それぞれ、(1)前年同期比10.1%減(寄与度:マイナス3.6ポイント)、(2)同9.5%減(マイナス1.7ポイント)、(3)同8.2%減(マイナス1.6ポイント)と大きな減少が確認された(表4参照)。特にこうした品目では、海上運送業者が両港を回避して、米国内の他港湾を選択した可能性が高い。

表4:アジア上位10カ国・地域発の海上コンテナに関するサンペドロ湾および米国港湾全体の取扱主要品目(サンペドロ湾の2022年1~6月TEU順)(単位:TEU、%、ポイント)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 品目 サンペドロ湾
(ロサンゼルス港とロングビーチ港)TEU
米国港湾全体
TEU
2021年1~6月 2022年1~6月 前年同期比 寄与度 2021年1~6月 2022年1~6月 前年同期比 寄与度
1 HS 94:家具、寝具 971,911 873,935 △ 10.1 △ 3.6 2,056,164 2,015,961 △ 2.0 △ 0.4
2 HS 84:一般機械 531,737 488,169 △ 8.2 △ 1.6 1,073,039 1,071,760 △ 0.1 △ 0.0
3 HS 85:電気機器 496,754 449,778 △ 9.5 △ 1.7 843,197 822,811 △ 2.4 △ 0.2
4 HS 39:プラスチック 365,070 366,762 0.5 0.1 796,700 868,192 9.0 0.7
5 HS 87:自動車・同部品 235,625 244,902 3.9 0.3 503,631 552,873 9.8 0.5
6 HS 95:玩具、遊戯用具 272,958 255,458 △ 6.4 △ 0.6 533,595 561,481 5.2 0.3
7 HS 64:履物 173,555 206,040 18.7 1.2 248,038 321,752 29.7 0.7
8 HS 73:鉄鋼製品 194,891 180,891 △ 7.2 △ 0.5 437,996 441,985 0.9 0.0
9 HS 40:ゴム 166,233 197,744 19.0 1.1 347,434 402,508 15.9 0.5
10 HS 61:衣類および衣類付属品 156,968 172,311 9.8 0.6 251,525 313,955 24.8 0.6
取扱量合計 2,752,485 4,767,364 73.2 73.2 10,023,023 10,465,152 4.4 4.4

出所:デカルト・データマイン

国際ハブとしての日本港湾の存在感が低下

日本発米国向けの海上コンテナは、荷受量が増加した。その一方で、母船直航ベースの貨物量が減少。直航率(注3)は、前年同期比13.4ポイント減になった(表5参照)。ここでいう「母船直航」には、日本の港湾で積み替えられた他国貨物(トランシップ)も含まれている。すなわち、(1)日本の荷主が米国向けに輸送する貨物量が増加している半面、他国の港湾を経由するケースが増えたこと、(2)逆に日本の港湾が経由地として使われるケースが少なかったこと、を意味する。国際ハブとして、日本港湾の存在感が低下したとも言えそうだ。

対照的に、韓国は荷受地と出港地、いずれとしても取扱量を増やした。ベトナム、インドでも同様の傾向がみられる。マレーシアは荷受量で前年同期比6.4%減だった。しかし、トランシップによる他国貨物が増えたことで、出港地としては34.4%増になった。

表5:アジア上位10カ国・地域発米国向け海上コンテナの直航率などの比較(2022年1~6月出港地TEU順)(単位:TEU、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 国・地域名 項目 TEU
2021年1~6月 2022年1~6月 前年同期比・差
1 中国 荷受地 5,906,621 6,040,395 2.3
出港地 5,982,873 6,227,199 4.1
直航率 101.3 103.1 1.8
2 韓国 荷受地 537,844 588,508 9.4
出港地 979,432 1,059,807 8.2
直航率 182.1 180.1 △ 2.0
3 ベトナム 荷受地 1,270,640 1,308,099 2.9
出港地 816,468 914,048 12.0
直航率 64.3 69.9 5.6
4 台湾 荷受地 408,483 397,284 △ 2.7
出港地 538,398 539,981 0.3
直航率 131.8 135.9 4.1
5 インド 荷受地 525,994 584,424 11.1
出港地 332,922 426,827 28.2
直航率 63.3 73.0 9.7
6 シンガポール 荷受地 70,893 71,727 1.2
出港地 439,637 422,315 △ 3.9
直航率 620.1 588.8 △ 31.4
7 タイ 荷受地 432,544 478,657 10.7
出港地 282,132 277,140 △ 1.8
直航率 65.2 57.9 △ 7.3
8 香港 荷受地 81,747 58,872 △ 28.0
出港地 289,441 214,107 △ 26.0
直航率 354.1 363.7 9.6
9 日本 荷受地 296,860 329,461 11.0
出港地 221,579 201,626 △ 9.0
直航率 74.6 61.2 △ 13.4
10 マレーシア 荷受地 241,213 225,871 △ 6.4
出港地 140,141 188,293 34.4
直航率 58.1 83.4 25.3
米国向けアジア上位10カ国・地域全体 荷受地 9,772,839 10,083,298 3.2
出港地 10,023,023 10,471,341 4.5
直航率 102.6 103.8 1.3

米国西海岸の労使交渉に注目

2022年上半期は、新型コロナウイルスの感染拡大などにより、海上輸送についても物流網に混乱がみられた。にもかかわらず、コンテナ輸送量は前年同期比で増加した。また、そうした中で、中国の占める構成比がわずかながら上昇したこともすでに見たとおりだ。

一方、米国西海岸の港湾では、労働協約が7月1日に失効した。その対応について、使用者側の太平洋海事協会(PMA)と労働者側の国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の間で交渉が続いている(2022年7月4日付ビジネス短信参照)。両者は「合意に達するまで、荷物は動き続ける。また、港湾の通常業務は継続される」との共同声明を発表しており、西海岸の港湾機能は維持される見通しではある。しかし、依然リスクとして受け止められている。この交渉の行方は、2022年下半期の海上輸送にも、一定の影響を及ぼすことになるだろう。


注1:
母船積み地ベースであることを意味する。
注2:
データは随時更新される。本記事は、7月19~22日にダウンロードしたデータに基づく。
注3:
荷受分に対する直航便利用の輸送比率。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課 リサーチ・マネージャー
片岡 一生(かたおか かずいき)
経営コンサルティング会社、監査法人、在外公館などでの勤務を経て、2022年1月から現職。