米西海岸港湾の労働協約が7月1日に失効、労使は通常業務継続を表明

(米国)

ロサンゼルス発

2022年07月04日

米国西海岸の港湾では、太平洋海事協会(PMA)と国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)の労働協約が7月1日午後5時(太平洋標準時)をもって失効した。PMAとILWUは失効当日に共同声明を発表し、「(現行の労働協約の)契約延長はしないが、PMAとILWUが(新たな労働協約の)合意に達するまで、荷物は動き続け、港湾の通常業務は継続される」と表明しており、西海岸の港湾機能は引き続き維持される見通しだ。

労働協約は、契約期間中にストライキやロックアウト、作業停止を行うことを禁じているが、失効後はこれに縛られないため、新たな労使協約の締結に向けた労使交渉の行方次第では、ストライキなどに発展し、港湾機能が停滞することが懸念されていた。

PMAとILWUは「両者は、地元、地域、米国経済にとっての港湾の戦略的重要性を理解しており、西海岸に対する継続的な信頼を確保するために、できるだけ早く新しい沿岸全域の契約を確定する必要性に留意している」とも述べており、7月以降も労使双方ともに自制をもって交渉を続け、妥結を急ぐとみられる。マーティ・ウォルシュ労働長官は「PMAとILWUとは毎週連絡を取り合っている」とした上で、「われわれは良い場所にいると言い続けている。前へ進んでいる」と述べ、交渉が順調に進んでいるという認識を示している(ロイター6月28日)。

ジェトロのロサンゼルス事務所で、物流アドバイザーを務める森本政司氏は「米国西岸港の労使交渉は、ターミナルの自動化が焦点となっている。労使の隔たりが小さい場合、港湾オペレーションに影響せずに交渉が続行すると考えられるが、労使の隔たりが大きい場合、港湾オペレーションに影響する恐れがある。ただし、その場合、連邦政府が早期に介入する可能性が高い」と指摘した。さらに、今後の展開については、「今後も大きな混乱が生じることなく交渉が継続されるというのが大方の見方だ。ILWUがストライキを宣言しなくても、組合員が自主的に荷動きを遅延させ、港湾の処理能力を低下させようとする可能性はあり得るが、その場合でも連邦政府が介入してそれを防ぐだろう」との見解を示している。

(永田光)

(米国)

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