省市で異なる水際措置、渡航者は随時確認を(中国)
赴任者が体験した渡航時隔離(1)

2022年1月14日

中国では、新型コロナウイルス禍の中でも経済活動の正常化が進みつつある。これに並行して、日系企業の中国でのビジネス活動も再び活発化している(2021年12月10日付調査レポート参照)。その一方で、外国人駐在員らが中国に入国する際、長期にわたって隔離措置が余儀なくされており、懸念要因の1つとなっている。

本連載では、中国で行われている入国時の隔離措置などについて、実際に渡航した当構職員の体験談なども交えて解説する。連載第1回となる本稿では、隔離政策の概要、日本での準備、渡航時の流れについて解説する。

隔離措置の運用は地域によって異なる

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の世界的な感染拡大に伴い、中国でも入国時の隔離措置への対応が求められている。

中国国家衛生健康委員会は2021年5月14日、「新型コロナウイルス予防コントロール方案(第8版)発表に関する通知(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表。各省・直轄市・自治区の新型コロナ対策関連部署に対し、それぞれ実施すべき感染防止策について明示的に通達した。具体的には以下のとおり。

  • 入国者には、「医学観察」を措置する。この措置には、14日間の隔離を伴う。当該期間中、1日目、4日目、7日目、14日目にPCR検査を行う。
  • この隔離を伴う措置が終了した後、自宅で健康観察する。期間中、体温測定、症状観察、行動抑制、外出時の感染対策、人の集まるイベントへの不参加、などが求められる。当該期間中は、2日目と7日目にPCR検査を行う。

実際の運用は各省市や社区(注1)に任されている。そのため、具体的な実施内容は場所によって異なる。体験的にも実際、都市ごとにそれぞれ異なる措置が実施されていた(注2)。また、新型コロナの感染状況によっては、隔離期間が延長されたり、措置内容が厳格化されたりすることもあり得るので注意が必要だ。

14日以上の隔離を前提に行動計画を

日本と中国を結ぶ航空便は現在、平常時と比べて減少している。在日本中国大使館のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2022年1月5日現在、日本から直行便が運航しているのは中国の15都市(表参照)。北京市や湖北省武漢市など、直行便がない都市へ渡航する場合は、直行便が運航している都市から入国し、そこで隔離措置を受けた後、最終目的地に移動することになる。この際、最終目的地でも隔離措置が別途課される場合もある。

このほかにも、家族同室での隔離措置を認めておらず、別々の部屋に隔離されるケースもある。そのため、家族で渡航する場合や家族を中国に呼び寄せる場合は、さらに注意が必要だ。

表:日本中国間の直行便運航状況
曜日 航空会社、便名 発着空港
全日空NH931 成田-深セン
春秋航空IJ253 成田-天津
日本航空JL829 成田-大連
東方航空MU594 成田-西安
吉祥航空HO1334 関空-上海
日本航空JL829 成田-大連
全日空NH933 成田-広州
全日空NH927 成田-青島
厦門航空MF810 成田-福州
南方航空CZ8102 成田-広州
中国国際航空CA146 成田-杭州
日本航空JL829 成田-大連
全日空NH929 成田-杭州
南方航空CZ628 成田-瀋陽
中国国際航空CA930 成田-上海
吉祥航空HO1609 関空-南京
日本航空JL87 成田-広州
日本航空JL829 成田-大連
春秋航空IJ125 成田-南京
春秋航空9C6396 関空-常州
東方航空MU524 成田-上海
深セン航空ZH8058 成田-無錫
厦門航空MF810 成田-福州
現在フライトなし (なし)
全日空NH919 成田-上海
春秋航空IJ213 成田-ハルビン
深セン航空ZH9052 成田-深セン
春秋航空9C6218 成田-上海

出所:在日中国大使館ウェブサイト

図1:目的地まで直行便で渡航する際のイメージ図
目的地が日本からの直行便を運航している都市であれば、直接渡航し入国時隔離措置ならびに目的地での隔離措置を受ける。入国時の14日間の隔離が終わった後、目的地での隔離措置にそのまま移行することが多く、その場合、隔離日数が通算で14日以上になることも。

出所:職員の体験談などを基にジェトロ作成

図2:直行便のある15都市を経由して渡航する際のイメージ図
日本から最終目的地へ直行便が運航されていない場合、直行便のある都市へ渡航し入国時隔離措置を受ける。入国ならびに入稿時隔離措置を受けた経由地での隔離措置が終了したら、目的地へ移動し、目的地での隔離措置を受ける。経由地で定められた隔離措置のほか、目的地での隔離措置も別途課されることが多い。北京市などに移動する場合は、経由地での入稿時隔離期間もさらに延長することがある。

出所:職員の体験談などを基にジェトロ作成

出発前の「健康コード」申請に、ワクチンパスポート取得も折り込む必要

ここからは、中国への渡航の流れについて、当構職員の体験談などから解説する。各都市での詳細事例は、本連載の都市別レポートを参照(今後、順次公開予定)。

なお、新型コロナの感染拡大状況に応じて、必要書類や措置の内容が変更になる可能性がある。渡航の際には、必ず在日本中国大使館のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどを確認する必要がある。さらには、渡航先の省市の外事弁公室や防疫指揮部などの担当部門にも、到着時の措置の内容などについて確認しておくとよいだろう。

(1)日本での準備(詳細は、在日中国大使館ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照)

中国への入国ビザと航空券を取得したら、まずは出発日の7日前と2日以内の日程でPCR検査を予約する(注3、2022年1月11日付ビジネス短信参照)。在日本中国大使館が指定した医療機関外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで新型コロナウイルスPCR検査陰性証明と血清IgM抗体検査陰性証明書(以下、ダブル陰性証明書)が必要となるためだ。

ダブル陰性証明書の取得後は、中国国籍ではない場合、「防疫健康碼国際版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(予防健康コード国際版)」から健康コード(注4)を申請し取得する。ダブル陰性証明書の発行と健康コードの申請から取得まで時間がかかるので、スケジュールには余裕を持たせておきたい。

なお、健康コード申請の際には、日本の居住市区町村が発行する「新型コロナワクチン接種証明書」(以下、ワクチンパスポート)も必要になる。ワクチンパスポートも申請から発行まで5営業日程度かかるため、保有していない場合は、事前の準備が望ましい。

健康コードはウェブ上でQRコードとして発行される。空港でいつでも提示できるように、スマートフォンなどのモバイル端末で「お気に入り」に登録するなどの準備をしておくとよいだろう。

(2)出発日の空港

筆者は、成田空港から大連行きの航空便を利用した。チェックインカウンターには長蛇の列ができており、チェックインまでかなりの時間を要した。加えて、健康状況の申告などが必要となるため、普段以上に搭乗手続きには時間がかかった。フライト予定時刻の2~3時間前までには空港に到着しておくと安心だ。


成田空港の大連行き航空便のチェックインカウンター。防護服を着た乗客も散見される(ジェトロ撮影)

荷物の預け入れと健康状況の申告が終わると、保安検査や出国審査を経て出国となる。搭乗の際には、事前に申請した健康コードと、チェックイン時に申請した健康状況申告のQRコードを係員に見せる必要がある。あらかじめ準備しておくとよいだろう。

筆者は早朝便で渡航した。営業している免税店は少なく、混雑していた。買い物が必要な際には、さらに時間に余裕を持ちたい。


搭乗口の様子。多くの搭乗客で混雑している(ジェトロ撮影)

(3)中国到着後

中国到着後は係員の指示に従って空港内を移動する。日本の空港で申請した健康状況の内容について、QRコードで確認を受け、その後、PCR検査を受ける。それが終わると、入国審査、荷物受け取り、税関検査を経て、入国となる。

入国後、自由に動くことは認められない。案内に従って、ホテルへのバスを待つことになる。ホテルを指定することはできない。ホテルへのバスには既定のダイヤなどはないので、焦らずに入国時の手続きを一つ一つ丁寧に行っていくことになる。

大連市や青島市など日本人が多く利用する空港では、日本語が話せる職員が応対してくれたので安心だった。

(4)隔離ホテル到着後

隔離ホテルに到着すると、フロントなどに通され、チェックイン手続きや支払いを行うことになる。滞在日数は目的地などによって異なる。隔離ホテルの宿泊料は自己負担のため、所持金は多めに準備しておくのがよい。WeChatPayなど、モバイル決済での支払いも可能だ。ただし、中国で利用可能なモバイル決済機能を持っていない場合は、人民元の現金を十分準備しておくと安心だ。

隔離中は原則として一歩も部屋の外に出ることはできない。食事も3食が部屋の入り口に置かれる。体温を毎日報告する必要があるほか、PCR検査や血液検査が数度行われた。隔離中に目的地の申告などの手続きも行う必要もある。

ファシリティーやサービス内容は隔離先のホテルによって異なる。日本語がわかるスタッフが配置されているホテルもあるので、不明点などあれば随時スタッフに聞くとよい。

(5)隔離終了

隔離中のPCR検査や血清抗体検査の結果が全て陰性で、隔離必要日数が経過すると、隔離終了として隔離解除証明書などの書類を受け取ることができる。

これらの書類は紛失しないよう大切に保管しておく必要がある。地域によっては、隔離終了後に社区に自身で取りに行く必要があることにも留意が必要だ。

(6)直行便のない都市へ渡航する場合

日本からの直行便がない都市に行く場合、直行便がある都市から入国する必要がある。すなわち、その都市での隔離を経て、最終目的地に向かうことになる。経由地での隔離後に、施設の指示に従って空港などに向かい、搭乗などを手続きする。

搭乗手続は空港により異なる。行程コード(注5)や経由地の隔離証明書などを提示できるよう準備しておくとよい。

最終目的地に到着後の隔離措置は、その有無も含めて省市によって異なる。例えば、2021年7月の四川省成都市の事例では、7日間の自宅隔離が課された。湖北省武漢市の事例では、7日間の集中隔離、その後の7日間の自宅隔離に加え、さらに14日間の健康観察措置が課された。詳細については、事前に各省市の担当部門に確認しておく必要があろう。

(7)自宅隔離、健康観察期間

都市によっては、ホテルでの隔離措置終了後も自宅隔離や健康観察期間を設けている。自宅隔離では一定期間外出することはできない。

健康観察期間は地域によって異なる。条件付きで外出が認められることもある。これらの措置の終了時、証明書が社区などから発行される。証明書は、隔離終了後早めに取りに行く必要がある。

隔離措置は随時変更、地域差もあり、社区などにその都度問い合わせを

当構職員が経験した隔離措置の大まかな流れは既述のとおり。一方で、各省市や社区での具体的な隔離措置内容は公開されていないのが現状。感染状況などによって、今後、措置内容が変更されることも十分ありうる。本連載で取り上げた記事全体を通じ、あくまで体験を基に報告した事例に過ぎない点、改めて留意いただければ幸いだ。

また、状況によって隔離措置の内容が頻繁に変わりうることを、重ねて強調しておく。省市や社区と連絡を密に取り合い、常に最新情報を手に入れるよう努めたい。

充実した隔離生活に向け、準備しておくべきものとは

隔離生活に必要だったと感じた物品について、一覧としてまとめた(参考参照)。

中でも特に持参して有用だったのは、パソコンやタブレット端末などの電子機器だ。オンライン通話や読書など幅広く活用できるため、必需品といえる。

ほかにも、日頃使い慣れている日用品もおすすめだ。ホテルによってはネット通販の利用や外部からの差し入れが禁止となっており、日用品を現地調達できない可能性もある。そのため、現地調達を想定するのではなく、必要な物は日本から持参するといいだろう。

一方、意外と隔離中に使わない物もあった。例えば食品類だ。隔離中は、運動量が少ない状況下でボリュームのある食事(弁当)が提供された。そのため、結果的にほぼ未開封のまま隔離生活を終えることになった。また、念のため持参した室内用スリッパやゴミ袋も、あえて使うことはなかった(これらは、ホテルに多めに置いてあった)。

なお、食事とは別に嗜好(しこう)品(アルコール飲料やコーヒー、スナック菓子など)を注文すると、部屋まで届けてくれるサービスを提供するホテルもあった(注6)。

参考:隔離生活に必要だったと認識した物品

隔離生活に必要だったと認識した物品
電子機器
(パソコンやタブレット端末など)
電子体温計
充電ケーブル、変換プラグ、電源タップ
趣味/娯楽用品
(ゲーム機、電子書籍など)
歯磨き粉
(ホテル備え付けの歯磨き粉だけでは足りないため)
洗濯用品
(部屋干し用洗剤、ハンガー、洗濯物干しなど)
ヘアケア用品
(コンディショナー、ドライヤーなど)
スキンケア用品、生理用品
(洗顔フォーム、化粧品など)
消臭/衛生グッズ
常備薬、サプリメント
運動不足が解消できるもの
(筋トレチューブやヨガマットなど)
しょうゆやふりかけ
(白米には何も味付けされていないため)
マルチツールナイフなど
(食事で出てくるフルーツの皮むきや栓抜きなどに利用)
マグカップなどコップ
(ホテルにティーバッグが用意されている)
食器洗い用洗剤
現金やクレジットカード
(Alipay Tour pass(電子プリペイドカード))

出所:ジェトロ作成


注1:
中国民政部は「一定地域の範囲内に住む人々によって構成される社会生活の共同体」と定義。都市部の最も基礎的な行政区画単位。
注2:
本連載では、遼寧省大連市、山東省青島市、湖北省武漢市などに赴任した当構職員の体験談を掲載予定。
注3:
在日中国大使館は、2022年1月19日以降、日本から中国への渡航に際し、従来の搭乗予定日2日以内のPCR検査(ダブル陰性証明書)に加え、7日前にもPCR検査を行い、健康観察記録を作成する必要があることを通知した(在日中国大使館ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。
注4:
中国入国の際に緑色のQRコードを提示するよう求められる。中華人民共和国海関総署ウェブサイト(中国語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますもしくはWechatから登録が可能。
注5:
中国国務院が発行する、スマートフォンの位置情報による感染リスク地域の訪問履歴を管理するコード。WeChatのミニプログラム上で発行される。
注6:
これら嗜好品はホテルが用意した物に限られる。また、別途精算が必要でもある。
執筆者紹介
ジェトロ・武漢事務所
楢橋 広基(ならはし ひろき)
2017年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジア課、ジェトロ・ワルシャワ事務所、市場開拓・展示事業部海外市場開拓課などを経て2021年10月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・大連事務所
山口 はるか(やまぐち はるか)
2019年、ジェトロ入構。総務部広報課を経て2021年8月から現職。