青島市での集中隔離は日本語にも対応(中国)
赴任者が体験した渡航時隔離(4)

2022年1月31日

中国の山東半島南岸に位置する青島市は、日系製造業も多く集積しており、山東省経済の中心都市である。

筆者は、2021年9月8日に日本から同市に渡航し、集中隔離と健康観察期間を経て、同月29日に隔離を含む中国側の検疫措置の全てのプロセスを完了した。本稿では、青島市到着から集中隔離終了までのプロセスを実体験に基づき報告する。


表:青島市への渡航スケジュール
月日 内容
6月22日 新型コロナワクチン接種(1回目)
7月20日 新型コロナワクチン接種(2回目)
9月6日 PCR検査、健康コード取得(注)
9月8日 成田→青島。集中隔離開始。
9月29日 隔離期間終了

注:在日中国大使館は、2022年1月19日以降、日本から中国への渡航に際し、従来の搭乗予定日2日以内のPCR検査(ダブル陰性証明書)に加え、7日前にもPCR検査を行い、搭乗予定日前日までの7日間の健康観察記録を作成する必要があることを通知した。
出所:職員の体験などを基にジェトロ作成

成田空港でのチェックイン時は行列の可能性も

日本と青島間では、全日本空輸が成田発青島行きのフライトを毎週水曜日に運航しており、機体は、ボーイングB767-300ER(座席数202席、うちビジネス35席)を使用している(2021年12月現在)。

青島膠東国際空港は、2021年8月に運用を開始した新空港であり、後述する隔離ホテルまでは60キロほど、青島市中心部(市南区)までは約20キロの場所に位置する。機内では、入国に必要な「入国カード」「PCR受検同意書」「人員引き渡し記録表(1人につき2枚記入)」などをあらかじめ記入しておく必要がある。乗客は、前方の座席から数回に分けて降ろされる。そのため、後方座席に座っていた筆者は到着後も20~30分ほど機内で待つことになった。

青島空港到着後は指示に従って移動

降機後は、防護服を着たスタッフに促されて空港内を移動する。基本的に動線が決まっているため、指示に従いながら動けば問題ない。(1)PCR検査、(2)入国手続き、(3)預け入れ荷物の受け取りの順番で進んでいく。PCR検査は鼻咽頭と咽頭双方のスワブ(細い綿棒のようなもの)検査だった。

預け入れ荷物には、消毒液が吹き付けられていた。そのため、中身が濡れてはいけない荷物は事前に各自で保護しておくとよいだろう。

空港から隔離ホテルまでは専用バスで移動

空港で検疫などの手続きが完了すると、隔離ホテルにバスで移動することになる。バスは最大40人前後が乗れるほどの大きさで、各座席がビニールで覆われていた。同じ隔離ホテルに宿泊する乗客が車内に一定数集まった後に出発となる。

筆者は、空港から最短距離で約60キロ、バスで約1時間の場所にある隔離ホテルに宿泊した。


バス車内の座席は念入りにビニールで覆われていた(ジェトロ撮影)

ホテル入り口への到着時には、防護服を着た日本語通訳者が待機しており、チェックイン手続きについての説明を受けた。バスから降りる前に、新しいマスクとビニール手袋、ビニール靴カバーを渡され、ビニール手袋の上からさらに消毒液で消毒をするという徹底ぶりであった。

チェックイン時には、配付される用紙に個人情報を記入後、宿泊費用を支払った(2022年1月18日現在、支払い日はチェックアウト前日に行っており、チェックイン時の支払いは不要)。支払いはWeChatペイやAlipay(アリペイ)といった電子決済はもちろん、VISAやMASTERなどのクレジットカードも使用可能だった。支払いについては、クレジットカードまたは電子決済で行ってほしいと伝えられたため、現金以外の手段を準備しておいた方がよいだろう。

支払い後、「隔離生活Q&A」を3枚、QRコードが印刷された紙を2枚渡された。あわせて、WeChatでスキャンするように伝えられる。このうち1枚は、WeChatグループへの招待用リンクで、隔離期間中の連絡などは全て同グループ内で行われることになる。もう1枚は、体温申告用のフォームへのリンクで、毎日午前と午後の2回、体温を計測した上で入力する必要がある。体温計は部屋にも用意されていたが、ガラス製かつ水銀を使ったもので、落として割れたという報告も散見された。そのため、体温計は、デジタル式を持参することをお勧めする。

隔離ホテルは広く清潔

宿泊費の支払いを終えると、自室に案内され、隔離期間が開始した。筆者の渡航時、青島市では原則として14日間の集中隔離と7日間の在宅健康観察(自宅からの外出禁止)の計21日間の隔離を課されていた。筆者は新規赴任で、中国国内に自身の銀行口座を開設しておらず、在宅健康観察時に自宅での食料調達などに不便が予想された。そのため、21日間の全期間を隔離ホテルで過ごした。在宅健康観察の7日間は、原則として外出禁止とされているが、自宅があればそこで過ごしても問題ない。なお、最終的な隔離期間は、居住予定先を管轄する社区に確認する必要がある。

隔離ホテルの部屋にはセミダブルほどの大きさのベッドが2つ備え付けられており、広さは45平方メートルほどだった。ミネラルウォーター(500ミリリットルのペットボトル24本)と、タオル、ペーパー類、シャンプー、ボディソープ、洗剤、歯ブラシ、ごみ袋などが準備されていた。歯ブラシキットには歯磨き粉も付いていたが、量は多くないため、個人で持参する必要がある。また、替えのベッドシーツやバスタオル、洗濯用の水おけなどはWeChatグループ上で依頼することが可能だ。WeChatグループには日本語通訳者が常駐しており、部屋番号とともに「水を1ダース欲しい」と言えば、すぐに返信が来た。



部屋は45平方メートルほどの広さ(ジェトロ撮影)

食事は中華と洋食から選択、ルームサービスの提供も

食事は1日3回、午前8時ごろに朝食、正午ごろに昼食、午後6時ごろに夕食がそれぞれ提供されており、洋食と中華から選択できる。筆者は最初、中華料理を選択したものの、毎回出される白米(主に昼食、夕食)が硬く、主菜や副菜の油っぽさもあって、途中で洋食に変更した。洋食ではパン(主に朝食)、白米やパスタ(主に昼食、夕食)が提供され、副菜もサラダ、メインには肉や魚料理など幅広い。基本的に料理は、最初の選択から変更できないことになっていたものの、他の宿泊者にも料理を変更した人がいたことから、ホテル側が柔軟に対応しているようだった。(2022年1月18日現在、食事の種類は毎週土曜日に限り変更可能)。また、3日に1回、午後3時ごろにアイスクリームやケーキが提供された。食べ終わったゴミは、備え付けのごみ袋に入れて部屋の外に置いておくと、10時ごろ、午後2時ごろ、午後7時ごろにそれぞれ回収される。なお、スープの残りなどはトイレに流した上でごみ袋に入れるよう指示された。


初日の夕飯はステーキ(ジェトロ撮影)

食事は基本的に量が多い(ジェトロ撮影)

提供される食事以外に、ルームサービスもあり、パスタやハンバーガーのほか、日本食(鶏肉カレーライス、鶏肉照り焼き、鶏のから揚げ、みそ汁など)や飲料(コーヒー、炭酸水、ジュースなど)も注文できた。酒類は、筆者の宿泊時には中止になっていた(一時期は提供されていたようだ)。

PCR検査を21日間で6回受診

21日間(2021年9月9日~9月29日、隔離開始日は含まず)の隔離期間中、合計6回、PCR検査を受診した。受診日は9月11日、15日、20日、21日、24日、28日。基本的には午前9時半ごろに行われた(時間は若干前後した)。青島空港到着時のPCR検査同様、基本的に鼻咽頭と咽頭双方のスワブ検査だった。一方、9月15日と28日には抗体(血液)検査も行われた。毎回の検査結果は、陰性ならその都度の報告はなく、チェックアウト時にまとめて検査結果の報告を受け取ることになる。

なお、PCR検査のスケジュールは頻繁に変更されている。そのため、詳細についてはチェックイン後に適宜確認が必要となる。

費用や家族での宿泊などの条件は

ジェトロ青島事務所では、日本からの駐在員が宿泊する隔離ホテルに最新情報の確認を行った。2021年12月時点の状況は以下のとおりだった。

(1)費用(値段は1部屋当たり)と家族利用

単身の宿泊の場合、スタンダードルーム〔1人用、筆者が宿泊したものと同様の部屋、1泊500元(約9,000円、1元=約18円)〕に案内される。家族での宿泊の場合はファミリールーム(家族用、100平方メートル前後。1泊700元)が用意されている。

複数人が1部屋で宿泊する場合の追加料金は「5歳以下の場合、1人当たり1泊100元」「6歳以上の場合、同200元」となっている。

3人家族で赴任した場合、概要は次の「参考」のとおり。

参考:家族利用する場合の部屋割りと料金

1. ホテル3人家族(両親と子供1人)の例
初回のPCR検査受診前までは、両親のうちどちらか1人と子供が同じ部屋に宿泊、もう片方の親は1人で別の部屋に宿泊する。
PCR検査を受診して結果が陰性の場合、受診日翌日以降は家族でファミリールームに移ることができる。
ファミリールームに移った場合、1泊当たりの宿泊費用は「ファミリールームの部屋代(700元)」「親1人分の追加料金(200元)」「子供1人分の追加料金(5歳以下は100元、6歳以上は200元)」の合計額になる。
2. 4人以上の家族の場合(次のようなプランが最善策ではないかと、ホテル側から示唆)
初回のPCR検査受診前までは「親1人+子供1人」のペアで、それぞれスタンダードルーム2部屋で過ごす。
初回受診以降は、ファミリールームに移る。

なお、ファミリールームの部屋数は限られているため、宿泊2~3週間前には事前に連絡・確認をしてほしいとのことだった。また、14歳以上の子供は大人と同様に扱われる(すなわち、ファミリールームの利用は原則不可)。しかし、14~16歳の年齢の子供は、予め申請をすれば許可が下りる場合もあるとのこと。単身の場合は事前連絡の必要はない。

(2)食事

食事の選択肢は、「1日3食提供される食事」「ルームサービスの食事」「自分で持ち込んだ食べ物」になる。デリバリー(食べ物、酒類を含む飲み物、野菜、フルーツなど)の注文は原則不可能。ただし、カップラーメンなど密閉包装された一部のものに限って、デリバリー注文や差し入れが可能だ。

子供の食事は、6歳以上の場合、原則として大人と同じメニューになる。もっとも辛さなどの調整は、あらかじめの要望に応じ可能な限り対応するとのことだった。大人と同じメニューを食べられない幼児については、原則として宿泊者自身で食事の準備が必要になる。

隔離終了後、救急車で自宅まで移動

筆者の場合、2021年9月29日に21日間の隔離期間が終了した。終了日が近づくと、事前に当日いつ部屋を出ても大丈夫なように荷物をまとめておくよう指示される。

正午ごろに部屋のドアがノックされ、外に出るように促された。1階受付に降りた後、「PCR検査領収書」「宿泊費領収書」「隔離解除証明書」「PCR検査報告書」「血清抗体検査報告書」が同封された封筒を受領。その後、用意された車両に乗った。筆者が乗車したのは医療用の救急車だった。乗客は筆者を含めて3組いたが、大量の荷物が積まれているため、座席スペースがわずかだった。


救急車内部(ジェトロ撮影)

目的地はあらかじめWeChatを通じてホテル側担当者に伝えておき、隔離終了当日は目的地に直接送り届けられる。救急車を降りると、社区の担当者が待機していた。社区担当者からは、「健康カード(WeChatミニプログラムを事前申請)」「隔離解除証明書」を提示するように伝えられた。また、WeChatの連絡先を交換し、「今後1週間は毎朝体温を報告するように」と指示された。

ここで、隔離期間の全プロセスが終了となった。隔離期間後の1週間については、外出が制限されることはなかった。WeChatのチャット上で毎日の体温報告をすれば、自由に活動が可能だった。

隔離ホテル生活を通じての所感

隔離期間全体を通して、次に述べる点について心構えが必要と感じた。

(1)部屋の環境

筆者の部屋は問題なかった一方、WeChatグループ上で問題を指摘する宿泊者コメントも散見された(トイレが詰まる、雨が強い日に天井から雨漏りがする、など)。部屋によって、当たり外れがありそうだ。

部屋の交換も、場合によっては可能なようなので、入居時に部屋に不具合がないか十分に確認したほうが良いだろう。

(2)サービスの質

洋食を頼んでいるのに中華がくる、1時間経っても食事が提供されない、といったことがあり、ホテル側のオペレーションは必ずしも万全ではなかった。

なお、筆者が宿泊したホテルには、常時数百人の隔離者がいるようだった。そのせいか、特に新規隔離者が入ってきたと思われる日に、オペレーションの乱れが発生しがちな印象を受けた。寛容な態度で構えられるか否かが、隔離生活の快適さにもつながるだろう。

(3)食事の選択

既述のとおり、食事は中華と洋食から選択できる。筆者は当初、中華を選択した。しかし、結果的には白米が冷えて固まっていることが多かったことや、主菜・副菜が油っぽいことなどもあり、徐々に食欲がなくなっていった。洋食には生野菜の提供があり、油っぽさもそれほど気にならなかった。比較の問題とはいえ、健康的なメニューだった印象である。

もっとも、食事については個人の好みも大きく関係する。あくまで意見の1つとして参考にしていただきたい。

執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所
西島 和希(にしじま かずき)
2018年、ジェトロ入構。ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課アジア支援班、対日投資部対日投資課DX推進チーム(ASEAN担当)を経て現職。