中国の2021年の自動車販売台数、4年ぶり増もピークには及ばず
新エネ車は2.6倍、輸出は初の200万台超

2022年9月22日

中国の2021年の自動車販売台数は、前年比3.8%増の2,627万5,000台だった。販売台数は4年ぶりに増加したが、依然としてピークだった2017年を約260万台下回っている。一方で、新エネルギー車の販売は政策的な後押しもあって、前年比で2.6倍と大幅に増加した。新興メーカーや異業種からの新規参入も相次いでいる。また、自動車輸出台数は初めて200万台を超えた。2022年に入っても、新エネルギー車販売と自動車輸出台数は好調を維持している。

販売台数・生産台数ともに4年ぶりに増加

中国自動車工業協会(CAAM)の発表によると、2021年の中国の自動車販売台数は前年比3.8%増の2,627万5,000台と、4年ぶりに増加した。自動車販売台数は2017年の2,888万台をピークに、前年比で減少が続いてきたが、2021年は新型コロナウイルスの感染状況に落ち着きがみられたことなども背景に、増加に転じた。しかし、依然として2017年を約260万台下回っている(図1参照)。

図1:中国の自動車販売台数の推移
2017年は3.0%増の2888万台。2018年は2.8%減の2,808万台。2019年は8.2%減の2,577万台、2020年は1.8%減の2,513万台、2021年は3.8%増の2,627万台。

出所:中国自動車工業協会

CAAMによると、2021年第1四半期(1~3月)は、前年同期の販売台数が新型コロナ感染拡大の影響で大きく落ち込んでいたこともあり、その反動で大幅な伸びを示した。第2四半期(4~6月)と第3四半期(7~9月)は半導体の供給不足により、生産面で影響を受けたこともあり、販売台数の伸びが鈍化したが、第4四半期(10~12月)には持ち直した。なお、2021年の生産台数は3.4%増の2,608万2,000台と、販売台数と同様に4年ぶりに増加した。

販売台数の内訳をみると、乗用車は6.5%増の2,148万2,000台、商用車は6.6%減の479万3,000台だった。乗用車の車種別では、セダンタイプが7.1%増の993万4,000台、日本で「ミニバン」と呼ばれるMPV(注1)が0.1%増の105万5,000台、スポーツ用多目的車(SUV)が6.8%増の1,010万1,000台、クロスオーバータイプが0.8%増の39万1,000台だった。

図2:自動車販売台数に占める新エネルギー車の割合
2016年は1.8%、2017年は2.7%、2018年は4.5%、2019年は4.7%、2020年は5.4%、2021年は13.4%。

出所:中国自動車工業協会、CEIC

乗用車市場信息聯席会(CPCA)によると、BEVのメーカー別販売台数は、1位が上汽通用五菱汽車(前年比約2.6倍、42万3,171台)、2位がテスラ(約2.3倍、32万2,020台)、3位がBYD(約2.9倍、29万6,663台)、4位が長城汽車(約2.5倍、13万3,510台)、5位が広汽アイオン(93.8%増、12万2,681台)だった。

中国は国を挙げて新エネルギー車の普及を推進しており、これまで購入補助金やナンバープレート規制緩和などの支援策を実施してきた。2020年11月に国務院(内閣)は「新エネルギー車産業発展計画(2021~2035年)」を公布し、新車販売台数に占める新エネ車のシェアを現行の約5%から2025年までに約20%に引き上げ、2035年までに電気自動車(EV)を新車販売の主役とする目標を設定した。

2021年3月31日に政府の工業情報化部弁公庁など4部門は、農村などへの普及を促進するため、「2021年新エネルギー車下郷(農村普及)活動を展開することに関する通知」を発表した(2021年4月14日付ビジネス短信参照)。CAAMが政府部門と協力の下で「グリーン、低炭素、スマート、安全」をテーマに販促活動を実施。対象は山西省や吉林省、河南省、湖北省、湖南省、広西チワン族自治区、重慶市、山東省、江蘇省、海南省、四川省などで、比較的小規模な都市でキャンペーンや企業イベントなどを行った。また、新エネルギー車関連企業が4月末から開かれる国家級ネットショッピングイベント「双品網購節」に参加することを奨励し、ECやインターネットプラットフォームなどと協力した販促活動を支援。さらに、各地方政府が新エネルギー車下郷の支援策を打ち出し、農村での電池充電・交換インフラの建設を推進することなどを奨励した。2022年も関連の取り組みは続いている。各地方政府やCAAM、連携メディア宣伝プラットフォームで各種活動をPRしている。

新エネルギー車分野には、自動車メーカー以外の参入も続いている。中国IT大手の百度(バイドゥ)は2021年1月11日、浙江吉利控股集団と共同でスマートEV企業を設立すると発表した。浙江吉利控股集団は、吉利汽車やボルボ・カーを傘下に持つ大手自動車グループで、百度は自動運転技術などを提供するとしている。

スマートフォン大手の小米科技(シャオミ)は2021年3月30日、スマートEV事業への進出を正式に発表、9月にEV事業を手掛ける完全子会社の小米汽車を設立した。11月27日には北京市大興区にある北京経済技術開発区とEVの生産拠点建設などを行う契約を締結した。小米汽車は同開発区で、年間生産能力30万台のEV完成車工場を建設するほか、本社、販売本部、研究開発本部なども設置する予定とされている。

日系メーカーは僅差で外資系の第2位

中国の2021年の乗用車販売台数のメーカー国別シェアを見ると、中国系が44.4%、ドイツ系20.6%、日系20.6%、米国系10.2%、韓国系2.4%、フランス系0.6%だった(注2)。ドイツ系の販売台数は443万1,192台、日系の販売台数は442万9,462台と、ドイツ系がわずかに日系を上回った(図3参照)。

外資系メーカーでは、日系は2012年にドイツ系に1位を奪われて以降、一貫して2位にとどまっている。シェアの差は2014年に4.3ポイントまで拡大したが、その後は2ポイント台後半で推移し、2020年には0.8ポイントまで縮小していた。2021年は日系、ドイツ系とも販売台数は前年比で減少したが、シェアはほぼ同数だった。

ドイツ系は、新型コロナウイルス感染が拡大したマレーシアの半導体工場からの調達が滞るなど、半導体不足の影響を大きく受け、販売台数が8.3%減となった。一方、日系は相対的に影響が少なく、4.9%減にとどまったことが要因とみられている。

図3:中国の乗用車販売台数メーカー国別シェア
2021年は中国系が44.4%、ドイツ系が20.6%、日系が20.6%、米系が10.2%、韓国系が2.4%、フランス系が0.6%。

出所:中国自動車工業協会、CEIC

輸出が初めて200万台超える

中国の2021年の自動車輸出台数は前年比で倍増の201万5,000台と、初めて200万台を超え、過去最高を更新した。自動車販売に占めるシェアは7.7%となった。自動車輸出は2012年に105万6,000台を記録して以降伸び悩み、2018年には約104万台と再び100万台超えたものの、2019年、2020年と2年連続で前年比減となっていた(図4参照)。2021年は新エネルギー車の輸出も4倍増の31万台と大幅に増加した。

図4:中国の自動車輸出台数の推移
2021年が29.7%増の105.6万台、2013年が7.5%減の97.7万台、2014年が6.9%減の91万台、2015年が20.1%減の72.8万台、2016年が2.7%減の70.8万台、2017年が25.8%増の89.1万台、2018年が16.8%増の104.1万台、2019年が1.6%減の102.4万台、2020年が2.9%減の99.5万台、2021年が101.1%増の201.5万台。

出所:中国自動車工業協会

中国自動車流通協会(CADA)は輸出増加の要因として、半導体不足により国外での生産が停滞したことを挙げている。主要国・地域の2021年の自動車生産量をみると、米国は2.9%増となったものの、日本(2.7%減)、韓国(1.3%減)、EU(7.1%減)、メキシコ(2%減)などで減少している。

CADAによると、2021年の完成車の輸出先は、1位がチリ(前年比約3.4倍、19万1,249台)、2位がサウジアラビア(36%増、13万2,997台)、3位がロシア(約2.9倍、12万2,826台)、4位がベルギー(約6倍、11万1,712台)、5位がオーストラリア(約2.5倍、9万7,587台)となっている。

輸出先首位となったチリの2021年の自動車販売台数をみると、中国系メーカーの奇瑞汽車、長安汽車などが前年比3桁増の高い伸びを示している。チリは2021年12月にEVの安全基準として中国の標準規格である「中国国家標準(GB規格)」を採用しており、今後は中国系メーカーのEV販売拡大も予想される(2022年7月14日付地域・分析レポート参照)。

中国外での中国系メーカーの現地生産も進んでいる。長城汽車は、2021年6月にタイの第2工場が生産を開始した。年間8万台の生産能力を持つとしている。ロシアでも年間8万台の生産能力を有するエンジン工場を建設しており、2022年の生産開始を予定している。

同じくCADAの発表では、新エネルギー車の輸出先として、1位はベルギー(約6.5倍、10万6,392台)、2位はバングラデシュ(7%増、8万2,569台)、3位は英国(約4倍、5万4,805台)、4位はインド(12%増、4万8,891台)、5位はタイ(約12倍、4万250台)となっている。

新エネルギー車の輸出増加の要因としては、中国の生産が堅調だったことのほか、各国で政策的にガソリン車やディーゼル車から新エネルギー車への切り替えを急速に進めていることが挙げられる。EUは2021年7月に発表した気候政策パッケージ「Fit for 55」の「乗用車、小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出標準規則」の改正案で、新車からのCO2排出量を2030年までに乗用車は55%、バンは50%削減し、2035年までに乗用車、バンともに100%削減(全て2021年比)するとしている(2022年8月5日付地域・分析レポート参照)。EUのほかにも、欧州ではノルウェーが2025年までに全ての新車販売を排出ゼロ車にする方針を掲げ、英国は2030年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止するとしている。

中国系メーカーの品質やブランドの向上を要因とする見方もある。2021年2月22日付の「人民日報」海外版は、中国は車載電池の技術力が世界トップレベルなど品質面で優位性があり、現地でのブランド構築もうまくいっているため、先進国の消費者が中国製品を受け入れていることを要因の1つとして報じている。

新エネルギー車の輸出は、大手メーカーだけでなく、新興メーカーも積極的に進めている。上海市の愛馳汽車は5月にフランスのコルシカ島向けに輸出を開始した。同社は中国のスタートアップEVメーカーとして初めて欧州の型式認証を取得したとされる。上海市の上海蔚来汽車(NIO)は7月に、SUVタイプのEV「ES8」のノルウェー向け輸出を開始した。広東省広州市の小鵬汽車は8月にEVセダン「P7」のノルウェーへの出荷を開始したとしている。

2022年の自動車販売は減速も、新エネ車・輸出は好調

CAAMによると、2022年1~7月の自動車販売台数は前年同期比2.0%減の1,447万7,000台となっている。新型コロナ感染拡大を受け、複数都市で都市封鎖などの強力な措置が取られた影響もあり、3~5月は前年同月比で減少した。特に上海市で厳格な都市封鎖が本格化した4月は前月比47.6%減と大幅に減少した。その後、新型コロナ対策の緩和や政府による消費促進策などもあり、単月では6月が34.4%増の250万2,000台、7月が29.7%増の242万台と高い伸びが続いている。

新エネルギー車の2022年1~7月の販売台数は、前年同期比2.2倍の319万4,000台と高い伸びを維持している。CPCAは、2022年の年間販売台数年は600万台に達すると予測している。

2022年1~7月の自動車輸出台数も50.6%増の150万9,000台と好調で、CAAMは年間輸出台数が240万台を超える可能性があるとしている。

2022年7月7日には商務部、国家発展改革委員会、工業情報化部など17部門が「自動車の流通と消費拡大に向けた措置」を発表するなど、中国政府は自動車消費の促進に向けた政策を強化している。


注1:
Multi Purpose Vehicleの略。
注2:
CPCAの統計では、日系のシェアがドイツ系を上回り、外資系で1位となっている(2022年1月25日付ビジネス短信参照)。
注3:
CADAによると、2021年の中国の自動車輸出台数は213万7,977台、うち新エネルギー車は58万8,476台となっており、CAAMの統計と数値が異なる。
執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所 経済信息部 部長
河野 円洋(かわの みつひろ)
2007年、ジェトロ入構。在外企業支援・知的財産部知的財産課、ジェトロ岐阜、海外調査部中国北アジア課、ジェトロ・広州事務所、企画部企画課を経て2021年9月から現職。