EUの2021年の乗用車販売・生産台数、新型コロナ直撃の2020年も下回る
2035年に向けBEV普及や充電インフラ拡充へ

2022年8月5日

欧州自動車工業会(ACEA)の「経済・市場報告書2021年版PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.2MB)」(2022年3月発表)によると、2021年のEU26カ国(マルタを除く、注1)における乗用車の新車登録台数は970万192台だった。新型コロナウイルス危機以前の2019年の新車登録台数を約330万台下回っただけでなく、同危機が直撃した2020年をも約24万台下回った。各国で新型コロナの感染状況が落ち着き、規制緩和が進んだ2021年上半期は、4月が前年同月比3.2倍となるなど、前年同期の反動増が見られ、販売回復が期待された。しかし、下半期に入ると、前年から続く世界的な半導体の供給不足がさらに大きな影を落とし、一転して前年同月を下回る月が続いた。

ACEAは2022年2月、半導体の供給が年内には安定するとみて、2022年の新車登録台数は約1,050万台に達し、前年比7.9%増となるとの予測を示した。しかし、実際には2022年上半期も前年同月を下回る月が続き、前年同期比14.0%減と低迷している(図参照)。

図:EU26カ国における2021年および2022年1~6月の月別乗用車の新車登録台数および増減率(前年同月比)
2021年1月は約73万台、前年同月比24.0%減。2月は約77万台、19.3%減。3月は約106万台、87.3%増。4月は約86万台、218.6%増。5月は約89万台、53.4%増。6月は約105万台、10.4%増。7月は約82万台、23.2%減。8月は約62万台、19.1%減。9月は約72万台、23.1%減。10月は約67万台、30.3%減。11月は約71万台、20.5%減。12月は約80万台、22.8%減。2022年1月は約68万台、6.0%減。2月は約72万台、6.7%減。3月は約84万台、20.5%減。4月は約68万台、20.6%減。5月は約79万台、11.2%減。6月は約89万台、15.4%減。

注:マルタについてはデータ入手不可能として、ACEAは統計に含めていない。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

国別で2021年の新車登録台数をみると、ACEAがEU4大市場とする国のうち、イタリア(前年比5.5%増)、スペイン(1.0%増)、フランス(0.5%増)では前年に比べやや増加したものの、最大市場であるドイツは10.1%減だった(表1参照)。

表1:EU26カ国の2021年の国別乗用車の新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
国名 2020年 2021年 前年比
ドイツ 2,917,678 2,622,132 △ 10.1
フランス 1,650,118 1,659,003 0.5
イタリア 1,381,756 1,457,952 5.5
スペイン 851,210 859,477 1.0
ポーランド 428,347 446,647 4.3
ベルギー 431,491 383,123 △ 11.2
オランダ 355,431 322,831 △ 9.2
スウェーデン 292,024 301,006 3.1
オーストリア 248,740 239,803 △ 3.6
チェコ 202,971 206,876 1.9
デンマーク 198,102 185,324 △ 6.5
ポルトガル 145,417 146,637 0.8
ハンガリー 128,021 121,920 △ 4.8
ルーマニア 126,351 121,208 △ 4.1
アイルランド 88,325 104,669 18.5
ギリシャ 80,977 100,916 24.6
フィンランド 96,418 98,481 2.1
スロバキア 76,305 75,700 △ 0.8
スロベニア 53,677 53,988 0.6
クロアチア 36,005 44,915 24.7
ルクセンブルク 45,189 44,372 △ 1.8
リトアニア 40,232 31,371 △ 22.0
ブルガリア 22,368 24,537 9.7
エストニア 18,750 22,336 19.1
ラトビア 13,522 14,344 6.1
キプロス 9,993 10,624 6.3
EU合計 9,939,418 9,700,192 △ 2.4

注:マルタを除く。同国についてACEAはデータが入手不可能として、統計に含めていない。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

主要メーカーグループの市場シェアは、フォルクスワーゲン(VW)グループ(25.1%)、ステランティス(21.9%)、ルノーグループ(10.6%)の順となった。4位に入った韓国の現代自動車はハイブリッド車、電気自動車(EV)の販売が好調で、前年比18.4%増と、主要メーカーの中では唯一、登録台数が2桁増となった。日系メーカーでは、9.1%増となったトヨタ自動車が6位と健闘した(表2参照)。

表2:2021年のEUにおける主要メーカーグループの乗用車の新車登録台数、市場シェア(単位:台、%)(△はマイナス値)
グループ名 2020年 2021年 2021年
市場シェア
前年比
フォルクスワーゲン(VW) 2,561,159 2,437,110 25.1 △ 4.8
ステランティス 2,169,659 2,124,269 21.9 △ 2.1
ルノー 1,145,881 1,028,925 10.6 △ 10.2
現代 699,858 828,337 8.5 18.4
BMW 649,030 658,490 6.8 1.5
トヨタ自動車 563,700 615,142 6.3 9.1
ダイムラー 625,151 547,384 5.6 △ 12.4
フォード 487,591 394,967 4.1 △ 19.0
ボルボ 221,630 218,878 2.3 △ 1.2
日産 209,346 172,198 1.8 △ 17.7
マツダ 118,905 121,842 1.3 2.5
ジャガー・ランドローバー 69,726 69,692 0.7 △ 0.0
三菱自動車 86,521 63,122 0.7 △ 27.0
ホンダ 50,469 38,248 0.4 △ 24.2

出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

2021年のEUの乗用車の生産台数は、販売と同様に、半導体の供給不足が影響し、1,001万2,259台(前年比7.1%減)だった。2019年と比較すると、約400万台も少なかった。域内の主要生産国10カ国のうち、8カ国での生産台数は前年比マイナスとなった。首位は前年同様にドイツだったが、その減少率は8カ国中最大の13.2%減だった(表3参照)。

表3:2021年のEUの乗用車生産台数上位10カ国(単位:台、%)(△はマイナス値)
国名 2020年 2021年 前年比
ドイツ 3,393,960 2,946,826 △ 13.2
スペイン 1,759,907 1,603,214 △ 8.9
チェコ 1,129,429 1,090,559 △ 3.4
スロバキア 943,746 969,313 2.7
フランス 869,856 854,089 △ 1.8
ルーマニア 438,107 420,755 △ 4.0
ハンガリー 433,601 420,497 △ 3.0
イタリア 455,323 419,539 △ 7.9
スウェーデン 245,671 257,733 4.9
ベルギー 234,075 219,400 △ 7.5
EU合計 10,779,146 10,012,259 △ 7.1

出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

EU統計局(ユーロスタット)によると、2021年のEUの乗用車の輸出台数は503万4,579台(前年比0.8%減)、輸入台数は307万5,497台(1.9%増)だった。

2021年のEUの乗用車の輸出相手国を金額ベースでみると、前年に首位だった英国が前年比27.8%減と大きく後退し、代わって首位・米国(9.1%増)、2位・中国(16.5%増)の順となった。日本は6位(8.2%増)だった。輸入相手国を金額ベースでみると、首位は2020年同様、米国だったが、2位の英国とともに大幅減(それぞれ22.3%減、18.2%減)となった。躍進したのが3位の韓国(29.0%増)、6位の中国(3.3倍)だ。日本は4位(13.7%減)だった(表4参照)。

表4:2021年のEUの乗用車の輸出入金額

輸出(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
順位 相手国 2020年 2021年 前年比
1 米国 23,372 25,510 9.1
2 中国 18,178 21,180 16.5
3 英国 28,106 20,301 △ 27.8
4 スイス 6,278 6,408 2.1
5 韓国 6,829 6,351 △ 7.0
6 日本 5,630 6,091 8.2
EU全体 121,144 125,450 3.6
輸入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
順位 相手国 2020年 2021年 前年比
1 米国 10,480 8,144 △ 22.3
2 英国 9,314 7,623 △ 18.2
3 韓国 5,511 7,107 29.0
4 日本 8,112 6,998 △ 13.7
5 トルコ 6,330 6,139 △ 3.0
6 中国 1,766 5,904 234.3
EU全体 51,597 52,802 2.3

出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

「Fit for 55」の衝撃

2021年は欧州自動車業界にとって、脱炭素化へ向けてアクセルをまた一段と強く踏むことを迫られた1年にもなった。欧州委員会が2021年7月に発表した気候政策パッケージ「Fit for 55」(2021年7月15日付ビジネス短信参照、注2)において、自動車部門に関わるものとして、最も反響が大きかったのは、「乗用車および小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出標準規則」の改正案だ。

改正案では、新車からのCO2排出量を2030年までに乗用車は55%、バンは50%削減し、2035年までに乗用車・バンともに100%削減(すべて2021年比)という目標が設定された。2030年目標の引き上げ(注3)に加え、2035年までに「100%削減」とは、ハイブリッド車も含めた内燃機関搭載車の生産を実質禁止するものとして注目を浴び、自動車業界からの反発も大きかった。実際、欧州議会のパスカル・カンファン環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)委員長は、自動車業界を含む産業界の熾烈(しれつ)なロビー活動が「Fit for 55」発表後から行われた、と現地メディアに語っている。

ACEAだけでなく、欧州自動車部品工業会(CLEPA)もハイブリッド技術や持続可能な再生可能燃料の利用を排し、電動化一択といえる改正案への不安を繰り返し表明した。CLEPAは2021年12月、2035年までにすべての新車をEVとした場合、部品部門では22万6,000人の新たな雇用創出が見込まれるものの、現在、内燃機関搭載車の生産に携わる労働者の84%に相当する約50万人の雇用が2040年までに失われ、実質27万5,000人の雇用に影響が出るとの調査結果を公表し、雇用への甚大な影響の可能性も訴えた(2021年12月7日付ビジネス短信参照)。

しかし、欧州議会、EU理事会(閣僚理事会)は「100%削減」の支持を採択した(2022年6月30日付ビジネス短信参照)。今後、改正案の成立に向けてEU機関の間で協議が行われるが、EU理事会は、欧州委員会が2026年に進捗評価を行い、プラグインハイブリッドや代替燃料技術も含めて見直しを行うことを提案しており、最終的にどのような形で成立するか、引き続き注目だ。

BEVの普及状況は「西高東低」に加え、西欧でも普及率に差

前述の通り、今後一層の普及が期待されるバッテリー式EV(BEV)は、現在のところ、EU市場ではどの程度普及しているのだろうか。2021年の新車登録台数を燃料タイプ別にみると、ガソリン車、ハイブリッド式EV(HEV)、ディーゼル車の順に多かった。なお、わずかな差ではあるが、EU市場でHEVがディーゼル車を上回るのは初めてのことだった(2022年2月4日付ビジネス短信参照)(表5参照)。

表5:EUの2021年の乗用車の燃料タイプ別新車登録台数および新車登録全体に占める割合(単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料タイプ 2020年 2021年 前年比 割合
ガソリン 4,724,417 3,885,432 △ 17.8 40.0
ハイブリッド式EV(HEV) 1,184,526 1,901,239 60.5 19.6
ディーゼル 2,776,665 1,901,191 △ 31.5 19.6
バッテリー式EV(BEV) 538,734 878,432 63.1 9.1
プラグインハイブリッド(PHEV) 507,917 867,092 70.7 8.9
天然ガス自動車(NGV) 54,979 43,235 △ 21.4 0.4
その他 153,549 226,702 47.6 2.3

注1:BEVには燃料電池車(FCEV)が、PHEVにはエクステンデッド・レンジEV(EREV)も含まれる。また、「その他」とは、液化石油ガス(LPG)車などの代替燃料車を指す。
注2:本統計は、国別新車登録台数(表1)の発表後に発表されたため、一部の国の集計の修正に伴い、足し上げると表1の合計値との間にやや差異がある。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

BEVは、前年比63.1%増と引き続き好調を維持し、新車登録台数全体に占める割合も2020年の5.4%から9.1%へと拡大した。2021年は、これまで西欧諸国(以降「EU14」、注4)に比べて普及が遅れているとされていた中・東欧諸国(以降「EU12」)でも、前年比58.3%増と、EU14(63.2%)に匹敵する増加率となった。ただ、各国の新車登録台数全体に占めるBEVの割合をみると、10%以上の国が半数になったEU14とは対照的に、EU12ではルーマニア以外の11カ国で5%以下だった(表6参照)。

表6:2021年のEU26カ国のBEVの新車登録台数および全体に占める割合(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
EU 国名 2020年 2021年
台数 割合 台数 前年比 割合
EU14 オランダ 73,005 20.5 64,149 △ 12.1 19.8
スウェーデン 27,973 9.6 57,489 105.5 19.1
オーストリア 15,986 6.4 33,380 108.8 13.9
ドイツ 194,471 6.7 356,425 83.3 13.6
デンマーク 14,275 7.2 25,000 75.1 13.4
ルクセンブルク 2,473 5.5 4,650 88.0 10.5
フィンランド 4,244 4.4 10,152 139.2 10.3
フランス 111,127 6.7 162,167 45.9 9.8
ポルトガル 7,830 5.4 13,260 69.3 9.0
アイルランド 4,013 4.5 8,646 115.4 8.2
ベルギー 14,994 3.5 22,677 51.2 5.9
イタリア 32,502 2.4 67,283 107.0 4.6
スペイン 17,927 2.1 23,690 32.1 2.8
ギリシャ 679 0.8 2,176 220.5 2.2
EU12 ルーマニア 2,845 2.2 6,342 122.9 5.2
リトアニア 453 1.1 1,155 155.0 3.7
ハンガリー 3,046 2.4 4,312 41.6 3.5
スロベニア 1,647 3.1 1,722 4.6 3.2
クロアチア 533 1.5 1,475 176.7 2.9
ラトビア 307 2.0 425 38.4 2.9
エストニア 342 1.5 484 41.5 2.2
ポーランド 3,679 0.9 7,164 94.7 1.6
スロバキア 918 1.2 1,105 20.4 1.5
チェコ 3,284 1.6 2,701 △ 17.8 1.3
ブルガリア 139 321 130.9 1.3
キプロス 42 0.5 82 95.2 0.8
EU合計 538,734 5.4 878,432 63.1 9.1
EU14 521,499 5.9 851,144 63.2 10.0
EU12 17,235 1.5 27,288 58.3 2.3

注1:EU14、EU12ともに2021年の登録数全体に占める割合が大きい国順とした。なお、マルタについては、ACEAはデータが入手不可能として、統計に含めていない。
注2:ACEAの統計ではBEVの登録台数にはFCEVの台数も含まれるが、FCEVが新車登録全体に占める割合は各国ともゼロに近く、ほぼBEVと考えられる。
注3:2020年のブルガリアのBEVの割合については、ACEAはデータを公表していない。
出所:ACEA資料を基にジェトロ作成

とはいえ、EU14でもBEVの普及状況は一様ではない。ドイツのシュミット自動車リサーチ(以下、シュミット)によると、EU14にEU域外の4カ国(ノルウェー、アイスランド、スイス、英国)を加えた西欧18カ国では、2021年のBEVの新車登録台数は119万741台(新車登録全体の11.2%)だった。このうち約7割は、同社が「FUNG市場」(注5)と呼ぶ、フランス、英国、ノルウェー、ドイツの4カ国での登録だった。一方で、EUの4大市場を成すイタリアやスペイン、またギリシャではBEVは増加傾向にあるものの、BEVの新車登録台数全体に占める割合は約2~5%にとどまる。

FUNG市場の中でも、特に目を引くのはノルウェーだ。同国はEUよりいち早く、2025年までに全新車をゼロ排出車とする方針を掲げており、2021年は新車登録台数の64.5%がBEVと、小国ながらも欧州でも特にBEVの普及が進む国となっている(2022年1月14日付ビジネス短信参照)。EU加盟国の中では、2020年と同様にオランダ(19.8%)がトップだった。シュミットによると、同国では登録台数が前年より減ったが、2022年1月から新たに政府の購入支援策が始まるため、消費者が新車購入を先送りしたことなどが影響しているという。

西欧18カ国における主要メーカーグループのBEV市場シェアは、VWグループ(全体の25.0%)、ステランティス(14.4%)、米国のテスラ(14.0%)の順だった。ただし、車種別ではテスラの「モデル3」(13万9,573台、全体の11.7%)が、2位のルノーの「ゾエ」(7万340台)を大きく引き離して首位となり、テスラの好調ぶりがうかがえる。近年、欧州での販売拡大を狙う中国メーカー車のシェアは全体の3.9%だったが、シュミットによると、中国で製造されたテスラ車の輸入が増えたこともあり、中国製のBEVは2021年に全体の18%を占めた。

シュミットは、18カ国の2022年のBEV登録台数は、半導体の供給の回復状況にもよるが、供給不足が年内に解消しないシナリオでは約120万台と予測する。メーカー別では、欧州メーカーは微増にとどまるものの、ドイツの工場での生産が始まったテスラが前年比約1.8倍の約30万台まで伸びるほか、中国メーカーもそのシェアを約6%まで拡大させると予測している。

充電ポイント拡充に大規模投資が必要と訴えるACEA

電動化を推進するにあたって、大きな課題とされるのが充電インフラだ。欧州委は「欧州代替燃料観測所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (European Alternative Fuels Observatory, EAFO)」というウェブサイトを設け、道路運輸部門を中心に、代替燃料の普及状況について情報提供している。EAFOによれば、2021年時点の域内の充電ポイントは約30万基で、そのうち、出力が22キロワット以上の急速充電器は約14%を占めるに過ぎない。また、域内の充電ポイントのほぼ半数はオランダ(29.4%)とドイツ(19.4%)にあり、一部の国に偏在している。

欧州委は「Fit for 55」において、現行指令に代わる、加盟国に直接適用し、拘束力がある設置目標を課すとした代替燃料インフラ規則案を発表した。ACEAは2021年11月に発表した政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(925KB)において、同規則案に基づくと、2030年までの欧州委の設置目標数は約390万基だが、実際には約700万基が必要になる、と主張。改めて欧州委の目標は不十分であり、出力電力や急速充電ポイントの数なども欧州委の想定以上とすべきだとした。

さらに、ACEAは2022年3月に「充電インフラ整備計画書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(5.57MB)」を発表し、乗用車用の充電インフラ整備には1,850億ユーロ、また大型車用なども含めると総額2,800億ユーロ規模の投資が2030年までに必要だとした。ACEAは自動車メーカーだけでなく、充電サービス提供企業やエネルギー関連企業など民間部門からの大規模投資を示唆し、公的部門からの投資にも期待している。

EU理事会は2022年6月、同規則案について、欧州委案の目標数を維持する方針を採択した。ACEAは目標数維持だけでなく、交通量や社会・経済的観点を理由として、加盟国を画一的なルールで縛らず、柔軟性を与えるとしたことに不満を示した。欧州議会は2022年9月に開催される本会議において、議会としての立場を採択する予定で、その後、同規則案も成立に向けたEU3機関による協議が行われることになる。


スウェーデン北部の小村にある宿泊施設のテスラの充電ポイント。
同国もEUの中でBEVの普及が最も進んでいる国の1つだ。(ジェトロ撮影)

2021年は、政治主導でEV普及を推進することをEU域内外に表明したエポックメーキングな1年だった、と言えるが、すでにルノー、ステランティス傘下のオペルやプジョーなどが2030年までに欧州で販売する新車を全てEVとすると表明するなど、メーカー側も対応を加速させている。サプライチェーンの混乱や新車販売の低迷が続くEU自動車市場。2035年に向けて、加盟国によって大きく異なる市場環境などをどう克服していくか注目される。


注1:
マルタについてはデータ入手不可能として、ACEAは統計に含めていない。
注2:
「Fit for 55」については、ジェトロ調査レポート「『欧州グリーン・ディール』の最新動向(全4回報告)」(2021年12月)も参照。
注3:
2020年1月から施行された規則(EU)2019/631では、2030年までに新車からのCO2排出量を、乗用車は37.5%減、バンは31%削減と定めていた。
注4:
ACEAでは、2004年4月以前のEU加盟国(主に西欧諸国)をEU14(ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ベルギー、オランダ、ポルトガル、ルクセンブルク、アイルランド、ギリシャ、オーストリア、デンマーク、フィンランド、スウェーデン)、2004年5月以降の加盟国(主に中・東欧諸国)をEU12(キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア)として分類。
注5:
シュミットでは、フランス(France)、英国(United Kingdom)、ノルウェー(Norway)、ドイツ(Germany)の4カ国を「FUNG市場」としている。
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所
滝澤 祥子(たきざわ しょうこ)
2016年からジェトロ・ブリュッセル事務所勤務。