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進出業種に広がり、投資環境上の留意点も(インド)
モディ首相の地元グジャラート州の日系企業進出動向(2)

2019年6月11日

インドにおいては、西部グジャラート(GJ)州でスズキやホンダ二輪の生産・拡張計画に伴い自動車関連メーカーの進出が相次いでいる(6月11日記事「自動車関連企業の進出加速、直近の販売低迷には懸念も」)。加えて、ユニ・チャームの進出によって日用品メーカーにも裾野が拡大し、ムンバイ~アーメダバード間の高速鉄道事業における日系関連事業者の動きも注目される。連載の後編では、自動車産業中心から、業種の広がりを見せ始めたグジャラート州の投資環境の実態に迫る。

自動車産業以外の企業進出が増加へ

グジャラート州の州都アーメダバードの中心部から北西に位置するマンダル・ベチャラジ地域は、日本企業専用の工業団地を有し、スズキやホンダを中心とした日系自動車産業が集積している。他方で、アーメダバードに程近いサナンドⅡ工業団地への日系企業進出の動きも増えている(図1参照)。

図1:日系企業の進出が多いマンダル・ベチャラジと
サナンド地域
グジャラート州の州都アーメダバードの中心部から北西にはマンダル日本企業専用工業団地(ジェトロがGIDCとともに入居案内・交渉中)があり、スズキやホンダを中心とした日系自動車産業が集積している。 サナンドⅡ工業団地、サナンドⅢ工業団地(グジャラート州産業開発公社(GIDC))はアーメダバード中心部に程近い位置に立地している。

出所:ジェトロ資料「グジャラート州主要工業団地地図」を一部加工

サランドⅡ工業団地には、タタやフォードなど日系以外の自動車メーカーのほか、ボッシュやマキシスなどの自動車部品メーカー、ニベアなどの化粧品メーカー、ネスレ、コカ・コーラといった食品・飲料メーカーなど、外資系企業も含めた約200社が入居する。同工業団地では2018年9月に、ユニ・チャームのインドにおける第3工場が操業を開始した。同社の高原豪久社長はインドビジネスについて、「紙おむつ市場で世界ナンバーワンとなる夢がある。インドでも現地法人設立後は毎年約30%の成長を達成しており、今後も同国における生活の質の向上に貢献していく」と意気込んだ。2019年5月現在、日系企業15社程度が入居しているが、同社工場の進出に合わせて、王子製紙、モレスコなど複数の日系サプライヤーが同工業団地への入居を決めており、今後もさらなる進出が見込まれる。

インド随一のインフラ整備状況

グジャラート州が投資先として注目されるのには理由がある。それが、インド随一とも言われる充実した基礎インフラだ。2014年まで10年以上にわたり、グジャラート州で州首相を務めていたナレンドラ・モディ首相が、ビジネス環境整備に重きを置き、道路や水、電気といった基礎インフラ整備に注力したのだ。グジャラート州産業開発公社(GIDC)が開発する工業団地内では「瞬間停電は年に2、3回程度しかない」(日系自動車部品メーカー)ため、ほとんどの日系企業は工場敷地内に工場全体をカバーするフルバックアップの自家発電設備を設置せず、基本的には一部の機械や執務スペースに限って設置するのみで対応可能という。他州ではフルバックアップが必須のケースが多く、同州進出では初期投資コストを安く抑えられる点は魅力だ。

物流インフラもグジャラート州の強みといえる。同州の主要都市と主要工業団地はデリーとムンバイを結ぶ国道8号線(NH8)沿いに立地しており、日系企業のほとんどがいずれかの工業団地に入居している(図2参照)。また、同州西部に位置し、アラビア海に面するカンドラ港やムンドラ港といった主要港への道路や貨物列車、さらに内陸コンテナデポ(ICD)などの輸送網が整備されており、サプライチェーン構築は容易だ。

図2:デリーとムンバイ間に立地するグジャラート州
主要工業団地と主要港の立地
グジャラート州の主要都市と主要工業団地はデリーとムンバイを結ぶ国道8号線(NH8)沿いに立地している。 同州西部には、アラビア海に面するカンドラ港やムンドラ港といった主要港がある。

出所:CraftMAPを基にジェトロで加工

さらに、州政府が外国企業誘致に積極的である点も好材料だ。2年に1度開催される、州主催の外国投資誘致イベント「バイブラント・グジャラート」は、2003年にモディ州首相(当時)が他州に先駆けて開始し、今では世界100カ国以上から国家元首や最高経営責任者(CEO)ら数万人が来場する国際的なビジネスサミットに成長した。同イベントの主催者でもあるGIDC内には、日本企業専用窓口「ジャパンデスク」が設けられており、インド人スタッフ2人が常駐する。日系企業からの工業団地入居相談対応や、進出決定後の各種許認可手続きの窓口紹介などを行っている。

GJ州で進む交通インフラ整備も関連企業の進出を後押し

グジャラート州では、アーメダバード・メトロやインド高速鉄道事業など、日本企業が参画する交通インフラプロジェクトも進行中だ。アーメダバード・メトロのフェーズ1は2019年3月、一部区間で開通した(2020年6月に全線開通の予定)(2019年03月29日付ビジネス短信参照)。同メトロの整備事業には、国際協力機構(JICA)による円借款が供与されており、施工監理コンサルタントとしてオリエンタル・コンサルタンツ、信号システムと自動料金収受(AFC)システムの納入は日本信号が担当する。また、日本の新幹線方式を採用するムンバイ~アーメダバード間の高速鉄道事業が2018年に着工し、インド独立75周年を迎える2022年までに一部開通、2023年に全線開通を目指している。高速鉄道事業では、州南部バドダラに建設された運転・保守研修施設内のスラブ軌道実習線の建設などで、日系建設会社コンソーシアムが参画した。2019年3月15日から、土木工事の実施事業者選定に関する入札が始まるなど、複数の入札案件が相次いで公示されている。今後、受注した日系サプライヤーの現地での生産も見込まれるほか、本プロジェクトに従事するため、アーメダバードなどに拠点を設立する日系企業も増える可能性がある。

人材不足が課題、官民が連携して育成に力

投資環境上の課題もある。その1つが人材不足だ。州政府は現地雇用に関するガイドラインを作成し、従業員のうち同州出身者を85%以上雇用するよう求めているが、同州ではここ4~5年で急速に自動車産業の集積が進み、州内に各企業の採用要件を満たす経験のある人材が少ない。現地に進出する日系自動車部品メーカーは「ワーカーのソフトスキルが低く、勤務時間順守といった労働倫理から教育する必要があり、まとめて採用するのが難しい」と漏らす。さらに、マネジメント層が不足していることにも言及し、「(マネジメント層を)デリーやムンバイから採用している」と語る。こうした人材不足に対応するため、日印両国政府連携の下、スズキや豊田通商が州内で設立した「日本式ものづくり学校(JIM)」を通じて、産業人材育成に貢献している。州政府もグジャラート州内ワーカーのスキルアップや雇用拡大に向けた施策を協議中であり、今後、具体的な取り組みが期待される(詳細は2019年4月26日付地域・分析レポート参照)。

日本人の生活環境にも留意点あり

駐在する日本人にとっては、グジャラート州における生活環境も重要だ。当地での生活には留意点がある。第1に同州が禁酒州であることだ。酒類は「パーミット制」で、一定量まで酒店での購入は可能だが、街中の飲食店での飲酒はできない。もう1つが菜食主義者(ベジタリアン)の多さだ。同州では、肉や魚、卵などを食すノン・べジタリアン向けの食材が購入できるスーパーは限られている。州内で購入できる日本食材はしょうゆやのり、豆腐、うどん・そばなど非常に限定的だ。最後に医療環境だ。アーメダバード市内には国際標準の病院が複数あるが、日系企業が工場を構えるマンダル・ベチャラジ地域には設備の整った病院がない。

こうしたことから、駐在員に対する各種手当、日本食送付サービスや買い出し出張、さらに定期的な健康診断を目的とした一時帰国など、福利厚生面での配慮が求められる。また、当地では日本人1人体制で顧客開拓や生産管理など事業運営を担っているケースも多く、業務面・精神面での負担も大きくなっている。そのため、多くの日系企業は、本部から総務担当者を定期的に現地に派遣して、駐在員の現状把握やケアに努めるとともに、会社としてバックアップできる点がないか、常に情報収集を行うなど管理面での配慮も求められる。

モディ首相の地元グジャラート州の日系企業進出動向

  1. 自動車関連企業の進出加速、直近の販売低迷には懸念も(インド)
  2. 進出業種に広がり、投資環境上の留意点も(インド)
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所
丸崎 健仁(まるさき けんじ)
2010年、ジェトロ入構。ジェトロ・チェンナイ事務所で実務研修(2014年~2015年)、ビジネス展開支援部、企画部海外地域戦略班(南西アジア)を経て、2018年3月よりジェトロ・アーメダバード事務所勤務。
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所長
北村 寛之(きたむら ひろゆき)
2004年、ジェトロ入構。総務部経理課、ジェトロ大分、企画部事業推進班(東南アジア・南西アジア)、ジェトロ・ニューデリー事務所(アーメダバード駐在)を経て、2017年11月より現職。

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