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「中欧班列」で中国から欧州へ
欧州、そして東南アジアへ、広まる物流ルートの選択肢(5)

2019年4月17日

中国西部地域から欧州へ鉄道を利用した貿易が拡大している。2011年に重慶とドイツ・デュースブルク間で「中欧班列」の運行が開始されて以降、運行本数は急激に拡大し、海上輸送、航空輸送に次ぐ第3の輸送モードとして認知度が高まってきた。中国内陸部から欧州を陸路で結ぶ最新の物流事情を紹介する。

中国全体では鉄道輸送は限定的も、内陸部で拡大

表1は中国における輸送モード別貿易額の推移を示したものだ。2017年の貿易額(輸出入の合計)は4兆692億ドルと、2010年比で36.9%増加した。モード別では、海上輸送が62.8%、航空輸送が18.9%を占め、これら2つで全体の8割を超えた。鉄道は2010年比50.2%増と全体の伸び率を上回ったものの、全体に占める割合は1.1%で、海上輸送、航空輸送と比べると、鉄道を利用した貿易は中国全体では限定的といえる。

表1:中国における輸送モード別貿易額の推移(単位:億ドル、%)
輸送モード 2010年 2017年
貿易額 構成比 貿易額 構成比
海上輸送 19,488 65.6 25,563 62.8
航空輸送 4,853 16.3 7,701 18.9
鉄道輸送 293 1.0 440 1.1
その他 5,089 17.1 6,988 17.2
貿易総額 29,724 100.0 40,692 100.0

出所:Global Trade Atlasを基にジェトロ作成

一方、中国内陸部の重慶や成都の貿易推移をみると、状況は大きく異なる。重慶と成都の鉄道輸送(2017年)は貿易全体のそれぞれ7.4%、6.9%を占め、2010年の0.8%(重慶)、1.3%(成都)と比べると大きく拡大している。2010年との比較で重慶は約52倍、成都は約19倍となった(表2参照)。

表2:重慶・成都における輸送モード別貿易額の推移

重慶(単位:100万ドル、%)
輸送モード
(重慶)
2010年 2017年
貿易額 構成比 貿易額 構成比
海上輸送 7,348 83.2 21,283 40.9
航空輸送 1,346 15.2 24,904 47.9
鉄道輸送 74 0.8 3,867 7.4
その他 63 0.7 1,941 3.7
貿易総額 8,831 100.0 51,995 100.0
成都(単位:100万ドル、%)
輸送モード
(成都)
2010年 2017年
貿易額 構成比 貿易額 構成比
海上輸送 3,726 24.5 9,647 17.2
航空輸送 10,956 72.1 41,652 74.2
鉄道輸送 204 1.3 3,886 6.9
その他 316 2.1 980 1.7
貿易総額 15,203 100.0 56,166 100.0

注:重慶および成都税関による貿易額を集計。
出所:Global Trade Atlasを基にジェトロ作成

「中欧班列」で西部地域から欧州へ

中国と欧州を結ぶ貨物鉄道「中欧班列」は、2011年に重慶とドイツ・デュースブルク間で運行を開始し、現在は重慶に加え、成都や西安、鄭州、武漢など、そのルートを大きく拡大している。開設当初、年間わずか17本だった運行本数は、2018年には6,300本となり、同年末までの累計で1万2,937本に達している。

重慶で鉄道を利用した貿易をみると、ドイツが輸出で58.3%、輸入で47.2%を占め、最大の貿易相手国となっている。貿易収支については、表3のとおり、中国からドイツへの輸出19億4,400万ドルに対し、輸入は2億5,100万ドルと、中国側の圧倒的な輸出超過になっている。重慶からドイツへは、主に携帯用の自動データ処理機械(HSコード:847130)、印刷機や複合機(844331)などが輸出されており、輸入については、麦芽エキス・穀粉・ミール(190110)、チェーンスプロケット・その他の伝動装置の構成部品(848390)、ギヤボックス部品(870840)などが上位を占める(表3参照)。

表3 :重慶の対ドイツ輸出入(鉄道)の推移

輸出(単位:100万ドル、%)
HSコード 品目名 2010年 2017年
輸出額 構成比
8471 自動データ処理機械、ユニット、磁気式読取機等 0 1,525 78.4
8443 印刷機、プリンター、複写機、ファクシミリ 0 168 8.7
8517 電話機、携帯電話、無線電話 0 36 1.9
8409 エンジン部品 0 11 0.6
8414 気体ポンプ、真空ポンプ、気体圧縮機等 0 10 0.5
その他 0 195 10.0
輸出総額 0 1,944 100.0
輸入(単位:100万ドル、%)
HSコード 品目名 2010年 2017年
輸出額 構成比
1901 麦芽エキスならびに穀粉、ミール、でん粉または麦芽エキスの調製食料品等 0 30 12.1
8708 自動車部品 0 27 10.9
8483 ギヤボックス、変速機、トルクコンバーター等 0 24 9.6
8703 乗用自動車、自動車、ステーションワゴン、レーシングカー 0 23 9.3
7318 鉄鋼製のねじ、ボルト、ナット等 0 14 5.4
その他 1 132 52.8
輸入総額 1 251 100.0

注:重慶税関による貿易額を集計。
出所:Global Trade Atlasを基にジェトロ作成

成都の鉄道貿易については、オランダが輸出で43.9%、ドイツが輸入で38.4%を占めている。表4のとおり、成都からオランダへの輸出は14億8,600万ドル、ドイツから成都への輸入は1億9,200万ドルとなっている。成都からオランダへは、(携帯用を含む)自動データ処理機械(HSコード:847130、847150)、モニター、ビデオプロジェクター、テレビジョン受像機器(852859)などが主に輸出されている。ドイツからの輸入については、遠心分離機(ろ過用、清浄用)(842121)、紡織機(844520)、糸巻機(844540)などが上位を占めている。

表4:成都の対オランダ(輸出)およびドイツ(輸入)(鉄道)の推移

輸出(単位:100万ドル、%)
HS
コード
品目名 2000年 2005年 2010年 2015年 2017年
輸出額 構成比
 8471 自動データ処理機械、ユニット、磁気式読取機等 0 0 0 76 1,399 94.2
 8528 モニター、ビデオプロジェクター、テレビジョン受像機器 0 0 0 0 40 2.7
 8543 電気機器、粒子加速器、信号発生器、電気めっき用機器 0 0 0 0 5 0.3
 8711 モーターサイクル、バイク、自動二輪車等 0 0 0 0 4 0.2
 9405 ランプ、照明器具、サーチライト等 0 0 0 0 2 0.2
その他 0 0 0 0 36 2.4
輸出総額 0 0 0 76 1,486 100.0
輸入(単位:100万ドル、%)
HS
コード
品目名 2000年 2005年 2010年 2015年 2017年
輸出額 構成比
 8445 紡績準備機械、精紡機、合糸機等 0 0 0 0 36 18.9
 8421 遠心分離機、液体ろ過機、気体ろ過機、清浄機 0 0 0 0 34 17.9
 7409 銅の板、銅のシート、銅のストリップ 0 0 0 0 14 7.4
 8708 自動車部品 0 0 0 2 10 4.9
 8403 セントラルヒーティング用ボイラー 0 0 0 0 8 4.4
その他 3 3 1 0 89 46.5
輸入総額 3 3 2 3 192 100.0

注:成都税関による貿易額を集計。
出所:Global Trade Atlasを基にジェトロ作成

大きく短縮されるリードタイム

表5は、「中欧班列」による主な輸送ルートの所要日数をまとめたものだ。中国と欧州の各都市間のリードタイムはおおよそ2~3週間程度といったところだ。通常、成都や重慶などの中国内陸部から長江を内航船で運ぶのに2~3週間必要で、さらに上海から欧州までの海上輸送日数を加えると2カ月近くかかる。それらを踏まえると、「中欧班列」が開通したことで、リードタイムは大幅に縮減されたといえる。

表5 :中欧班列による主な輸送ルートの所要日数(単位:日)
ルート 所要日数
中国の都市 欧州の各都市
東莞 ハンブルク 20
瀋陽 ハンブルク 19
長沙 ブダペスト 18
西安 ハンブルク 18
義烏 プラハ 18
蘇州 ハンブルク 16
厦門 ポツナン 16
鄭州 デュースブルク 16
成都 ウッチ 15
重慶 デュースブルク 15
武漢 ハンブルク 15
連雲港 アルマトイ 12

注:FCLの場合。
出所:日本通運提供資料

多くの日本企業にとって、中国から欧州への輸送モードは海上輸送が多い。船便では顧客の指定納期に間に合わない場合に限り、航空輸送に切り替えるのが一般的だ。しかし、船便と航空便の輸送日数の差が大きく、船便と航空便の中間ニーズを満たす輸送モードは、かつて存在しなかった。2011年に「中欧班列」が運航を開始したことは、「船便では顧客の指定納期に間に合わないが、高い輸送費を支払って航空便にするほど急ぎではない貨物」を運ぶニーズに合致しているといえる。

日本通運が経済産業省委託事業として実施した「平成30年度質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(チャイナ・ランド・ブリッジの利活用推進に向けたハード・ソフト面の改善のための調査)」によると、「中欧班列」の実証事業として、実際に中国から欧州へ貨物を輸送した日系企業からは「中国から欧州向け部材供給は、通常、海上輸送を利用しているが、毎年、大なり小なり突発的にやむを得ず航空輸送を利用するケースがある。今後、同様のケースが発生した場合、輸送手段の1つとして鉄道輸送も加えられると思う」とのコメントがあった。また、鉄道輸送時の物流品質についても、「鉄道輸送時の振動を気にしていたが、心配するレベルではなく安心した」とのコメントがあった。このように、輸送日数の短縮、物流品質の確保については、おおむね日本企業からの評価を得ている状況にあるといえるだろう(注)。

一方、運行の定時性については、ルートによっては予定日数を超過して到着する便も見受けられるため、こうした事情も十分考慮した上で、納期管理を徹底することが重要であろう。

日本企業による利活用が広がる可能性

現在、「中欧班列」は欧州と中国沿海部の各都市をも結ぶ。中国内陸部に進出する日系企業が製造する製品を欧州に鉄道で運ぶだけでなく、日本で製造したものを、日本の港から上海などの沿岸部まで海上輸送、あるいは日本の空港から中国内陸部の都市に航空輸送し、そこから鉄道に積み替えて欧州各地に運ぶルートも考えられる。ある中国の物流企業が提供するサービスによると、日本の各港湾(門司、神戸、大阪、名古屋、東京、横浜)から厦門(アモイ)まで3~6日で結び、鉄道に積み替え、厦門からデュースブルクまで15日で運ぶルートも誕生している。日本から欧州まで、おおよそ3~4週間で結ぶ。通常、日本の港から欧州まで船便で40~50日かかると言われているため、2~3週間程度の納期短縮になりそうだ。現在、日本の物流会社でもこうしたサービスを提供しているところもあり、今後は船便、航空便、鉄道便の複合ルートの利活用が広がる可能性が高い。

図:欧州と日本をつなぐ輸送ルート
日本と欧州をつなぐ輸送ルート。日本から中国沿岸部まで海上輸送し、沿岸地域から中国内陸部、中央アジアを経由し欧州へ運ぶ。

出所:ジェトロ作成

近年の日本企業による生産工程は、複数国をまたいで行うことが多い。「中欧班列」により輸送の選択肢が増えたことで、サプライヤーは顧客に対し、物流会社は荷主に対し、商品の種類やロット、納期、コスト等の組み合わせで、多様な提案をできるようになった。「中欧班列」は日本企業によるグローバルなサプライチェーンを下支えする存在となる可能性を秘めている。


注:
コメントは「中国欧州間鉄道利活用促進に向けたシンポジウム」~日中第三国市場協力の推進~(2019年3月12日開催)資料より抜粋。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課 課長代理
水谷 俊博(みずたに としひろ)
2000年、ブラザー工業入社。2006年、ジェトロ入構。ジェトロ・ヤンゴン事務所勤務(2011~2014年)。ジェトロ海外調査部アジア大洋州課(2014~2018年)を経て現職。

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