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西アフリカ物流実走調査(1)
カギ握るナイジェリアの状況改善

2018年12月26日

アフリカ最大の商都、ナイジェリアのラゴスと、西アフリカで人口2番目のガーナの首都アクラ。これら両都市を結ぶ大西洋ギニア湾沿いの回廊は、将来の域内物流ネットワークの基幹として注目される。ジェトロは2017年、阪急阪神エクスプレスとともにこの区間を実走し、物流状況を調査した。6回にわたって報告する。

アフリカでは珍しい横断型回廊

ラゴス~アクラ間の幹線道路は、ラゴスからコートジボワールのアビジャンに至る全長約1,000キロの「アビジャン~ラゴス回廊」の東側約半分に該当する。西アフリカ沿岸部の主要都市を通過する同回廊は域内随一の交通量があり、域内経済統合に果たす役割の拡大が期待される(各国の主要指標は表1参照)。その重要性から、国際協力機構(JICA)が支援してガーナ政府が策定した「西アフリカ成長リング回廊」マスタープラン(注1)でも優先的回廊の1つに位置付けられている。

表1:調査ルート沿線国および周辺国の主要経済指標(2017年) (△はマイナス値)
公用語 人口
(千人)
名目GDP
(百万ドル)
1人当たり
GDP(ドル)
実質GDP
成長率(%)
経常収支
(百万ドル)
ナイジェリア 英語 188,686 376,284 1,994 0.8 9,289
ベナン フランス語 11,125 9,238 830 5.6 △ 869
トーゴ フランス語 7,801 4,767 611 4.4 △ 391
ガーナ 英語 28,278 47,032 1,663 8.4 △ 2,125
ニジェール フランス語 18,758 8,253 440 5.2 △ 1,092
ブルキナファソ フランス語 18,935 12,569 664 6.4 △ 1,038
マリ フランス語 18,893 15,318 811 5.3 △ 951
コートジボワール フランス語 24,960 40,360 1,617 7.8 △ 490
注:
推計値。ただしナイジェリアの名目GDP、実質GDP成長率、経常収支は確定値。
出所:
IMF, World Economic Outlook, April 2018

アフリカの回廊は、港のある国から内陸国への片荷輸送に利用される長距離のものが一般的だが、この回廊はそれら典型的なものとは異なり、5カ国の主要港湾が含まれ、沿岸部を通過する。現在2,300万人ほどの沿線都市部の人口は、2040年には6,500万人程度まで増加するとみられ、これら都市間での物流需要も増大することが見込まれる。

このうちラゴス~アクラ間は全長約480キロ(図1、表2参照)。ナイジェリア、ベナン、トーゴ、ガーナの4カ国にまたがり、ラゴス、コトヌ、ロメ、テマの4港を貫く。比較的距離も短く、今後国境や道路が整備されれば物流量が大きく増加し、短時間での大量輸送に道が開ける。また主要港を含む横の連結回廊であることから、他のアフリカの回廊に共通する片荷の問題が解消される可能性もあり、輸送コストの低下も期待できる。

しかし、課題も山積している。港湾や道路などインフラの未整備に加え、通関業務の効率性や税関職員らによるハラスメントなどの障壁は輸送コストに直結する。ヒアリングしたロメの物流会社によると、ロメ港からラゴスまでフィーダー船による海上輸送で貨物を運ぶと数百ユーロだが、トラックで陸送すると1,500ユーロ以上かかる場合もあるという。

こうした課題を確認することに加えて、内陸国への物流の実態も把握するため、3つの国境とコトヌ、ロメ、テマの3港を中心に調査を行った。

  • 図1:調査ルート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(出所:「Google マップ」を基にジェトロ作成)
表2:主要通過ポイント間の距離(―は値なし)
ポイント 都市・集落 道路 前のポイントからの距離(km)
ナイジェリア 1 Apapa A1, Lagos-Badagry Expressway
2 Agbara/Morogbo Lagos-Badagry Expressway 37.6
3 Seme (ナイジェリア側) Lagos-Badagry Expressway 46.1
ベナン 3 Krake (ベナン側) RNIE 1
4 Cotonou 31.9
5 Ouidah 43.7
6 Hillah Condji (ベナン側) 60.5
トーゴ 6 Sanvee Condji (トーゴ側) N2
7 Lome (トーゴ側) 52.7
ガーナ 7 Aflao (ガーナ側) N1
8 Sogakope 77.8
9 Tema 94.8
10 Accra 30.4
合計距離 475.5
注1:
ポイントの数字は、「図1:調査ルート」の数字に対応。
注2:
ポイント3、6、7は、国境の検問所を境に地名が異なる。
出所:
筆者作成

ラゴスの渋滞は長引く懸念

ラゴス中心部を出発し、回廊の起点のラゴス・バダグリ・エクスプレスウエーに入るとまもなく、道が混み始めた。渋滞はすぐに激しさを増し、ナイジェリア最大の港であるラゴスのアパパ港から同幹線道路沿いに約24キロの距離にあるラゴス州立大学を過ぎるまで、2時間を要した。

渋滞の原因は、平日午前のラゴス中心部への通勤車両、道路工事、沿道の青空市場への買い物客などだ。特に工事によって片側通行や未舗装区画が生じている区間は影響が大きく、通勤車両がほとんどない週末でも激しい渋滞が珍しくない。今回走行した全行程のうち、道路状況と渋滞が最も悪かったのはこの区間だ。

完工後の改善は見込まれるが、2010年の着工以来、工事は大幅に遅れている。長期にわたり劣悪な道路状況が続いているアパパ港周辺など、ラゴスでは整備されずに放置されている基幹道路も珍しくない。良好な道路状態の維持も課題で、さらに市場周辺の混雑は今後も続く可能性がある。この区間の移動は、長期的に見ても最大の難所の1つとなりそうだ。

ラゴス州立大学から15キロほど進んだアグバラ/モログボ地区に達すると混雑はなくなり、同地区からベナン国境のセメまでの46キロを1時間弱で走行した。片側2車線と1車線の区間がある。舗装はおおむね問題ないものの、穴が開いている路面も散見され、重量物を搭載している場合はパンクなどに注意が必要だ。

同地区以降、警察、入国管理局、連邦道路安全委員会などの検問が散見されたが、走行中に停車を求められることはなかった。他方、ナイジェリアに入国する反対車線には、入国管理局以上に税関の検問が目立った(注2)。


アパパ港とラゴス州立大学の中間地点。渋滞が激しい(撮影:ジェトロ・阪急阪神エクスプレス)

アグバラ/モログボ地区を抜けた辺りの路上。穴が散見される(撮影:ジェトロ・阪急阪神エクスプレス)

ナイジェリア向け貨物の大半が国境で積み替え

ベナン国境の街セメ(ベナン側の呼称はクラケ)で、ナイジェリア税関セメ支署を訪問し、支署長ほか幹部から輸出入や通関の状況を聞いた。同支署には740人の職員がおり、24時間態勢で通関や警備などの業務を行っているという。

同支署によると、ナイジェリアからベナンへのトラックの通行量は、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)貿易自由化計画(TLS)に基づく取引(注3)と小口輸送を除いて、月に平均180~200台ほど、ベナンからナイジェリアへは250~270台ほどが往来しているという。

国境のセメを通過するナイジェリアからの主な輸出産品は、セメントやゴム製品、食品・飲料、衣料品、洗剤などの日用品、セラミック製品など。ダンゴテ・セメントなど地場資本のほか、ネスレ、ユニリーバ、PZカッソンズ、ブリティッシュ・アメリカン・タバコなど欧米の消費財大手が陸送を行っている。

一方、ナイジェリアへの輸入はコメや中古車などが主だったが、ナイジェリア政府は国内産業保護や密輸防止などを名目に、近年いずれも陸路での輸入を禁止した。しかし、国境を越えたベナン側の道路沿いではコメを販売する商店が目立った。ニジェール経由の密輸ルートのみならず、引き続きセメの国境周辺からも税関の目をかいくぐってコメなどが流入していることがうかがわれる。

国境沿いの道路に隣接するベナン側の私有地には大量のトラックが停車しており、作業員が荷物の積み替えを行っていた。「アトラス・パーク」と呼ばれる一画だ。ベナンの物流業者によると、ナイジェリア向け貨物の9割近くがここで積み替えられるという。ナイジェリアは賄賂の要求などのハラスメントが周辺国に比べて抜きんでて多く、輸出入手続きも煩雑であることから、国境をまたぐ輸送業者が少ないためだ。またナイジェリアではコンテナを荷台に溶接したトラックしか通行を許可していないため、制度面の影響もあると考えられる。

国境管理の合同施設を建設

税関支署から数百メートルの幹線沿いの敷地に、高さ制限4.7メートルのコンテナ・スキャナーが設置されていた。税関職員によると、輸入貨物は全てここで検査されるというが、管理室のサーバーは電源が入っておらず、実際はほぼ全量が職員による手動検査となっていると思われた。

将来に向けた動きもあり、国境には両国の税関や入国管理局などが入居する合同施設が新たに建設されていた。ECOWASと西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)(注4)がアフリカ開発銀行やEUなどの支援を得て推進している国境管理合同施設の1つだ。建物は完成しているものの機材はまだ納入されておらず、開業していなかったが、運用が始まれば通関時間の短縮が期待される。

調査員はこの後、国境のセメを越えて訪問した先々で、ナイジェリアの物流が最大の難関という評価を聞くことになった。セメまでの調査でも、整わない道路事情や激しい渋滞、貨物検査の現実などから、こうした評価が当てはまることが確認できた。他方で国境管理合同施設の建設など前向きな動きも見逃せず、西アフリカ随一の市場というナイジェリアの特性も考えれば、陸送による国境貿易がいずれ拡大していくことは間違いなさそうだ。


合同国境管理施設。建物は完成しているが、設備の導入はこれから
(撮影:ジェトロ・阪急阪神エクスプレス)

注1:
ブルキナファソ、コートジボワール、ガーナ、トーゴの4カ国にまたがる3つの回廊(アビジャン~ワガドゥグ回廊、アクラ~ワガドゥグ回廊、ロメ~ワガドゥグ回廊)によって構成され、内陸国にとって物流上の動脈としての役割を担う。
注2:
今回の調査では、ラゴスからアクラまでの片道のみ陸路で調査した。反対路線の検問の状況などは調査していないが、2017年5月下旬にベナンのコトヌからラゴス中心部まで乗用車で走行した際は、セメから20キロほどの間で税関職員に3回停車を求められ、車両に対する関税納付証明書の提示などを要求された。検問での不正な金銭の授受は、物流費用の確定が難しい要因の1つでもある。
注3:
所定の要件を満たす品目は、ECOWAS事務局と各国政府から承認を得ることにより、加盟国へ無関税で輸出できる。詳しくは西アフリカ物流実走調査(5)を参照。ECOWAS加盟国はベナン、ギニア、ニジェール、ブルキナファソ、ギニアビサウ、ナイジェリア、カーボヴェルデ、コートジボワール、セネガル、ガンビア、リベリア、シエラレオネ、ガーナ、マリ、トーゴの15カ国。
注4:
フランス語を公用語とするギニアビサウ、コートジボワール、セネガル、トーゴ、ニジェール、ブルキナファソ、ベナン、マリの8カ国が加盟。共通通貨、西アフリカCFAフランを採用する経済ブロック。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所 次長
宮崎 拓(みやざき たく)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ・ドバイ事務所(2006~2011年)、海外投資課(2011~2015年)、ジェトロ・ラゴス事務所(2015~2018年)などを経て、2018年4月より現職。

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