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西アフリカ物流実走調査(4)
ハードとソフトの両面で効率化を図るガーナ

2018年12月26日

前回までの3カ国に比べ、ガーナの税関は設備が充実しており、港湾での通関手続きの電子化も周辺国に先駆けて実現した。課題も残るが、港湾や周辺道路などハードインフラの整備も含め、効率化による優位性の確保にはとりわけ熱心だ。

合同国境管理施設は北部に新設

トーゴを出国し、ガーナの入国管理事務所で手続きを終え、隣接するガーナ税関アフラオ支署で話を聞いた。同税関は2017年8月1日から、24時間業務態勢に移行した。形状が分からない混載貨物以外は、コンテナ・スキャナーで検査する。一般貨物は月曜~土曜日に検査を行うが、再輸出用の自動車は日曜日も検査しているという。ただ、スキャナー操作室の民間事業者の担当者によると、スキャナーでの検査は日曜を除く午前8時~午後10時に限られているという。

同支署長によると、ガーナからトーゴへの貨物の方が、その逆よりも多い。トーゴに向かう貨物のうちタイルは、ガーナ西部のタコラディにある中国企業の製品が多いようだ。トーゴからの貨物は、セメント、中古自動車などが多いという。これに冷凍鶏肉を加えた3品目で、同支署の関税収入の8割近くに達するという。

業務上の課題は、国境監視が困難なことと、不安定なシステムだ。同支署の管内では4つの税務署に255人の職員が勤務しているが十分ではなく、また長い国境に沿った道路網も充実していないという。システムは、悪天候などの影響で停止することもしばしばだ。トーゴ/ガーナ国境間は、市街地にあるアフラオの施設は拡張余地が乏しいことから、アフラオから北西に約29キロ、ロメ港から市街中心部を迂回(うかい)して約38キロの地点にあるノエペに、合同国境管理施設を設置することになった(図1参照)。建設工事は終わったが、機器の据え付けはめどが立たず、開業予定時期も未定という。

通関手続きを全面電子化、混乱も残る

アフラオ国境からテマまでは170キロ余り。ベナンとトーゴの海岸線の総延長とほぼ同距離だ。アフラオ国境で、トーゴの国道2号線(N2)からガーナの国道1号線(N1)に名を変える。

N1は、ブルキナファソに源流を持つボルタ川の河口に広がるデルタ地帯を迂回して走る。川の手前のソガコペまで78キロ、そこからテマまで95キロ、双方それぞれ約1時間半の道のりだ。

これまでの行程との最大の違いは、警察の検問の多さだ。アフラオから数キロの集落トコール付近から始まり、ソガコペとテマの中間地点付近に至るまで、警察検問は9カ所だった。このうち、確認できた限り1カ所で税関の検問が併設されていた。ただし停車することはまれで、何事もなく通り過ぎた検問も少なくなかった。細かな検査は一部に限られ、物流の阻害要因にはなっていないようだ。各集落の手前の路上には減速のための突起(スピードバンプ)があり、これも他の区間では見られなかった。

道路はほぼ片側1車線だが、集落内でも側道が比較的広く取られており、往来する車両は少なく、走行は順調だ。他方、路面は穴が開いているところも散見され、過積載車両の通行が続くと、比較的短期間で路面状況が悪化する可能性もある。

回廊は集落を除く大部分で平原と耕作地を貫いており、テマに近づいても街灯がない区間が多かった。トラックの激しい横転事故が目撃されるなど、夜間や未明の走行には注意が必要だ。

ガーナ最大の港湾、テマ港の8キロ手前の環状交差点(ラウンドアバウト)で、ナイジェリアを離れてから初めて渋滞に遭遇した。N1でアクラ、トーゴを目指す車両と、国道2号線(N2)を通る「東部回廊」でブルキナファソを目指す車両は皆、この交差点を通過する。このため交通量が多く、朝夕は通勤車両も加わって激しく渋滞する。これを解消するため、日本政府の無償資金協力で近年中に立体交差化される予定だ。

2007年に操業開始したテマ港のコンテナターミナルの水深は11.5メートル、年間コンテナ貨物取り扱い容量は120万TEU(20フィートコンテナ換算)。デンマークの海運世界最大手A.P.モラー・マースク・グループとフランスのボロレ・グループの合弁会社が、ガーナ港湾局(GPHA)と共同出資するメリディアン・ポート・サービシズ(MPS)が運営している。建設中の新ターミナルは水深15メートルで、同じくMPSが管理する予定だ。新旧ターミナルを合わせた取扱量は、320万TEU以上となる(注)。

GPHAは2017年9月1日、通関時間の短縮と汚職削減のため、通関手続きを全面的に電子化した。導入から間もなくは運用が混乱していたが、テマの物流会社は「きちんと書類を作る動機付けにもなる。通関に絡む汚職もなくなる」と期待感を示していた。

ただ、2018年になっても混乱は残っており、通関業者などからはかえって手続きが煩雑になったという苦情も聞かれている。こうした批判を受けて、GPHAは同システムの改善に向け、ガーナ歳入庁関税局や関係事業者らと協議を継続している。


ボルタ川を過ぎ、テマに近づいたN1の路上(撮影:ジェトロ・阪急阪神エクスプレス)

日本政府も整備を支援する内陸への回廊

テマ港が手狭なこともあって、港の周辺には多数のデポ(保管所)が並んでいる。内陸国向けのデポもその一角にあり、トラックが往来している。

物流会社によると、テマ港で陸揚げされた貨物のおよそ6~7割が国内向けで、残りは周辺国に向かう。ガーナ西部の主要港で、テマ港に次ぐ規模のタクラディ港もおおむね同じ割合だという。輸出統計を見ると(再輸出は非開示)、対周辺国ではブルキナファソ向けが最も多く、続くマリ、トーゴに大きく差をつけている(表参照)。プラスチック製品などの日用品や食品・飲料、ガソリン、建機、鋼材、肥料などさまざまな物資が内陸を目指して運ばれていく。

テマ港からブルキナファソの首都ワガドゥグまでは、アクラ、クマシ、タマレ、パガ国境を経由する「中央回廊」でおよそ1,020キロ、12日前後の道のりだ(図2参照)。約930キロの東部回廊の方が距離は近いが、未舗装区間が多く、ボルタ川の橋も老朽化していることなどから、現在は中央回廊が主流だ。

東部回廊では、日本政府とアフリカ開発銀行の協調融資で、ボルタ川に新たな橋を建設する計画があり、2016年12月に国際協力機構(JICA)がガーナ政府と円借款契約に調印した。内陸国にとって、沿岸部とのアクセスは国の発展を左右する死活問題だ。ガーナ政府がJICAの支援を得て策定した「西アフリカ成長リング回廊」マスタープランでは、中央回廊を最優先されるべき回廊、東部回廊をその他の優先されるべき回廊、と位置付けている。これらのプロジェクトを通じて、内陸国の発展が加速されることが期待されている。

ガーナの空の玄関、アクラ空港まで、テマの環状交差点からは約20キロだ。アクラのテテ・クワシ・インターチェンジまで片側2車線の道路が続く。日中、特に朝夕は交通量が多く、ところどころにひび割れや穴ができている。交通量の増加に対処するため、ガーナ政府はこの区間を片側3車線に拡張する計画だ。


テマ港周辺のデポの1つ。コンテナが山積みされ、トラックが往来している
(撮影:ジェトロ・阪急阪神エクスプレス)
表:ガーナから周辺国への輸出(2016年)
金額(ドル)
ブルキナファソ 427,310,251
マリ 299,600,191
トーゴ 289,491,731
ニジェール 61,925,064
ナイジェリア 51,866,300
ベナン 34,121,917
コートジボワール 33,403,357
出所:
国連

注:
出所はボロレ・ポーツのウェブサイト。ただしGPHA資料では、現在のコンテナ貨物取扱量は100万TEU、新ターミナル建設後の取扱量は350万TEUとなっている。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所 次長
宮崎 拓(みやざき たく)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ・ドバイ事務所(2006~2011年)、海外投資課(2011~2015年)、ジェトロ・ラゴス事務所(2015~2018年)などを経て、2018年4月より現職。

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