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西アフリカ物流実走調査(2)
アフリカの非公式貿易を象徴するベナン経由の取引

2018年12月26日

人口1,110万人と小さいものの、隣接する巨大市場ナイジェリアや後背地ニジェール、ブルキナファソへの物流拠点として重要な役割を担うベナン。正規の通関手続きを経ない非公式の貿易も活発だ。シリーズ2回目。

ニジェールやブルキナファソへの玄関口

セメ/クラケの国境を通過すると、回廊はナイジェリアのラゴス・バダグリ・エクスプレスウエーから、ベナンの国道1号線(RNIE 1)に名を変える。国境付近は片側1車線だが、その後はベナンの最大都市コトヌに至るまで2車線または3車線が続く。路面状況は良好で、ナイジェリアで散見されたような穴もほとんど見当たらない。検問は国境から数キロの地点に税関のチェックポイントが1カ所あっただけで、コトヌへの移動は極めて順調だった。

ベナンの物流の玄関口はコトヌ港だ。コンテナ船を取り扱うのは、フランス複合企業ボロレ・グループ傘下の企業が運営するベナン・ターミナルと、デンマークの海運世界最大手A.P.モラー・マースクの専用ターミナルの2つ。ボロレの影響力は抜きんでており、現地物流会社によると、最近まで外国物流会社3社がコトヌ港内に保税倉庫を保有していたが、現在はボロレの倉庫のみになったという。


ナイジェリア国境とコトヌの中間地点。RNIE1の路面状態は良好だ
(撮影:ジェトロ・阪急阪神エクスプレス)

ベナンの主な輸入品は、コメ、鶏肉、冷凍魚などの食品やガソリン、自動車など。コトヌ港には、コメなどを積んだ、ばら積み貨物船や自動車運搬船が着岸していた。コメはインド、タイなど、鶏肉は欧州やブラジル、魚はモーリタニア、モロッコ、欧州などが主な輸出元だ。

いずれも国内で消費されるほか、周辺国に再輸出されている。特にニジェールにとって、コトヌは重要な物資供給の拠点だ(表参照)。ここからの内陸輸送は、マランビル~ガヤ間の国境を通過してニジェールの首都ニアメに至る1,000キロ超のルートが主流で、現地物流会社によると所要日数は3、4日程度だという(図1参照)。

ベナンからニジェールへの再輸出は鋼材が太宗を占め、ほかにも自動車や食品、ガソリンなどさまざまな製品が保税で輸出されている。コトヌ港の石油・ガス専用バースには、ベナンのほか、ニジェールとブルキナファソのナンバープレートを付けたトラックが多数停車していた。

表:ベナンから周辺国への輸出と再輸出(ドル)

輸出
相手国 2014年 2015年 2016年 2016年/
2015年
ナイジェリア 48,780,105 39,214,733 27,090,635 69.1%
ニジェール 57,480,815 59,946,059 24,686,673 41.2%
ブルキナファソ 5,433,443 3,782,607 4,561,590 120.6%
トーゴ 19,378,620 10,802,691 14,943,095 138.3%
ガーナ 37,374,056 9,404,360 4,851,499 51.6%
コートジボワール 18,598,169 10,567,719 12,086,088 114.4%
マリ 1,744,855 408,364 587,694 143.9%
再輸出 (―は値なし)
相手国 2014年 2015年 2016年 2016年/
2015年
ナイジェリア 28,113,141 n/a 2,174,031
ニジェール 12,141,663 n/a 6,659,533
ブルキナファソ 3,367,101 n/a 516,983
トーゴ 9,768,728 n/a 3,118,780
ガーナ 28,326,953 n/a 4,423,046
コートジボワール 12,014,944 n/a 4,555,481
マリ 1,209,697 n/a 154,930
出所:
UN Comtrade

極めて活発な非公式貿易

東に隣接する巨大市場ナイジェリアへの輸出は、統計上はガソリンや鉄鋼製品、車両などが目立つ。しかし統計には表れないものの、コメ、冷凍魚、鶏肉などの食品も大量に流出している。ガソリンは価格規制によって、ナイジェリアの方が低価格で販売されているため(注)、むしろナイジェリアからベナンに密輸されているのが現状だ。

国連アフリカ経済委員会やアフリカ開発銀行などの推計によると、こうした非公式貿易はベナンの国内総生産(GDP)の75%に達し、サブサハラ・アフリカ平均の43%を大幅に上回る。ナイジェリアの非公式貿易も、貿易全体の70~80%に及ぶとみられており(英王立国際問題研究所)、両国の経済は水面下で強固に結び付いている。

非公式貿易が活発なのは、域内住民間にある交易の伝統に加え、ナイジェリアの規制や当局によるハラスメントも関係している。規制やハラスメントにもかかわらず、需要があるため、密輸が後を絶たない。ナイジェリアは、国内産業保護と輸入代替のために鶏肉の輸入を禁止しているが、国内生産だけでは需要を賄いきれない。このため、各国から鶏肉が流入しており、主要な密輸ルートはベナンを経由する陸路だ。

ベナン側も、ナイジェリアの動きを利用して、関税・港湾収入などを拡大しようともくろむ。ナイジェリアでは2017年初から陸路での自動車の輸入が禁止されたが、ベナン政府は再輸出される自動車に対する手数料を2017年7月から27%引き下げている(2017年7月17日付「シップ・アンド・ポーツ」電子版)。

ベナンからナイジェリアへの物資の流入は、両国国境の数多くのポイントで行われているが、ナイジェリア北部市場へのアクセスは、ニジェールを通過する北回りルートが主流だ。ニジェールに入国した後、ナイジェリアの国境を沿うようにマラディに向かい、国境を越えてナイジェリア北部の主要都市、カッツィーナ、カノに至る。7日前後の道のりだ(図2参照)。

物流会社によると、このルートでナイジェリアに運ばれるのは、コメが主力だ。ナイジェリアは陸路でのコメの輸入を禁止しているため、ベナンに輸入されたコメは、最終仕向け地をニジェールとして北に向かう。ナイジェリアへの玄関口マラディは、多くのナイジェリア人商人でにぎわっているという。

ナイジェリアからの輸出も、このルートを利用して活発に行われている。2015年以降、ナイジェリアの通貨ナイラが大幅に下落。公定レートと両替商などで扱われる並行市場レートの乖離(かいり)が大きく拡大した時には、平時の農産品などに加えて機械類やオートバイなどもナイジェリアから周辺国に多く流出していた。周辺国で購入するよりも、ナイジェリアで安く調達できるためだ。

ナイジェリアにとって、国内産業を育て、また健全な市場を形成してさらに外国資本を誘致するためにも、密輸対策は不可欠だ。輸入代替を進めようにも、密輸によって安価な原料や製品が流入しては、正規の事業者が競争力を維持できず、市場はゆがんだままになる。しかし、ベナンとナイジェリアの越境取引は、密輸管理がいかに困難かを象徴している。

手狭な国境の手前に多数のトラック

コトヌから西へ向かうRNIE 1は、交通量も路面状況も良好だ。車線は片側3車線から2車線、そして1車線へと狭くなる。

コトヌから約44キロの中間地点ウィダーには、料金所を経て約45分で到着。そこからさらに60キロの道のりを1時間強かけて、トーゴ国境の集落、ヒラ・コンディに至る。なお、コトヌとウィダーの間に位置するパホウからヒラ・コンディまでの約78キロの道路は、近年、アフリカ開発銀行の融資で整備されたものだ。

ヒラ・コンディの手前4~5キロくらいから、道路脇に停車している大型トラックが目立つようになる。そのほとんどが、ナイジェリアの大手財閥ダンゴテ・グループのセメント事業会社、ダンゴテ・セメントの隊列だ。同社のガーナ現地法人の輸送部隊が、ナイジェリアからガーナにセメントを運んでいる。

停車中のトラックの運転手によると、ナイジェリアのラゴスの北に位置するオグン州イベセの工場でセメントを積み込み、セメ/クラケから北にある同州の国境を経て、ベナンに入国。トーゴ税関の通関手続きが完了しておらず、国境前には駐車場もないため、道路脇に停車して待機しているという。イベセからガーナのテマまでは、短ければ3日、長い時には7日ほどかかるそうだ。最も時間がかかるのはナイジェリアを出国する時で、トーゴとベナンはそれぞれ同程度、ガーナ入国が最も容易だと評価していた。


ヒラ・コンディの国境手前で通関を待つダンゴテ・セメントのトラック
(撮影:ジェトロ・阪急阪神エクスプレス)

ヒラ・コンディ/サンビー・コンディ国境は、ベナン側で出国手続きを行った後、数十メートルの緩衝地帯を徒歩で渡り、トーゴの入国管理事務所で手続きをする。片側1車線の緩衝地帯では、物資を抱えた多数の住民が行き来していた。

トーゴ入国管理事務所の50メートルほど先にトーゴ税関サンビー・コンディ支署がある。同税関は、日曜日を除く週6日、朝7時半~夕方6時半まで、通関業務に当たっている。同税関職員によると、貨物の往来はトーゴからベナンへの輸出が、ベナンからトーゴへの輸出を大きく上回るという。ベナンへの主な輸出品は砂糖、冷凍食品、トマトペーストなどで、輸入はセメント、プラスチック製品やせっけんなどの日用品、自動車部品などだ。

ベナン側で見掛けた通関待ちの車列ができる要因の1つは、度々停止する通関システムだ。通関手続きは完全電子化されておらず、一部をインターネット経由で行うが、通信が安定していない。また、コンテナ・スキャナーはなく、国境から8キロ強、ロメ側に進んだ平地にある駐車場で、手作業で検査する。トランジット貨物は封印されていて検査しないが、輸入貨物は原則すべて検査対象となる。

セメ/クラレ国境のように、ヒラ・コンディ/サンビー・コンディ国境でも、両国の合同国境管理施設が新たに建設される計画で、建造物の工事は始まっていた。アフリカ開発銀行によると、施設の稼働後は通関手続きの効率化により、国境通過に要する時間は現在の平均約7時間から2020年には約3時間に改善される見込みだという。


トーゴ側の貨物検査上。コンテナ・スキャナーはなく、すべて実見で行う
(撮影:ジェトロ・阪急阪神エクスプレス)

注:
ベナンのガソリン価格がユーロ換算で1リットル約0.9ユーロであるのに対して、ナイジェリアは0.5ユーロ弱と、大きな差がある。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所 次長
宮崎 拓(みやざき たく)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ・ドバイ事務所(2006~2011年)、海外投資課(2011~2015年)、ジェトロ・ラゴス事務所(2015~2018年)などを経て、2018年4月より現職。

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