外資に関する規制

最終更新日:2025年08月26日

規制業種・禁止業種

米政府は、一般的に、外国による対内直接投資(FDI)を歓迎し、公平に扱うという姿勢である。ただし、国家安全保障上懸念のある国内資本買収案件については、財務省が所管する対米外国投資委員会(CFIUS)が審査する。

対米外国投資委員会(CFIUS)による対内資本買収の審査

米国は、外国からの対内直接投資(FDI)を歓迎するとともに、外国投資家を公正かつ同等に扱う。ただし、いわゆるエクソン・フロリオ修正条項に基づいて、国家安全保障上懸念のある国内資本の買収案件を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)を政権内に持ち、大統領の判断で、案件を拒否することも可能である。CFIUSは、省庁横断で構成される。

エクソン・フロリオ修正条項

大統領に対して、米国の安全保障を害する恐れのある取引を停止または禁止するために、適切な措置を適切な時期に取る権限を与える条項(U.S.C. App. 2170(d)(1))。また、大統領による事実認定および決定内容については、司法審査の対象とならないことも規定している(U.S.C. App. 2170(e))。

案件の提出は、基本的には当事者間の任意となっている。第1段階レビュー(45営業日以内)と、必要に応じて第2段階精査(45営業日以内、さらに15営業日の延長の可能性あり)の手続きを経る。最終的に、大統領の判断で、投資案件を差し止める場合もある。

エクソン・フロリオ修正条項の詳細
Section 2170. Authority to review certain mergers, acquisitions, and takeoversPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(269KB)
出所:政府印刷局(GPO)

CFIUSの権限の強化

2018年8月、トランプ大統領の署名により「2018年外国投資リスク審査現代化法(Foreign Investment Risk Review Modernization Act:FIRRMA)」が成立した。FIRRMAは、審査対象の拡大を中心にCFIUSの権限を強化する内容となっている。
2020年2月13日に施行されたFIRRMAの規則では、米国での事業内容に応じてCFIUSによる審査対象とする取引を従来の外国人による支配的な投資のみならず、非支配的な投資にも拡大すると同時に、一定の条件を満たす不動産取引も審査の対象としている。非支配的な投資のうち、米国の重要技術、重要インフラ、または米国人の機微な個人データに関する取引についても審査対象に含めるよう拡大された。さらに2020年10月には、申告が義務化される場合の判断基準を従来の産業分野(北米産業分類システム(NAICS)上で指定された27分野)に基づくのではなく、投資対象の重要技術を米国外に輸出等する場合に米政府の許可が必要かどうかに変更した。

バイデン政権は2022年9月にCFIUSが重点的にフォローすべき分野・要因を示す大統領令を発表、国内サプライチェーンの強靭(きょうじん)性、マイクロエレクトロニクス、人工知能(AI)、バイオ技術・製造、量子コンピューティング、先端エネルギー、気候適応技術など安全保障に影響を与える分野、サイバーセキュリティー上のリスク、米国人の機微なデータに対するリスクなどを挙げた。10月には財務省がCFIUSによる執行と罰則に関するガイドラインを発表した。法令義務違反になり得る行為として[1]申告または届け出が義務の取引について適時の提出がされなかった場合、[2]CFIUSと合意したリスク軽減措置などに違反した場合、[3]非公式なやり取りを含めてCFIUSに提出した情報に虚偽や不備などがあった場合などを挙げた。罰則のプロセスについては[1]CFIUSは当事者に書面で罰則の通知を行い、[2]当事者は受理から15営業日以内(CFIUSと合意すれば延期可能)に、CFIUSに再検討の申請を提出することが可能、[3]CFIUSは受理から15営業日以内(当事者と合意すれば延期可能)に最終の罰則通知を発行、[4]再検討の申請が期限内に受理されなければ、期限の経過後に最終の罰則通知を発行するという流れとなっている。

2024年11月には、FIRRMA施行以来初となる大型の規則改定を行い、罰則と執行権限を強化した。例えば、CFIUSに通知されていない取引について、CFIUSが当事者などに提出を求めることができる情報の種類を拡大した、当事者の通知内容に虚偽などがあったなどの場合の民事罰適用の範囲を拡大するなどが挙げられる。

2025年2月、トランプ大統領(2期目)は「米国第一の投資政策」と題する覚書を発表、同盟国からの投資を促進する一方、中国を含む「外国の敵対者(foreign adversaries)」との対内・対外投資に規制を課す考えを明らかにした。これを受けて、財務省は同年5月に同盟国からの対米投資案件のプロセスを迅速化する「ファストトラック制度」の試験運用の計画を発表した。

財務省:The Committee on Foreign Investment in the United States (CFIUS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
財務省:CFIUS Laws and Guidance外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
大統領府:America First Investment Policy, Memorandum外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
財務省:U.S. Department of the Treasury Announces Intent to Launch Fast Track Pilot Program for Foreign Investors, Press releases, US Department of the Treasury外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

※このほか、バイデン大統領が2021年6月3日に発令した、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく大統領令により、監視技術分野を含む軍事産業に関わる特定の中国企業に対する米国人による証券投資が禁じられている。

分野別の投資規制

空運、通信、海運、エネルギー、銀行証券・保険等金融機関、不動産、鉱業、国防とエネルギー分野の政府契約企業の8業種に対しては、外国からの対米投資に関する連邦規制が適用されることがある。

商務省:Investor Guide外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
CHAPTER 6: FDI RESTRICTIONSPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(300KB)

財務省による外国資産管理規制

財務省外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control:OFAC)は、外国籍の個人・企業の所有する米国内資産に関する規制を統括している。

業種別規制内容について:財務省 "OFAC Information for Industry Groups外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

また、OFACは、米政府による外国に対する経済制裁の実施権限を有し、近年の制裁対象国と制裁内容の骨子を公表している。対象国は、キューバ、イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリア、ジンバブエ、ベラルーシ、イエメン、ソマリア、リビア、コンゴ民主共和国、ロシア、ベネズエラ、レバノンなど。
さらに、国レベルではなく、個人や組織にも制裁を課す制裁対象分野およびその内容も公表されている。違法ダイヤモンド取引、麻薬、核拡散、テロリズム行為が対象。

財務省:
"Terrorism and Financial Intelligence外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"
"Sanctions Programs and Country Information外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

出資比率

業種規制あるいは国家安全保障にかかわる規制(エクソン・フロリオ条項)によって、外資の出資比率が制限されるケースがある。

前述の「規制業種・禁止業種」の項を参照。
これらの規制業種以外は、現地法人の資本金の100%を外国の法人または個人が所有しても問題はない。

外国企業の土地所有の可否

外国企業(外国人)による土地所有は可能。ただし、FIRRMAの施行により、外国人が空港や港湾また米軍施設に近接する土地等の取得などを行う場合は、条件によって制限の対象になり得る。前述の「CFIUSの権限強化」の項を参照。

資本金に関する規制

資本金について、法的な規制はない。

会社設立での資本金に関する規制は存在しない。
ビザ取得や融資、優遇措置等を受ける場合には、一定額以上の資本金を求められることがある。ビザ取得のためには、資本金は最低10万ドル、できれば20万ドル程度あることが望ましい。

その他規制

外国人が資産を売却した場合の税金関連規制、政府プロジェクトへの参入制限、州による規制、税制上の規制など。

外国人が資産を売却した場合の税金関連規制

外国法人や外国人が米国内で資産(不動産を含む物的財産を指すが、主として土地と物件、または土地や物件の権利の一部も含まれる)を売却した場合、FIRPTA(Foreign Investment in Real Property Tax Act of 1980)に基づき、購入者が当該取引税の納付義務を負う。購入者(法人または個人)またはその代理人、取引責任者は、取引額の15%(外国企業の場合、別の特別規制あり)を差し引いて支払う。

FIRPTAの適用において、購入者が米国居住者であり、かつ当該物件を自分の居住目的として30万ドル以下で購入した場合には源泉徴収義務の例外となる。売却側、購入側の双方あるいはいずれかが、企業組織の場合や、当該物件が信託財産である場合、あるいは不動産投信の取引の場合は26 USC Section1445を参照。

IRS "FIRPTA Withholding, Withholding of Tax on Dispositions of United States Real Property Interests外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

FIRPTAに基づく納税について:
26 USC Section2104PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(156KB)
26 USC Section1445PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(150KB)
出所:政府印刷局(GPO)

州による規制

会社法、税制などが州によって異なる上、州法による様々な外国投資の制限が存在する。一般的には、不動産取得(特に農地取得)、銀行業、保険業などに関する規制がある。

税制上の規制

外資系企業に対する内国歳入庁への報告義務および記録保管義務
外国資本が25%以上の米国法人などは、税法上の理由から、外国の関連会社との取引について内国歳入庁に報告し、また、取引関係の記録を保管することが義務付けられている。報告や記録保管の方法に関しては、極めて詳細な手続きが定められており、規則違反に対しては厳しい罰則が適用される。
Instructions for Form 5472 (12/2024)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
出所:内国歳入庁