外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用
最終更新日:2024年08月16日
- 最近の制度変更
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2024年10月1日
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2024年9月13日
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2024年5月2日
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2024年4月24日
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2024年2月1日
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外国人就業規制
ビザを持たない外国人を雇用する企業は、スポンサー(身元引受人)ライセンスを取得する必要がある。
英国の移民政策は、政府諮問機関である移民助言委員会(MAC)からの提言をもとに政府が決定、実行している。長期的には移民流入を抑制しつつ、優秀な外国人材の積極的な活用を主眼とし、入国管理制度(労働許可付与を含む)の改革を継続している。EU離脱後の移行期間の終了に伴い、2021年1月1日から新制度に移行した。
ビザを持たない外国人を雇用する企業は、スポンサー(身元引受人)ライセンス(Sponsor Licence)を取得する必要がある。ライセンスを取得した企業はビザ取得に必要なスポンサー証書(Certificate of Sponsorship:CoS)を発行できる。ライセンスの有効期間は4年間で、更新可能。期間中、被雇用者情報の厳格な管理等、運用状況が厳しく監督される(スポンサー資格については次の「在留許可」の項も参照)。
- 英国政府:雇用主が取得する英国ビザのスポンサー資格(UK visa sponsorship for employers)
- 英国政府:雇用主と教育者のスポンサー資格のガイダンス(Sponsorship: guidance for employers and educators)
2021年1月1日以降の新制度で、EEAおよびスイスとの「人の移動の自由」が終了し、就労目的で入国するすべての外国人(アイルランド国籍者を除く)は入国前に労働許可を伴う在留許可(ビザ)が必要となった。ビザの種類については次の「在留許可」の項を参照。アイルランド人については、同国民と英国民が相互に自由に往来、居住、就労可能なCTA(Common Travel Area)の枠組みが、英国のEU離脱協定に基づき継続しているためビザは不要。
- 英国政府:新移民制度についてのガイダンス(New immigration system: what you need to know)
- 英国政府:新移民制度の詳細ガイダンス(UK points-based immigration system: further details)
ジェトロの記事「2021年1月導入予定の移民政策の新方針を発表、年収などのポイント制」(2020年2月20日付)
ジェトロ調査レポート「新英国移民制度のガイドブック(2023年1月)」
在留許可
アイルランド国籍者を除くすべての外国人が、英国に就労目的で入国する、就労しなくてもビジネス活動に従事する、就学する、6カ月を超えて滞在する場合、在留許可(ビザ)が必要。
長期の労働ビザはすべてポイント・ベース制(Points Based System: PBS)による審査を経て公平に発給される。従来のようにEEAおよびスイスの国籍者が優遇されることはない。
2021年1月1日以降、ビザの階層分けが撤廃され、アイルランドを除く全ての外国人が対象となり、ビザはポイント・ベース制(Points Based System:PBS)による審査を経て発給されている。発給枠の有無、ビザの有効期間、更新の可否、申請者の所得、学歴、英語力の要件や定住申請、家族の帯同、ビザの種類の変更の可否などの権利はビザの種類によって異なる。各ビザのポイント要件を満たさない労働者にはビザは発給されない。
就労予定の職業が政府の諮問機関の移民助言委員会(MAC)の定める不足職業リストにある場合や職種と関係が深い学術分野での博士号取得者、特に職種と関係が深い科学・技術・工学・数学の学術分野(STEM)の博士号取得者にはポイントが加算される。
ジェトロ調査レポート「新英国移民制度のガイドブック(2023年1月)」
ビザの種類
就労用ビザ
就労を目的としたビザには次のようなものがある。
- 技能労働者ビザ(Skilled Worker visa)
英国定住者で充当できない人材を外国から雇用するためのビザ。高校卒業レベル以上が対象。旧第2階層(一般)に相当し、技能労働者(Skilled Worker)ライセンスを持つ企業が発行するスポンサー証書(CoS)が必要。在留期間は最長5年で、その後は延長申請が可能。在留5年後に永住権(apply to settle permanently)の申請も可能。
英国政府:技能労働者ビザ(Skilled Worker visa)
- シニアまたはスペシャリストワーカービザ(グローバルビジネスモビリティ)(Senior or Specialist Worker visa (Global Business Mobility))
グローバル企業が英国外で採用した人材(シニアマネジャーや専門職である労働者)を駐在員などとして英国内に異動させるためのビザ。旧第2階層(企業内転勤ビザ:Intra-Company Transfer ICT visa)に相当し、ライセンスを持つ企業が発行するスポンサー証書(CoS)が必要。在留期間は年間報酬額により最長5年または9年。永住権の申請は不可。
英国政府:シニアまたはスペシャリストワーカービザ(Senior or Specialist Worker visa)
- グローバルタレントビザ(Global Talent visa)
科学・医学・エンジニアリング・人文科学・芸術・文化・デジタルテクノロジーの分野において、世界レベルの才能をもつ人材向けのビザで旧第1階層Tier 1(突出した才能Exceptional Talent)に相当。政府が指定した機関・団体によって「才能がある」と承認されることがビザ発給の要件。在留期間は最長5年で、その後は延長申請が可能。在留3年後または5年後に、永住権の申請も可能。
英国政府:グローバルタレントビザの申請(Apply for the Global Talent visa)
- 英国拡大労働者ビザ(グローバルビジネスモビリティ)(UK Expansion Worker visa(Global Business Mobility))
外国企業が英国に子会社や支店を設立する目的で、外国(アイルランド以外)から最初の従業員を英国に入国・滞在させる場合などに取得が可能なビザ(以前の単独代表者ビザ Sole Representative)。12カ月間の在留許可が与えられ、さらに12カ月の延長が可能(最大2年間)。永住権の申請は不可。
英国政府:英国拡大労働者ビザ(UK Expansion Worker visa)
- スケールアップ労働者ビザ(Scale-up Worker visa)
ビジネスが大きく成長中と認められた企業が、高スキルの人材を容易かつ迅速に雇用することを可能にするビザ。在留期間は2年間。条件を満たせば延長も可能。5年の滞在後は、永住権の申請も可能。
英国政府:スケールアップ労働者ビザ(Scale-up Worker visa)
- イノベーター創設者ビザ(Innovator Founder visa)
スタートアップビザ(Start-up visa)、イノベータービザ(Innovator visa)に代わるビザ。
政府が指定した機関によって「革新的な起業のアイディアがある」と承認(endorsement)されることがビザ発給の要件。いずれも個人が対象。英語力など要件を満たせば、3年(何度でも延長可、3年以上で永住権の申請も可能)の在留許可が与えられる。- 英国政府:イノベーター創設者ビザ(Innovator Founder visa)
- 英国政府:イノベーター創設者ビザの認定機関(Endorsing bodies: innovator founder visa)
- 国際スポーツ人材ビザ(International Sportsperson visa)
世界最高レベルのエリートスポーツ選手または監督として、政府が指定した機関・団体がスポンサーとなり才能を承認(endorsement)し、英国における競技レベル向上に多大な貢献をすることがビザ発給の要件。在留期間は最長3年で、延長可能。5年以上で永住権の申請も可能。
英国政府:スポーツ人材ビザ(International Sportsperson visa)
短期就労ビザ
以下の就労ビザは期間限定を前提としている。
- 英国高等教育機関卒業生ビザ(Graduate visa)
2021年7月1日に導入された。英国の高等教育機関(大学・大学院)を卒業した外国人学生は、スポンサー不要で英国に滞在し就労できる。学士号、修士号を保持する場合は2年、博士号を保持する場合は3年間のビザが発給される。その後、技能労働者ビザ(Skilled Worker visa)に変更可能。
英国政府:Graduate ビザ(Graduate visa)
- ハイポテンシャル・インディビジュアル(HPI)ビザ(High Potential Individual (HPI)visa)
2022年5月30日に導入された。国際的に有名な大学の卒業生を対象としたビザ。指定の高等教育機関(大学・大学院)を5年以内に卒業した外国人学生は、スポンサー不要で英国に滞在し就労できる。学士号、修士号を保持する場合は2年、博士号を保持する場合は3年間のビザが発給される。その後、技能労働者ビザ(Skilled Worker visa)などに変更可能。
英国政府:ハイポテンシャル・インディビジュアル(HPI)ビザ(High Potential Individual (HPI) visa)
ジェトロの記事「英国、大学ランキング上位校の卒業生向けビザルート導入」(2022年5月31日付)
- 若者の移動に関する制度ビザ(Youth Mobility Scheme visa)
ビザの有効期間開始時に18歳以上、申請時30歳以下の者を対象にしており、在留期間は最長2年、延長は不可。
英国政府:若者の移動に関する制度ビザ(Youth Mobility Scheme visa)
この他にも、慈善団体関係者ビザ(Charity Worker visa)、宗教関係者ビザ(Religious Workers visa)、政府認定人材交換プログラムビザ(Government Authorised Exchange visa)、国際協定に基づく職務従事者ビザ(International Agreement visa)などがある。滞在が可能な期間はビザによって異なる。
英国政府:英国におけるポイント・ベース制移民政策の詳細(UK points-based immigration system: policy statement)
就学ビザ
就学を主目的とし、16歳未満を対象とした「子供学生ビザ(Child Student visa)」と、16歳以上を対象とした「学生ビザ(Student visa)」があり、「学生」は制限付だが就業も可能。いずれも受け入れ教育機関による学生引受証書(Confirmation of Acceptance for Studies:CAS)が必要。
- 英国政府:学生ビザ(Student visa)
- 英国政府:子供学生ビザ(Child Student visa)
どのタイプのビザが必要かは、以下の英国政府の資料を参照。
- 英国政府:新移民制度についてのガイダンス(Guidance- New immigration system: what you need to know)
- 英国政府:新移民制度の詳細(UK points-based immigration system: further details)
- 英国政府:英国での就労ビザ一覧(Work in the UK)
- 英国政府:英国のビザが必要かどうかを確認しよう(Check if you need a UK visa)
ジェトロ調査レポート「新英国移民制度のガイドブック(2023年1月)」
ビザの申請先および管轄官庁
- 英国内での申請や更新、問い合わせ
- 英国ビザ・移民局(UK Visas and Immigration:UKVI)
内務省管轄の機関で、入国管理、ビザ発給などを管轄。
問い合わせ先:Contact UK Visas and Immigration for help
- 英国ビザ・移民局(UK Visas and Immigration:UKVI)
- 日本国内での申請
- 英国政府:各種ビザ取得料金(UK visa fees)
- 英国政府:ビザ申請書類(UK visa and immigration application forms)
EEA・スイス国籍者の2021年1月1日以降の扱い
2021年1月1日以降に新たに英国に入国する者は、欧州経済領域(EEA)・スイス国籍者以外の外国人と同様に入国前に労働許可を伴う滞在許可(ビザ)が必要。
2020年12月31日以前に英国に継続的、かつ合法的に居住したEEA・スイス国籍者とその家族は、2021年6月30日までに「EU定住スキーム(EU Settlement Scheme)」に登録することによって、2020年12月31日の時点で5年の要件を満たす者には「定住資格(Settled status)」が、満たしていない者には「準定住資格(Pre-settled status)」が与えられた。5年を経過した時点で「定住資格」を申請する資格がある。
- 英国政府:英国のポイント・ベースの移民制度:EU市民に対する情報(Guidance- The UK’s points-based immigration system: information for EU citizens))
申請は次のページからオンラインで可能。
- 英国政府:EU定住スキーム申請について(Apply to the EU Settlement Scheme(settled and pre-settled status))
生体認証情報(Biometric Information)
6カ月以上のビザを新規で申請する時には、生体認証情報の提出が求められる。
生体認証情報とは顔写真と指紋情報であり、日本国内から新規でビザを申請する場合、申請書類の提出時に、ビザ申請センターへ直接出向き、顔写真の撮影と指紋の採取を行う必要がある。
また、英国に入国して10日以内またはパスポートに貼られたビザの有効期限内に、生体認証付き許可書(Biometric Residence Permit:BRP)を指定の郵便局等で受領しなくてはいけない。
既に英国内に滞在し、6カ月を超えて滞在を延長する場合も、生体認証付き許可書の申請が求められる。許可書がないまま滞在すると、最大1,000ポンドの罰金。
生体認証付き許可書には、生体認証情報のほか、氏名、出生地、滞在状況が含まれ、申請には登録が可能な最寄りの郵便局等に出向く必要がある。
EEAおよびスイス国籍者がスマートフォンアプリで顔写真を提出する場合は、指紋情報の提出は必要ない。
なお、英国政府は生体認証付き許可書(BRP)を含め、ビザ手続きの電子化を進める方針で、2024年中にはeビザへの切り替えが行われる。
- 英国政府:生体認証付き許可書(Biometric residence permits (BRPs))
- 英国政府:生体認証付き許可書の更新(Biometric residence permits (BRPs))
- 英国政府:オンライン移民管理(Online immigration status (eVisa))
移民医療付加金(Immigration healthcare surcharge:IHS)
逼迫する保健医療財政を背景に、英国政府は、2015年4月6日以降のビザ申請に際し、移民医療付加金(IHS)を徴収している。
2024年8月現在、移民医療付加金の金額は、1年につき1,035ポンド。帯同家族も同額。ただし、医療・介護従事者ビザ(Health and Care Worker visa)の取得者は免除。また、若者の移動に関する制度ビザの取得者は、1年につき776ポンド。
英国政府:移民医療付加金・概要(Pay for UK healthcare as part of your immigration application)
スタンダードビジタービザ
日本などからの出張等(商用)、観光、私的診療の受診などを目的として訪英する場合、各回最長6カ月の入国許可(スタンダードビジタービザ)が、入国時に入国管理官から付与される。
「商用目的」とは、打ち合わせや契約交渉、展示会、会議、研修、視察等の出席等に限定され、就労や、商品・サービスの一般大衆への販売等は禁じられている。
日本人の場合、入国前にビザを取得しなくてもよいが、入国時に企業情報や訪英目的を確認できる書類、帰国時期を証明する書類の提示を求められる場合がある。
また、数年にわたって、頻繁に英国を訪問する必要がある場合、2年、5年、10年用の長期スタンダードビジタービザを申請することができる(いずれも、1回の滞在期間は最長6カ月)。
英国政府:スタンダードビジタービザ(Visit the UK as a Standard Visitor)
ジェトロ調査レポート「新英国移民制度のガイドブック(2023年1月)」
スポンサー(身元引受人)ライセンス(Sponsorship licence)
技能労働者(Skilled Worker)ビザ、シニアまたはスペシャリストワーカービザの発給に際し、スポンサーは外国人労働者一人1年当たり大企業1,000ポンド、小企業364ポンドの移民技能負担金(Immigration Skills Charge:ISC)が課せられる。
ライセンスの申請方法
英国に拠点を置き、要件を満たした企業は、オンラインを通じて申請できる。ライセンスを取得すると、スポンサー登録簿(Register of licensed sponsors)に、組織の名称、所在地、等級が記載される。
等級は登録簿記載時に付与されるもので、義務を果たすのに必要なすべての制度を整備し、濫用の証拠がない場合にはA級が与えられる。
スポンサーとしての義務を遵守していないと認定された場合には、A級からB級に降格されることもあり、再度A級に昇級しない限り、新規でのスポンサー証書の発行ができない。
申請後は、スポンサーライセンス管理ツールのSponsor Management System(SMS)で管理する。
- 英国政府:スポンサーライセンス・概要 (UK visa sponsorship for employers)
- 英国政府:スポンサーライセンスの申請 (Apply for a sponsor licence)
- 英国政府:スポンサー登録簿(Register of licensed sponsors: workers)
- 英国政府:スポンサーライセンス管理ツール(UK visa sponsorship management system)
- 英国政府:雇用者と教育者のスポンサー資格のガイダンス(Sponsorship: guidance for employers and educators)
現地人の雇用義務
特になし。
その他
特になし。