外資に関する規制

最終更新日:2023年08月18日

規制業種・禁止業種

外資のみを対象とした禁止業種はないが、英国政府は外国企業や投資家による英国企業に対する合併・買収に対する監視を強めており、2020年6月の「2002年企業法改正」により、政府が合併・買収案件を調査・介入できるようになった。さらに2022年1月4日施行の「2021年国家安全保障・投資法」により、国家安全保障に関わる17分野における外国企業による合併・買収については政府への届け出が義務付けられている。このほか、外資に限らず、特定分野の事業に関して政府の許認可や登録が必要なものがある。

  1. 2021年国家安全保障・投資法(National Security and Investment(NS&I)Act 2021

    国家安全保障を脅かす可能性がある、外国企業や投資家による英国企業に対する合併・買収などについて、一定の条件を超える場合、事前に政府への届け出を義務付け、政府が調査・介入できることを強化する新法で2022年1月4日に施行。国家安全保障上の懸念が生じやすい17分野での特定の取引を対象として合併や買収を実施する際、買収側の企業に事前に政府への通知を義務付けている。政府は通知受領後30営業日以内(延長あり)に審査結果を通知、承認された場合のみ買収が可能。通知義務を怠った企業、当事者には罰金や懲役刑などの制裁が規定されている。

    通知義務がある17分野は以下のとおり。
    先端素材、先進ロボット工学、人工知能、民生用原子力、通信、コンピュータハードウエア、政府への重要なサプライヤー、危機管理に関する重要なサプライヤー、暗号認証、データ・インフラストラクチャー、防衛、エネルギー、生物工学、軍民併用技術、量子技術、衛星・宇宙技術、輸送。

    この17分野以外でも、国家安全保障に関わる可能性がある場合は、政府へ通知することが推奨される。
    通知が必要となる合併・買収の条件は次のとおり。

    1. 英国企業の株式または議決権を25%以上取得する場合
    2. 既に英国企業の株式・議決権を、25%以上取得している場合は新たにシェアを50%以上に、50%以上取得している場合は新たに75%以上に、引き上げる場合
    3. 企業の決議を阻止または可決できる議決権を取得する場合

    問い合わせ先:投資安全保障局(Investment Security Unit:ISU)
    E-mail:investment.screening@beis.gov.uk.

    ジェトロの記事「国家安全保障・投資法が成立、重要17分野で政府の介入権限強化(英国)」(2021年5月7日)

    なお、同法制定に先立ち2020年6月に安全保障やメディア寡占、金融、公衆衛生、特定技術(軍民両用技術、コンピュータハードウエア、量子技術、AI、先端材料、暗号化認証)において重要な公益が損なわれると判断される合併・買収について、政府に介入権限を与える「2002年企業法」改正規則が施行されている。同法の対象企業は、英国での年間売上高が7,000万ポンドを超えるか、市場シェア25%以上となる大型案件。ただし、特定技術分野については、年間売上高が100万ポンド以上の案件。英国政府は、国家安全保障・投資法施行後も「2002年企業法」の公益に関する規定は引き続き有効であり、政府が英国の金融システムの安定性や公衆衛生、メディア等公益の懸念を提起する合併や買収に介入する権限を維持するとしている。

    ジェトロの記事「公衆衛生分野の買収への介入を可能に、近くさらに広範な買収規制法案も(英国)」(2020年6月26日)

  2. 事業の許認可や登録を要する業種

    金融サービス、医薬品、酒類販売・飲食業、鉱業、油田開発、電力、ガス、水道、通信、テレビ放送、廃棄物処理、医療・福祉サービス、賭博、食品販売、養鶏場、酪農場、建設など。

    必要なライセンスは、英国政府「Find a license外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」から検索可能。

    また、英国内で建設工事を受注する企業は、歳入関税庁(HMRC)の建設産業スキーム(CIS)への登録が必要。

出資比率

2022年1月4日から国家安全保障を脅かす可能性がある17分野で25%以上の株式や議決権を取得する場合は政府に通知が必要となる。それ以前であっても、あるいは当該の17分野以外でも懸念がある場合は政府への相談が推奨されている。詳細は、前述の「規制業種・禁止業種」を参照。

外国企業の土地所有の可否

土地の所有は可能。外資のみを対象とした規制なし。

資本金に関する規制

外資のみを対象とした規制なし。

その他規制

外資のみを対象とした規制なし。