2024年のフランスの外資規制の審査件数は前年比26.8%増、却下は3年間で6件

(フランス、EU、米国、英国、スイス、ルクセンブルク、ドイツ、オランダ  )

パリ発

2025年08月05日

フランスの経済・財務・産業・デジタル主権省財務総局は7月30日、2024年の外国企業によるフランス企業の買収案件について、外資規制(注)による投資の事前認可の申請件数は26.8%増の392件で、前年の309件を大幅に上回ったと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、フランス語)。投資の認可申請件数は、2014年の105件から約4倍となった。申請の内訳は、投資の認可申請が327件、外国企業またはフランス企業による事前認可の要否の確認を含めた事前申請が61件、フランス企業の議決権10%超取得が4件だった。

財務総局が2024年に下した決定は337件。このうち、182件が実際に外資規制の対象事業と判断された上で認可された。ただし、認可された案件の54%に相当する99件は国益の保護を理由とした条件付きの認可であり、政府は今後その実施状況を長期的にチェックすることになる。2023年の条件付き認可は全体の44%だった。同局が2024年に審査をした案件のうち、73%は外資規制の対象外で事前認可を必要としない投資だった。同局はまた、過去3年間に6件の投資案件を却下したと明らかにした。

2024年に認可を受けた投資案件をカテゴリー別にみると、26%が防衛・安全保障分野で前年(22%)から拡大する一方、インフラ、エネルギー・水、公衆衛生、食糧安全は37%で前年(43%)から縮小した。国家重要基幹技術やデュアルユースの物品・技術関連研究開発活動への投資は前年比横ばいの14%、民間航空と軍用航空の両方の航空部品を製造するフランス企業への投資など、カテゴリーの2つまたは3つに該当する「混合」投資も、前年比横ばいの22%を占めた。

国・地域別にみると、欧州経済領域(EEA:EU27カ国、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)外の企業による投資件数が、米国、英国、スイスを中心に全体の65%を占めた。EEA内の企業による投資は35%を占め、ルクセンブルク、ドイツ、オランダからの投資件数が多かった。なお、全体の44%が金融機関による投資だった。

フランスは、EU域外企業によるフランス上場企業の経営権掌握について、事前認可の対象となる議決権比率の引き下げ(25%から10%)措置の恒久化や外資規制の適用範囲拡大など外資規制を厳格化している(2024年1月10日記事参照)。同内容を反映したガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは財務総局のウェブサイト上に公開されている。

エリック・ロンバール経済・財務・産業・デジタル主権相は「これまで以上に厳格な外資規制の方針を持ち、わが国の国防と安全保障、特に衛生とエネルギーにとって重要なフランス企業と技術を、その時々に合わせて都合よく対処する日和見主義や他から略奪されることから守らなければならない」とコメントした。

(注)フランスの外資規制は、ジェトロウェブサイトの「外資に関する規制」を参照。

(奥山直子)

(フランス、EU、米国、英国、スイス、ルクセンブルク、ドイツ、オランダ  )

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