外資に関する規制

最終更新日:2023年07月12日

規制業種・禁止業種

外資企業は内資企業(ブラジル企業)と同じ扱いを受けることが憲法により保証されている。郵便、マスメディア、航空宇宙産業、輸送、軍需、資源開発等の分野では、外資参入が禁止または規制されている。

外資参入が原則禁止されている業種

  1. 公共医療福祉事業
  2. 核エネルギー開発関連事業
  3. 郵便、電信・電報事業
  4. 航空宇宙産業

外資に対する規制業種

  1. テレビ、ラジオ、新聞、雑誌
    議決権付き株式の70%以上を、ブラジル人、ブラジルへ帰化後10年を超える者、あるいはブラジル法人が保有する必要がある。
  2. 軍需産業
    議決権付き株式の3分の2以上を、ブラジル人あるいはブラジル法人が保有する必要がある。
  3. ケーブルテレビ事業
    ブラジルに本社を置き、議決権付き株式の過半数を、ブラジル人、ブラジルへ帰化後10年を超える者、あるいはブラジル法人が保有する必要がある。
  4. 国境周辺での経済活動
    音声および映像による放送サービスを目的とする土地の取得・譲渡、放送基地の設置、外国に通じる橋梁や道路の設置は、原則禁止されている。国防関連産業の開発、鉱物資源開発や調査、土地の造成や宅地造成事業を行う場合、51%以上の資本をブラジル人あるいはブラジル法人が保有する必要がある。
  5. 沿海輸送サービス
    資本の過半数をブラジル人が保有し、かつ経営陣の過半数がブラジル人でなければならない。ブラジルに本社を置き、国立水路運輸庁の認可が必要。2022年から監督機関による事前認可を得たうえで外国籍船の利用が認められている。
  6. 鉱物・水資源の開発および調査事業
    事前認可の取得が必要。ブラジルの法令に従い会社を設立し、ブラジル国内に本社を設立する必要がある。
  7. 金融機関
    銀行や保険会社、再保険会社等への外資の参入には事前認可が必要。また、本社が外国にある銀行がブラジル国内に支店を開設する場合や、ブラジル国外に居住する個人または法人がブラジル国内の銀行に対する出資比率を引き上げる場合にも事前認可が必要。

出資比率

外資規制業種に該当する場合、出資比率に制限がある。

外国企業の土地所有の可否

一定の制限があるものの、外国企業の土地所有は可能。

有効な居住許可を保有しブラジル国内に居住する外国人や、外国企業がブラジルの法令に従いブラジル国内に設立した企業は、一定の制限があるものの、土地・不動産の取得・所有が認められている。外国に居住する外国人や外国企業によるブラジル国内の土地所有は禁止されている。

ブラジルに居住する外国人や外国企業がブラジル国内に設立した企業による土地・不動産取得規則は次のとおり〔1971年10月7日付法令第5709号、1974年11月26日付大統領令第74965号、2017年12月13日付国立植民農地改革院(INCRA)規範命令第88号〕。

  1. 都市部の土地所有
    ブラジルに居住する外国人や外国企業がブラジル国内に設立した企業に対しては、特に規制・制限はない。
  2. 地方の土地所有

    ブラジルに居住する外国人や外国企業がブラジル国内に設立した企業、外資比率が過半数を占めるブラジル企業による土地所有は、農牧畜事業または工業製造事業の導入・開発を目的としたものであり、かつ社会的貢献が認められる事業である場合にのみ許可される。事業内容により農牧畜供給省または開発商工サービス省等の関係機関の認可が必要。土地面積の大小にかかわらず取得する土地が国境地域あるいは国家安全保障上の重要地域にある場合には、国家防衛審議会による承認が必要。

  3. 取得可能な土地面積
    1. ブラジルに居住する外国人による土地取得
      3MEI*以上の土地を取得する場合、国立植民農地改革院の承認が必要。20MEIを超える土地を取得する場合、土地開発に関する計画書を提出し、認可を取得する必要がある。50MEIを超える土地を取得する場合、国会での承認が必要。土地面積が3MEI未満の場合には国立植民農地改革院や国会の承認は不要だが、複数の3MEI未満の土地を取得する場合、国立植民農地改革院の承認が必要。
    2. 外国企業がブラジル国内に設立した企業あるいは外資比率が過半数を占めるブラジル企業による土地取得
      農業、畜産業、林業、製造業、観光、土地造成事業を土地取得の目的とし、当該企業の事業目的に合致している場合に許可される。100MEI以下の土地を取得する場合、国立植民農地改革院の承認が必要。100MEIを超える土地を取得する場合、国会での承認が必要。

      *MEIとは国立植民農地改革院が定める土地面積の基準単位で、1MEIは自治体により5~100ヘクタールと異なる。

    なお、ブラジルに居住する外国人、外国企業がブラジル国内に設立した企業あるいは外資比率が過半数を占めるブラジル企業(単数・複数を問わない)が1つの自治体の25%を超える土地を所有することは禁じられている。
    また、同一国籍のブラジルに居住する外国人または外国企業がブラジル国内に設立した企業(単数・複数を問わない)が1つの自治体の10%を超える土地を所有することも禁じられている。

資本金に関する規制

最低資本金に関する規定はないが、駐在役員のビザ取得のために、一定額を投資する必要がある。また、資本金の本国送還は可能。配当金の送金も認められている。

  1. 資本金に関する規制

    ブラジル国内に会社を設立する際に、最低資本金に関する法律上の規制はない。
    外国企業がブラジル国内に会社を設立し駐在役員を置く場合、60万レアル相当額以上の投資を行い、ブラジル中央銀行に登録することにより、駐在役員1人分のビザの申請ができる。複数の駐在役員のビザが必要な時は、60万レアル相当額×人数分の投資が必要。

    投資後2年以内に10人以上のブラジル人従業員の雇用計画がある場合には、15万レアル相当額以上の投資で、駐在役員1人分のビザの申請ができる。
    役員以外の駐在員のビザ取得については、資本金の規制はない。

  2. 現物出資

    製造機械・設備等の資産を出資金として輸入することが認められている。中古の機械・設備による現物出資は、ブラジル国内に類似品がない場合にのみ認められる。ブラジル中央銀行の事前承認は不要だが、輸入通関手続き後90日以内に外資登録を行う必要がある。

  3. 資本金の本国送還

    債務超過でない場合や、税務や労働債務リスク等を明らかに上回る資産を所有している場合には、ブラジルに投資された外国資本を本国へ送還することが認められる。投資額を超える金額を本国へ送還する場合には、投資額と送還額の差額がキャピタル・ゲインとみなされ、源泉所得税の課税対象となる。

  4. 利益(配当金)の送金

    利益(配当金)に関しては、外国企業は国内企業と同等の権利を持っており、外国への送金も認められている。
    利益配当に対する源泉所得税は非課税〔1995年12月26日付法令第9249号第10条〕。国外への利益送金は投下資本がブラジル中央銀行に登録されていることが前提条件となる。

    日本とブラジルとの間では税額控除規定(いわゆる「みなし税額控除」)が適用され、配当については25%がブラジル国内で課税されたとみなし、その分を日本側での課税額から控除できる。

    「外国子会社配当益金不算入制度」により発行済株式数の25%(ブラジル国内の子会社の場合には日本ブラジル租税条約が適用され10%)以上の株式を保有している外国子会社から配当を受けた場合に、配当金額の95%の益金不算入が認められていたが、2015年度税制改正により、外国子会社側で損金算入される配当については、「外国子会社配当益金不算入制度」の適用対象外となった。

  5. 借入金の資本金への振替え

    本国の親会社からの借入金(いわゆる親子ローン)を資本金に振替えることが認められている〔2022年12月31日付ブラジル中央銀行決議第278号、2013年12月16日付ブラジル中央銀行通達第3689号第2議題第2章第28条・第37条〕。

その他規制

1. 外国人による経営、2. 法人登録番号(CNPJ)の取得、3. 株主状況の報告、4.外国企業による公共事業への入札・国産製品に対する価格優遇策

  1. 外国人による経営
    外国人がブラジル国内の会社の経営者となる場合には、ビザが必要。
    ブラジルのビザについては「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」を参照。
  2. 法人登録番号(CNPJ)の取得

    外国企業がブラジル国内で投資を行う場合、法人登録番号(CNPJ)の取得が必要。法人登録番号は、出資者として定款に記載する際も必要。

    外国企業または外国に居住する個人がブラジル企業に出資する場合、ブラジルに居住するブラジル人または条件を満たすビザを保持する外国人を代理人として任命する必要がある。

  3. 株主状況の報告
    ブラジル国内に不動産、車両、銀行口座、金融資産等を所有する企業は外国企業、内国企業を問わず、最終受益者まで遡る株主状況を報告する必要がある。報告しない場合には、法人登録番号の保留や銀行取引停止等の処分が課される(2022年12月6日付連邦国税庁規範命令第2119号第54~56条)。
  4. 外国企業による公共事業への入札・国産製品に対する価格優遇策

    2021年4月に公共入札に関する新法を発令し、2年間の移行措置期間を経て2023年4月から正式発効している(2021年4月1日付法令第14133号)。新公共入札法では、政府調達の対象は連邦政府のみならず、州や市に至るすべての自治体、公営の企業や財団を対象としている。新公共入札法は多くの点で世界貿易機関(WTO)政府調達協定(GPA)に準拠する内容となっている、旧公共入札法では、外国企業は原則、国際案件入札にのみ参加が認められていたが、新公共入札法は外国企業に対してブラジル企業と同一の入札条件を適用することを定めており、国際案件入札だけでなく国内案件入札への参加も可能となった。
    なお、ブラジルの技術規定に適合し、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイの4カ国で構成されるメルコスール(南米南部共同市場)域内で生産された製品やサービスに対しては、旧入札法では最大25%の価格優遇措置を認めていたが、新入札法では価格優遇措置は最大10%、ブラジルの技術革新、技術開発により生産された製品とサービスに対しては最大20%に縮小されている。

    入札希望企業は、サプライヤー統一登録システム(Sicaf)に企業データを入力する。従来は、入札を希望する外国企業はポルトガル語による公証翻訳書類の提出が必要であったが、現在は一般翻訳書類も認められている。また、従来は入札段階で法人登録番号の取得や現地代理人の任命が必要だったが、落札企業は契約締結までにそれらの手続きを行えば良くなった。

    なお、メルコスールはEU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)協議を続けており、また、ブラジル政府はWTO(世界貿易機関)への加盟交渉をしており、いずれにおいても政府調達が交渉の重要テーマとなっている。現政権は国内産業保護の姿勢を強めており、交渉過程で今後、政府調達に関する規制が変更されることも予想される。