外資に関する奨励
最終更新日:2020年07月03日
奨励業種
外資に限定した奨励業種はない。連邦政府レベルや、州政府や市単位で投資奨励策を行っているケースもある。投資規模や業種によっては、個別に優遇措置が供与されることもある。
奨励業種に関して、特に外資、内資の区別はない。雇用を多く創出し、かつイノベーションを促す情報・通信産業や自動車産業、インフラ開発部門等に対する投資優遇策がある。連邦政府レベルでの優遇策以外にも、投資誘致を目的に州政府や市単位での税の減免措置や土地の供与などのケースもある。
主な奨励策は次のとおり。
- 工業関連自動関税制度(RECOF)〔2012年9月12日付規範命令第1291号〕
対象業種・企業:輸入または国内調達した原材料額の50%以上に相当する輸出を行い、70%以上を工業化し、輸出額が50万ドルを超える製造業。
適用要件・優遇措置:- 資材を輸入する場合、輸入税(II)、工業製品税(IPI)、社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金(PIS/COFINS)を免除。
- 資材を国内調達する場合、工業製品税、社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金を免除。サンパウロ州では、州税の商品流通サービス税も免除。
- 輸出入手続きも簡素化される。
- ドローバック〔2011年7月14日付開発商工省貿易局(SECEX)省令第23号、67条~182-A条〕
対象業種・企業:輸出する最終商品の製造加工のために使用、または消費(消耗)する物品(原材料、資材、機器、部品、付属品、包装品など)を調達する企業。
優遇措置:輸入税(II)、工業製品税(IPI)、輸入に課税される社会保険融資負担金(COFINS)、輸入に課税される社会統合計画基金(PIS)を免除。 - ITサービス輸出奨励特別プログラム(REPES)〔2005年11月21日付法令第11196号第1章、2006年3月15日付規範命令630号〕
対象業種・企業:ITサービスとソフトウェア産業で、売上高の50%以上を輸出する企業。
優遇措置:- 社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金(PIS/COFINS)を免除。
- 国内に類似品のない財を輸入する場合、工業製品税(IPI)も免除。
- 技術革新プログラム(グッド法)(Lei do Bem)〔2005年11月21日付法令第11196号第3章、2011年8月29日付規範命令1187号〕
対象業種・企業:技術革新およびその研究開発に投資を行う企業。
優遇措置:- 研究開発向け設備購入に対する工業製品税(IPI)を50%軽減。
- ブランドやパテント使用料の送金に対する源泉所得税(IRRF)を免除。
- 加速減価償却を適用。
- 法人税(IR)等に対する課税標準額を減額。
- 半導体産業技術発展支援プログラム(PADIS)〔2007年5月31日付法令第11484号第1章、2008年6月13日付規範命令852号〕
対象業種・企業:半導体技術、LCD・PDP・LEDディスプレイの関連分野で研究開発投資を行う企業。
優遇措置:法人所得税(IRPJ)、輸入税(II)、工業製品税(IPI)、社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金(PIS/COFINS)、特別財源負担金(CIDE)の税率を減免。優遇期間は2022年1月22日まで、あるいは恩典適用後12年、14年または16年(プロジェクトにより異なる)。 - インフラ開発奨励特別プログラム(REIDI)〔2007年6月15日付法令第11488号1章、2007年7月25日付規範命令758号〕
対象業種・企業:交通、港湾、空港、エネルギー、公衆衛生、水利事業等のインフラプロジェクトを行う企業。
優遇措置:事業認可後5年間にわたり、社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金(PIS/COFINS)を免除。 - 石油開発インフラ整備プログラム(REPENEC)〔2010年6月11日付法令第12249号第1章、2010年10月1日付規範命令1074号〕
対象業種・企業:ブラジル北部、北東部、中西部地域の石油・天然ガス開発事業を行う企業。
優遇措置:事業認可後5年間にわたり、輸入税(II)、工業製品税(IPI)、社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金(PIS/COFINS)を免除。 - 航空機産業奨励特別プログラム(RETAERO)〔2010年6月11日付法令第12249号第5章、2011年8月29日付規範命令1186号〕
対象業種・企業:航空分野の設備・部品を製造する企業や関連サービスを提供する企業。
優遇措置:事業認可後5年間にわたり、工業製品税(IPI)、社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金(PIS/COFINS)を免除。 - 輸出業者に対する税金払戻特別プログラム(Reintegra)〔2014年11月13日付法令13043号第6節、2015年2月27日付行政令8415号、2018年5月30日付行政令9393号〕
対象業種・企業:工業品の輸出業者。
適用要件・優遇措置:製品に占める輸入部品比率を基準以下にするなどの条件を満たす場合、輸出額の一部を還付(2018年6月1日以降は0.1%)。 - 自動車政策「Rota 2030」〔2018年12月10日付法令13755号〕
2017年末で終了したブラジルの自動車産業支援策「Inovar-Auto(イノバール・アウト)」に代わって策定された政策。2018年12月11日施行。有効期限は2032年12月31日。
対象業種:自動車メーカー・輸入販売業者、自動車部品メーカーおよび輸送・ロジスティック企業。国産車だけでなく輸入車も恩典対象となる。
適用要件:一定の研究開発投資を行うか、エネルギー性能や安全性能の改善を行った場合に優遇措置が適用される。
優遇措置:- 研究開発投資に対する法人所得税の税額控除
ブラジル国内で基礎研究、応用研究、実験開発、サプライヤーの技能研修、基礎的製造技術、技術支援サービスを向上させるための研究開発を行う企業は、投資相当額の30%を上限に、法人所得税(IRPJ)と法人所得に対する社会負担金(CSLL)を合わせて10.2%が、本来支払うべきIRPJとCSLLから税務クレジットとして控除される。先進的製造技術、コネクティビティー、戦略的システム開発、ロジスティク・ソリューション開発、自動運転、ナノテクノロジー、ビッグデータ活用、AI(人工知能)活用などの戦略的分野における研究開発の場合、15.3%の税額が税務クレジットとして控除される。 - 工業製品税の減税
2022年以降、燃費効率基準を達成した車両に対しては最大2%、安全性能の技術基準を達成した車両に対しては最大1%工業製品税(IPI)を軽減。 - 輸入部品に対する輸入税の免税
国内で類似品が製造されていない場合、輸入税(II)が非課税。 - ハイブリッド車、電気自動車に対する工業製品税の減税〔2018年7月5日付行政令9442号、2018年12月10日付法令13755号〕
現行、最大で25%の工業製品税(IPI)の税率を車両重量と燃費効率に応じて7~20%に軽減。ハイブリッド車のうち、バイオエタノール燃料あるいはバイオエタノールとガソリンの混合燃料による走行が可能なフレックス・ハイブリッド車については、同じカテゴリーの車両に対し工業製品税が最低3%軽減される。
- 研究開発投資に対する法人所得税の税額控除
各種優遇措置
辺境地域開発のための恩典制度がある。内資・外資の区別はない。特定業種向けの恩典もある。
- 情報産業法〔2019年12月26日付法令第13969号〕
対象業種・企業:情報通信機器および半導体の製造メーカー。適用要件・優遇措置:
国内での売上高の5%以上を研究開発・技術革新に投資し、基礎製造工程基準(PPB)の認可を受けた企業に対し、投資額に応じ税務クレジットを供与。供与された税務クレジットのうち80%は法人所得税(IRPJ)、20%は法人利益に対する社会負担金(CSLL)との相殺が認められる。供与されたクレジットの有効期間は5年間。
本優遇措置は2029年末まで実施される。供与される税務クレジットの売上高に対する上限は地域により以下のとおり(カッコ内はブラジル国内で開発された技術を活用した研究開発に対する税務クレジットの上限)。
- 中西部地域、アマゾニア開発監督庁(SUDAM)と北東部開発監督庁(SUDENE)が管轄する北部・北東部地域に所在する企業
2024年末まで12.97%(13.65%)、2026年末まで12.29%(12.97%)、2029年末まで11.60%(11.60%)。 - その他の地域に所在する企業
2024年末まで10.92%(13.65%)、2026年末まで10.24%(12.97%)、2029年末まで9.56%(12.29%)
- 中西部地域、アマゾニア開発監督庁(SUDAM)と北東部開発監督庁(SUDENE)が管轄する北部・北東部地域に所在する企業
- マナウス・フリーゾーン〔1967年2月28日付行政令第288号〕
対象業種・企業:アマゾナス州のマナウス・フリーゾーンへの進出企業。製造業だけでなく、漁業・農畜産業、サービス業も恩典制度の対象。適用要件:
同フリーゾーンで恩典の対象となる類似製品が既にある場合、当該製品の製造に関して、最低限履行すべき、既存の基礎製造工程基準(PPB)の取得が必要。基礎製造工程基準のない製品の場合、新たな基礎製造工程基準の申請・取得が必要。申請は経済省(旧開発商工省)傘下のマナウス・フリーゾーン監督庁(SUFRAMA)に対して行う。
同フリーゾーンの税制恩典制度は1967年にスタート。2014年の憲法改正により、2073年まで継続することが決まっている。
同フリーゾーンで恩典を供与され企業活動を行う企業は600社を超え、日系企業では二輪および電気・電子機器メーカーを中心に約30社が進出。優遇措置:
- 輸入税(II)の減免
SUFRAMAが認可するプロジェクトの場合、製造に使われる消費財や製造設備、再輸出のために保管される製品などは、連邦税である輸入税が免除。
SUFRAMAのプロジェクト認可を受けているメーカーが、完成品製造のために輸入部品を購入した場合、フリーゾーン域内で消費されるものであれば、輸入税が免除。フリーゾーンから製品を出荷する場合は、輸入原材料、部品等の輸入税は88%に軽減。
例外として、自動車・トラクターおよびその部品、情報機器については、国産化比率に基づく計算式(CRA*)により軽減率が計算され、さらに自動車、トラクターおよびその部品に対しては、CRAの算出数値に5%が加算される。国産化比率が上がると軽減率が増加する。
*CRA =(国産材料費+製造工程の人件費)÷(国産材料費+輸入材料費+製造工程の人件費) - 工業製品税(IPI)の免除
SUFRAMAのプロジェクト認可を受けている場合、フリーゾーン域内での消費、製造のために輸入される製品、または国内で購入される製品や製造設備、再輸出のために保管される製品は、連邦税である工業製品税を免除。認可プロジェクトに従って製造された製品を出荷する場合にも、工業製品税を免除。
- 商品流通サービス税(ICMS)の減免
フリーゾーン域内における生産のための部品や生産設備等を輸入あるいは州内で購入する場合、州税である商品流通サービス税を免除。州税であるため、アマゾナス州企画・経済開発庁(SEPLAN)内の開発審議会(CODAM)の認可が必要。完成品を出荷する際には、同税を55~100%軽減。軽減率は製品により異なる。一般完成品の軽減率は55%。
- 社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金(PIS/COFINS)の減免
通常の取引では合計9.25%の税率が、取引の形態・性質により次のとおり減免される(税率はいずれも社会統合基金・公務員厚生年金と社会保険融資負担金を合計したもの)。
- フリーゾーン域外の事業者から域内の事業者に対し原材料・半製品を販売する場合:免税
- 域内で製造された原材料・半製品をプロジェクトの認可を受けた域内の事業者に販売する場合:免税
- プロジェクトの認可を受けた域内の事業者が製造した製品を取得した場合:5.6%
- プロジェクトの認可を受けた域内の事業者が製造したものを、
- 域内の事業者に販売した場合:3.65%
- 域外の、両負担金の課税方式が累積排除型の事業者に販売した場合:3.65%
- 域外の、法人所得税の申告方式が推定利益の事業者に販売した場合:7.3%
- 域外の、法人所得税の申告方式が実質利益で、両負担金の課税方式が累積排除型の事業者に販売した場合:7.6%
- 輸入税(II)の減免
- アマゾン地域・北東部における投資支援〔2013年7月4日付全国統合省省令第283号〕
対象業種・企業:国家統合省管轄下のアマゾニア開発監督庁(SUDAM)および北東部開発監督庁(SUDENE)の認可プロジェクトを実施する法人に対して、次の恩典が与えられる。
認可機関と適用地域:
- アマゾニア開発監督庁(SUDAM)
アクレ、アマパ、アマゾナス、マト・グロッソ、パラ、ロンドニア、ロライマ、トカンチンスの各州、マラニョン州の一部 - 北東部開発監督庁(SUDENE)
マラニョン、セアラ、ピアウイ、リオ・グランジ・ド・ノルテ、パライーバ、ペルナンブコ、アラゴアス、セルジッペ、バイーアの各州、エスピリト・サント州の一部、ミナス・ジェライス州北部地域
優遇措置:
- 法人所得税(IRPJ)の軽減
2000年8月25日~2018年12月31日の期間に、承認・登録された新規実施・拡張・設備更新等のプロジェクトを持つ法人に対し、生産開始の翌年より10年間、法人所得税の75%を軽減。 - 商品流通サービス税(ICMS)の軽減
州税であるため、軽減率は州や商品の種類により異なる。主に各州の企画局の認可が必要。 - 加速原価償却の適用
- アマゾニア開発監督庁(SUDAM)
- 輸出奨励地区(ZPE)〔2007年7月20日付法令第11508号、2009年7月2日付規範命令第952号〕
輸出向けの製造業者の誘致により、先進技術を取得・普及し、国内の地域間格差を緩和し、当該地域の雇用創出、社会・経済を発展させることを目的に、国内各所に輸出奨励地区が作られている。輸出入のフリー・トレードゾーンとしての機能を有し、国内17州の25カ所が指定されている。
適用要件:売上の80%以上を輸出する企業が対象。製造業だけでなく、農業や鉱山分野の企業も恩典の対象となる。
優遇措置:輸入税(II)、製品工業税(IPI)、社会統合基金・公務員厚生年金および社会保険融資負担金(PIS/COFINS)、商船更新追加税(AFRMM)が減免となるほか、ライセンス取得義務の規制緩和などのメリットを与える。
その他
輸入製品に対する関税の軽減措置("Ex-Tarifário”)。国産類似品がない製品に対して、関税の軽減措置が認められる。
共通関税リスト適用除外製品(Ex-Tarifário)〔2014年8月14日付貿易審議会決議第66号〕
外資に限定された措置ではないが、資本財や情報通信機器で、国産の類似品がない場合や、新たなテクノロジーをブラジル国内の生産現場に導入する場合などに、輸入税の減免申請ができる。申請が認められると輸入税率が2%あるいは0%にまで減免される。資本財の通常の税率は14%、情報通信機器は16%。
軽減措置の適用期間は最長2年。軽減措置の継続が必要な場合には、延長申請が必要。
Ex-Tarifárioの内容や申請方法については「貿易管理制度」を参照。