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技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

最終更新日:2021年07月03日

技術・工業および知的財産権供与に関わる制度

ブラジルは、知的財産権および技術の国際貿易の保護にかかわるパリ条約と世界知的所有権機構のメンバー国であり、2019年10月より商標の国際登録を簡素化するマドリッド協定議定書に加盟しているが、意匠の国際登録を簡素化するハーグ協定には加盟していない。ブラジルにおける知的財産権は産業財産庁(INPI)が規定。産業財産法(LPI)等の法律により保護されている。ブラジルでは知的財産権に関し複雑で特殊な制度が存在し、出願から査定までに長い時間を要していたが、近年短縮化している(2020年時点5.2年)。

知的財産権および技術の国際貿易の保護に関し、ブラジルはパリ条約設立メンバー国で、1975年以降は世界知的所有権機構のメンバーでもある。また、1978年に特許協力協定(PCT協定)にも署名し、同協定はブラジルの国内法として承認されている。国際分類に関する1971年のストラスブール協定も適用している。2019年に商標の国際登録を簡素化するマドリッド協定議定書に加盟したため、複数国での権利取得手続きの簡素化(ワンストップ)や、各国ごとの登録料支払い不要等のメリットを享受することができる。

知的財産権を第三者に対し効力を持たせる場合、あるいはライセンス契約等に基づきブラジル国外にロイヤルティー等の送金を行う場合、その契約における所得税および利益に対する社会負担金(CSLL)の納付控除を行う場合、ブラジルの知的財産権に関する公的機関であり、経済省傘下の産業財産庁(Instituto Nacional da Propriedade Industrial:INPI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)への登録が必要。産業財産法(LPI)等、ブラジルの知的財産に係る法令および審査基準はINPIのウェブサイト(原則ポルトガル語版のみ)に掲載されている。
INPIは産業財産法(LPI)を実施するために、各種の決議(Resolução)や規範命令(Instrução Normativa)を出している。

産業財産庁:産業財産法(LPI、1996年5月14日付法令第9279号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

日本特許庁はウェブサイトで、世界各国・地域の特許、実用新案、意匠、商標などの法令、出願や審査に関する情報等を紹介しており、ブラジルの法令の日本語版を公開している。

産業財産庁(INPI)への登録が必要な契約

次の契約についてはINPIへの登録が必要〔2017年4月11日付INPI規範命令第70号〕。

  • 産業財産権ライセンス契約(特許、工業意匠、商標)
  • 産業財産権供与(特許、工業意匠、商標)
  • 技術移転・ノウハウ供与
  • フランチャイズ契約(特許または商標の使用、技術支援サービスの提供や技術移転などを含むビジネスモデルの一時的な許諾を目的とした契約)

産業財産庁(INPI)への登録が不要な契約

技術の移転を伴わない次の契約についてはINPIへの登録は不要〔2015年11月9日付INPI決議第156号〕。

  • 物流サービス
  • 海外で行われ、ブラジル企業の技術者が同行せず、報告書等の作成を伴わないサービス供与
  • 機械・設備の保守管理サービス
  • 機械・設備の修理・補修・改修・調整・検査等のサービス
  • 機械・設備の据付・解体・分解・試運転等の監督サービス
  • 製品の品質に関する認証・証明
  • 財務・営業・法務分野のコンサルタント業務
  • マーケティングサービス
  • ソフトウェアの使用許諾・トレーニング、等

知的財産権の種類および概要

  1. 商標

    ブラジルでの商標登録は、ブラジル人か外国人かに関わらず可能。製品標章、役務マーク、証明標章、団体標章、地理的表示など、文字、図形、それらの混合、あるいは立体的なのものなど、視覚的に認識でき識別性を有するものは、法律で禁止されていない限り商標登録ができる。
    著名な商標や広告的商標については、産業財産権法の中でパリ条約の規定に基づき特別保護が与えられる。申請後、出願が公示され、第三者による異議申立て期間が60日設定される。異議申立て期間が終了するとINPIの審査官が当該案件を審査し、問題がなければ、料金の支払いを経て登録証明書が発行される。

    商標は登録証明書の発効日から10年間保護され、10年ごとに更新が可能。保護期間を延長しない場合、登録は消滅する。商標登録の付与日から5年以内に登録商標の使用が開始されない場合や、継続する5年間に登録商標を使用しない場合には、利害関係人は商標登録の取消請求ができる。商標の登録所有者または出願人は、登録の移転および商標のライセンスを許諾する権利も保有している。

  2. 特許・実用新案

    特許の登録では、新規性、進歩性、産業上の利用可能性が考慮されるべき要素となる。
    実用新案では、実用物品またはその一部が産業上の利用可能性を有し、その使用または製造における機能的改良をもたらす新規の形態または構造を有し、かつ進歩性を有していることが考慮されるべき要素となる。

    特許、実用新案ともに、科学理論や数学の方式、情報の提供、人体または動物に用いられる手術のための医療技術・診断の方法、純粋に抽象的な概念、道徳に反するもの、コンピュータ・プログラムそれ自体、微生物を除く動植物などには権利が与えられない。公共の利害に反する場合や国家的緊急時のケースでは、権利を剥奪できると定めている。ブラジル国内で出願された医薬品の特許は、INPIによる審査の前に国家衛生監督庁(ANVISA)による事前審査を受け、承認を得る必要がある。

    有効期間は、発明特許が出願日から20年、実用新案が15年となる。権利の存続期間について、付与日から発明特許が10年、実用新案が7年を下回らない期間とする規定は、最高裁判決により2021年5月14日以降適用しないこととなっている。

  3. 意匠(工業デザイン)

    意匠登録については、物品の装飾的造形体または製品に利用することができる線および色彩の装飾的配置であって、その外形に新規かつ独創的な視覚的効果をもたらし、工業生産のためのひな型にできることが考慮されるべき要件となる。純粋に芸術的な性質の作品は意匠とはみなされず、また、対象物が通常または一般に備える必然的な形状、または技術的もしくは機能的配慮によって本質的に決定される形状も意匠とは認められない。モラルや公序良俗に反するもの、他人の名誉やイメージを侵害するもの、信教の自由・信条・信仰・理念・尊厳・崇拝を害するものは登録できない。
    意匠登録は、出願日から10年間有効で、1回につき5年、最高3回まで延長できる(最長25年間)。意匠の国際登録を簡素化するハーグ協定には加盟していない。

  4. 技術・ノウハウ

    子会社を含むブラジル国内の企業に対し、技術・ノウハウの供与契約を結ぶ場合もINPIの承認が必要となる。契約期間は最高5年とし、INPIが認めれば同期間の延長が1度可能。世界的に当該技術・ノウハウが陳腐化しておらず、また、国の安全を脅かしたり、公益に反するものでない限り契約期間の規制はない。

    技術・ノウハウに対する費用をロイヤルティーとして支払う場合、製品売上高の1~5%の範囲で認められる。契約に基づき国外送金するには、INPIへの登録のほかにブラジル中央銀行への登録も必要。技術・ノウハウの供与を伴わない送金であれば、INPIへの登録は不要。

課税控除

ブラジルでは税法上、知財ライセンス契約等に該当する収入・売上高は、INPIに登録することにより、一定範囲で課税対象所得から控除することが認められている。控除額は契約の種類や技術分野、産業分野により異なり、収入・売上高に対し5%に相当する額が上限。

ロイヤルティー等の国外送金

ライセンス契約等に基づき、ブラジル企業が国外にロイヤルティー等の送金をする場合、INPIへの登録に加え、ブラジル中央銀行への登録も必要。INPIは、課税控除額に相当する金額の範囲で国外送金を認めている。
契約当事者がグループ企業同士でない場合には、送金額の上限は規定されていない。ライセンス契約等がブラジル企業間で行われる場合には国外送金が発生しないため、ブラジル中央銀行への登録とINPIへの登録は不要。

ジェトロ:ブラジル「知的財産に関する情報」