外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2023年12月21日

外国人就業規制

2021年1月1日の改正労働法45/2019/QH14の施行に向け、2020年12月30日付で、政府は、ベトナムで就労する外国人労働者および在ベトナム外国組織・個人のために就労するベトナム人の採用・管理に関する政令152/2020/ND-CPを発行した。同政令は、2021年2月15日から施行されている。また、2023年9月18日、政府は、政令152/2020/ND‐CPの一部を改正・補足する政令70/2023/ND-CPを公布し、同政令は同日施行された。

外国人労働者の雇用予定の確認兼報告

雇用者は、ベトナム人労働者で代替できない業務に関する外国人労働者の雇用予定人数を確認し、外国人労働者の採用予定日から少なくとも15日前までに、外国人労働者が就労する省もしくは中央直轄市の労働傷病兵社会問題局、または政令152/2020/ND-CP(その後の改正を含む。以下も同様である)に定める場合には労働傷病兵社会問題省に対し、同政令付録1のフォーム01/PLIに従った報告書を提出する必要がある。また、当該報告書を実行する過程において、外国人労働者の雇用予定を変更したい場合、採用予定日から少なくとも15日前までに、当該省級人民委員会または労働傷病兵社会問題省に、政令152/2020/ND-CP付録1のフォーム02/PLIに従い報告する必要がある。なお、出資額が30億ドン以上の有限責任会社の所有者または出資社員、出資額が30億ドン以上の株式会社の取締役会会長または取締役、専門家・管理者・業務執行者・技術者の職位で、ベトナムにおいて従事し、勤務期間が30日未満および年間3回以下の外国人労働者等、同政令が定める場合には、雇用者は、これらの外国人労働者の雇用予定の報告を行う必要がない。

また、政令70/2023/ND-CPは、新たな手順として、2024年1月1日以降、雇用者が、外国人労働者雇用予定の報告を行う前に、労働傷病兵社会問題省(雇用局)の公共電子情報ポータル、または省級人民委員会委員長が設立した雇用サービスセンターの電子情報ポータルにおいて、15日間で、外国人労働者が就労予定の業務にベトナム人労働者を募集する告知を行うことを義務付け、その募集要項には、職位、職種、職務内容、人数、学歴、経験、給与、勤務時間、勤務地を記載しなければならないと定めた。雇用者は、この告知によってもベトナム人労働者を採用することができなかった場合に限り、外国人労働者雇用の報告を進めることができる。
労働傷病兵社会問題省または労働傷病兵社会問題局は、企業の報告書を受領した日から10営業日以内に、それを検討し、文書で外国人労働者の雇用を承認する。

請負業者は、外国人労働者の採用予定の前に、当該省または中央直轄市の労働傷病兵社会問題局に書面で報告する必要があることが規定されている。しかし、外国人労働者の採用予定日から何日前までに報告する必要があるかは規定されていない。当該労働傷病兵社会問題局は、500人以上の労働者の採用予定報告の受領日後2カ月以内に、または100人以上500人未満の労働者の採用予定報告の受領日後1カ月以内に、もしくは100人未満の労働者の採用予定報告の受領日後15日以内に、請負業者においてベトナム人の労働者を十分に確保できない場合には、請負業者の採用要求を検討した上で外国人労働者の雇用を承認する。

労働許可証免除の対象者

  1. 出資額が30億ドン以上の有限責任会社の所有者または出資社員
  2. 出資額が30億ドン以上の株式会社の取締役会会長または取締役
  3. 国際機関あるいは外国の非政府組織の在ベトナム駐在員事務所所長またはプロジェクトの代表者もしくはその運営に正式な責任を負う者
  4. 販促活動のために、ベトナムに3カ月未満滞在する外国人
  5. 企業の生産または営業活動に影響する可能性がある、ベトナムで既に就労している外国人労働者およびベトナム人労働者には解決できない技術的な問題に対処する目的でベトナムに3カ月未満滞在する外国人
  6. ベトナム弁護士法に従ってベトナムにおける弁護士業許可書を取得している外国人弁護士
  7. ベトナムの加盟している国際条約の定める者
  8. ベトナム人と婚姻しており、ベトナムで就労中の外国人
  9. WTOとベトナムとの間で合意されたサービスに係る特定コミットメント11業種(注)における企業内人事異動による場合であって、当該企業により連続12カ月以上前に採用され、ベトナム現地拠点に勤務する、ベトナム現地拠点を設立した外国企業の管理者、業務執行者、専門家、技術者である外国人労働者

    注:経営サービス、通信サービス、建設サービス、流通サービス、教育サービス、環境サービス、ファイナンスサービス、医療サービス、観光サービス、文化エンターテイメント、運輸サービスを含む。

  10. ベトナムおよび外国の権限機関によって締結された政府開発援助(ODA)に関する国際条約の規定あるいは合意内容に従うODAプログラム・プロジェクトのための専門的および技術的なコンサルティングサービスの提供、また、プログラム・プロジェクトの研究、構築、審査、評価、管理、実施を行う外国人労働者
  11. 法律に従って、外務省が発行したベトナムにおけるメディア・プレス許可書を有する外国人労働者
  12. 外国の所轄機関・組織により、ベトナムにおける外国の外務代表機関もしくは政府間組織が設立を提案した教育施設、またはベトナムが加盟している国際条約に基づき設立された機関・組織で教授するあるいは管理者・業務執行者として勤めるためにベトナムへ派遣された外国人労働者
  13. ベトナムにおける外国の外務代表機関または国際組織により認められたボランティア
  14. 専門家、管理者、業務執行者、技術者の職位としてベトナムに従事し、1回の勤務期間が30日未満で年間3回以下の外国人労働者
  15. 中央レベルまたは省レベルの機関・組織が法律に従って締結した国際合意に基づいてベトナムで就労する外国人労働者
  16. ベトナムにおける機関、組織、企業の実習に関して合意した外国における学校・教育機関で勉強している生徒、学生、およびベトナム船舶における実習生
  17. ベトナムの加盟している国際条約上、ベトナムにおける勤務が許可されている在ベトナム外国代表機関のメンバーの家族
  18. 政府機関、政治組織、政治社会組織に就労するための公用パスポートを有する外国人労働者
  19. 商業拠点を設立する責任を負う外国人
  20. 以下の目的でベトナムに滞在することをベトナム教育訓練省により認められた外国人
    1. 教授・研究
    2. ベトナムにおける外国の外務代表機関もしくは政府間組織が設立を提案した教育施設の管理者、業務執行者、学長、副学長としての就任

報告のみを求められる特定の場合を除き、雇用者は、外国人労働者がベトナムに勤務する予定日の10日前までに、労働許可証免除対象者の承認を申請しなければならない。

外国人の労働許可証取得の条件

ベトナム国内で就業する外国人は、次の条件を満たさなければならない。

  1. 18歳以上であり、民事行為能力があること
  2. 専門的・技術的能力、経験を有し、保健大臣により定められる健康要件を満たしていること
  3. 外国の法令またはベトナムの法令の規定に従って、刑罰を執行されている者、犯罪記録が残存している者、または刑事責任を追及されている者ではないこと
  4. ベトナムの所轄機関による労働許可証の発行を受けたこと(労働許可証免除対象に該当する場合を除く)
管理者・業務執行者、専門家および技術者の要件
役職 条件
管理者 企業法59/2020/QH14の第4条第24項に基づく企業の管理者(注)または組織・機関の長もしくはその副長。
(注)会社の管理者および私人企業の管理者をいい、私人企業主、合名社員、社員総会の会長、社員総会の構成員、会社の会長、取締役会の会長、取締役、社長または総社長および会社の定款の定めに基づきその他の管理職の地位にある個人をいう。
業務執行者
  • 企業の支店、駐在員事務所、または事業所の長。
  • 機関、組織、または企業の少なくとも1つの分野を直接管理し、機関、組織、または企業の長の直接の指示・管理に服する者。
専門家
  • 大卒以上(あるいは相当)の学位、およびベトナムで就労しようとする業務・職位に適合する少なくとも3年の勤務経歴を持つ外国人労働者。
  • または、ベトナムで就労する予定の職位に適合する5年以上の勤務経験および職業従事資格証明書を有する外国人労働者。
  • もしくは、労働傷病兵社会問題省の提案に基づき政府首相が決定する特別な場合。
技術者
  • 1年間以上の教育を受け、かつ、ベトナムで就労しようとする業務・職位に適合する少なくとも3年の実務経験を有する者。
  • または、ベトナムで就労予定の職位に適合する業務に従事した少なくとも5年の実務経験を有する者。

なお、政令152/2020/ND-CPでは、次のケースに該当する者も、労働許可証発給の対象とされている。

役職 条件
契約に基づくサービスの提供者 外国企業(ベトナムで商業拠点を設立していない会社)において、少なくとも2年(24カ月)間就労していた外国労働者であって、専門家についての条件を満たす者。
サービス販売者 ベトナムに在住しておらず、ベトナムから給与を貰わず、サービスを大衆に対し直接販売しないこと、およびサービスを直接提供しないことを条件に、サプライヤーの代表者としてサービスを提供する労働者。

労働許可証の申請

管轄機関により発行される外国人労働者雇用承認書を有していること。
外国人労働者がベトナムに勤務する予定日の15日前までに、企業は労働許可証を申請しなければならない。

外国人従業員の健康保険

健康保険法25/2008/QH12(法律46/2014/QH13により一部改正・補足)によると、ベトナム企業と3カ月以上の有期限または無期限労働契約を締結し、給与を支払われる企業の従業員、給与を支払われる企業の管理者、幹部・公務員・職員(以下「労働者」という)は、ベトナム国内で健康保険拠出の対象となる(健康保険法を一部改正・補足する法律46/2014/QH13の第1条第6項による)。よって、ベトナム企業と3カ月以上の有期限・無期限労働契約を締結した外国人労働者は、ベトナム国内で健康保険拠出の対象となる。

健康保険の最大料率は、社会保険料の納付根拠である月給の6%であり、そのうち雇用主負担分が3分の2、従業員負担分が3分の1である。社会保険法の規定により、出産休暇中の女性従業員に対しては、健康保険基金への社会保険庁負担部分は出産休暇前の契約給与の6%となる。健康保険の具体的な料率は政府により詳細が定められ、現在は政令146/2018/ND-CP第7条第1項によると4.5%とされている。
外国人労働者は3カ月以上の有期限契約・無期限労働契約を1つ以上持つ場合には、契約給与の一番高い給与が健康保険料の計算根拠となる(健康保険法を一部改正・補足する法律46/2014/QH13の第1条第7項および政令146/2018/ND-CP第7条第3項による)。

健康保険加入手続きは各地方によって異なる。また、詳細なルール(例えば、外貨建ての給与の場合の為替レート等)も健康保険を管理する各地方社会保険機関によって異なる。そのため、手続きを行う際には、事前に管轄の社会保険機関に確認する必要がある。

在留許可

外国人は、ベトナムへの出入国にあたり、ベトナムの所轄機関が発行したビザを提示する必要がある(日本人については、観光あるいは商用でベトナムに45日以内滞在する場合、ビザ取得は免除)。目的により、シングルビザもしくは最長5年のマルチ(複数回入国)ビザがある。また、就労、商用、投資、親族訪問、教育、報道関係者ビザを持っている外国人は、一時在留許可証を取得することができる。一時在留許可証の有効期間は労働許可証、ビザの有効期間と同様1~10年で、この期間中はビザの取得が免除される。
なお、新型コロナウイルスの影響により、ベトナムへの入国が限定され、かつ入国に当たっては、地方の人民委員会および入国管理局の承認の取得などを必要とされていた時期もあったが、2023年12月21日現在、これらの特別な対策が停止され、通常状態に戻った。

在留許可(ビザ)

2014年6月16日に、ベトナム国会は、ベトナムにおける外国人の入国、出国、通過、居住法47/2014/QH13を発行し、本法は2015年1月1日より有効となった。その後、本法は、2019年11月25日付法律51/2019/QH14(2020年7月1日から施行、以下、「2019年改正出入国管理法」という)により一部改正・補足された。なお、2023年6月24日に、ベトナム国会は、ベトナム国民の出国、入国に関する法律およびベトナムにおける外国人の入国、出国、通過、居住法の一部条項を改正・補足する法律23/2023/QH15を可決し、同法は2023年8月15日から施行されている(以下、「2023年改正出入国管理法」という)。
2015年1月1日以降、ビザ規定の概要は次のとおり。

  1. ビザ免除
    ビザ免除の対象者は、次のとおり規定されている。
    1. ベトナムが加盟している国際条約の内容により免除される場合
    2. ベトナム一時在留許可証、滞在許可証カード(テンポラリー・レジデンスカード、詳細は後述)の所有者
    3. 特別な経済地域に入国する場合
    4. 法律の規定する一方的なビザ免除による場合。具体的には、日本国籍の入国者で45日(2023年8月15日以前は15日)以内の滞在の場合、ビザは免除される。ただし、パスポートの残存有効期間がベトナムの入国日時点で6カ月以上なければならない。
    5. 外国の管轄機関により発給されたパスポートまたは国際通行許可書を保持する外国に居住するベトナム人、およびそのベトナム人の配偶者、子弟。ベトナム人の配偶者、子弟である外国人は、政令82/2015/ND-CPの規定に従って、次の条件を満たす場合にビザ免除の証明書を取得できる。
      1. 最低1年以上有効期間のあるパスポートまたはその他の国際旅行に関連する書類があること。
      2. この法令第1条第2項に規定するビザ免除の資格を有する者であることを証明する書類があること。
      3. ベトナムにおける外国人の入国、出国、通過、居住法第21条および第28条の規定に該当しないこと。

    なお、2019年改正出入国管理法により、政府が一定の条件(国際空港の設置や地理的境界の画定など)の下で承認する臨海経済特区への入国についてもビザ免除の対象となった。

  2. 乗継の条件
    1. パスポートもしくは国際通行許可書を所持していること。
    2. 第三国へ行く旅程に適合するチケットを所持していること。
    3. 第三国入国のビザを取得済みであること。ビザ免除の場合はその限りでない。
  3. ビザ免除証明書の期間、効力およびフォーマット
    1. ビザ免除証明書の最長期間は5年、最短期間は6カ月であり、パスポートの有効期間または国際旅行に関連する書類に記載される期間よりも短期間となる。
    2. ビザ免除証明書は、ベトナムに入国して個人的業務に従事する者およびその帯同者に発行される。
    3. ビザ免除証明書はパスポート上に発行される。分離された形式でのビザ免除証明書は、次の場合に発行されるものとする。
      1. 既にパスポートのすべてのページが使用され、ビザ免除証明書を添付するページが残存していない。
      2. パスポートが、ベトナムと外交関係を確立していない国で発行されている。
      3. パスポートの代わりに、別の国際旅行書類が使用される。
      4. 分離したビザ免除証明書が申請者によって要求される。
      5. 外交、国防、安全保障の目的で、分離したビザ免除証明書が必要である。
    4. 各人には、別々のビザ免除証明書が与えられる。親と同一のパスポートを持っている児童には、親と同一のパスポート上にビザ免除証明書が与えられる。
  4. ビザ発行の対象者は、ベトナムで保証された機関、組織から招聘された個人となる。ただし、ベトナムにおける外国人の入国、出国、通貨、居住法第17条第3項において、在外国ベトナムビザ発給機関の長は、市場視察、旅行、親族訪問、病気の治療などの目的でベトナムへ入国する次に該当する外国人に対し、最大30日のビザを発給する権限を有するとされており、該当者は、ベトナム側からの招聘は不要となる。
    1. 在外国ベトナムビザ発給機関と職務上関係する人またその配偶者、子弟
    2. 現地国の外務省の管轄機関から申請書を発行された人
    3. 現地国の各公館、領事館から発行された保証外交文書を有する人
  5. ビザの滞在目的の変更は、原則、認められない。これにより生じ得る影響は次のとおり。
    例えば、観光(DL)ビザで入国後、労働許可証を取得した上で、そのままベトナムに滞在し就労目的の一時在留許可証(テンポラリー・レジデンスカード)を取得することはできない。
    ただし、実務上、就労目的でベトナムに入国する外国人が、現地法人または駐在員事務所の保証により商用(DN)ビザを取得、入国後、労働許可証を取得し、一時在留許可証を取得することは可能である。なお、2019年改正出入国管理法により、次の場合には、各事由に対応する種類のビザへの変更が認められることとなり、前記の実務が明文化された。
    1. 投資家であるか、外国投資家のベトナムにおける代表者であることを証明する法定の書類を有する場合。
    2. 招聘・保証をする人物と親子または配偶者の関係にあることを証明する書類を有する場合。
    3. 機関・組織の招聘・保証を受けている者で、かつ労働許可証を有しているか、または労働法により労働許可証免除対象者の該当について確認を受けている場合。
    4. 電子ビザにより入国し、かつ労働許可証を有しているか、または労働法により労働許可証免除対象者の該当について確認を受けている場合。
  6. ビザの種類は前法令の20種類から、2019年改正出入国管理法では、ビザの種類は、入国の目的に応じて27種類(NG1、NG2、NG3、NG4、LV1、LV2、LS、DT1、DT2、DT3、DT4、DN1、DN2、NN1、NN2、NN3、DH、HN、PV1、PV2、LD1、LD2、DL、TT、VR、SQ、EV)に変更された。
  7. ビザ取得申請手続き

    ベトナムにおける社会組織、企業、ベトナム法令に従う現地法人、外国企業の支店、在ベトナムの外国の経済組織・文化組織・その他の専門組織の駐在員事務所は、招聘状の取得申請を行う前に、出入国管理局へ書面で通知するとともに、次の書類を提出しなければならない。

    1. ライセンスの公証コピーもしくは組織の設立について権能を有する国家機関より発行される決定書の公証コピー版
    2. その組織における代表者の署名および代表印の確認状

    この通知は1度のみ行われ、変更が生じた場合には、追加の通知を行う。なお、2019年改正出入国管理法により、出入国管理局ポータルサイトを通じてビザを電子申請することが可能となった。
    出入国管理局は、ビザ招聘状の受領日から5営業日以内に審査し、招聘元の機関、組織、個人に回答するとともに、在外国ベトナムビザ発給機関へ通知する。
    招聘状の発行機関、組織、個人は、出入国管理局から書面による回答を受けた後に、外国人に対し、在外国のベトナムビザ発給機関にてビザ取得手続きを行うよう通知する。
    ビザ発行手数料、外国人のベトナムへの出入国に関連するその他の手数料については、2021年5月22日から施行されている通達25/2021/TT-BTC(2023年10月3日から施行されている通達62/2023/TT-BTCにより一部改正・補足された)が適用される。

ビザ・許可証などの手数料(2021年5月22日より)
内容 費用
1. シングルビザ 25米ドル
2. マルチビザ a.90日以下の期間 50米ドル
b.90日超~180日以下の期間 95米ドル
c.180日超~1年以下の期間 135米ドル
d.1年超~2年以下の期間 145米ドル
e.2年超~5年以下の期間 155米ドル
f.14歳未満の子供(期間は関係ない) 25米ドル
3. パスポートの新旧更新によるビザおよび在留許可の期間変更のための移行手続、またはパスポートと分離した形式で発行されたビザに押印する場所がなくなった場合の新たなビザへの移行手続 5米ドル
4. ビザ免除証明書 10米ドル
5. 一時在留許可証 a.2年以下の期間 145米ドル
b.2年超~5年以下の期間 155米ドル
c.5年超~10年以下の期間 165米ドル
6. 滞在延長 10米ドル
7. 常駐許可証の新規取得、更新 100米ドル
8. 禁止エリア、境界エリアに入るための許可書発行、またはラオス人に対するベトナム国内に入るための境界通行許可書の発行 10米ドル
9. (ベトナムにおける外国人の入国、出国、通過、居住法47/2014/QH13の第25条および第26条の規定に従い)観光、旅行のために航空路および海路乗継ぎをする旅行者へのビザ発行 5米ドル/人
10. 海路の乗継(第三国へ向かうためにベトナムを通過すること)をする観光客の団体が、ベトナムにおける国際観光サービス事業者のコースに基づいて、内陸で観光する場合、または、外国の軍事船舶の乗組員が、正式な活動プログラムに基づいて、停泊する省・中央直属市以外の場所へ移動する場合において、出入国管理当局が承認する人事リストに基づくビザ発行 5米ドル/人
11. パスポートなしでベトナムに常駐する外国人のための出入国許可証の発行 20万ドン
12. 境界通行許可書で国境経済区に入国して、その国境経済区が所在する省内の他の場所を観光する外国人のための許可証発行 10米ドル
  1. 電子ビザ(EVISA)

    ベトナムに入国する外国人への電子ビザの試験的な発行のための手続に関する政令07/2017/ND-CPおよびこれを改正する政令17/2019/ND-CPにより、2021年2月1日まで電子ビザの手続が行われた。2019年改正出入国管理法によると、電子ビザは新発行様式のビザとして認められた。電子ビザは、入国管理官庁が電子システムによって、ベトナムに入国を希望する在外外国人に発行するビザである。

    電子ビザの効力について、2019年改正出入国管理法では、有効期限を最大30日とされ、シングルビザのみが認められていたが、2023年改正出入国管理法では、最大90日に延長され、マルチビザの発行もできるようになった。

    電子ビザの発行は、2019年改正出入国管理法では、[1]経済および対外的な社会発展政策に適合し、[2]国防、公安、秩序、社会安全に損害を与えない、[3]ベトナムと外交関係がある国の公民に適用されるとされていたが、2023年改正出入国管理法では[3]の要件が廃止された。
    2019年改正出入国管理法によると、電子ビザは「EV」と分類され、ビザの種類がNG1、NG2、NG3およびNG4の場合には発行されることはない。
    電子ビザを発行された外国人が、ベトナムに入国した後、新たなビザ発行を希望する場合、入国管理官庁はベトナムにおける外国人の入国、出国、通過、居住法の規定に従い処理する。

    電子ビザの発行手順および手続きは2019年改正出入国管理法で、電子ビザ発行の対象国リストは政府の2023年8月14日付決議127/NQ-CPで、それぞれ規定されている。

一時在留許可証(テンポラリー・レジデンスカード)

  1. 一時在留許可証の発行対象
    1. ベトナムにおける公館、領事館、国連所属の国際組織の代表機関、政府間組織の代表機関のメンバーである外国人、またその外国人の任期中に帯同する配偶者、18歳未満の子供および使用人に対し、NG3の一時在留許可証が発給される。
    2. LV1、LV2、LS、DT1、DT2、DT3、NN1、NN2、DH、PV1、LD1、LD2、TTビザを発給された外国人に、ビザと同記号の一時在留許可証を発給される。その有効期間は、ビザの有効期間と同様であり、最大で10年間である(DT1の場合)。その有効期間中はビザ取得が免除される。
  2. 一時在留許可証の有効期間
    1. DT1の一時在留許可証の期間は、10年を超えてはならない。
    2. NG3、LV1、LV2、LS、DT2またはDHの一時在留許可証の期間は、5年を超えてはならない。
    3. NN1、NN2、DT3およびTTの一時在留許可証の期間は、3年を超えてはならない。
    4. LD1、LD2およびPV1の一時在留許可証の期間は、2年を超えてはならない。
      (2019年改正出入国管理法第1条第16項)

    入国目的、招聘・保証機関、組織・個人など申請の違いにより一時在留許可証の期間は異なる。一時在留許可証の有効期間は1~10年であるが、有効期限はパスポート期限満了日の少なくとも30日以前の日となる(2015年7月6日付公安省発行のベトナムにおける外国人のビザ発行・一時在留許可証発行・出入国許可書発行・滞在許可証発行についての案内の通達31/2015/TT-BCA第4条第4項)。

  3. 一時在留許可証発行手続き
    申請書類は次のとおり。
    1. 招聘・保証機関、組織、個人の申請書
    2. 写真添付の一時在留許可証の発行申請書
    3. パスポート
    4. ベトナムにおける外国人の出入国、乗継、居住に関する法律第36条第1項に該当する証明書。労働者の場合、労働許可証、または労働許可証の免除該当確認書、出資者の場合、投資登録証明書、または企業登録証明書。

    出入国管理当局または外務省の管轄機関は、必要な申請書類を受領してから5営業日以内に、一時在留許可証発給の検討、決定を行う。

2021年5月22日より、通達25/2021/TT-BTCに従い、新手数料を適用する。

一時在留許可証発行手数料(2021年5月22日より)
一時在留許可証 費用
2年以下の有効期間 145米ドル
2年超~5年以下の有効期間 155米ドル
5年超~10年以下の有効期間 165米ドル

現地人の雇用義務

ベトナムにおいて従業員を雇用する場合には、雇用時の最低賃金、従業員の公的保険料納付、労働関連法令などに留意する必要がある。2011年10月より、内資企業と外資系企業の最低賃金が統一された。

最低賃金および基準賃金

原則、政府は毎年各地域の生活水準に基づき最低賃金を決定する。現在ベトナム内資企業および外資系企業に適用される最低賃金は、政令38/2022/ND-CP(2022年6月12日公布、2022年7月1日施行)に規定されている。
各地域に適用される最低賃金は次のとおりである。
第1地域:468万ドン/月、2万2,500ドン/時
第2地域:416万ドン/月、2万ドン/時
第3地域:364万ドン/月、1万7,500ドン/時
第4地域:325万ドン/月、1万5,600ドン/時

2022年の月額の最低賃金の改定では、2020年との比較で、最低賃金がおよそ6%上昇している。時間単位の最低賃金は、同政令で新たに規定された。

各地域の一覧、これまでの最低賃金の推移については、次のPDFを参照。
ジェトロ:最低賃金比較PDFファイル(119KB)

また、基準賃金と呼ばれる異なる概念が存在する。これは、政府に勤務する公務員などの給与、手当およびその他の利益の水準を決定するのに用いられるものである。基準賃金は、後述のとおり公的保険料の算定とも関連する。現在適用される基準賃金は、公務員などおよび軍人の基準賃金に関する政令24/2023/ND-CP(2023年5月14日公布)に規定されており、2023年7月1日以降は180万ドンとなっている。

公的保険

  1. 公的保険の種類

    公的保険料に関する規定は、社会保険、健康保険および失業保険料の積立の管理ならびに社会保険手帳および健康保険カードの管理について規定するベトナム社会保険庁長官決定595/QD-BHXHに集約されている。決定595は2017年7月1日より施行されているが、2018年7月16日付決定888/QD-BHXH、2020年3月27日付決定505/QD-BHXH、2020年8月18日付決定1040/QD-BHXH、2023年3月28日付決定490/QD-BHXHおよび2023年6月5日付決定948/QD-BHXHなどによる改正を受けている。公的保険の種別および料率は、次のとおりである。

    公的保険の種別および料率
    種別 雇用者負担分 労働者負担分 合計
    社会保険
    (労災保険料を含む)
    17.5%
    (うち労災保険料0.5%)
    8% 25.5%
    (うち労災保険料0.5%)
    健康保険 3% 1.5% 4.5%
    失業保険 1% 1% 2%
    合計 21.5% 10.5% 32%

    なお、新型コロナウイルス感染症の流行下で困難な状況にある労働者および雇用者の支援政策に関する政府の2021年7月1日付決議68/NQ-CPによると、2021年7月1日から2022年6月30日までの12カ月の間、使用者には労災・職業病保険料の納付率0%が適用された。雇用者は、当該納付の減免により得られる金員の全額を、新型コロナウイルス感染症の防止において労働者を支援するために使用しなければならない。
    また、新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受けた労働者および雇用者に対する失業保険基金からの支援政策に関する政府の2021年9月24日付決議116/NQ-CPにより、2021年10月1日から2022年9月30日までの12カ月の間、2021年9月30日以前に失業保険に加入している使用者(国家機関、政治組織、政治社会組織、人民武装力および国家予算により支出が確保される公立事業所を含まない)には、失業保険料の納付率0%が適用された。

  2. 保険料負担の方法
    1. 雇用者
      雇用者は労働者負担分の保険料を徴収し、雇用者負担分との合計金額を同時にベトナム社会保険機関に納付する。
    2. 労働者
      1. 各労働者は、ベトナム社会保険庁より発行された社会保険手帳を保有する。社会保険手帳には、労働者の公的保険料支払の履歴が記録される。各労働者は、健康保険カードを保有し、健康保険カードは、健康保険を受給する際に使用される。
      2. 2つ以上の労働契約に基づき異なった雇用者の下で勤務する労働者は、最初の労働契約に基づき社会保険料および失業保険料を、最も賃金の高い労働契約に基づき健康保険料を支払う。
  3. 社会保険に関する法令

    社会保険に関しては、社会保険に関する法律58/2014/QH13(社会保険法)、社会保険法の施行に関するガイドラインを規定する政令115/2015/ND-CP(政令135/2020/ND-CPにより一部改正)、ベトナムで就労する外国人労働者に対する強制社会保険に関して社会保険法および労働安全衛生法の詳細を規定する政令143/2018/ND-CP(2018年10月15日公布、同年12月1日施行、政令58/2020/ND-CPにより一部改正)、および決定595/QD-BHXHが規定する。社会保険法は、法律71/2006/QH11に代わるものとして2014年11月20日に公布され、2016年1月1日より施行された(ただし、第2条の第1項第b号および第2項は2018年1月1日より施行された)。

    社会保険法、政令115/2015/ND-CPおよび決定595/QD-BHXH(その後の改正を含む)によれば、社会保険に加入できる者は次のとおりである。

    1. 社会保険への強制的な加入対象となるベトナム人労働者
      1. 3カ月間以上の労働契約に基づき勤務するベトナム人労働者
      2. 1~3カ月間の労働契約に基づき勤務するベトナム人労働者
      3. 給与を受給している企業の管理者(社長または会長など)
    2. 社会保険への強制的な加入対象となる外国人労働者
      ベトナムにおいて発行された労働許可証、実務証明書(Practicing Certificate)または実務許可書(Practicing License)に基づき、ベトナムで就労期間が少なくとも1年間の労働契約を締結している外国人労働者(政令143/2018/ND-CP第2条第1項)。ただし、社内異動者とベトナムの定年に達した者を除く(同条第2項)。
    3. 組織および個人を含む雇用者で、労働契約に基づき労働者を雇用する者
    4. 任意の社会保険への加入の適用を受ける者

      保険料の算出は、政令115/2015/ND-CPおよび決定595/QD-BHXH(その後の改正を含む)によれば、2018年1月1日以降は労働契約に基づく給与、給与に基礎を置く手当およびその他の補充項目が算定基礎に含まれている。ただし、社会保険料算定の基礎に、次の項目は含まない。

      1. 業績または従業員の能力に基づく賞与
      2. 動機付けのための賞与
      3. 食事手当
      4. ガソリン手当
      5. 電話手当
      6. 旅費手当
      7. 住宅と育児手当
      8. 従業員の親族の死亡、結婚と当該従業員自身の誕生日の補助金
      9. 労働災害、職業病の場合の困難な状況にある従業員への補助金
      10. 当事者間の契約に定められるその他の補助金

      これらの項目については、労働契約に、賃金と区別して記載しなければならない(通達59/2015/TT-BLDTBXH(通達06/2021/TT-BLDTBXHにより一部改正)第30条第2項、通達10/2020/TT-BLDTBXH第3条第5項第c号)。なお、社会保険料算定の基礎の最高金額は、基準賃金の20倍(2023年7月1日以降は3,600万ドン)である。

    政令143/2018/ND-CPおよび決定595/QD-BHXH(その後の改正を含む)によると、雇用者および外国人労働者に適用される社会保険料率は現在次のとおりである。

    外国人労働者に適用される社会保険
    種別 2018年12月1日以降 2022年1月1日以降
    雇用者負担 労働者負担 合計 雇用者負担 労働者負担 合計
    社会保険料(労災保険料を含む) 3.5% なし 3.5% 17.5% 8% 25.5%

    加えて、政令143/2018/ND-CPは、ベトナムに在住していない者の毎月の退職者年金および社会保険給付金の移転に関しても規定している。毎月の退職者年金および社会保険給付金の受給者がベトナムに在住していない場合、当該受給者は自身の代わりに第三者に給付を受けることを委任することができ、社会保険法に記載される割合にて1回給付を受けることができる(政令143/2018/ND-CP第11条)。

  4. 失業保険に関する法令

    失業保険に関しては、雇用法38/2013/QH13、雇用法の施行に関する細則を規定する政令28/2015/ND-CP(政令61/2020/ND-CPにより一部改正)および決定595/QD-BHXH(その後の改正を含む)が規定する。
    2015年1月1日以降、失業保険に加入する者は次のとおりである。

    1. 3カ月間以上の労働契約に基づき勤務するベトナム人の労働者
    2. 組織および個人を含む雇用者で、3カ月間以上の労働契約に基づき労働者を雇用する者

    失業保険料算定の基礎は、社会保険料と同様(労働契約に基づく給与および給与に基礎を置く手当ならびにその他の補充項目)である。他方、失業保険料算定の基礎の最高金額は、適用される地域の最低賃金の20倍となる(雇用法第58条第2項)。

  5. 健康保険に関する法令
    健康保険に関しては、健康保険に関する法律25/2008/QH12および健康保険に関する法律を変更し補足する法律46/2014/QH13(健康保険法)、健康保険法の一部の条項の施行に関する補則を規定する政令105/2014/ND-CPならびに決定595/QD-BHXH(その後の改正を含む)が規定する。2018年10月17日、政府は政令105/2014/ND-CPに代置する政令146/2018/ND-CPを制定し、2018年12月1日より施行されている。
    政令146/2018/ND-CPによると、2018年12月1日以降、健康保険に加入する者は次のとおりである。
    1. 3カ月間以上の労働契約に基づき勤務するベトナム人および外国人の労働者
    2. 組織および個人を含む雇用者で、3カ月間以上の労働契約に基づき労働者を雇用する者
    3. その他の組織および個人で、健康保険法に規定される者

    健康保険料算定の基礎は、社会保険料と同様(労働契約に基づく基本給および基本給に基礎を置く手当ならびにその他の補充項目)である。また、健康保険料算定の基礎の最高金額は、基準賃金の20倍(2023年7月1日以降は3,600万ドン)である。

  6. 労災保険に関する法令

    2016年6月30日以前は、労災保険は社会保険の一部であり、雇用者が労働者のためにこれを支払っていた。2016年7月1日以降、労働安全衛生法84/2015/QH13および労働安全衛生法の労災保険に関する条項の施行に関する細則を規定する政令37/2016/ND-CPが発効し、これにより雇用者が1%を負担すると規定されたが、これは社会保険料に含まれており、雇用者および労働者が支払うべき公的保険料率の合計は従前どおりであった。その後、政府は、2017年4月1日付けで政令44/2017/ND-CPを発行し、2017年6月1日から労災保険料の使用者負担分が0.5%軽減された。
    現在、政令37/2016/ND-CPは2020年9月15日から政令88/2020/ND-CPに、政令44/2017/ND-CPは政令58/2020/ND-CPにより廃止されたが、労災保険料の使用者負担分は原則として0.5%のまま変わっていない。さらに、政令58/2020/ND-CPに定める要件を満たした事業所の場合は申請のうえ0.3%を適用することができる。
    なお、新型コロナウイルス感染症流行下で困難な状況にある労働者および雇用者の支援政策に関する政府の2021年7月1日付決議68/NQ-CPによると、2021年7月1日から2022年6月30日までの12カ月の間、雇用者には労災・職業病保険料の納付率0%が適用された。雇用者は、当該納付の減免により得られる金員の全額を、新型コロナウイルス感染症の防止において労働者を支援するために使用しなければならない。

    労災保険に加入する者は次のとおりである。

    1. 社会保険への強制的な加入対象となるベトナム人の労働者
      1. 3カ月間以上の労働契約に基づき勤務するベトナム人の労働者
      2. 1~3カ月間の労働契約に基づき勤務するベトナム人の労働者(2018年1月1日より適用)
    2. ベトナムにおいて発行された労働許可証、実務証明書(Practicing Certificate)または実務許可書(Practicing License)に基づき、ベトナムで就労期間が少なくとも1年の労働契約を締結している外国人の労働者(2018年12月1日より適用)
    3. 組織および個人を含む雇用者で、労働契約に基づき労働者を雇用する者

    労災保険料算定の基礎は、社会保険料と同様(労働契約に基づく給与および給与に基礎を置く手当ならびにその他の補充項目)である。また、労災保険料算定の基礎の最高金額は、基準賃金の20倍(2023年7月1日以降は3,600万ドン)である。

  7. 公的保険の支払義務違反に対する行政処分

    強制社会保険および失業保険の不払に対する罰則は、政令12/2022/ND-CP第39条に規定される。強制的な社会保険または失業保険の一部を支払わなかった場合、企業などの組織である雇用者には保険料の24~30%の罰金が科される(ただし、1億5,000万ドンを超えないものとする)。強制的な社会保険または失業保険に加入すべきすべての労働者について保険の加入をしなかった場合、企業・組織である雇用者には保険料の36~40%の罰金が科される(ただし、1億5,000万ドンを超えないものとする)。なお、是正措置として、未払保険料の強制納付に加え、遅延利息も科される。

    健康保険料の不払に対する罰則は、政令117/2020/ND-CP(政令124/2021/ND-CPにより一部改正)第80条に規定される。健康保険に加入すべきすべての労働者に対する保険料の支払いを怠った雇用者(企業などの組織である場合)には、違反した労働者の人数に応じて200万~8,000万ドンの罰金が科される(政令117/2020/ND-CP第80条第2項)。十分な健康保険料の支払いを怠った雇用者(企業などの組織である場合)には不払いの金額に応じて200万~8,000万ドンの罰金が科される(政令117/2020/ND-CP第80条第3項)。加えて、是正措置として、雇用者は健康保険料を支払い、健康保険基金に遅延損害金を支払わなければならない。さらに、雇用者が、本来健康保険により負担されるべきであった医療費を労働者が支払っていた場合、かかる労働者に対して、支払済の医療費の支払いを行わなければならず、かかる労働者への支払いができない場合は、国庫に支払いをする。

その他

労働法関連

労働法の改正

2012年6月18日に、労働法10/2012/QH13が公布され、2013年5月1日より施行された。加えて、政府は2015年1月12日に労働法の一部内容の詳細と施行ガイドラインとなる政令05/2015/ND-CPを発行した。さらに、政令05/2015/ND-CPの一部条項を政令148/2018/ND-CP(2018年10月24日公布、同年12月15日施行)にて修正した。
また、2019年11月20日には、第14期国会の第8会期において、改正労働法45/2019/QH14が可決され、重要な改正が多くなされている。この改正労働法は、17章220条からなり、2021年1月1日から施行されている。改正労働法の施行に伴い、政府は2020年12月14日に、労働条件および労使関係に関して改正労働法の一部内容の施行ガイドラインを定める政令145/2020/ND-CPを公布した。同政令は2021年2月1日から施行されている。
詳細は次のページも参照。
ジェトロ:ベトナムのビジネス関連法規・通達:労務

労働組合

労働組合とは労働者を代表する組織で、企業による労働者の権利の保障、または企業が人材採用、賃金制度、労働安全・衛生、労働災害、社会保険・健康保険などに関する法令を遵守しているか否かを監督する。会社は、労働者からの希望があれば労働組合設立の支援、協力をしなければならない。労働組合は、会社に労働組合の加入を志願する5人以上の労働者がいる場合に設立することができる。設置しない場合は、各地方上部労働組合が、企業に勤務する労働者の法的権利および利益について、企業と調整を行う。
改正労働法によると、労働者は、その企業内で、労働組合とは別に、労働者の組織(「企業における労働者組織」)を設立し、これに加入し、その活動に参加する権利を有するものとされる。このような組織と労働組合は、労使関係における労働者の適法かつ正当な権利を保護するための代表として、その権利義務において同等とされる(改正労働法170条)。そして、このような組織も国の管轄当局にて登録され(改正労働法172条第1項)、ベトナム労働総同盟に加入する場合には労働組合法の規定に従う(改正労働法172条第3項)。

  1. 労働組合に係る費用

    2013年1月1日に発効した労働組合法12/2012/QH13、労働組合財務に関して施行細則を定める政令191/2013/ND-CP、労働組合予算の管理に関する規定を定める決定1908/QD-TLD、2022年度労働組合財務予算の作成・割り当ての原則に関する規程を発布する決定3308/QD-TLD、2023年度労働組合財務予算の作成・割り当ての原則に関する規程を発布する決定5440/QD-TLD、2024年度労働組合財務予算の作成・割り当ての原則に関する規程を発布する決定8086/QD-TLD(2024年1月1日より施行)および2021年10月1日付ガイダンス32/HD-TLD、2021年10月25日付補足ガイダンス36/HD-TLD、2022年10月10日付ガイダンス65/HD-TLD、2023年10月10日付ガイダンス95/HD-TLDによると、雇用主(組織、企業)および組合メンバーである労働者の納付率は次のとおり。

    労働者の納付率
    納付者 納付率 計算根拠
    雇用主(対労働組合負担金) 2% すべての従業員の公的保険料の算定の基礎となる賃金の総額
    組合メンバーである労働者 (労働組合費) 1% 公的保険料の計算根拠となる月給
    1. 組織、企業などの雇用主内部に企業内労働組合が設立されていない場合

      雇用主は、対労働組合負担金として労働者の賃金の2%を上部労働組合に納付する。上部労働組合は、決定1908/QD-TLD第22条に基づくベトナム労働総同盟の理事会の年間方針に従って徴収された対労働組合負担金と労働組合費の総額から一定の割合を企業内労働組合設立の推奨、集団労働協約の締結および企業内労働組合が設立されていない組織、企業などで勤務する労働者の保護のために使用することができる。

    2. 雇用主内部に企業内労働組合が設立されている場合

      雇用主は、対労働組合負担金を毎月1回社会保険料の支払いと同時に、上部労働組合に納付する。また、労働組合費については、毎月、組合メンバーである労働者から企業内労働組合に直接納付される、または組合メンバーとの合意のうえで給与から徴収される。2021年においては、2020年10月1日付ガイダンス11/HD-TLDに従い、[1]対労働組合負担金につき、企業内労働組合がその71%を、上部労働組合がその29%を使用することができ、[2]労働組合費につき、企業内労働組合がその60%を、上部労働組合がその40%を使用することができた。2022年においては、2021年10月1日付ガイダンス32/HD-TLDに従い、[1]対労働組合負担金につき、企業内労働組合がその75%を、上部労働組合がその25%を使用することができ、[2]労働組合費につき、企業内労働組合がその60%を、上部労働組合がその40%を使用することができた。
      2023年においても、2022年10月10日付ガイドライン65/HD-TLDに従い、2022年と同様な配分率が適用されている。2024年においては、2023年10月10日付ガイダンス95/HD-TLDに従い、対労働組合負担金につき、前年度と同様な配分率が適用されるが、労働組合費につき、企業内労働組合がその70%を、上部労働組合がその30%を使用することができる。

  2. 組合活動を行う労働者の権利保護

    外資系企業にて組合活動を行う労働者の権利・義務は、他の一般的な労動者と同様である。組合メンバーである労働者は、労働者の代表組織となる労働組合執行委員会委員、ならびに組合活動を行う専従および非専従の労働組合幹部をそれぞれ選任しなければならない。
    非専従で組合活動を行う労働者は、その者の地位にもよるが、就業時間の一定時間(労働組合の長および副長については月24時間、執行委員会のその他の幹部については月12時間)を労働組合活動に使用することができ、また組合活動中の賃金も全額支払われると定められている。この時間は、企業規模に応じて雇用主、企業内労働組合執行委員会および他の労働者との合意により延長できる。
    労働組合基金により賃金を支払われる労働組合の専任活動者は、企業規則もしくは労働協約に沿った諸権利と福利厚生を、他の労働者と同様に享受することができる。雇用主が、企業内労働組合の執行委員会の委員である者に対し、解雇、労働契約の一方的解除を決定する際には、同組合執行委員会の同意を得なくてはならない(合意に至らない場合、双方は省級の労働当局に報告しなければならない。同報告の30日後に、雇用者は決定することができる)。

ストライキ

ストライキとは、労働争議を解決するために、労働者が任意で一時的に仕事を停止することを指す。労働法10/2012/QH13第215条によると、次の場合に違法なストライキとみなされる。

  1. 団体労働争議以外の原因から発生したストライキ
  2. 同じ雇用者の下で就労していない労働者によって行われるストライキ
  3. 団体労働争議に対し、労働法に基づいた機関、組織、個人による解決が試みられていない、または解決の過程のある時点で行われるストライキ
  4. 政府が指定したリストに基づき、ストライキが禁止されている企業において行われるストライキ
  5. ストライキの延期または中止の決定がある場合のストライキ

改正労働法では、違法とみなされるストライキの範囲が拡張されるとともに、違法とみなされるための要件がより詳細に規定され、次の場合に違法なストライキとみなされる(同法第204条)。

  1. 次に定めるストライキに該当しない場合
    1. 調停不成立、または調停人が当事者もしくは法令に定める機関の要求を受けた日から5営業日以内に、調停を実施しない場合
    2. 労働仲裁委員会が設立されない、設立されたが争議解決決定を出さない、または使用者である争議当事者が労働仲裁委員会の争議解決決定を実施しない場合
  2. ストライキを組織、指導する権利を有する労働代表組織によらない場合
  3. 本法律が定めるストライキの実施手順および手続の各規定に違反する場合
  4. 権限を有する機関、組織または個人が、本法律の規定に従い団体労働争議の解決実施を継続中である場合
  5. 本法律が定めるストライキの実施が禁止されている職場において実施された場合
  6. 本法律の規定に従いストライキの延期または停止決定が出された場合

適法なストライキの実施には、労働組合執行委員会あるいは労働者の代表者がストライキに関する意見聴取を実施する必要がある。また、ストライキに関する意見聴取の内容に同意する労働者の比率は、50%を超える必要である。さらに、労働組合執行委員会がストライキ決定書を発布し、ストライキの5日前に、ストライキ決定書を会社、省レベルの労働局および上部労働組合に提出する必要がある。
改正労働法では、決定書を提出するべき時期および提出先が変更されている。決定書はストライキの5営業日前に提出しなければならず、提出先も、会社、区レベルの人民委員会および省レベルの人民委員会の労働局とされている。

なお、ストライキの発生前後で、次の行為が禁止されている。

  1. ストライキの妨害、他の労働者に対する扇動、ストライキへの参加の強制
  2. 企業の機械、設備の破壊または損壊
  3. 公共安全の侵害
  4. ストライキを準備する労働者、組織者、指導者に対する労働契約書の終了または労働規律処分
  5. ストライキを主導し、またはこれに参加した者に対して報復措置を採ること
  6. 不法行為、その他の違反行為を行うためにストライキを利用すること

退職・解雇

  1. 退職

    企業で12カ月以上勤続した労働者が退職する場合は、雇用主は基本給に付属手当てがあればそれを含めて、勤続1年につき半月分の退職手当を支払う責任を負う。退職手当算出の基礎となる時間は、労働者が雇用主のために実際に働いた期間(ただし、試用・産休期間などを含むが、インターン、実習期間を除く)であり、労働者が失業保険に加入していた期間と雇用主から退職手当・失業手当を受給していた期間は除かれる(政令145/2020/ND-CP第8条第3項)。ただし、次の場合、労働者は退職手当を受けることができない。

    1. 労働者が法令に従って定年に達し、社会保険給付を受給する資格を満たした場合
    2. 労働者が労働契約を違法に一方的に解除し、または解雇予告期間を遵守しなかった場合
    3. 労働者が就業規則に従って懲戒解雇された場合

    改正労働法では、これらに加え、次の2つに該当した場合においても、労働者は退職手当を受けることができないと定められる。

    1. 労働者が連続して5営業日以上にわたり正当な理由なく無断欠勤する場合
    2. ベトナムに所在する外国人労働者が、法令上の効力を既に有する裁判所の判決、決定、または権限を有する国家機関の決定に従い国外退去となった場合

    退職手当(改正労働法第46条第3項)、失業手当(改正労働法第47条第3項)を計算するための基礎となる給与は、労働者が退職する前6カ月間の平均給与である。労働災害への賠償、職業病への賠償については、給与、給与に基礎を置く手当およびその他の補充項目から構成される給料となる(労働安全衛生法第38条第10項)。また、違法な一方的労働契約解約への賠償については、労働契約に記載された給料を指す(改正労働法第40条2項および第41条第1項・第3項)。

  2. 解雇
    2012年労働法に基づき、解雇は次の状況でのみ実施が可能である。
    1. 労働者が窃盗、汚職、賭博、故意に人を傷つける行為、職場内での麻薬の使用、雇用者の経営・技術上秘密の漏洩、知的所有権の侵害行為を行い、雇用者の資産、利益に重大な損害をもたらす行為、または特別重大な損害をもたらす恐れがある行為を行った場合
    2. 昇給期間延長処分の制裁を受けながら、制裁期間中に再犯した場合、または免職の制裁処分を受けながら、再犯した場合
    3. 正当な理由なく、当事者が1カ月に計5日または1年に計20日無断欠勤した場合

    改正労働法では、これらの場合に加え、「就業規則が規定する職場でのセクハラ行為を行った場合」も解雇が可能とされ、また、c.「正当な理由なく、当事者が1カ月に計5日または1年に計20日無断欠勤した場合」の規定は、「正当な理由なく無断欠勤した最初の日から起算し、30日間に計5日または365日間に計20日無断欠勤した場合」の文言に変更された。

    また、懲戒解雇された労働者は、退職手当を受けることはできない。
    一方、懲戒解雇とは異なるが、事業再編などにより、12カ月以上勤続した労働者が仕事を失った場合、雇用主は、新しい職場で引き続き雇用するために、彼らを再訓練する義務を負う。新しい仕事に就くことができず、労働者を解雇しなければならない場合は、勤続期間1年につき1カ月分の給与に相当する失業手当を支払わなければならない。ただし、失業手当は、最低でも給与の2カ月分と規定されている。
    政令145/2020/ND-CP第70条第2項によると、雇用者は労働規律処分のために実施する会議前にすべての参加者に対して招集通知を送付しなければならないが、いずれの参加者が会議を欠席した場合、雇用者は労働規律処分のための会議を実施することができる。

  3. 退職手当/失業手当
    1年以上失業保険料を納付した労働者が退職し、再就職していない間に申請手続を行う場合、企業からの退職手当ではなく、社会保険機関から失業手当を受給することが認められている。ただし、企業が労働者の失業保険を負担していなかった期間(例えば、試用期間、女性労働者の産休など)がある場合、労働者は当該期間については退職手当の支払を受けることができる。
  4. 女性労働者に関する特有の規定

    女性労働者に対しては、別途特別の規定があるため、休息時間を設定する際は注意が必要となる。

    女性労働者は、出産前後に合計6カ月の休暇を取得することができる。双子以上(双子、三つ子など)が生まれた場合は、2人目の子から1人当たり1カ月の有給休暇を追加取得することができると定められている。出産休暇完了後、女性労働者は必要があれば、会社との合意により無給休暇を取得し、休暇を延長することができる。
    このほか、女性労働者は生理期間中、1就業日当たり30分の休憩を取得することができ、生後12カ月未満の子供を養育中の女性労働者は、1就業日当たり60分の休憩を別途取得が可能。この休憩時間は勤務時間に含まれる。

    また、妊娠した女性労働者は、就業の継続が胎児に悪影響があるとの医師の診断書があれば、事前通知および賠償なしで、労働契約を一方的に解除する権利を有する。ただし、雇用主は、企業閉鎖の場合を除き、妊娠、出産休暇または満1歳未満の子供を育児中の女性労働者の解雇や、一方的に労働契約を解約してはならないと定められている。
    雇用主は、妊娠7カ月目を超える女性労働者、12カ月未満の子供を養育中の女性労働者に対し、時間外労働、深夜労働、遠隔地勤務をさせてはならないと定められている。ただし、改正労働法第137条第1項では、12カ月未満の子供を養育中の女性労働者につき、当該労働者の合意がある場合は除外される予定である。
    また、改正労働法では、妻が出産をする男性労働者、6カ月未満の子供を養子にした労働者、代理出産をする女性労働者、および代理出産を依頼した母となる労働者は、社会保険法が定める産休制度の対象者となる旨の規定が新設された。

外資系企業および外国・国際機関で就業する労働者の賃金テーブルと給与支払名簿

2012年労働法の下で、政府は2013年5月14日、企業の給与に関する政令49/2013/ND-CPを発行した。
この政令は、企業の賃金テーブルと給与支払名簿の詳細に関するガイダンス規則を規定しており、2013年7月1日より発効した。それによると、企業は労働者のために賃金テーブル、給与支払名簿、技術等級、資格、専門的技能に関する補助制度を確立する義務がある。こうした制度は、労働契約やその他の関連する契約書の締結、あるいは給与およびその他労働者給付の支給を行う際の基準となる。次の原則に従う必要がある。

  1. 賃金テーブルの隣り合う各給与等級の差異は5%以上とする。
  2. 職業訓練を修了した労働者に適用される賃金テーブルや給与支払名簿に記載の最低給与水準は、政府が規定した法定最低賃金を最低7%上回るものとする。
  3. 有害または危険な仕事の給与水準は最低5%、また、特に有害または危険な仕事の給与水準は最低7%、通常就労条件の賃金を上回るものとする。

なお、政令49/2013/ND-CPの改正に関する政令121/2018/ND-CP(2018年9月13日公布、同年11月1日施行)によると、労働者の人数が10人未満の雇用者は、賃金テーブル、給与支払名簿および労働基準量を事業施設が所在する区域の労働当局に提出する必要がなくなった。

改正労働法上、使用者は、労働者採用、労働契約内に規定された業務または職名に従った賃金額の合意および労働者への賃金支払いの根拠とするために、賃金テーブル、賃金表の作成および労働基準の設定を行わなければならないということは従前どおり変わりがないが、当該賃金テーブル・賃金表・労働基準を作成するにあたり、政府が規定した原則に従わなければならず、作成後に区域の労働当局に提出するという規定は廃止された(第93条第1項および第3項)。